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岩佐徹のOFF-MIKE

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新藤兼人監督「一枚のハガキ」~それほど高くは評価できない…~11/08/12

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「一枚のハガキ」80

敗色濃厚になった昭和20年。奈良の天理教総本部の大広間に100人の兵が整列していた。
数合わせのためにかき集められた中高年の兵ばかりだった。彼らは 予科練兵の宿舎となる
建物の清掃を終えたところだ。

役目を終えた彼らの今後の任務は“くじ”によって決まることが告げられた…
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100人中、生き残ったのはわずかに6名…その中に松山啓太(豊川悦司)がいました。
彼は、奈良にいるとき、上官が引いたくじの結果 フィリピンに行くことになった森川定造
(六平直政)からあることを頼まれていました。
「もし生きて帰ったら、これを妻に届けて、読んだことを伝えてしい」と一枚のハガキを
預かったのです。検閲が厳しいため、彼は返信を出していませんでした。
ハガキにはこう書かれていました。

今日はお祭りですが
あなたがいらっしゃらないので
何の風情もありません
              友子


万感の思いが詰まった文章です。
次の任地が宝塚に決まっていた松山はこの依頼を引き受け、ハガキを預かります。

作品は、100人の運命を分けた“くじ”に最後までこだわって描かれています。
自身が体験者(6人の1人)である新藤兼人監督の思いがまさにそこにあるのでしょう。
戦争の場面はワンカットもありませんが、くじをキーワードに静かに反戦を訴えています。

99歳の大監督がメガホンを握った映画には多くの反響があるようです。
私が見に行ったのは封切から3日目、ウイークデーの2回目でした。
30分前につけば十分だろうと思ったのですが、切符売り場には長い列ができていました。
並んでいるうちに1回目の上映が終わりましたが、切れ目なく出てくる人の波にビックリ。
順番がきたとき、前から3列目より前の席しか残っていませんでした。
場内が暗くなるとき、満席状態でした。いくら封切から日が浅いとは言っても 平日なのに
満席というのは洋画・邦画を問わず、初めての経験です。

豊川と、森川の妻・友子を演じた大竹しのぶが見事でした。
山あいの農家でつましく暮らしていた友子にとって、戦争がわが身にもたらしたことは
理解することも受け入れることもできないものでした。周囲にその思いをぶつけるときの
大竹の激しい演技は観客の胸をうちます。アカデミー主演賞の有力候補でしょう。

対照的に、くじによって生還することになった松山には一種の“うしろめたさ”があり、
これからの人生をどう生きればいいのかについての迷いもあるようです。豊川はそんな
松山を抑えた演技で体現していました。“動と静”…噛み合っていたと思います。
“熱演”はときに周囲から浮いてしまうことがあります。「仁」の内野聖陽には“いつも”、
香川照之には“ときどき”、それを感じ、鑑賞の邪魔になります。ハハハ。

作品そのものの評価はそれほど高くありません。
シリアスなテーマを笑いのオブラートで包むやり方は新藤監督得意の手法のようです。
新藤作品はこれまで1本も見ていませんでした。食指が動かなかったのです。「それでは
語る資格はない」と言われそうですね。しかし、作品はそれぞれが独立したものですから、
誰にだって語る資格はあるのです。

戦争反対はしつこく言い続けなければいけないテーマですが、この映画は“古色蒼然”の
印象をまぬかれません。テーマが古いのではなく、扱いかたと演出が…
若い監督が同じテーマで撮ったらまったく違う印象の作品になったでしょう。
松山と、村の世話人(大杉漣)のケンカのシーンなどいくつかの場面で“戯画化”した演出を
取り入れていますが、そのたびに「なぜ」と思いました。木に竹を接いでいる感じでした。

「キスしてちょうだい」

一番違和感を覚えたのはこのセリフです。
終戦直後、運命にもてあそばれた男女が再会したとき、女が男に向かって言います。

KISS…その頃の日本人は“キス”という言葉を口にしなかったはずです。
接吻(せっぷん)、くちづけ…から“キッス”になり、だいぶたって“キス”になった、と
当時、小学校低学年の“おませ”な少年は記憶しています。ハハハ。
豊川のひざ上までの短パンも、長さと言い太さと言い、妙に“今っぽい”ものでした。

ディテールが気になると引きずってしまう性格だけに、私の評価が普通の人より低いのは
仕方がないと思います。劇場を埋めた観客の大部分が60代、70代と思われ、その人たちは
違和感がなかったかもしれません。だからこそ、“平日でも満席”なんでしょう。
結局、固定的なファン層には受ける、そうでない人にはそうでもない…そんなところかも
しれませんね。どうぞ、あなたの評価は実際に見たうえで決めてください。ハハハ。

ちなみに、“反戦”をテーマにした映画・文学の中で、私が最も優れた作品だと思うのは
半世紀以上前に読んだ五味川純平の小説「人間の条件」です。

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by toruiwa2010 | 2011-08-12 09:50 | 映画が好き | Comments(0)
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