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岩佐徹のOFF-MIKE

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「“泣かせる話”“売らんかな”~ジャーナリズムを考える 2~」                11/03/30

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・・・つづき

テレビの世界ではこんなことがありました。
たしか、インドだったと思いますが、海外で飛行機の墜落事故が起きたときです。
ニュースの放送中に飛びこんだ第一報を伝えたキャスターが余計な一言を付け加えました。
「乗客の中に日本人はいませんでした。不幸中の幸いでした」!!

中堅より上で、経験はあるはずの先輩(ネット局)が、何をどう考えてそんな愚かなことを
言ったのかは分かりません。
外国人なら犠牲になっていい…などと思うはずもないのですが、照明が当たるスタジオで
カメラに向かって話すキャスターは、ときにとんでもないことを言ってしまうようです。
現地から中継するときも同じです。“舞い上がる”と言えばいいでしょうか、現場の状況に
圧倒されて、考えがまとまらないうちに口が勝手に言葉をつむぎ出してしまうのです。
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日本を代表するジャーナリストだった筑紫哲也でさえ、阪神淡路大震災のときに、上空の
ヘリから、立ち昇る煙を見て「温泉のようだ」と言ってしまったと聞いています。
普通に考えたら、この表現はあり得ないのですが、何かが大ベテラン・ジャーナリストの
口元を狂わせたのです。今回、スタジオに出演した防災専門家が「こんなに見晴らしの
いい釜石は初めて見た」と現地の印象を語っていました。
聞いていて「やれやれ」と思いましたが、立場が変われば誰でもが同じミスをしでかす
可能性を持っているのです。

どちらも、ほかのことなら、描写として間違いではないのですが、状況に合わせて言葉を
選ぶのはつくづく難しいものです。

1966年 多数の新婚カップルを乗せた全日空機が松山空港への着陸に失敗して瀬戸内海に
墜落する事故が起きました。
スタジオに出演した記者にキャスター(他局)が問いかけました。
「なにか、泣かせる話はありませんか?」!!

…“馬脚”があらわれた瞬間です。
“正義”のお面をかぶっていても、どこかで、視聴者に訴える“感傷的・お涙頂戴的”な
エピソードを探し求めている、という底の浅い報道の実態が分かります。

こう書くと「だからテレビはダメ、新聞はまだ信用できる」と思う人がいるでしょう。
どう考えるかは、皆さんの自由です。
しかし、リアルタイムで伝えるテレビだからたまたま露呈しただけで、活字メディアも
似たようなものだと、私は思っています。
「もっと、ハートに訴える話はないのか!よそ(他紙)に負けてるぞ」と、デスクが大声で
現地にゲキを飛ばしていることでしょう。言葉は違っても、言っていることは同じです。
競争社会ではそうならざるを得ないのです。

二つのケースは、いずれも古い話ですが、基本はあまり変わっていないと思います。
誤解を恐れずに言うならば、何かが起きたとき、彼らはそれを忠実に伝えることより、
視聴者・読者が興味を持ちそうなネタを見つけることに力をそいでいるように見えます。
その“付加価値”が視聴率や部数を伸ばすことにつながるからです。

私がごく若いころ、いまも強く印象に残る出来事がありました。それはまさに、日本の
ジャーナリズムに共通する“傾向”を示していると思います。
南の海で漁船団が遭難して多くの人命が失われました。同じ日に富士山で雪崩が起きて
大学生のパーティーが遭難しました。
テレビについては記憶があいまいなのですが、新聞は各紙とも山の遭難の方に圧倒的に
大きく紙面を取っていました。

遠い南の海には取材に行くことはできないし、情報も乏しい。
一方、マスコミ業界に大勢のOBがいる大学山岳部の遭難については、現場の状況など
書くことがたくさんあるし、関係者からの情報が得やすい。
…なによりも、“有名大学山岳部”が持つイメージが“売れ行き”につながるからでしょう。

私はまだ学生だったと思います。世間を知らなかったからと言われれば、それまでですが、
命の重さに差はないものの、大きく扱われるべきは、仕事中に命を落とした漁師たちの
遭難のほうだと考えていました。それだけに紙面を見たとき、とても意外でした。
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“ジャーナリズム”という言葉の使われ方はかなりあいまいですね。
私自身も深く考えたことはなく“世の中で起きていることの本質を探り、知りえたことを
広く知らせること”ととらえていました。
この記事を書きながら、改めて辞書を引いてみて仰天しました。

広辞苑の“ジャーナリズム”の項にはこう書かれています。

“新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどで時事的な問題の
報道・解説・批評などを行う活動。また、その事業、組織。


一方、手元の電子辞書にある大修館書店:ジーニアス大英和辞典の“journalism”には
1~3まで、似たような説明のあとにこう書かれていたのです。

4=jounalese(特にニュースを伝える)新聞・雑誌の文体[語法]
◆陳腐で大げさな表現を使うというイメージがある


つまり、journalism は journalese(ジャーナリーズ)と同じで、その意味は…となります。
偶然でしょうが、最後の1行がいまのジャーナリズムをものの見事に言い当てています。
現場で仕事をしている人たちからは反発があるかもしれませんが、“コジツケ”ではなく、
結局、“ジャーナリズムとは、陳腐で大げさなもの”という結論でいいのかもしれません。


私は長くテレビの世界で仕事をしてきました。
ニュースを読むために報道に“入り浸って”いた時期もありますし、報道部に籍を置いた
こともあります。一昨日と今日、書いたことは、私が目撃したことを中心にしています。
ウソや誇張はありませんが、これが報道のすべてではありません。時代が変わり、人も
入れ替わっています。ジャーナリズムの世界にも変化があっていいはずです。

しかし、冷静な目で現状を見ると、それほど変わったようには見えません。残念ですが。
“噛みつき猿が見つかった”がトップニュースになったり、なんの実績も残していない
女性タレントをフィリピンまで追いかけて行ったり、若い“跳ね返り”女優が公の場に
姿を見せれば、なぜか、へりくだった態度でインタビューを試みたり…
やってることは、むしろ、昔より悪くなっているかもしれません。

テレビだけでなく、新聞もどこかおかしいです。
昨日、最後の出演になったTBSラジオ「キラキラ」で上杉が語っていました。
プルトニウムの検出や東電の社長がダウンしていることが明らかになったのは、上杉が
27日の会見で質問したからだそうだ。
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配られている資料に記された放射能物質の中にプルトニウムがないことを彼が問うと、
「未検出だからだ。測ってない。もともと機器を持っていない。これから借りる」と
答えたそうです。ひどい話ですが、翌日になると、「21,22日に測っていた」と…。
“測っていない”も“機器を持っていない”もウソだったことがアッサリばれたわけです。
はじめ「プルトニウムの検査の結果が判明するのに1週間近くかかる」と言っていたのも
全くのウソで、実際は24時間で分かるのだそうです。

上杉の言うことを頭から信じるのは危険かもしれません。
しかし、ここで虚偽発言をしたら、即、“ジャーナリスト”と名乗ることをやめなければ
いけない立場にいる男だけにその言葉は信じるに値すると思っています。
…すると、各紙ともに、この分野に詳しい優秀な記者が送り込まれているはずの会見場で、
なぜ、そのときまでプルトニウムのプの字も出なかったのかが不思議でなりません。
上杉は、「大きなスポンサーである東電に対して口をつぐんでいる」と主張していますが、
30年40年前ならともかく、さすがに、それはないでしょう。“ジャーナリズム”としての
自分の首を絞めることになるのですから。

知りたいのは、“泣かせる話”ではありません。
“売らんかな”精神に基づいたあおり記事でもありません。
“事実”こそ、私たちが知りたいことです。少なくとも、事実に可能な限り近いこと…。

おまけ1:カズのゴール!

GKのロング・キックが闘利王の頭に届きそうだと見た瞬間、カズは、迷う気配もなく、
ゴール前に向かって走っていました。
闘利王のヘッドで目の前に落ちたボールを完全にコントロールした彼は、出てくる
ゴールキーパーの肩口を抜いて鮮やかにネットを揺らしました。
ストライカーの本能は全く衰えていないようです。
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今の彼には全盛時代の数倍の魅力を感じます。
1週間ほど前、「生きるための明るさを 三浦知良・サッカー人として」と題され、
日本経済新聞に載った彼のコラムは、サッカー人としてだけでなく、人として
見事でした。特に、そのバランス感覚が…。
胸にしみたのは、この部分でした。 http://s.nikkei.com/glWAp9

…そうした人々にサッカーで力を与えられるとは思えない。むしろ逆だ。
身を削る思いで必死に生きる方々、命をかけて仕事に当たる皆さんから、
僕のほうが勇気をもらっているのだから。


おまけ2:カルガモのカップル

今月2日に管理人さんが「来てましたよ」と知らせてくれましたが、
私自身はその後も見かけませんでした。
今朝、新聞を取って家に戻るとき、池が視界に入るところまでくると
何か動くものがありました。
池の中と周辺の茂みをかなり刈り込んでしまったために、2日の下見で、
「これじゃ、ダメね」と判断されたと思っていましたが、来てくれたのです。
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ただし、去年までのカップルにくらべると、少し若いような気がします。
例年のカップルは、人が通っても悠然としていましたが、今日は、どこか
落ち着きがなく、2,3分後に飛び立って行きました。
カルガモの生態はよく知りませんが、違う個体だとすると、どのように
この池のことが伝えられるのか…不思議です。

果たして、今年もヒナがかえるのでしょうか。
by toruiwa2010 | 2011-03-30 10:51 | 岩佐徹的考察 | Comments(8)
Commented by えそらいろ at 2011-03-30 14:04 x
こんにちは

阪神大震災のこの写真の風景、今回の津波が何もかも壊しさらっていった光景を見て、
これは現実なのかと目を疑いたくなるような現実に、息を呑み、言葉を失う状況で、
思わず出てしまった「温泉みたい」や「見晴らしがいい」については
私はそれ程嫌な感じはしません。
もし隣にいたら、真顔で「そうだね…」と応えてしまいそうな…

一方、「もっと泣ける話は」の姿勢には強い嫌悪感を感じます。
昨日のお話ではありませんが、人の死や悲しみ・苦しみに対して感覚が麻痺してしまうのも怖いことです。

テレビ・新聞は事実を伝えようとしているのでしょう(と思いたいです)が、嘘も真実も、誇張も矮小も入り混じってしまい、受け手の側は、何が事実なのか、見分けることが難しくなってしまっている気がします。

おまけ1:カズさんのコラム、心に響きました。
おまけ2:久しぶりのカルガモちゃんの写真に少し癒されました。
     "カルガモ日誌"は好きな話題のひとつです。
Commented by toruiwa2010 at 2011-03-30 14:38
えそらいろサン、こんにちは。

その通りでしょうね。
皆さんにはメディアを責める権利があるでしょうが、
その前に見るか見ないかを決める自由もあるはずです。
見分ける力をつけるべきでしょうね。
そんなに難しいことではないし。
Commented by yukky528 at 2011-03-30 23:54 x
アナウンサーも人間ですから、アドレナリンが大量に出れば思わぬ言葉が口から滑り出ることもあるでしょう。

ところで、さきほど、ニュースジャパンで、35年前の東京電力の広報誌に「原子力発電は地震でも安心です」と書かれていることを、皮肉っていましたが、これについては少し違和感あるかな。これも“よそとは違うネタ”を探してのことでしょうか。

その頃は、国も企業も東海地震にはすごく警戒をしていたけど、このような大津波が発生する地震は想定していなかったんじゃないかな。

今回、国も東電の初期対応も良くなかったとは思いますが、これから先のことに目を向けなくてはいけない今、そんな昔のことを引っ張り出して言わなくても・・・って思うのですが、どうですか?

ちょっと政治家が不謹慎な言葉を口走ったとかなんとかと同じレベルのように、東電だけを批判したりするのではなく、これからみんなで日本を良くするために、前向きにどうするべきかというような情報のほうが欲しいな。

明るいネタ=カルガモbaby誕生! するといいな。
Commented by toruiwa2010 at 2011-03-31 07:33
yukky528 サン、おはようございます。
35年前…1号機と2号機ぐらいしかなかった時代ですから
違和感があるのも頷けます。
ただ、これからのことを考える上で、“これまで”を
検証することには大きな意味があると思います。
Commented by blue_ec at 2011-03-31 09:14 x
岩佐さん、おはようございます。

メディアも視聴率や販売数を競う以上、稀少性が高く、感傷に訴える報道が優先
されるのは仕方がないと思います。そうしたやり方がずっと続いているのは、それ
が結果を出しているからですよね。

結局我々視聴者の多くが拒絶すれば、すぐにこの風潮は変わると思います。
それが難しいんでしょうけれど(笑)
Commented by toruiwa2010 at 2011-03-31 09:39
blue_ec サン、おはようございます。
“抵抗“があるかもしれませんが、
間もなく更新する今日の記事も
読んでみてください。
Commented by 瀬戸の生ガキ at 2011-04-05 23:32 x
こんばんは岩佐さん。

人として「浅くならない」 手本や見本があるからと「楽におわらせない」
岩佐さんの所で色々教わります。
 
読むのにおくれていますが 又来ます。
Commented by toruiwa2010 at 2011-04-06 07:18
瀬戸の生ガキさん、おはようございます。

読むのに苦労されていると思います。すみません。
推敲するときに、「なんて長いんだ」と思いますから。
ハハハ。
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