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岩佐徹のOFF-MIKE

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Archives 「予定稿なるものを排す~現場にいる者だけが感じることを~」11/09/04

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昨日のアーカイブからの記事が予想以上に多くの方に読まれて
とてもいい気分です。古い記事が読まれること、自分の考えが
伝わることが嬉しいです。受け入れられるかどうかは別にして。

“好評”に気をよくして…“言葉を用意する”の拡大版です。ハハハ。
一部、昨日の記事とダブりますが、削るとつながりが悪くなり、
かえって読みにくいのでそのままにします。

また、この記事は以前にも再録したことがあり、そのときに
読んだ方は「またかよ」と思うでしょうが、ご容赦を。


「作文コンクール?」06/06/20

声は届いています。はるか東の方から。
何百万何千万もの思いが大きな塊となって聞こえてくるようです。
遠かった道のりでした。日本の、世界の舞台に初めて登場する
その相手はアルゼンチン。世界が注目するカードです。


98ワールド・カップで日本が第1戦を戦ったときのアナウンサーの第一声です。
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さらに・・・

4年前のあの日が、昨日のことのようです。
1400日をまたいで、かすかな負い目とそれを上回る自信を
私達は胸のうちに秘めてきました。
今、ここに再び立ち上がるときがやってきました。
第一戦の相手はベルギーです。


これは、2002年日韓ワールド・カップのときの同じアナウンサーのコメントです。
山本アナはサッカー・ファンの間では“神様”扱いのアナウンサーでした。

そして、これは今回のクロアチア戦での内山アナ・・・

日本サッカーが問われる瞬間がやってきました。
90分間の集中力だけではありません。
これまで費やしてきた日々を思い起こすことです。
決してくじけないことです。くじけたとき、日本サッカーの
ドイツでの挑戦は終わりを告げます。
ワールド・カップ・ドイツ大会、グループ・リーグ日本対
クロアチア。両チームともに決勝トーナメント進出をかけて、
生き残りをかけた一戦となりました。


どこか似てませんか?
それより、お聞きになってどうでしたか?
私は“実況”を仕事にしてきた者として、納得がいきません。
何よりも、これは試合前夜のホテルの一室でも、もっと言えば、日本を出る前に自宅の
リビング・ルームでも作れる文章であることにガッカリするのです。
なぜ、スタジアムのスタンドに座っているあなた自身が見たまま、感じたままを言葉に
しないのですか?と問いたいのです。
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言葉を商売道具として経験をつんできたアナウンサーなら、この程度の文章はいくらでも
作れるでしょう。しかも、たったこれだけの文章なのに、ほころびがあって、私だったら
このまま口にするのをためらいます。

オープニングをカッコ良く決めたいと考えるアナウンサーは多いです。ここでつまずくと、
人によっては、全体に影響してしまうことがあるからです。
そのためにあらかじめ原稿をつくります。それを“予定稿”と言うのです。
用意した言葉が人の胸を打つ、と考えるのは錯覚ではないでしょうか?
舞台、状況がすでに感動を呼ぶようになっていると思うのですが、違いますか?
アテネ・オリンピック体操の実況、「…栄光への架け橋」が典型的な例です。
あの、アナウンスがなくても、あの演技、数十年ぶりの団体金メダル…見ている人たちが
感動する要素は十分だったのですから。

*昨日の記事と重なる部分があまりにも長いのでさすがにカットします。

テレビ朝日の中継はビデオで見ました。
角沢アナの出だしのアナウンスはこうでした。

とてつもない興奮がこのスタジアム全体を包み込んでいます。
日本にとってグループ・リーグ第2戦の相手はクロアチア。
いよいよ日本、決勝トーナメント進出をかけた一戦が始まります。
開場と同時にみるみるスタンドが埋まって、日本の勝利を願うブルーな
サポーターの大歓声がフランケン・スタジアムにこだましています。


角沢アナに対しては とかく批判の声が多いようですが、この部分に限れば、現場の空気と
マッチしていて、NHKより共感できました。
しかし、試合が始まると、内山アナとの経験の差がはっきり出ます。
特に、競技場にいるからこそ分かる、ボールを持たない選手の動きなどの情報がほとんど
伝わってきませんでした。解説者の指摘を“オウム返し”に言っているだけのことが多く、
視野の狭さを感じます。
後半10分ぐらいからは声が嗄れはじめ、最後までもつのかとハラハラしました。

周囲の歓声、テンションに巻き込まれて第一声のトーンが高くなってしまうのは、経験の
浅いアナウンサーにはありがちなことです。この場合、元に戻すのがとても難しいのです。
角沢アナは代表戦だけでもかなりこなしているのですから、若手ではあっても、経験は
十分のはずですが、体調でも悪かったのでしょうか。

NHKのアナにもひと言、クレームをつけておきましょう。
野路・内山両アナには、解説者を“無視する”こと以外にも共通点があります。
“シューズ”のことを“スパイク”と言います。「スパイクを替えている」…。
何回か聞きました。
気づいていない可能性があるのですから、ディレクターは注意すべきです。***1

もうひとつは内山アナ。
前半31分、柳沢が倒され、ゴールの正面でFKを得た場面で「距離20㍍あまり…」と
アナウンスしていました。実際には30メートル近くあって、解説の井原さんは「距離は
ありますけど…」と微妙な言い方で訂正していました。ハハハ。
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サッカーの競技場で距離を推定する場合、ピッチについている“芝目”を目安にするのは
初歩的な“知恵”だと思います。
一本の幅は5.5メートルと考えてまず間違いありません。ほかのピッチも大体同じですから
注意してみてください。***2

ゴールラインからペナルティー・スポット(X)までは、もちろん11メートルですが、世界の
一流の競技場では、例外なく、濃淡の芝目がちょうど2本ついているはずです。
PKのときにキッカー以外の選手が入れないエリアを示すペナルティー・アークの半径は
Xを中心に9.15メートルです。つまり ゴールラインからペナルティー・アークの頂点まで
きっかり20.15メートルです。
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問題の場面に戻ると、FKスポットは、そこからさらに芝目二つ分ほど離れていましたから、
“20メートルあまり”はあまりにも正確さに欠けた表現と言わざるを得ません。
ちなみに、この数字はゴール中央からペナルティー・エリアの角までの距離などとともに、
サッカーを実況するからには心得ておくべきものです。

…自制はしているつもりですが、この手の話を書くと どうしても“上から見た”言い方に
なってしまいます。ときどき言われますから自覚はあります。
好きなアナウンサーのことを批判されるのも気分のいいものではないでしょう。
カテゴリが“放送”となっていたら“警戒警報”だと思ってください。ハハハ。
興味がない方はお読みにならないことをお勧めします。
似たような話を繰り返し書くのは、後輩同業者に少しでもいい実況をしてほしいからです。
そのためには、お叱りにめげず、もっと精を出さないといけません。ハハハ。

***1 NHK視聴者センターに問い合わせたことがありますが、
     「これでいい」と、鼻先であしらわれました。
     今も、違和感は残っています。

***2 この写真を見ても2本目の芝目がXマークと重なっていることが分かります。
     ウエンブリーやカンプ・ノウなどは、かなり細い芝目になっています。
   
ちょっとした情報

なでしこファンはまだ見てるかな?
アナが「ピッチからの解説は…」とわざわざ言うのは、
その間に川上についている音声さんがマイクをONに
することになってるんだ。
“隠語”みたいなものさ。ハハハ。


昨日のなでしこの放送が終わったあと、こうつぶやきました。

…見事な“上から目線”のもの言いですね。ハハハ。
それはともかく、このつぶやきが一般の方には新しい情報として歓迎されたようで、
かなりの反応がありました。言葉足らずのところがありますので補足しておきます。

放送席で解説していた早野さんと話し終えたアナウンサーは、次に、ピッチから
リポートしていた川上さんに話を聞こうとしていました。
川上さんのマイクは、ふだん、OFFになっています。雑談を拾ってしまったり、
ぶつけて無用の音が放送に入ったりすることを防ぐためです。
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ピッチ・リポーターをアナウンサーがやるときは、本人がON/OFFを切り替えると
思いますが、部外者の場合は、音声技術者がそばについているはずです。
必要なとき、マイクを生かします。
放送席のアナが「ピッチからの解説は川上さんでした」と言ったのは、川上さんに
心の準備をしてもらうためと、音声さんに彼女のマイクをONにしてください」と
合図を送っているのです。
彼女が早野さんの隣に座っていたら、いきなり、「川上さんはいかがでしたか?」と
聞けばいいのですが、離れている場合はこういう“作業”が必要になるのです。

大相撲で、「向こう正面の解説は舞の海さんですが…」というフレーズが しばしば
聞かれるのも同じ理由によるものです。

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by toruiwa2010 | 2011-09-04 08:15 | 放送全般 | Comments(9)
Commented by 47歳の男 at 2011-09-04 09:52 x
岩佐さん、こんにちは。
約半年ぶりに投稿させていただきます。

世界陸上女子1500Mのゴール直前で、実況の初田アナが言葉に詰まったことが、岩佐さんのツイッターでも取り上げられていましたが、あれもある種の「予定稿」主義による弊害ではないでしょうか。
つまり、あらかじめ「この選手が勝つだろう」と目星をつけたうえで実況しているのではないか。ゆえに、思わぬ伏兵が最後の直線で飛び出してきたときに対応できない。転倒など不測のアクシデントが起きると、事前のプランが狂ってあわててしまう。
番狂わせはスポーツ観戦における大きな醍醐味なのに、それに対応できないなんて、いやはや、トホホです。

ああいうアナウンサーには競馬の実況で修行を積んでいただきたい。TBSのように競馬番組を持たないテレビ局のアナウンサーは、競馬の現場で研修を積むということはないのでしょうか?
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-04 10:01
47歳の男さん、

おっしゃる通り、不測の事態(だったのかどうか知りませんが)に
対応できませんでしたね。
競馬馬の見分け方と、アフリカ勢などのそれでは大きな差があります。
競馬は帽子と服の色で識別はそんなに難しくはないのです。
TBSには宮沢という世界の松下と同期の競馬アナがいるはずですが。
Commented by 47歳の男 at 2011-09-04 11:17 x
岩佐さん、お返事いただきありがとうございます。

確かに陸上の場合、たとえばケニア勢はケニア勢で皆、同じデザインのユニフォームを着ているので、瞬時に見分けるのは大変な作業だとは思いますが、あの1500M決勝の出場選手は総勢12人ですからねえ…。胸番号、腰ナンバー、顔の特徴などをフルに活用して、せめて名前ぐらいはサッと声に出してほしい、と思っております。それが出場選手への最低限の礼儀でもあるかと。

宮沢アナの競馬実況ですが、ラジオで耳にしたことがあります。とても歯切れがよく、耳に優しい実況だったと記憶しています。
テレビでなかなか接する機会がないのが残念です。
Commented by しょう at 2011-09-04 11:35 x
岩佐さん、こんにちは。

実況アナが不測の事態に対応できないのは、
原稿を用意している、という実態があるからなんですね。
冒頭と締めはまあよしとしても、
試合中に用意した言葉を当てはめるなんて、本末転倒だと思うのですが。
目の前で繰り広げられる真剣勝負の場面に、
とっさに的確な言葉を見つけられないのだとしたら、
実況はやらないでもらいたいです。

それから、これは本当に心から思うのですが、
なんでもかんでも泣かせようとするのもやめてもらいたいなー。
良い試合やレースを観るだけで、充分感動するんですから!

それにしてもセリク男子マラソンのDアナ、しゃべりすぎですよねぇ。
自分の求める答えを解説者から引き出すやり方も、
なんだか姑息に感じられて「うざい」です。
すみません、汚い言葉で。
そして、連日の長文投稿申し訳ありません。
スポーツ好きとして、最近の実況にはストレスが溜まっているものですから…。
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-04 11:42
しょうサン、こんにちは。

不測の事態への対応がうまくいかないのは
アナウンサー個人の能力の問題です。ハハハ。

しょうサンがおっしゃる冒頭と締め…私の判断は
やりすぎです。いろいろ“しばり”があって、仕方がない
ケースもあるのですが。

実況中にも、ここというところであらかじめ
考えてあったことが見え見えの言葉を使う
ケースも興ざめです。アテネの体操が典型です。
Commented by t at 2011-09-04 21:35 x
こんばんは。今更な質問で恐縮なのですが、"スパイク"と言ってあの"靴"を指す言葉として使うのは間違いなのですか?(スパイクは単に裏についている鋲を指す場合のみ使用可ということでしょうか?)

以前この記事を読んだあと、周りの人に聞いてみたのですが判らず、ずっと引っかかっていたので教えて頂けると嬉しいです。
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-04 21:47
tさん、こんばんは。

本来スパイク(spike)はくぎのことを
さすわけですが、いつの間にか、
スパイクをつけた靴全体をさすように
なっていて、広辞苑にもスパイクシューズの
略としてスパイクが載っています。

普段の私はあまり細かいことにこだわらないのですが、
この件だけは気に入りません。
皆さんはお好きなように、私はきちんと分けて
言うつもりです。ハハハ。
Commented by t at 2011-09-05 21:58 x
ご回答ありがとうございました。ではここではあの靴を"スパイク"と呼ばないようにしますね。
で、英語ではなんと言うのかなと思ったら"cleats"という単語が出てきました。聞きなれない言葉なのですが実況ではこの単語を使っているのですか?それとも"boots"とかですか?
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-05 22:07
tさん、

英語の専門的なことになると、
私の手に負えるものではありません。
恐縮ですが、よそで聞いてください。
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