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岩佐徹のOFF-MIKE

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Archives「“飾らない言葉”が胸を打つ#2~Series:アナウンサー、実況&放送全般~」11/10/02

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人によって違いますが、アナウンサーに求められる
仕事の中でインタビューは難しいものです。
勝って気分が高揚している選手に聞くのは楽ですが、
負けた選手が相手のときは気を使います。
本来、そっとしておくべきですが、やれと言われれば
やらないわけにはいきません。ハハハ。

「スピード・スケート:堀井学インタビュー」2002.12


もうひとつは'98年長野オリンピックでのスピード・スケート、堀井学のインタビューです。
彼は、清水より先に世界のヒノキ舞台に飛び出し、'96年ワールド・カップをはじめ数々の
優勝実績も持っていましたが、当時開発されたばかりのスラップ・スケート(ブレードの
かかと部分が、シューズから離れるようになっているもの)への取り組みが遅れました。
その結果として、このシューズにうまく適応していった選手たちに次々に抜かれる中で、
長野オリンピックを迎えていました。
500㍍で13位と敗れたあと「気持ちを入れ替えてがんばります」と言っていましたが、
1000㍍でも完敗でした。以下は その1000㍍のあとのインタビューです。
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 S:堀井さん、このような厳しい状況のなかで話を聞くのを許してください。
   つらいと思う。ねえ。
   どうでした、きょうは?
 H:えー・・・(話そうとするが涙)
 S:つらいねえ?
   オリンピックの難しさを・・・
   あなたもそうだし、ウォザースプーンも負けた・・・
   そういう感じってあります? 難しかった?
 H:そうですね・・・この日本開催の・・・(懸命に言葉を捜すが見つからない)
 S:プレッシャーがあった?***
 H:エッ。いえ。大声援の中で、期待にこたえられなかったっていうのがすごく、
   くやしいですね。
 S:でも、だれもあなたを責める人はいないと思います。
 H:はい。
 S:つらかったと思います。
 H:たくさんの・・・この日本開催の長野オリンピックで・・・
   たくさんの子供たちにオリンピックのすばらしさは、
   僕自身伝えることは出来たんじゃないかと思います。はい。
 S:まだ、滑り続けるでしょう?
 H:え、はい。このくやしさをバネにがんばります。
 S:どうも有難うございました。どうぞユックリ休んでください。
 H:どうも有難うございました。

SとあるのはNHKのベテラン、島村俊治アナウンサーです。
時間にして1分46秒、とても難しいインタビューだったと思います。
普通、敗者はそっとしておいてあげるものです。まして、期待されながら惨敗した選手に
対しては、少なくとも顔が出てしまうテレビは インタビューを申し込まないのが常識だと
思います。しかし、このとき、ジャパン・コンソーシャム(NHK/民放共同制作チーム)の
担当者は、「やるべきだ」と判断したのでしょう。
そして、やっただけのことはあったと思うのです。
文字だけでは分かりにくいでしょうが、まるで“激痛”に耐えているかのような表情で、
一語一語、腹の底からしぼり出すように話す堀井選手の言葉や、話し方は彼の人間性を
表していて私も涙があふれました。
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全選手が滑り終わったあとリンクを降りた彼が島村アナのところに来るのを見て、まず
驚きました。私の経験と常識では、こんなときにテレビカメラの前に立つアスリートが
いるとは思っていなかったからです。きっと、彼の責任感がそうさせたのだと思いますが、
忘れてならないのは、この時のインタビュアーが経験豊かな島村アナだったことです。
ポイントは、多分 事前の取材を通じて築かれていたと思われる“信頼関係”が2人の間に
うかがえたことです。2人の間の関係はテクニックよりはるかに重要だと考える私には、
ほかのアナウンサーではこういうインタビューにはならなかったと断言できます。

円谷・堀両選手に共通しているのは、2人には、「いいことを言おう」とか「うまく話そう」
とかの邪心が、一切ないことです。
頭に浮かんだまま、シンプルに、そして素直に文字にした、あるいは口にしたからこそ
これらの言葉が人の胸を打つのではないでしょうか。
少々強引かもしれませんが、スポーツの実況も同じで、状況そのものが、人々の共感や
感動を呼ぶとき、“飾った言葉”、“作った言葉”は必要ない、むしろ邪魔になると教えて
くれていると思うのです。


ベテラン・島村アナにとっても厳しい条件だったことは
丁寧な言葉と“タメグチ”っぽい言葉が混在している
ところにうかがえます。
しかし、これは放送史に残るインタビューだと思います。

***は言葉に詰まった堀井を助けようとしての質問でしたが、
あえて無言のままマイクを堀井の前に残し、話し出すのを
待っていたら100点満点だったでしょう。“上から目線”で
言っているのではありません。これだけのインタビューは
たぶん ほかの誰にもできないとリスペクトした上の話です。

ただし、今日のアーカイブにこのインタビューを選んだのは
堀井の言葉が持っている“力”を示したかったからです。
映像を見ると分かりますが、彼は そのとき胸にあったことを
言葉にしようと精いっぱい努力していました。だからこそ
見る人の胸を打ったのです。
心に残る素晴らしいインタビューになったのは彼の人間性に
負うところが大きかったのだと思っています。


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by toruiwa2010 | 2011-10-02 08:43 | 放送全般 | Comments(10)
Commented by ルナパークゴー at 2011-10-02 08:57 x
ブログ拝見いたしました。当時の記憶はないのですが、文面だけで鳥肌が立ってきました。
島村アナはJSPORTSのプロアマ問わずの野球実況で今も大変楽しませてもらっているので、こういう話を聞くとすごく納得します。
これからもブログ楽しみにしています。ありがとうございます。
Commented by toruiwa2010 at 2011-10-02 08:59
ルナパークゴーサン、おはようございます。

島村実況のファンは多いようですね。
すでに現役を引退した身にはうらやましい限りです。
ハハハ。
Commented by Tomoko at 2011-10-02 09:24 x
普段はやはり、負けた人にインタビューするなんてひどいな~、ほっとけばいいのに、と思ってTVを観ています。でも、今回岩佐さんのブログを読んで優しい気持ちになりました。アナウンサーの方々がいろんなスポーツの全てに精通することは難しいと思います。でも、このように、知らないところで努力されているのですね。実況前に資料を読んで勉強するだけではないのですね。
TVでスポーツ中継が増えることを願います。岩佐さんがおっしゃったような話を生できいてみたいです。
ありがとうございました。
Commented by toruiwa2010 at 2011-10-02 09:35
Tomokoサン、おはようございます。

アナウンサーに限らず、どんな仕事をしていても、
陰の努力は必要だと思います。
実況アナが、目の前のプレー描写しているだけでは
ないことを分かっていただければ十分です。
あまりほめる必要はありません。ハハハ。
Commented by 老・ましゃこ at 2011-10-02 13:49 x
色々なかかわりの中で生まれる信頼関係…形はどうあれ私もそういう深いところで理解しあえるような関わりに憧れます。
Commented by toruiwa2010 at 2011-10-02 14:03
老・ましゃこさん、こんにちは。

アスリートと取材者の関係では、
「こいつ(この人)分かってるな」と思わせたら
しめたものですね。
残念ながら私はとてもそこまで行きませんでした。
Commented by 赤ぽん at 2011-10-03 09:52 x
岩佐さん、こんにちは。

「敗者には何もやるな」確かボクシングで聞いた覚えのある言葉です。
このインタビュー覚えていますが、マスコミがなんて辛いタイミングで敗者に
聞くんだろうと思ったと同時に、島村アナの引き出し方なのか画面に引き込まれ
たのを覚えています。
開催地日本での五輪でまさに”命がけ”のプレーのあと、負けた選手のコメントを
引き出すアナの心境たるや・・・そしてそれに対して顔をくしゃくしゃにして
涙ながらに答える堀選手の表情・・・忘れられない長野の場面でした。

先日、落合監督と江川の球場での対談を見て、「こいつ(この人)分かってるな」と思わせたら・・・を少し思いました。
Commented by toruiwa2010 at 2011-10-03 10:28
赤ぽんサン、こんにちは。

島村アナもグッジョブでしたが、このインタビューが
印象深いのはとりもなおさず堀井の人間性のゆえだと。

江川がよかった…のでしょうか?
こと、野球に関しては、この二人、見事だと思います。
人が何と言おうと。ハハハ。
Commented by 赤ぽん at 2011-10-03 20:15 x
岩佐さん、こんばんは。

キャスター江川も2人の関係性なのか結構突っ込んで聞いてましが、むしろ
落合監督が江川を認めていて、彼に監督として野球というものをどう見ているか、
どう見るのが良いか等を語っていました。
この二人、年齢は少し違えど同期デビューだと番組で知りました。
〈こと、野球に関しては、この二人、見事・・・〉完全禿同です!
Commented by toruiwa2010 at 2011-10-03 20:50
赤ぽんサン、こんばんは。

分かる人には分かる…ということですね。
9割のボンクラには分かってもらえなくても
1割の優れた人に分かってもらえば…。
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