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岩佐徹のOFF-MIKE

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「変わった・変わらない…~メジャーの周辺から~」11/05/19

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少し前になりますが、ドジャースの試合を見ていると、翌日 先発予定の黒田がガムを
噛みながらチームメイトに声援を送っている姿が映りました。
おかしいな、と思いました。

私がメジャーを取材していた当時(30年前)、翌日の先発ピッチャーはダグアウトの一番
キャッチャー寄りのところでスコアをつけていたものです。相手ピッチャーの攻め方や
バッターの弱点などを記録し、翌日の試合に役立てていたのです。
黒田は明らかにこの作業をやっていませんでした。システムが変わったのだと思いました。

…だとすると、今は誰がスコアをつけているのだろうか?
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こういう疑問は解決しないままにしておけない性格です。ハハハ。
さっそく、問い合わせてみることにしました。
今回は3球団にメールを出しましたが、回答があったのはアストロズだけでした。
とても丁寧に、問い合わせたことすべてに答えてくれました。

私が黒田を見て抱いた最初の疑問はあっさり解決しました。
30年前とは段違いのレベルにあるコンピューターの存在をすっかり忘れていました。
必要とするすべてのデータは“スカウティング・リポート”が提供しているようです。
詳しいことは分かりませんが、たぶん、30球団が出資して作った組織がすべての試合の
1球ごとの分析を行い、データ化しているのだと思います。
日本と違って国土が広いアメリカでは、ドラフト用の情報・データの収集なども各球団が
個別にやっていたら経費がかさみます。一つの組織が一括して情報を集め、それを一律に
分配することで経費を抑える…考え方が合理的です。

このやりかたなら、黒田がスコアをつける必要はありませんし、得られる情報もはるかに
詳しいものになりますね。

メールでは、ついでに、二つの質問をぶつけました。

一つは、ロースターの登録人数についてです。
25人に決まってるじゃないか…ですか?ええ、まあ、そうですけど、そうでもないんです。
ハハハ。

私が取材した1970年代後半は、ようやく100万ドル・プレーヤーが生まれ始めたころです。
それでも球団の経営を圧迫していました。すくなくとも、球団はそう主張していました。
ハハハ。
そこでオーナーたちが考え出したのが“メジャーの登録枠を24人に”でした。
1人減らすと、旅費・宿泊代などで、年間相当の金額が節約できるという説明でした。
ああ、日本より一人少なかったんだ…と思いますか? 違うんですよ。

確かに、日本は25人ですが、からくりがあって、1軍登録は28人まで許されています。
“28人登録の25人ベンチ入り”が日本プロ野球のやり方です。普通は、前日と翌日、
翌々日の先発ピッチャーがベンチから外れます。“上がり”と呼んでします。
メジャーには、その“上がり”はいません。翌日の先発ピッチャーが試合予定地に先乗り
することはたまにありますが、基本的に、メジャー登録の25人は毎日ベンチに入ります。
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先日、松坂がリリーフ登板して話題になりましたが、限られた人数で延長回数無制限の
試合を戦うのですから、ピッチャーといえども、いろいろな役割で駆り出されます。
「なれないリリーフで気の毒だった」とおバカなコメントをする解説者やキャスターが
いましたが、冗談もほどほどにしてほしいものです。
長い試合になれば、代走に出ることもありますし、外野を守ることだってあります。
松坂は“ピッチャーとして”試合に出たのですから、まだいいほうです。ハハハ。

選手会の何代目かの会長にマービン・ミラーという男がいました。
彼こそメジャーの選手会を世界でも1,2位と言われるほど強力な労働組合にした男ですが、
彼のリーダーシップのもと、1990年以後は特別のときを除いて“25-man roster”は不動の
ものとなっているそうです。

1979年7月13日のアナハイム・スタジアム。
地元エンゼルスのエース、ノーラン・ライアンがヤンキースを相手に5回目のノーヒット・
ノーランをめざして力投していた。しかし、8回にヤンキースのスペンサーが放った打球は
センターを襲い、リック・ミラーが地上寸前で捕り損ね、はじいてしまった。
記者席で見ていた私にはヒットに見えた。
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しかし、この日 公式記録員だったヘラルド・エグザミナー紙のディック・ミラー記者は
“E, eight”(センターのエラー)と記者席に告げ、スコアボードにも「E-8」と表示された。
打ったスペンサーはベース上で記者席をにらむし、ヤンキースのダグアウトからは数人の
選手やコーチがとびだして抗議のゼスチャーを見せた。
ミラー記者は全く動じる気配を見せなかった。「ルールブックには確かに、疑わしいときは
打者に有利にとあるが、こういう“記録”がかかっている場合は投手有利であるべきだし、
記録を破るにはクリーンヒットが望ましいのだ」と。

9回にジャクソンがそのクリーンヒットを打って、ライアンは7回目の1安打ピッチングに
終わったのだが、翌日のニューヨークの新聞は「あんなことで記録を達成できたとして、
ライアンは喜んだろうか?」という論調だったし、それを転載したロスの新聞はその横に
「なに、ニューヨークでギドリー(ヤンキースのエース)が投げていたら、やっぱりエラーと
記録されるさ」というエンゼルス監督の談話をのせていた。
誰にも言い分はあるものだと苦笑するばかりだった。
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実は、この騒ぎには一ヶ月ほど前に逆のケースで伏線が張られていたのだ。
6月3日、ピッツバーグのスリーリバー・スタジアムで、パイレーツのキーソン投手は
8回2死まで相手のパドレスにヒットを許さなかったが、とうとうエバンスにサードの
ガーナーを強襲された。

この日のスコアラー、ピッツバーグ・プレスのダン・ドノバン記者は、迷わずヒットと
判定した。試合後のロッカー・ルームでドノバン記者をみつけたキーソンは大勢の前で、
「オレにとっては一生に一度のチャンスだった。エラーにも見えたじゃないか。
地元なのに、あの判定はなんだ」とかみついた。
翌日のプレス紙は、スポーツ面に社としての見解を記した上で、「以後、本紙の記者は、
公式記録員を引き受けない」と声明したのである。

1979年、ベースボール・マガジン誌に頼まれて書いた記事の一部です。

当ブログにはこのときの経験も踏まえつつ、「メジャーには公式記録員がいない。記者が
代行している」と何度か書いてきました。
30年前のことだから、これも変わっているかもしれないと思い、質問の中に加えました。
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…変わっていないそうです。
3~4人の記者が交代でやっているようです。
「MLBを代表しているのだから地元びいきになることはない」と担当者は書いていますが、
うーん、イチローの“内野安打”などを見ていると、こればかりは、言葉通りに受け取る
わけにはいきません。ていねいな回答には感謝していますが。ハハハ。

30年のときを経て、変わったものも変わらないものもあります。
少しずつ書いて行こうと思います。「大した情報ではない」という人もいるでしょうが、
知った上で見ると楽しみが増えるかもしれません。参考になれば幸いです。

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by toruiwa2010 | 2011-05-19 08:22 | メジャー&野球全般 | Comments(11)
Commented by ysphoto at 2011-05-19 09:01 x
岩佐さん、おはようございます。
有益な情報ありがとうございます。
野球に限らずスポーツ全般に言えるのですが、これだけコンピュータ
が発達し映像記録の解析が進んだ時代になっても審判や記録が
人間の目が行うと行ったきわめてアナログ的な手法が未だとられています。
でも、それがドラマを生んだりいろんな見解を生む。きわめて楽しいじゃないですか!
岩佐さんの記事を見てそんな事を感じました。
Commented by toruiwa2010 at 2011-05-19 09:10
ysphotoサン、おはようございます。

human errorもゲームのうちと考える
一流アスリートは多いですね。
Commented by マオパパ at 2011-05-19 09:52 x
岩佐さん、こんにちは。今日は楽しい話題でウキウキです。岩佐さんの手記が掲載されたべーマガの雑誌を所有しています。当時、うらやましく思いながら読んだ記憶があります。べーマガの雑誌といえば、大リーグ黄金の80年代という雑誌が今発行されています。岩佐さんにとっては70年代後半が黄金の時代かもしれませんが、私にとってはまさしく黄金時代、青春そのものです。
フジテレビが放送を中止し、日テレがワールドシーリズのみ放送、NHK
BSの黎明期がこの時期にあたります。スポーティングニュースを購読したり、FENでメジャーの中継を聞いたりしたことを思い出します。情報の入手が難しかったあの頃がなつかしいです。
Commented by ひろ☆はっぴ at 2011-05-19 10:39 x
昨夜のB'svsT@京セラドームのABCテレビでの中継で貴重な話が聞けましたのでご披露致します。解説は矢野輝弘さん、ゲストに野茂英雄さんという大阪人同期生コンビでした。

ふとしたゲームの合間にメジャーリーグの話になり、ロースター25人枠の話の中で「あがりっていうのは無い方がいいですね。チームとして一緒に戦っているという感じが無くなる」と野茂さんが話していました。矢野さんも「ちゃんと見といて欲しいよね」と同感とのことでした。ボールとストライクの順序を変えたのですから、次はこの点も日本のプロ野球が見直すべきことではないでしょうか。

おそらく関西以外の方々はご存じないでしょうが、野茂さんは野球に関しては饒舌なお方です。昨夜も「年に何回聞けるやろうか?」というぐらい、よくしゃべっていらっしゃいましたbyひろ☆はっぴ
Commented by akapon at 2011-05-19 13:08 x
岩佐さん、こんにちは。
今日の記事、参考になりまた興味深かったです!
コンピューターでの分析・解析、野球という競技にはもってこいでしょうね。
ま、それをもってお互いイーブンかもしれませんが・・・
野球はもとよりサッカーでも誰がどう動いてパスがどうなったとかのデータが細かくて
選手も消化して活かすのが大変でしょうね。

メジャーで投手が代走や外野を守るのは延長無制限だから仕方の無いことで
まったく普通の事と思っていますが、常に25人で戦う!の姿勢は好きです。

公式記録員も粋な計らいを?するのでしょうか。時に野暮なことも??w
Commented by toruiwa2010 at 2011-05-19 13:53
マオパパさん、こんにちは。

人によって“黄金時代”は違ってくるでしょうね。
少なくとも、80年代半ばぐらいから、いわゆる
個性的なメジャー・リーガーは減ってきたと思います。
いても、小粒になりました。
Commented by toruiwa2010 at 2011-05-19 13:57
akaponさん、こんにちは。

無用の金は使わないで出所が同じ
データを使って正面からぶつかり合う…
その潔さが好きですね。
日本プロ野球のドラフトでときどき
隠し玉がいますが、笑っちゃいます。

くどいようですが、イチローの内野安打の判定が
甘いことに、天を仰ぐことが年に何度かあります。
ハハハ。
Commented by toruiwa2010 at 2011-05-19 13:58
ひろ☆はっぴサン、こんにちは。
いつも、貴重な話をありがとうございます。
Commented by ヤップンヤン at 2011-05-19 16:46 x
岩佐さんのこういったエピソード好きです。
テニスの中継のときも、こういった話を盛り込んだ実況をしてくれていたので、楽しく放送を見ていたのを覚えています。

プライベートでスポーツを鑑賞している有名人がカメラに捉えられてアップで映されているとき、岩佐さんはできるだけ誰か紹介しようとしていたことも覚えています。逆に言うと、こういう人たちを紹介しないと「何でアナウンサーは紹介しないんだろう?」「あ、だれのことか知らないんだぁ」「調べきれなかったんだぁ」っと勝手に思ってました(笑)。

いずれにしましても、岩佐さんのこういうネタ、楽しみにしています。
Commented by toruiwa2010 at 2011-05-19 17:16
ヤップンヤン サン、こんばんは。

間違ってもいいから「…かな」でも
言うと違うんですけどね。
最悪なのは気付かなかったふり…、ハハハ。
Commented by ヤップンヤン at 2011-05-19 17:49 x
WOWOWSなのかテレ東なのかも、かなり前なので忘れましたが、全仏オープンの中継で、当時F1フェラーリチームの監督のジャン・トッド(フランス人で、現FIAの会長。ボンドガールも勤めたミシェール・ヨーの旦那)は毎年全仏を観戦していて、毎年アップにされるのですが、毎年スルーされてました。きっとアナウンサーには単なる一人の熱心にテニスを観るおっさんに見えたのでしょうね(笑)。
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