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岩佐徹のOFF-MIKE

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Archives「“飾らない言葉”が胸を打つ#1~Series:アナウンサー、実況&放送全般~」11/10/01

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先週のアーカイブスでは、言葉を用意する実況について
3人のアナウンサーを取り上げました。はっきり言って、
このタイプの実況は、やるのも聞くのも苦手です。

画面のプレーや光景にピッタリ合った描写なら、多少の
絶叫は我慢できますが、アナウンサーが頭の中で考えた
言葉でこちらの感情を“誘導”されるのは御免です。

今週は、素直で素朴な言葉が人の胸を打った例です。


【忘れられないアスリートの言葉】2002.12


長い、長いスポーツの歴史の中には数々の記憶に残る言葉があります。
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「我が巨人軍は永久に不滅です」 長嶋茂雄:'73年現役引退

「いままで生きてた中で一番幸せです」 岩崎恭子:'92年バルセロナ五輪

「初めて自分で自分をほめたいと思いました」 有森裕子:'92年バルセロナ五輪


書き出せばきりがありませんが、アスリートの言葉に激しく心をゆさぶられたことが
これまでに二度ありました。
ひとつは東京オリンピック、マラソンの銅メダリスト、円谷幸吉の遺書です。
1968年1月9日に自殺でこの世を去りました。

「父上様、母上様、三日とろろ美味しゅうございました。
干し柿、モチもおいしゅうございました。
敏雄兄、姉上様、おすし美味しゅうございました。
克美兄、姉上様、ブドウ酒とリンゴ美味しゅうございました。
巌兄、姉上様、しそめし、南ばん漬け美味しゅうございました。
喜久造兄、姉上様、ブドウ液、養命酒美味しゅうございました。
又いつも洗濯ありがとうございました。
幸造兄、姉上様、往復車に便乗させて戴き有難うございました。
モンゴいか美味しゅうございました。
正男兄、姉上様、お気を煩わして大変申しわけありませんでした。
幸雄君、秀雄君、幹雄君、敏子ちゃん、ひで子ちゃん、良介君、敬久君、
みよ子ちゃん、ゆき江ちゃん、光江ちゃん、彰君、芳幸君、恵子ちゃん、
幸栄君、裕ちゃん、キーちゃん、正嗣君、立派な人になって下さい。

父上様、母上様、幸吉はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません。
何卒お許し下さい。
気が安まることもなく御苦労、御心配をお掛け致し申しわけありません。
幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました。」
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何回読んでも、「立派な人になってください」あたりから涙で文字がにじんでしまいます。
円谷には、その年メキシコで開かれるオリンピックでも東京に続いてメダルが期待されて
いました。しかし、故障もかかえて 思うように調子が上がらない彼にはまわりが想像する
以上の重圧がかかっていたのでしょう。それでなくても孤独と言われるマラソンランナー、
彼はとりわけ寡黙、忍耐、責任感と言う言葉が常について回る男でした。

そしてこの文面に見られる周囲への思いやりはどうでしょう。
彼の人柄すべてがここに出ています。
ノーベル賞作家の川端康成はこの遺書を「千万言もつくせぬ哀切。美しくて、まことで、
かなしいひびきだ」と絶賛しました。
私にとってもこの文は30年以上たった今も決して忘れることのできないものです。


…難しい言葉は一語も使われていません。
しかし、この遺書はどんな言葉より胸に響きます。

自衛隊員だった彼は宿舎のベッドで手首を切るとき、
血が飛び散って周囲を汚さないように毛布を巻いて
いたと当時の新聞は伝えていました。


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by toruiwa2010 | 2011-10-01 08:09 | 放送全般 | Comments(7)
Commented by しょう at 2011-10-01 11:58 x
岩佐さん、こんにちは。

いつから、
純粋でまじめな人間が生きていくには
難しい世の中になったのでしょうか。
切ないです。涙。
Commented by toruiwa2010 at 2011-10-01 21:04
しょうサン、こんばんは。

彼の自殺第一報を聞いた時の
とっさの反応は「なんと痛ましい…」でした。
そう思わせる男でした。

大阪に行っていたので返事が遅くなりました。
Commented by minix7 at 2011-10-01 22:31 x
有名な遺書ですね。
ご両親はどのように嘆かれたでしょうか。哀しいです。
前半の美味しかった食べ物の記述が、遺された家族にはたまらなかっただろうなと思います。
Commented by 赤ぽん at 2011-10-02 08:40 x
岩佐さん、おはようございます。

自殺するほど追い込まれた人間が心から書いた言葉たち・・・
川端康成の表現、端的で的確。
「幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました。」
ずっと御礼やら詫びやら書いてきてこの最後の一行の重さ、胸に響きます。
Commented by toruiwa2010 at 2011-10-02 08:55
赤ぽんサン、おはようございます。

最後の一行の重さ、胸に響きます…

まさに、おっしゃる通りです。
Commented by at 2012-01-23 15:10 x
岩佐さん、こんにちは。

(もしかしたらすでにご存知かもしれませんが)
沢木耕太郎作の「敗れざる者たち」という短編集の中に円谷幸吉選手を取り上げているものがあります。
彼がマラソン選手として活躍するまでと、死に至るまでのドキュメンタリーが描かれており、それを読んで思わず涙しそうななったことを、このエントリー記事を読んで思い出しました。

人間の心の底から湧き出てくる飾らない言葉ほど、人の心を動かす、その通りですね。
Commented by toruiwa2010 at 2012-01-23 15:15
紅さん、こんにちは。

沢木耕太郎はデビューのころ何冊か続けて読んだほど
好きな作家です。記憶が薄れましたが、「敗れざる…」も。

この円谷の遺書は本当に読む者の胸を打ちますね。
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