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岩佐徹のOFF-MIKE

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「セレナを見舞った大誤審~ホークアイ導入のきっかけになった~」   11/09/07

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全米オープンテニスは2週目を迎え、女子は今日から準々決勝に入ります。
…2004年が思い出されます。9日目のナイト・セッションでした。

何があってもポーカー・フェースのセレナがこのときばかりは表情を変えました。
文字通り主審に詰め寄って「What’s going on?」…
「どうしたっていうんですか?」という感じです。
その迫力は“ハリケーン・セレナ”がNYをおそったみたいでした。ハハハ。
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無理もありません。場面は、勝負を決めるファイナル・セットの第1ゲームでした。
カプリアティのサーブでジュース。ここでセレナが打ったバックはダウン・ザ・ラインへ。
スタジアムで見ていた誰もが、「ナイス・ショット」と思うようなエースでした。…いや、
そのはずでした。実況していた私も「イン」と思って 次のポイントへ向けてのコメントを
しようとしたとき、雰囲気がどこか変でした。

スコア・ボードにカプリアティのアドバンテージを表わす“ad”がついています!!
このあたりまでは、プレーしていた二人とも「in」のつもりで動いていたと思います。
しかし、私が“ad”に気づいたのとほぼ同時に、一度はポジションについたセレナが
「No,no,no」と大きく叫びながら、審判台に向かって歩き始めたのです。

ここで、私は、大きなミスをしてしまいました。
「問題なく 入っている」ことを示す最初のスローVTRを見たあと、セレナの表情、仕草を
見るため、モニター画面から目を離してコートに向けてしまったのです。 
ボールが着地したのは主審からは遠い位置で、しかも、誰もが「はっきり入っている」と
思ったほどでしたから、オーバールールがあったとは思いもしませんでした。
カプリアティのポイントになったのは、きっと、私からは死角になるライン・パーソンが
「アウト」のコールをしたか、「イン」のジェスチャーのあと、自分から「アウト」と訂正
したのだと判断したのです。
それだけでなく、カプリアティが次のサーブに入る直前、ライン・パーソンが「イン」の
ジェスチャーをしている逆サイドからのスローが出たのも見のがしてしまいました。
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実際は、主審がライン・パーソンのコールを「アウト」に変更したのです。
いま、ビデオを見ると、セレナの「どうしたの?」に対して「I overruled it」と答える
口の動きが分かります。
しかし、私は、試合が終わるまで、オーバールールに気づきませんでした。
視聴者をミスリードしたことになり、申し訳ないことをしました。

試合の方は、その後も、セレナに気の毒なジャッジが続きました。このセットだけでも、
四つはあったでしょう。すべて、試験的に使っていたホークアイの画像で視聴者の前に
はっきりと映し出されました。
Human error =“人間的なミス”はスポーツにつきものですが、これほど、一方の選手に
不利に出てしまうのは珍しいことです。
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会見に現れたセレナは、こう話しました。
「言い訳をするつもりはありません。ストレートで勝たなければいけませんでした。
決していいプレーをしたなどとは言いません。馬鹿みたいなプレーぶりだったし、彼女は
いいプレーをしました。私は墓穴を掘ったのです」
…この年のウィンブルドン決勝でシャラポワに負けたときにも「あざやかな敗者」だった
セレナは、このときも見事でした。

ただし、これだけは言いました。
I’m extremely angry. I feel cheated.I feel like robbed」…
「猛烈に怒ってます」以後は、一語一語をうまく日本語に置き換えることはできません。
ニュアンスとして、「勝ったはずなのに、ほかの誰かの手で横取りされた気がするわ」と
言いたいのだと、私は受け取りました。そう言っても当然だと思える大きな誤審でした。
セレナの強打をよく拾ったカプリアティのガンバリは、勝者の名に値すると思いますが、
“誤審”が、その勝利に影を落としてしまったことは否めません。
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その意味で、この夜 いやな思いをした人は数知れないでしょう。不幸な出来事でした。
トーナメント・レフェリーは、この夜遅くに、オーバールールは間違いであったと認め、
この主審は、今大会では、以後 主審をつとめないとする声明を出しました。

Capriati d.Serena W. 26/64/64

この試合こそが、現在のビデオ判定導入のきっかけになったのです。

主審を務めたのはマリアナ・アルベスさんでした。それまで、グランド・スラムの大きな
コートではあまり見かけない人でした。
当時の自分のブログを読み返すと「カプリアティ戦の時も何故この人かな?と思った」と
書いています。
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アンパイアは技量や実績などによって、ゴールド、シルバー、ブロンズ…と、ランク付け
されています。騒ぎのあと、彼女はシルバー・バッジだったと知りました。そうなると、
ますます、何故、彼女があの試合を任されたのか不思議でした。経験豊富な一流審判でも
カプリアティvsセレナは“裁く”のが難しい試合ですから。ハハハ。

その後、アテネ・オリンピックで発覚した身分証偽造“事件”にからんで、3人の審判が
要員から外されたために、アルベスさんの“位置”が上がっていたのだと聞きました。
あるベテラン審判は「職を解かれたアンパイア達がいれば、あの試合を彼女が担当する
ことはありえなかった」と語っていたそうです。

…アルベスさんの審判としてのキャリアはこのときに終わったものだと思っていました。
しかし、彼女は“タダもの”ではなかったようです。私が現役を離れた翌年、2006年の
全豪オープンを何気なく見ているとき、アンパイア席に座っている彼女を発見!ハハハ。

あまりにも致命的な誤審で非難の嵐を浴び、審判としてのランクも下げられていましたが、
今では、グランド・スラム決勝の主審を務めることもあります。
ポルトガル人です。いわゆる“テニス大国”出身ではなく、しかも、過去に大きな失敗を
したにもかかわらず ここまで地位を回復してきたかげには、地道できびしい努力・忍耐が
あっただろうと思われます。
小泉元総理ではありませんが、「よくがんばった、おめどとう」と、心から祝福したいです。
ハハハ。

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by toruiwa2010 | 2011-09-07 08:15 | テニス | Comments(8)
Commented by ota*i07*8 at 2011-09-07 09:56 x
おはようございます。昨晩の全米は雨で残念でした。

アルベスさんの話はとても興味深く読ませてもらいました。それぞれにドラマがあるのですね。とても面白かったです。
Commented by tom☆ at 2011-09-07 09:58 x
おはようございます♪ 早速テニスネタありがとうございます!
チャレンジシステムは何処まで信用出来るのでしょうね?(そこまでアウトだったか??)って思う事有りますもの!
主審のオーバールールをチャレンジされた時に、審判通りだった時にはホッとすると同時に凄く感心しますね~☆
同性なのになんですが主審は男性の方が良いですね、特に声が良いと聴き惚れちゃいます♪
★NYは3日ほど雨の予報だそうです★
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-07 13:35
ota*i07*8さん、こんにちは。

ドラマはどの世界にもあるはずですね。
それを丹念に拾っていくと視聴者は
喜ぶと思うのですが、現役のみんなは
頑張っているのかな?ハハハ。
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-07 13:39
tom☆さん、こんにちは。

ホークアイ…たしかに、怪しいと思うことも
ありますが、人的ミスで試合の行方が
決まってしまうよりはマシだと思います。

男子の試合はやはり男の主審のほうがしっくりきますね。
女子はどちらでも…と言うと差別だと言われそうなので
女子は女性審判で、とここには書いておきます。ハハハ。
Commented by ふぇでらーが好きなふぇでらー at 2011-09-07 17:43 x
お久しぶりでした、岩佐さんこんにちわ。

セレナの話も面白かったですが、アルベスさんの話は深い話ですね。周りの状況もあったんでしょうが、ミスジャッジを認めるのはとても勇気が必要だったろうし、そしてまた翌年からの活躍となると、本当にすばらしい努力をされたのだと感心しましたが、岩佐さんのこういった隠れたテニスのエピソードはWowow現役時代からずーと感心しながら楽しみにしておりました。

まだまだきっと隠しているネタが有るんでしょうね!楽しみにしてます。
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-07 18:15
ふぇでらー…サン、こんばんは。

隠しているものはありません。
忘れているものはかなりあるでしょうが。ハハハ。
Commented by ヤップンヤン at 2011-09-08 04:39 x
ホークアイを開発した会社をソニーのグループ会社が買収しましたね。ソニーはここ数年ちょっと斜陽ぎみだったので、この買収に関してはいいところに目をつけたなぁ~と思っていました。
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-08 06:42
ヤップンヤンさん、おはようございます。
確か、イギリス系の会社だったと思いますが、
おっしゃる通り、いいところに目をつけましたね。
データの分析力などもあるはずですから、
いろいろ応用が利きそうです。
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