ブログトップ | ログイン

岩佐徹のOFF-MIKE

toruiwa.exblog.jp

実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

Archives「Top player のイメージとは?~テニス:質問に答えて~」 11/07/17

d0164636_8105250.jpg
2003年からHPなるものを始めました。
当時はまだ“ブログ”という言葉はありませんでした。
テニスに関する記事が多かったせいか、掲示板(BBS)に
“読者”から質問を寄せられることがありました。

「トップ・プレーヤーのイメージ」2004.05.25


高ーいトス。曲げた両膝がすーっと伸びて脚がコートを離れる。振り下ろすラケットの
スイート・スポットがボールをとらえた。わずかにネットに触れて「レット」。
さっと振り向いた彼女は、右後方のボール・パーソンから次のボールをもらうと、すぐに
サーブの構えに入る…。
d0164636_811928.jpg
シュテフィ・グラフの動きにはムダが一切なかったように思います。
試合前も、自分のチェアに到着し、ウインド・ブレーカーを脱ぎ、バッグからラケットを
一本取り出したら、もう準備完了でした。

BBSで、「トップ・プレーヤーのイメージとはどんなものか?」とおたずねがあったとき、
真っ先に頭に浮かんだのはグラフでしたが、その先、どう続けるか、とても難しいのです。

欧米のテレビでスポーツ中継を見ていると、両者の長所短所を比較することがあります。
テニスで言えば、サーブ、レシーブ、コート・カバーリング…それぞれについて、二人の
力を比べ、優位なほうにしるしがつけてあります。
最後に“intangible”という項目が出てくることがあり、これがまた厄介なのです。ハハハ。

辞書を引くと「触れることができない」「実体のない」などとなっていますが、これでは
意味が通じません。私は「いわく言いがたい部分」と訳してお話しすることにしています。
そして、このintangibleで、グラフを上回る選手はいませんでした。全盛期のセレスは
甲乙つけがたかったかもしれませんが。

「トップ・プレーヤー」…ランキング10位以内の選手や、かつてN01だった選手など、
かなりの数の選手がそのカテゴリにあてはまるでしょう。
しかし、ここでお話しているのは、むしろ“超一流”。私にとっては、3人しかいません。
グラフと並ぶのは、サンプラスとアガシです。
彼らはコートに入ってきたときから、雰囲気がちがいます。「オーラ」というのでしょうか?
彼らが姿を現すと、ざわついていたスタンドもたちまち静まり返り、放送席の私たちの
背筋も思わず伸びてしまう、そんな独特のものがありました。観客や私たちには、彼らの
実績に対する敬意があり、感謝があるからこそでしょう。それが、彼らが放つオーラと
重なって、私たちをコート上のプレーにひきつけてやまないのだろうと思います。

サンプラスは史上最年少で全米のタイトルを取りました。
No1の座はクーリエに先を越されましたが、順調に力をつけていきました。しかし、最初、
マスコミはこの青年に優しくありませんでした。「没個性」、「No1としては、華やかさに
欠ける」など、冷ややかな見方が多かったのです。
この傾向は、アメリカの新聞・雑誌に特に強く見られました。どうしても、コナーズ、
マッケンロー、アガシと続いた系譜と比べてしまうのでしょう。彼らにとっては「強い」、
「うまい」だけでは合格ではないのです。

流れが変わったのは95年の全豪QFでした。
数日前の練習中に彼のコーチ、トム・ガリクソンが倒れて帰国しました。クーリエとの
試合は2セット先取されて苦しい展開でした。

スタンドから「コーチのためにもがんばれ」の声が飛びます。チェアに戻った彼の頭に、
ベッドに横たわるコーチの姿が浮かびます。こみ上げてくるものがありました。タオルに
顔をうずめて号泣するサンプラス…。次のゲームが始まっても、涙は止まりません。
何度も、トスに入りかけてやめる場面がありました。
たまりかねたクーリエが「大丈夫か?明日やってもいいんだぞ」と声をかけます。
もちろん、そんなことができるわけもなくプレーは続きました。
d0164636_8113498.jpg
観客は涙のわけを理解しないまま、彼の後押しをします。泣きじゃくりながら200キロの
エースを打ち込むなど、彼はとうとう逆転勝ちを収めました。
「個性がない」「面白くない」と言われ続けた男がコートで初めて見せた人間らしい感情。
この一試合でサンプラス・ファンは一気に増え、マスコミも好意的な記事を書くように
なったのです。その後は、お若い皆さんもご存知のとおりです。
メジャーの数が増えるにつれて風格が増し、口では多くを語らず、ラケットに語らせる
サンプラスは、異論はあるかもしれませんが、多くの人から「史上最高のプレーヤー」と
呼ばれるまでになりました。
大好きな選手でした。去年のUSオープンでのセレモニーでは、泣いてしまうところでした。
いい、やめ方をしてくれたと思います。

一回戦でストレート負けしたアガシがセンター・コートを去るうしろ姿、しっかりと目に
焼き付けました。彼にとっては最後のローラン・ギャロスだったかもしれませんから。

かつて「問題児」扱いされていた彼ですが、年齢を重ねるに連れて品がよくなり、評価が
どんどん上がった選手です。
プレーぶりだけでなく、コート上での振舞い、チャリティーへの取り組みなど、ほとんど
あらゆる面で、若手の模範になるでしょう。
いま、試合後の会見で一番多くの記者が集まるのはアガシです。
d0164636_811597.jpg
これから、ウインブルドン、USオープンにかけて、「引退」がらみの質問が増えることは
目に見えています。
大会序盤のアガシの会見をのぞくと、記者たちは、終わった試合のことはほんの少ししか
聞きません。多くの時間を割いて、幅広い問題について彼の意見をもとめます。
テニスについて、伸び盛りの若手について、家族について、選挙について…。
彼も、自分の役割を心得ていて、いやな顔を見せずに、丁寧に答えています。
個別のインタビューはめった受けない人たちですから、この会見は貴重です。
グランド・スラムでの彼らの発言は、その大会だけでなく年間を通して繰り返し紙面に
登場してきます。

ちなみに、昨日のアガシの会見では、「引退」がらみの話はなかったようです。
「思うようにボールがコントロールできなかったし、ポジショニングも悪かった。
勝つにはほど遠いできだったから、負けて当然」と、淡々と語っています。

グラフもふくめて、「超一流」は目が違います。失礼な質問や場違いな質問をした記者が
ひとにらみで、縮み上がる場面を何度も見ました。ハハハ。

「トップ・プレーヤーのイメージ」の答えになったかどうか分かりません。
要は、いつまでも語り継がれるようなプレーヤーには、言葉で表せない、しかし、非常に
強力な“何か”があるということです。つまり、まさにINTANGIBLEなんです。

フェデラーを筆頭に、フェレロ、ロディックと、若いグランド・スラム・チャンピオンが
続々誕生しています。彼らに加えて、クエルテン、ヒューイット、サフィンもいます。
しかし、彼らにはまだ、この3人のような“カリスマ”を見ることはできません。
これから、時間の経過とともに身についていくものでしょう。
見方をかえれば、まだダイヤモンドの原石、今後の磨き方しだいでどんな輝きを見せて
くれるか楽しみでもあります。

そう、プレーや勝ち負けだけでなく「今後、3人の系譜に並ぶのが果たして誰なのか?」を
見守っていくのも、テニスの楽しみ方として「あり」なのではないでしょうか。

長くなりましたが、最後に、昨日のロディックvsマーティンで少し“もめた”件について
触れておきたいと思います。

ロディックが2セットアップし、第3セットも4-3とブレークアップしていました。
第8ゲーム/15-15からのロディックのサーブをマーティンがリターン、ロディックは
バックのスライスでクロスに切り返しました。
放送席からも“滑って”外に出たように見えました。しかし、マーティンはこのボールを
拾って返しました。続くのかと思いましたが、彼は、そのボールが相手のコートに返った
ところでプレーをやめ、チェックを要求したのです。

結果は「アウト」。
今度は、ロディックがクレームをつけます。ポイントは「彼は打ったじゃないか」です。
クレームは認められませんでしたが、試合はロディックが押し切りました。
試合が終わり、両者がネットに歩み寄って握手…のシーンでしたが、私はディレクターと
残り時間などを打ち合わせるために目を離していました。そして、コートに目を戻すと
何かおかしな雰囲気です。二人の間に、私が“好きじゃない”空気がただよっているでは
ありませんか。ハハハ。

ロディック:「すぐ、プレーをやめなきゃいけないのか、一回打ってもいいのかについて、
僕がルールを知らなかった。ロッカーでも話し合って、互いに自分のスタンスを説明した。
It’s not a big deal/たいしたことじゃないよ。

マーティン:彼がイン/アウトでクレームをつけているのではないことは分かっていたよ。
でも、僕がポイントをものにするためにルールを曲げたと彼が思ってるように感じたんだ。
彼のリスペクトは得ていると思ってたから、むっとしたんだ。彼も、一瞬、相手が誰かを
忘れたんだろう。もちろん、彼の頭の中のことは分からないんだから、試合が終わった
ときには黙っているべきだったんだろうね。
ロッカーでも話したし、We’re good/僕らは大丈夫だよ。

今朝、丸山薫さんにお話を伺ったところでは、「疑問があっても、一度は打っても大丈夫。
(サーブなどは反射的にラケットが出てしまいますからね)相手が次を打つ前にアピール
することができる」でした。

“トップ・プレーヤー”の定義は難しいですが、今なら、
フェデラーやナダルはこのカテゴリに入るのでしょう。
しかし、この2人からは、ここに挙げた3人が放った
“絶対的なオーラ”はまだないように思います。
たぶん、私が現場を離れてしまったからでしょうが。


人気ブログランキングへ

d0164636_1032692.jpg
by toruiwa2010 | 2011-07-17 08:15 | テニス | Comments(6)
Commented by 老・ましゃこ at 2011-07-17 22:30 x
グラフはコートの内外で常に毅然としていて、素晴らしい選手でしたね。今でも一番好きな選手です(^^)グラフのことを書かれた記事はいつ読んでも、よい気分にさせてくれるので大歓迎です(^^)
Commented by コシェ at 2011-07-18 09:26 x
岩佐さん、こんにちは。 FBはありがとうございました。 「intangible 」~絶対的なオーラでしょうかね。  アガシlegendは特別だったとしても、フェデラー×ナダルの公式戦以外のチャリティーエキジビションなんか見ると、十分にその域に達しているのはと。 でも、現場で見ていた岩佐さんからすると何かが足りないのでしょうかね。  それにしても、サンプラス、フェデラーともにシングルハンドの天才肌オールラウンダーは、意外と終焉が早いように感じます。 
Commented by toruiwa2010 at 2011-07-18 09:47
老・ましゃこ サン、おはようございます。
男女を通じてあれだけのオーラを放つ選手は
いませんでしたね。
Commented by tom☆ at 2011-07-18 20:55 x
こんばんは♪
サンプラスよりはアガシ☆・フェデラーよりはナダル☆~史上最高の選手と最高のマッチアップ出来る選手に惹かれる性分のようです☆
~がそれよりもグラフは別格です~なんででしょう? 言えるのはただ【言葉には尽くせないモノが有る】。。No?
そのグラフが選んだのがアガシ・・・感無量!! 末永くお幸せにと祈るだけ。。。2世への期待は内緒~☆
Commented by toruiwa2010 at 2011-07-18 20:59
tom☆さん、こんばんは。

2世への期待は内緒~☆…どのみち
半端じゃないと思いますよ。ハハハ。
Commented by ふぇでらーが好きなふぇでらー at 2011-07-19 14:45 x
岩佐さん、こんにちは。

グラフ・サンプラス・アガシ・・・良い話でした。今の若い世代も何時の日かきっとこんな風になるのでしょうね。そう、この名前達の次にフェデラーgたそう言った風格を持ったプレーヤーになったように・・・

皆がそう言ったただのチャンピオンではなく王者の風格を兼ね備えて欲しいな。テニスファンとしては。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。