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岩佐徹のOFF-MIKE

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Archives「CHOKEについて考える~肝心なときにいつも…~」   11/04/23

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実況中に困ることの一つに、外国語を日本語に置き換える作業があります。
単語一つでズバッと言いきっている現象をいざ、日本語にしようとすると、
どうしてもだらだらと長くなってしまうことがしばしばでした。
主にアメリカで使われようですが、“choke”、“choker”もその一つです。
“のど(言葉)がつまる”、“窒息する”、“…人”という意味ですが、場面に
ぴったりする日本語がなくて困ったものです。
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0063「CHOKEについて考える」(2005.05)


アスリートが一番言われたくないのは“He's a choker”ではないでしょうか。
プレッシャーのかかる場面になると、どうしても力を発揮できない選手(チーム)がいます。
一度ならともかく、何度も重なれば「あいつは肝心のときにビビるからなあ」と言われて
しまいます。名誉なことではありません。これがチョークです。

テレビも含めて実際に見た中では1993年のウインブルドンが強く印象に残っています。

女子決勝、シュテフィ・グラフvsヤナ・ノボトナ戦は第1セットこそタイブレークの末
グラフが取りましたが、ノボトナは次の12ゲームのうち10ゲームを取って67/61/41と
圧倒的な優位に立って終盤を迎えました。
第6ゲームはノボトナのサーブで40-30、つまり次のポイントを取れば、51になって、
サーブ&ボレーの彼女が夢に見てきた、ウインブルドンの初優勝に王手がかかるのです。
それは、彼女にとって初めてのグランドスラム、タイトルになるはずでした。

しかし、以後、ノボトナは1ゲームも奪うことが出来ませんでした!いくら、対戦成績が
3勝17敗と苦手のグラフが相手といっても、考えにくい展開でした。
この試合を、「20世紀最大のCHOKE」と呼ぶ人もいます。
セレモニーで、ケント公夫人の肩に顔をうずめてすすり泣くノボトナを覚えている方は
多いはずです。この試合を思い出すたびに、勝負の恐さ、勝つことの難しさを思います。
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彼女のCHOKEは更に続きました。
1995年全仏3回戦は67/64/50、相手のサーブで0-40からなんと九つのマッチポイントを
逃がして逆転負け! 
続くウインブルドンSF(vsグラフ)では、第3セットでサーブを5本連続フォルトするなど
あり得ない内容で敗退!
更に、97年ウインブルドン決勝(vsヒンギス)でも、ファイナル2-0から逆転されました。
私たちが救われるのは、彼女が1998年のウインブルドンでとうとう優勝したからです。
それも、QFでビーナス、SFではヒンギスを破ったのですから立派なものです。

勝負どころで緊張してしまう。その気持ちが伝わって体が動かなくなったアスリートを
これまで何度となく見てきました。
キャリアが浅く実力が低いときなら、力さえ備われば脱却できるでしょうが、問題なのは
かなり力をつけてからこの現象が出てくるときです。
いちどCHOKERのレッテルを貼られると、次はそれがプレッシャーになって、ますます
体が動かない…という悪循環になります。取り付かれると厄介な“病気”です。

1978年のボストン・レッドソックスはオール・スターを過ぎても、2位に14.5ゲームの
大差をつけていたにもかかわらず、ヤンキースに逆転されました。
日本でも、1963年の南海ホークスが14ゲーム差をひっくり返されて西鉄ライオンズに
優勝を持っていかれたことがあります。

1996年のマスターズ・ゴルフ最終日、2位を6打リードしていたグレッグ・ノーマンは
“自滅”して ニック・ファルドに逆転されました。オーガスタの歴史に残るCHOKEです。
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さらに、1999年のチャンピオンズ・リーグ決勝ではロスタイムに2点を失ったバイエルン・
ミュンヘンがマンチェスター・ユナイテッドに目の前のビッグ・イヤーをさらわれています。

世界選手権では無敵なのにオリンピックでは勝てなかったスピード・スケートの鈴木恵一。
綱とりの場所になると、とたんに情けない相撲になる魁皇。
大きな期待を背負ってオリンピックに出ても、自己記録さえ出せないで帰ってきた一時の
水泳や陸上の日本代表たち…挙げはじめたらキリがありません。

応援している選手(チーム)がこの中に入っていたらごめんなさい。
お断りするまでもなく、みんな一生懸命なのは分かっています。
しかし、ここというときに何度か期待を裏切られると、お気楽なマスコミや観客は情け
容赦なく、このレッテルを持ち出してくるのです。
アテネで意外な負け方をした井上康生や、勝利目前で急ブレーキがかかって大きな獲物を
逃がすモレスモーをチョーカーと呼ぶかどうかは、人によって答えが違うでしょう。

まあ、ダバディが全仏優勝候補の中に名前を挙げてるようなのでとりあえずモレスモーは
はずしときますか。放送でもチーム・ワークは大事ですからね。ハハハ。

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by toruiwa2010 | 2011-04-23 09:03 | スポーツ全般 | Comments(8)
Commented by レニ at 2011-04-23 12:03 x
こんにちは。

あの日のノボトナには、グラフファンの私でも目を覆いたくなりました。
「こうなると最初からわかっていた」と言いたげに淡々とポイントを取り返していくグラフの凄味とともに忘れがたい試合です。
スピードスケートのダン・ジャンセンも、リレハンメルの1000mで勝つまではひどかった……。
Commented by toruiwa2010 at 2011-04-23 12:12
レニさん、こんにちは。

確かに、本当に強い選手が逆転するとき
“予定されていた”感がありますね。
Commented by 老・ましゃこ at 2011-04-23 14:12 x
ケント公夫人の姿…懐かしいですね。
Commented by toruiwa2010 at 2011-04-23 14:37
老・ましゃこサン、こんにちは。

このところ表彰式にも顔を見せませんね。
Commented by akapon at 2011-04-23 16:16 x
岩佐さん、こんにちは。
プロレスのチョークスリーパーと同じ意味のCHOKEでしょうかw?
当時の私はグラフの底知れぬ強さに驚きでした。
(サンプラスも強かったですが、アガシの危うさ?!にも惹かれてました)

ここ一番!この試合が文字通りの決戦!脚が、ヒザが震えるあのワクワク感!
それがドキドキとプレッシャーに感じてしまうようではダメなんでしょうね。
これを読んで長嶋さんの明るさ、前向きさを思い出しました。(しかし長嶋さんはプレッシャーとどう闘っていたのでしょうか?)

日本柔道が五輪で常に「金メダル」絶対獲得!の期待を背負わされ、それが
銀や銅であっても非難されるような環境でも淡々と金メダルを取る(ように見える)
選手の準備たるやどれほどの重圧と闘っているのだろうかと思います。
Commented by toruiwa2010 at 2011-04-23 16:28
akapon さん、こんにちは。

猛烈なプレッシャーがかかる場面で
いいプレーをする…それこそ超一流の条件でしょうね。

チョークスリーパーは首を絞めるのでしょうから
まさに同じ意味です。
choke はバットを短めに持つときなどにも使います。
Commented by shin555 at 2011-04-23 21:22 x
ケント公夫人とノボトナのシーンは忘れられません。
98年のウィンブルドンで私たちも救われる・・・まさに同感です♪
Commented by toruiwa2010 at 2011-04-23 21:37
shin555 さん、こんばんは。

救われた、と書いたことに偽りはないのですが、
私の中で、彼女は最後まで“チョーカー”でした。
リードしていても「でも、私、きっとどこかで
逆転されるんだわ」…
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