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岩佐徹のOFF-MIKE

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人生の哀歓「木洩れ日の家で」~6月に見た9本~ 11/07/06

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6月は9本を劇場で見ましたが、個人的に一番好きなのは
「木洩れ日の家で」でした。ある程度の年齢でなければ、
よさが伝わらないと判断して評価は80点としました。
しかし、これはあくまで私のレビューだから誰にも遠慮を
する必要はないのだと、“いまさら”なことを思い出して
素直に評価し直しました。
…で、6月の推奨作品は「木洩れ日…」とします。
また、あまり知られていない「軽蔑」は拾いものでした。


「マイ・バック・ページ」75

週刊東都の記者、沢田(妻夫木聡)は理想に燃える若いジャーナリストだった。
1969年1月、東大・安田講堂の封鎖解除のあと 70年の日米安保改定に反対する労働者や
学生の反対運動が激しさを増す中、先輩記者とともに取材に打ち込んでいた。
そんな彼らのところに、梅山と名乗る活動家(松山ケンイチ)が接触してきた…
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大学に入ったのは1959年でした。ちょうど60年安保改定に反対を叫ぶ学生運動がとても
盛り上がっている時期とぴったり重なります。しかし、もともと、イデオロギーを持たず、
大学も慶応でしたから、環境的にも学生運動には縁がありませんでした。ごく典型的な
“ノンポリ”と言ってよかったと思います。
逆に、東大、早稲田、明治、法政…運動が盛んだった大学に進んでいたら、穏やかな
今の性格も随分違ったものになっていたことでしょう。ハハハ。

フジテレビ入社後、アナウンス部の幹部からは「スポーツ・アナとして頑張るように」と
言われていたし、自分もそのつもりでした。しかし、放送開始5年目で、資本系列が同じ
ニッポン放送・文化放送から移籍してきた人たちを中心に構成されていたフジテレビの
アナウンス部はとにかく数が足りません。若い私もスポーツだけを勉強していればいいと
いうわけにはいかず、いろいろな仕事に駆り出されたものです。

その中で、リポートが報道部のディレクターの“お眼鏡”にかなったのか、事件・事故が
起きるたびに、よく声がかりました。
東京のテレビ各局は、まさにこの物語の“時代”だった1970年前後は、少しでも大規模な
デモ計画の情報が漏れてくると、小型の中継車を出したものです。
金網つきの防弾ガラスを張ったジープのような中継車の上にカメラが1台とヘルメットを
かぶったカメラマンが乗っています。アナウンサーはマイクを持たされて20~30メートル
前方に出されるのです!その前では機動隊が、向かってくるデモ隊と対峙していました。

安全距離はとっているつもりでも、流れ弾、つまり、学生が投げる石が近くに落下する
ようになると、後方の中継車からディレクターが叫びます。
「岩佐ちゃん、もう少し下がろうか」
…自分は車の中にいてノンビリしたことを言うな! ハハハ。
ヘルメットを抑えながら、前に出たり下がったりした日々でした。

さて、そんな若いころを思い出しながらこの映画を見ました。
WOWOWが制作にからんでいる作品なので、できることならほめたいところです。ハハハ。
しかし、残念ながら、高い評価はできません。
監督も脚本家も生まれる前の話ですから難しいのは分かります。にしても、時代の空気が
感じられません。予算の関係だと思いますが、大規模なデモのシーンやリーダーたちが
今思えば“誇大妄想”に近い内容のアジ演説をするところをきちんと描けなかったのが
致命的かもしれません。第三者がどう思おうと、デモや演絶がもたらす高揚感と仲間との
議論から生まれる熱気が学生たちを“何か”に駆り立てて行ったと思うからです。

当時を知る者は、頭の中で補って見るからいいですが、若い人が見たら、なぜ、彼らが
こんな行動に出るのかを理解できないまま見続けることになります。
学生側から見れば流れの中で起きた“自衛隊朝霞駐屯地襲撃事件”も、若い観客たちには
いかにも“唐突”と映ったのではないでしょうか。

「行くんだよ。自分の信じた道を」と、先輩が沢田に投げかけるセリフが典型的ですが、
活動家や新聞記者の描き方があまりにも“類型的”なのも気になりました。
ただ、妻夫木と松山はいい演技だったと思います。
前者は計算された演技、後者は自然体の演技に見えました。ともによかったです。
妻夫木は「悪人」で一つの壁を突き破ったようですね。テレビで松山が誉めていましたが、
終わりに近いところで、数年ぶりに取材対象だった男と偶然 出会い、過去を振り返って
「俺はどこで間違ったのだろうか」と、感情が激して泣く場面がいいです。
いつも、こんなに“濃い”演技をされたら疲れそうですが。ハハハ。


「木洩れ日の家で」80

町のクリニックを訪ねたのはアニェラだった。
虫の居所が悪かったのか、診察室に迎え入れた女医は挨拶もなしにいきなり「脱いで、
横になって」とぞんざいな口調で言った。
「ふざけないでちょうだい!」…切れたアニェラは診察室を飛び出した。
郊外の一軒家に戻ると、愛犬・フィラが駆け寄ってきた。91歳の彼女は戦前に建てられた
木造の二階家にフィラと“二人で”暮らしているのだ。

愛情を注いで育てたつもりの息子にガッカリさせられ、金にものを言わせて敷地を狙う
隣人の動きに神経をとがらせる忙しい毎日だった…
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若い人には絶対向いていないと思います。ハハハ。
この、淡々とした、それでいて“心豊かな人生”を送る老女に共感するには、見る側にも
それなりの人生経験が求められるでしょう。
「わが人生に悔いなし」なんて嘘っぱちです。少なくとも 私には山ほどあります。ハハハ。

91年も生きてきたアニェラにも悔いることはいろいろあったに違いありません。しかし、
おだやかに最後のときを迎えようとする彼女に拍手を送りたい気持ちになる作品です。
エピソードの数の割には長すぎます。15分ほど短くするか、あと二つぐらいエピソードを
加えて物語を動かさないと、ダレてしまいます。偉そうですが。ハハハ。

アニェラを演じるダヌタ・シャフラルスカはポーランドの伝説的な名女優だそうですが、
そんな情報は必要ありません。制作者である夫のカメラがとらえたモノクロームの映像は
限りなく美しく、彼女の立ち居振る舞い、たたずまいすべてに気品があって素晴らしいです。

典型的な“岩波ホール向き”の作品です。
「平日よりむしろ土・日のほうがすいています」と言われましたが、なかなか機会がなく、
上映終了が迫ったあるウイークデー、意を決して妻を誘って出かけました。
多少込んでいてもかまわないとおもっていましたが、予定時間の50分前に切符売り場に
着くと、なんと、「1回目のチケットは完売しました」という張り紙が…。
予告編を見たときから絶対見ると決めていた作品ですから、心底 ガッカリしました。

しかし、後日、再上映の予定を問い合わせると「予定はありません。新宿武蔵野館さんで
11日からやるようですよ」と、飛びきり嬉しい情報を教えてくれました。
それを早く言わんかい!!ハハハ。


「軽蔑」85

カズ(高良健吾)が仲間と歌舞伎町の“クラブ”を襲った。そこを舞台にした野球とばくで
カズは多額の借金を背負っていた。兄貴分から「あいつらは組を通さずにやってるんだ。
襲ったら、お前の借金はチャラにしてやる」とそそのかされたのだ。
店内をめちゃくちゃに破壊したカズは言われた通り高跳びを図る。
一人ではなく、店の花形ポールルダンサー、真知子(鈴木杏)の手をひいていた。
落ち着いた先は海辺の町、そこはカズの故郷だった。
いきなり女づれで舞い戻った息子に戸惑いつつ、不動産業などを手広く営む父親は2人に
マンションの一室を提供した。

仕事も見つかり、2人にとっては満ち足りた生活がスタートしたはずだったが…
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監督の狙いなのでしょうが、ラストカットの切れ方などは乱暴すぎて違和感がありました。
意図的に“手荒い”編集を選択していると思います。それでも、ラスト以外については、
不快ではありませんでした。72歳の年寄りですが、むしろ心地よいと感じました。ハハハ。

高良健吾は今売り出し中らしい存在感を見せています。どんな作品に出てもきらっと光る
ところを見せるのは大したものです。多くの人がそう思うでしょうが、目に力を感じます。
ひときわよかったのは初めて見た女優、鈴木杏の腹の据わった演技です。ほかの作品で
主役が獲れるかと聞かれれば難しいですが、ものによっては…

主役二人を除く俳優たち、大森南朋、小林薫、根岸季依、緑摩子…一筋縄ではいかない
顔ぶれを見ると、監督の“こだわり”が分かろうというものです。ハハハ。
短いカットをつなぎ合わせるのではなく、“長回し”の多い撮り方ですが、俳優たちが
立派に答えていると思いました。

評価は悩みましたが、俳優たちのこの作品への打ち込み方に惚れました。
少なくとも、同じハードボイルドでも、監督の“名声”が先行した「アウトレイジ」より
はるかにレベルが上の映画です。

70 星守る犬 リストラですべてを失った男と愛犬の旅 ハンカチを用意したが一滴も…
75 アリス・クリードの失踪 冒頭の十数分はテンポがあってOK…以後、ダレてしまった
85 軽蔑 役者たちの本気度が伝わって拾いものだった 長回しの演技でも見せていた
85 木洩れ日の家で 91歳の女優をきれいに撮ったモノクローム映像 心にしみる一作だ
60 ゲンスブールと女たち どうにもならなくて40分でギブ 本年初の途中退場作品
70 愛に勝利を ムッソリーニを一途に愛した女の絶望的な人生 わからん映画だった
75 マイ・バック・ページ 時代の空気が描けていないのが残念 妻夫木・松山はがんばった
75 プリンセス・トヨトミ リアリティがなさすぎる 綾瀬が生かされていないのも不満
75 アジャストメント 上院議員選挙で敗れた男にさらなる災難… 運命が調整されていた

あとで、「上半期のランキング」を更新する予定です。


落合がナゴヤドームで行われる球宴第1戦の先発に
中日のクローザー・岩瀬を起用するという。
発想が素晴らしい。メディアには評判が悪いらしいが、
この男の、監督としての評価までが低いのは日本野球の
レベルそのものが低いことを示していることにそろそろ
気づくべきだ。


お昼ごろ、こうつぶやいたところ、ドラゴンズ・ファンを中心に数十回リツイートされました。
落合についてはいろいろ書きました。古い記事のURLを貼ってみたのですが、新たに
60~70人の方が読んでくれました。嬉しい限りです。

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by toruiwa2010 | 2011-07-06 07:40 | 映画が好き | Comments(2)
Commented by colfaxcove at 2011-07-06 09:35 x
こんにちは!
いつも岩佐さんの映画評楽しみにしています。
キーラ・ナイトレイの「わたしを離さないで」も・・・不思議でおもしろかったですよ!
原題が・・・タイムリーな「never let me go」です。
金曜日まで下高井戸シネマでやってますよ!
Commented by toruiwa2010 at 2011-07-06 09:44
colfaxcoveサン、こんにちは。
少しでも参考になれば幸いです。
ジェネレーション・ギャップに気をつけてください。ハハハ。

「わたいを・・・」は見る予定にしていた映画ですが
タイミングが合わず、あきらめていたのです。
明日か明後日で考えてみます。情報、ありがとうございました。
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