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岩佐徹のOFF-MIKE

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Archives「“用意した言葉”山本実況を考える~Series:アナウンサー、実況&放送全般~」11/09/25

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スポーツ実況は95%、あるいは それ以上がアドリブです。
私は99%でしたし、昨日の船越アナの場合、試合に入る前は
60%ぐらいまで下がっていたかもしれません。
昔にくらべると、今のアナウンサーは、放送開始の部分の
コメントに“凝る”傾向が顕著です。
ベテランから若手まで、話すことを事前に用意しています。
私は「作文コンクール」と名付けましたが。ハハハ。

「メキシコの青い空が・・・」by 山本浩アナ(NHK) 2002.12


サッカー・ファンでNHKの山本浩アナを知らない人はいないでしょう。今、全国のアナの
中でもサッカー実況暦は 金子勝彦さんについで古く、歴史に残るビッグ・ゲームを数多く
手がけています。
中でも、1985年10月26日、国立競技場で行われた'86メキシコ・ワールド・カップの
アジア東地区予選、日本-韓国戦冒頭のアナウンス、
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「東京千駄ヶ谷の国立競技場の曇り空の向こうに、メキシコの青い空が続いているような
気がします」…は今もサッカー・ファンの耳に残る名実況として記憶されているようです。
実は、Soccer Clickのインタビューに出ている“新しいプロデューサーが「感動した」と
私に話した実況”がこれだったのです。

その試合が行われた日、フジのスポーツ部で“くすぶって”いた私は、テレビを見たのか
どうかもハッキリせず、まして、このコメントについては記憶がありませんでした。
テープを借りて聴いてみると、用意された言葉だと分かりましたし、“ありがちな表現”で
たいした感銘は受けなかったのです。

不遜に聞こえたらお詫びします。ただし、アナウンサーが他人の実況を聞く時は、かなり
気持ちが冷めていますから、その点を割り引いて読んでください。
多くの若者が、この言葉に感動した事実はあるわけですから、その意味では「そのとき、
その場面を共有しているもの同士」の気持ちを“ひとつ”にしたものとして、また 船越の
“シドニー五輪“実況の対極にあるものとして、高い評価を受けても当然だと思います。

山本アナは、2002ワールド・カップでも、用意したコメント(書いたものを読んでいたのか
どうかは分かりませんが)をアナウンスしています。

日本-ベルギー(BSハイビジョン)
「4年前のあの日が、昨日のことのようです。1400日をまたいで、
かすかな負い目と、それを上回る自信を私たちは胸のうちに秘めてきました。
いま、ここに再び立ち上がる時がやってきました。
第一戦の相手はベルギーです」

決勝・ドイツ-ブラジル(BSハイビジョン)
「魂のドイツ、技のブラジル。世界を代表するつわものが、初めて
あいまみえる時を迎えました。実力、風格、プライド。
すべてを自らのものとする両雄の戦いです」
「胸高鳴るとき、声高まる一瞬。ワールド・カップが始まって
72年目にして、この対決の幕が切って落ちようとしています」

いずれも、アドリブだとは思えません。かといって、きちんと書いたものを読んだのかと
聞かれると、それもはっきりとは分かりません。
はじめの文章は、「自信が負い目を上回る」、その自信を「私たちは胸に秘めてきた」など
首を傾げたくなるフレーズがあって、完成度が低いと思います。そして、最後の文章では
「幕が切って落ちる」と言っていることに戸惑います。
「幕が切って落とされる(始まる時)」、あるいは、「幕が下りる(終わる時)」は聞きますが、
「切って落ちる」は一度も聞いたことがないような気がします。

私は、コメントを用意する場合でも、文章の最後の部分はわざと完成させません。
こうすると 本番の時に、アドリブ風のしゃべりになります。彼も同じことをやろうとして
最後がおかしくなったのかもしれないと推察しています。

重箱の隅をつついてケチをつけようというのではありません。実はここ数年の山本アナは、
「何か人と違ったことを言おう、表現をしよう」、「うがった見方をしよう」と考えすぎて、
センテンスがうまくまとまらないことが多いと感じていました。本人もさぞ辛いだろうと
同情してしまいます。視聴者の期待にこたえようとする結果だと思うからです。
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決勝の時に、国歌が終わり、スタンドの歓声がおさまったところで言った一言、「ドイツも
ブラジルも、この一瞬に、体の中にひとつ芯が入ったようなことになったでしょうか?」
あたりにも、そういうことを感じます。「…入ったように見えます」なら分かりますが、
これでは文章になっていません。
放送の冒頭での一言は、視聴者も期待しているのですから、いいとしても、実況部分に
ついてはもっと“さりげない”方が聞きやすいのではないでしょうか。

そういう意味では、いまのNHKで私が一番聞きやすいのは野路アナです。
知識をひけらかすことなく、解説のフォローもうまいですし、事実を丹念に追う実況は
ファンの中でも評価が高いようです。
ただし解説者の話に、もう少し“反応”してほしいと思います。
この点は、局によって教育の仕方が違うようで、ある民放局では「お前が先に納得して
どうする。『なるほど』とか『そですね』は言うな」と教えるようです。
そして、NHKを聞いていると、早野宏史さんの駄洒落を無視するのは当然として、やはり、
「反応するのは視聴者」という教育を全員が受けているとしか思えません。

フジテレビ時代、特に何も言われなかった私は、自然体で臨むことにしています。つまり、
人は会話をする時にどうするかをベースに対応しています。
井戸端会議の女性のようにいちいち相槌をうったのではうるさいでしょうが、少なくとも
半分は、自分の問いかけに対する答えなのに、相手の話にまったく反応しないというのは
どうなんでしょうか。“人として”などとは言いませんが。
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もちろん、放送席では、うなずいたり、目で「聞いていますよ」と知らせていることは
想像できます。しかし、画面に顔が出ていないスポーツ実況の場合、視聴者に届くのは
音声だけですから、ものすごく不自然に聞こえます。
我が家では、妻が「あらあら、(解説者が)また置いてきぼりかしら」と、よく言いますが、
そう感じる方はきっと多いと思います。

解説者を紹介した時に「よろしくお願いします」、最後に「ありがとうございました」を
言うか言わないかも、局によってまちまちです。別に統一する必要もないでしょうが、
「言わない派」の理由は「内輪のことで、視聴者は関係ないことだから」が多いようです。
「なんだかなあ」と思います。「視聴者は無関係」だとは思いませんし、むしろ代表して
挨拶するのは、普段の会話でも当たり前のことですから、私は言うようにしています。
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すこし話がそれてしまいました。予定稿の話に戻りましょう。
私は、船越アナや山本アナのような、国民全体が関心を持つようなビッグマッチの経験が
ありません。最大のものが1996年、2000年のユーロ決勝でしょうが、そのときでも
「サッカー・ファンの皆さんご機嫌いかがでしょうか」で始めています。
よほどのことがない限り、テニスなら「テニス・ファンの皆さん…」、ゴルフなら「ゴルフ・
ファンの皆さん…」に変わるだけです。
そして、いよいよ決勝の日を迎えたこと、対戦カードを言ったあとは、解説者を紹介して
「わくわくしますねえ?」などと渡してしまうやり方です。

WOWOWの場合、私たちがしゃべりだす前に、あらかじめ作ってある、その試合を盛り
上げるためのビデオ(“アバン”といいます)が出ることが多いことも理由のひとつです。
さんざん、あおったあとでまたあおってどうするんだ…と考えるわけです。
ただし「ワールド・カップの決勝でも同じか?」と聞かれると考えてしまいます。

ビッグ・イベントになると国際映像がベースになります。そして、映像配信が始まって
○○秒後に会場名、○○秒に対戦カード、さらにメンバー表という具合に、固定された
タイミングでスーパーが出てきますから、それにある程度合わせるとなると、コメントを
用意することが必要になります。
それでも私は、30秒、40秒の原稿を作ることはないでしょう。おそらく、解説者と事前に
話し合って、「ここでこう聞きますから、10 秒ぐらいでよろしくお願いします」という
やり方を選ぶと思います。

ビッグ・ゲームを担当するアナウンサーなら誰でも、なんとか印象的な言葉を残したいと
考えるものですし、視聴者は「感動したい」と、それを待ちかまえているわけですから、
よほど安っぽい言葉でなければ、受け入れてもらえるでしょう。しかし、だからと言って、
すべてのアナウンサーが山本流をはじめたらウンザリしませんか?

私は、10年ほど前に「スポーツの感動は、プレーそのものの中にあるのだから、言葉で
飾るのはやめよう」と決めましたので、今後もこのスタイルで行くつもりです。


“サッカー実況のカリスマ”とwikipediaにも書かれている
山本アナについてクレームをつけるのは私ぐらいでしょう。
怖いもの知らず…。ハハハ。
ファンが多いですから お叱りも覚悟して書きました。
たまたまですが、この3日間で取り上げたアナたちはすでに
実況の舞台を去っています。そう言えば、私も。ハハハ。

書いたのが2002年でしたし、スポーツ実況のあるべき姿を
話すとき“反面教師”として取り上げざるを得なかったのです。
ご容赦ください。

来週のアーカイブで取り上げるのは 用意しなくても、素直で
素朴な言葉にこころ打たれることがあるという例です。
ご期待ください。ハハハ。


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by toruiwa2010 | 2011-09-25 09:29 | 放送全般 | Comments(6)
Commented by kanada at 2011-09-25 10:33 x
岩佐さんおはようございます。
今になって考えると岩佐さんの実況が自然体だったから心地良く試合に集中できたのだとわかりました。選手を紹介する際に身長と年齢を言われるのが思い出されます。早野さんとのやりとりも実に楽しそうだったのも印象深いですよ(笑)
Commented by ルナパークゴー at 2011-09-25 10:57 x
岩佐さん、ブログ拝読致しました。
仕込みコメントについては同感です。最近特に文章力や取材力がないのにもかかわらず、長々とドヤ顔で煽り入れられても、なんだかなあって感じですね。
実況・解説はコンビ漫才に匹敵する話芸と思ってみてますので、キャラ押しよりも上手いやり取りの方が好みです。場合によっては試合そっちのけで実況・解説の話芸を楽しむこともありますが、まあ今の地上波ではあり得ませんね。
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-25 12:07
kanadaさん、こんにちは。

心地よかった・・・うれしい言葉です。多謝。

体重を言わなかったのは、いつ計量したのか不明なことと
「自己申告」がほとんどだったからです。
ボクシングや相撲ならきちんとはかってますから言いますし、
ラグビーのように体重が大きなポイントになる競技なら言います。
私が担当した競技ではボクシング以外に体重が意味を持つ種目は
ありませんでした。
テニスやサッカーで、際立った大男、際立った細身でもないのに、
体重を言っているのを聞くと、「わかってないなあ」と思います。
ハハハ。
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-25 12:11
ルナパークゴーさん、こんにちは。

上手いやり取りの方が好みです・・・
その意味では、江川(野球)と組んでみたかったし、
早野(サッカー)とも、もっとやってみたかったですね。

受けるのは苦手ですが、解説者を“イジリ”ながら
話を進めるのは得意でしたから。ハハハ。
Commented by ひろ☆はっぴ at 2011-09-26 00:13 x
ルナパークゴーさんが書いていらっしゃるように、解説と実況の関係は「ボケとツッコミ」に近いものがあると私は思います。関西の血が入っている岩佐さんは自然にそのようなやりとりができたのではないでしょうか。人が発する言葉ですもの、血が通ったやり取りをきかせてほしいものです。

岩佐さんと組んで欲しかった解説者の一人に福本豊氏を挙げたいと思います。ユーモアもさることながら、お粗末なプレイに対する辛辣さはムッシュ吉田に引けを取りません。もしMXテレビで放送がありましたら聞いていただきたいですbyひろ☆はっぴ
Commented by toruiwa2010 at 2011-09-26 07:51
ひろ☆はっぴ サン,おはようございます。

福本氏の解説は1,2度ちらっと聞いただけで
どんな“傾向”があるのか分かりません。
少し“とぼけた”感じですかね。
吉田さんには、間接的な言い方で
「私が言うてるのはそういうこととは
ちゃいまんねん」と指摘されたことが
何度もあります。
おおむね楽しくやれるのですが、そんな時は
「コノヤロー」と思ったものです。ハハハ。
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