2012年 05月 27日
質問はセリフとして…
番組がスタートすると、ご本人(本名の寺島純子で出演)は大スターぶったところは
まったくありませんでした。スタート時はご主人の菊五郎さんが名古屋・御園座に
出演中だったために、本番がある毎週水曜日の朝、新幹線で上京していました。
スタッフも前夜名古屋入りして打ち合わせ、私は一泊して翌朝、上京の“お伴”を
したのです。「ご家名には決して…」のインパクトがあまりにも強くて、柄にもなく
緊張しましたが、明るく気さくな女性で、いささか拍子抜けするぐらいでした。
しかし、器用で経験もある芳村さんと違い、番組の司会はまったく初めてです。
聞かれることはあっても、初対面の人に話を聞くことなどなかったでしょうから、
相当に大変だったはずです。
コンビを組んで勝手が違ったのは、女優さんらしく、ゲストと話をするとき台本に
書かれている質問部分を、セリフのように暗記して本番に臨んでいたことです。
これとこれとこれを聞かなければいけない…と考えれば緊張するかもしれませんが、
セリフを覚えるのは仕事としてずっとやってきたことですから楽なんでしょう。
初期の司会者、高峰さんや山口さんも多分同じやりかたをしていたのだと思います。
ゲストはおおむね話が上手な人がそろっていますから、この方法でも問題はないと
思ったのですが、2週目の最後にひやっとするハプニングが起きました。

台本があるにしても、初めのうちは彼女が話を広げやすいゲストをと、スタッフも
気を使い、この日は歌舞伎界から市川団子(現猿之助)さんを招いていました。
このコーナーは、“ゲストと藤さんの二人だけで”という設定になっていましたから、
私はカメラの横に下がっていました。
旧知の間柄ですからいい雰囲気で話がはずんでるなあと安心して見ていたのですが、
途中で台本をチェックすると、用意してあった質問の消化が早く進んでいます。
このままだと予定より早く終わってしまうぞと心配しは始めたとたん、純子さんは
「今日はお忙しいところを有難うございました」と本当に終わってしまったのです。
放送時間が1分近く残っているのに!
番組の途中であるコーナーが長引いてしまったら次のコーナーを短くするなどして
修正できますが、最後のコーナーはそうは行きません。
ディレクターの指示を待っている時間はなく、とっさの判断で二人が話をしている
応接セットの所に上がりこんでいきました。初めからその予定だったかのように
「お疲れさまでした。実は私は慶応で団子さんの1年後輩でしたから、ときどき
三田でお姿を拝見してましたよ」と話をつなぎましたが、冷や汗ものでした。
純子さんは、私の焦りには全く気づいていませんでしたが。ハハハ。
最初は不慣れで“アシスト”を必要とした純子さんですが、次第にトップ女優の
カンのよさを発揮し、アドリブもこなすようになって、司会者として見事に花を
咲かせて行きました。中でも、少し“とっぽい”ところのあるディレクターが
“3億円保険金殺人事件”で限りなくクロに近かった男をスタジオに呼んだときは
「大丈夫だろうか」と心配でなりませんでした。

しかし、台本では純子さんと2人の推理作家が疑問点を上げて問いただすことに
なっていました。「これでは、途中で怒り出すんじゃないか」と懸念しましたが、
まさしくそうなりました。しかし、彼女は動じる気配を見せませんでした。
席を立ってスタジオの出口に歩いて行く男をまず追ったのは当然、私でした。
役目ですから。ハハハ。
彼女も追ってきました。当時の彼は週刊誌や世間から追いつめられていましたから、
「暴れたら危ないぞ」と思ったのですが、それほど大きな声を出すこともなく、
スタジオに配備していた警備員に囲まれて出て行きました。
結局、この男(荒木虎美)は詰めかけていた刑事によって駐車場で逮捕されましたが、
このときの彼女の落ち着きぶりにはビックリしました。さすが“お竜さん”です。
ハハハ。

新婚のヒデとロザンナの二人がスタジオに来てくれたときのことです。
アシスタントは画面に写らない所で、いろいろやることがあります。
ナマ番組は 始まってから部分的な変更点が出てきますから、このあとの“流れ”を
どうするかについて常にスタッフとコミュニケーションを取らなければなりません。
当然、アシスタントの役割です。インターカムを通じて指示を受けたりしていると
どうしてもゲストの話が“上の空”になります。

話し終えたところでした。私は「ああ、そうなんですか」と軽く相槌をうちました。
ホステス嬢の愛想笑いと同じで、いわば“職業的な反応”です。ハハハ。
ところが、一瞬 妙な間があったあと、純子さんが「この人、冗談が通じなくて」と
笑いながら言ったのです!
そのときは分かりませんでしたが、これは何かやってしまったぞと思いました。
帰宅後、ビデオを見て頭を抱えました。ロザンナさんは、彼ら夫婦の挙式と出産の
間で計算が合わないことを「イタリアでは6ヶ月で子供が生まれるんです」という
ジョークで説明していたのです!
これでは、確かに私の「そうなんですか」は実に間が抜けて聞こえたことでしょう。
今だったら、ネット上でいい笑いものにされていたに違いありません。
それにしても、純子さんの「冗談が通じない」の一言には参りました。ハハハ。

出産するため番組を休むことになり、私のアシスタント生活もそこで終わりました。
ワイドショーをやったことで、社内での評価がよくなったとはとても思えませんが、
私にとっては非常にいい経験でした。
特徴のない風貌で、言うことも“まともな”ことばかりですから、どうしても硬い
印象が強かったのですが、少し柔らかくなったのと、しばらくスポーツから離れて
いたことで、対象から距離をおくことを覚えたような気がします。
つづく・・・


































































