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岩佐徹のOFF-MIKE

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“ダメ”だと思う実況例5~岩佐徹的アナウンス論 9~12/01/29

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・・・つづき

用意した言葉が胸を打つか?


全般的な印象としてNHKのスポーツ・アナには一定の傾向が流れているようです。
“決まりごと”として教えられているらしいものもから、単なる“クセ”らしきものまで、
聞いていると気づくことがいろいろあります。

解説者の話に「はい」や「なるほど」で反応しないのはたぶん決まりごとでしょう。
自分で質問しておいて、その答えをスルーした形になるやりとりはすごく変です。
民放のアナは声で反応するのが普通ですが、おそらくNHKでは うなづくだけでいい、
いちいち返事をするな…と教育されるのだと思います。
放送席以外からのリポートにも直接は反応せず、必ず、そこから“広げた”話に持って
いきますが、そのたびに「民放とレベルが違うんだ」と言っているように聞こえます。
はいはいはい、こちらの“コンプレックス”なんでしょうね。ハハハ。

たびたび指摘している「クロスが来た」、「シュート 来た」に始まって極端なケースでは
「逆転 来た」、「メンバー交代 来たあ」まで、なんでも“来る”と描写するのは 先輩を
見習っているうちに受け継がれて“来た”のでしょう。
彼らは自分の実況を録画して見ないのだろうか?見てもヘンだとは思わないのだろうか?
…不思議でなりません。来る、来るって、ザキヤマじゃないんだし。ハハハ。
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話がそれてしまいました。“用意した言葉”に戻りましょう。
状況を想定して、それに合わせたコメントを準備するというやり方も、先輩から後輩へ
脈々と受け継がれてきたのではないかと思います。
ただし、部内で異論が出なかったはずはありません。誰かが“疑問”を抱いても当然です。
“気恥ずかしい”、“照れくさい”と考えるアナもいたでしょう。
本心をいえば、もう一歩進んで、“実況の本来のあり方ではないから、やりたくない”と
思ってほしいのですが。ハハハ。

しかし、民放にくらべると、NHKでは先輩-後輩の関係がきびしいようです。昔ほどでは
ないものの、取材現場の先輩の横で“かしこまっている”若手をよく見かけます。
そんな環境の中で、若い人たちが、知らない間に先輩の“真似”をしてしまうのは自然の
成り行きです。しかも、用意したコメントがうまく決まって 視聴者からの評判もいいと、
“病みつき”になります。“麻薬”と呼ぶゆえんです。

たとえば、これは2006年ワールド・カップ、ドイツ大会 日本vsクロアチアの内山アナ・・・

日本サッカーが問われる瞬間がやってきました。
90分間の集中力だけではありません。
これまで費やしてきた日々を思い起こすことです。
決してくじけないことです。くじけたとき、日本サッカーの
ドイツでの挑戦は終わりを告げます。
ワールド・カップ・ドイツ大会、グループ・リーグ日本対
クロアチア。両チームともに決勝トーナメント進出をかけて、
生き残りをかけた一戦となりました。

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どこか、山本先輩と似てませんか?
それより、お聞きになってどうでしたか?
私は“実況”を仕事にしてきた者として、納得がいきません。
何よりも、これは試合前夜のホテルの一室でも、もっと言えば、日本を出る前に自宅の
リビング・ルームでも作れる文章であることにガッカリするのです。
なぜ、スタジアムのスタンドに座っているあなた自身が見たまま、感じたままを言葉に
しないのですか?と問いたいのです。

言葉を商売道具として経験をつんできたアナウンサーなら、この程度の文章はいくらでも
作れるでしょう。しかも、たったこれだけの文章なのに、いくつものほころびがあって、
私だったらこのまま口にするのをためらいます。

オープニングをカッコ良く決めたいと考えるアナウンサーは多いです。ここでつまずくと、
人によっては、全体に影響してしまうことがあるからです。
そのためにあらかじめ原稿をつくります。それを“予定稿”と言うのです。
用意した言葉が人の胸を打つ、と考えるのは錯覚ではないでしょうか?
ワールド・カップ、オリンピック、世界陸上・水泳、グランド・スラム…舞台、状況が
すでに感動を呼ぶようになっているのです。違いますか?
その感動をぶち壊しにするのが“作文”です。

アテネ・オリンピック体操の実況、「…栄光への架け橋」が典型的な例です。
あの、アナウンスがなくても、あの演技、数十年ぶりの団体金メダル…見ている人たちが
感動する要素は十分だったのですから。

「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架け橋」と満を持して放ったフレーズが冨田の
着地の瞬間とぴったり重なったときの刈屋アナは“またとない”快感を味わったはずです。
「打ったー。大きいっ!伸びる、伸びる、ぐんぐん伸びる、入った、ホームランッ!!
○○○○ サヨナラ勝ちィ」という絶叫がはまった実況アナも同じです。
怖いのはそれが“病みつき”になることです。自覚症状がないままに。ハハハ。
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立会いの変化やはたき込み(相撲)、スロー・ラボーナやバイシクル・キック(サッカー)、
ドロップ・ショットや股抜きショット(テニス)、カーブやセーフティー・バント(野球)…
どんなスポーツにも、多少、危険はあるけどうまく決まったら“してやったり”という
気持ちになれるプレーがありますが、一度、成功するとその“誘惑”に打ち勝つことが
難しい点で共通するものがあります。
絶叫や用意した言葉も同じです。どちらも“麻薬”だと思わなければいけません。

自分が嫌いだし、ほとんどやらなかったので、ビッグ・イベントのたびに、担当アナが
用意したコメントをしゃべり出したり、それほどの場面でもないのに声を張り上げるのを
聞くたびに「おやおや…、また始まったよ」と“落ち込んで”しまいます。

一方で、支持する視聴者が大勢いることも承知しています。要は、“ほどほど”という
ことなんでしょう。ただし、“ほどほど”ほど難かしいものはなくて。ハハハ。

つづく・・・
by toruiwa2010 | 2012-01-29 08:07 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(14)
Commented by せまだらん at 2012-01-29 09:21 x
岩佐さんのテニス実況が大好きだったので、一連のブログを拝見していると、なるほど、と納得する部分が多いです。

昔、会社の同僚から地上波で放送していたグランドスラムの何かの試合を見逃したので貸してくれと言われ、岩佐さん、柳さんコンビの録画を貸したら「音声が入っていないのかと思った」と言われたのを思い出しました。
感じ方は人それぞれですね。
Commented by S_NISHIKAWA at 2012-01-29 10:20 x
先週からのお話、まさにその通りです。
私も、今、現場にいる人間が見たまま、感じたままを言葉にするのが一番感動を与えられると思うのですが。。。
Commented by toruiwa2010 at 2012-01-29 10:36
せまだらんサン、こんにちは。

「音声が入っていないのかと思った」・・・
そりゃ、ちょっとまずいですね。ハハハ。
Commented by toruiwa2010 at 2012-01-29 10:37
S_NISHIKAWA サン、こんにちは。

ありがとうございます。
結構、ポジティブな反応があるのでうれしいです。
Commented by 老・ましゃこ at 2012-01-29 14:15 x
オリンピック体操の“栄光のかけ橋だぁ…”を、リアルタイムで聞きましたが、
TVの映像が伝えている感動を台無しにされてしまったと思い、
私は素直に感動に浸ることができませんでした。
あのアナウンサーはなんてことを言うんだ!という思いでした。
着地する前に叫んでいましたから、もしかして着地が失敗した時に備えて、
その場合の“予定稿”も用意していたかもしれないですね。

内山アナウンサーの“作文を”眺めていて…
演歌歌手の楽曲をイントロ部分にかぶせる紹介文みたいだなと思っちゃいました(^^)
Commented by toruiwa2010 at 2012-01-29 14:20
老・ましゃこサン、こんにちは。

常連さんの中には、正面切って反論する人は
あまりいないようですね。
刈屋アナについて書くときは、痛烈な反撃を
覚悟しているのですが、肩すかし。ハハハ。

本当に、着地で失敗したときはどうしたのだろうと
人ごとながら気になります。
Commented by デルボンバー at 2012-01-29 18:35 x
常々岩佐さんが言われている事と重なってしまうかもしれませんが、結局、何が(誰が)主役なのかと言うことですよね。今はスポーツ中継と言うよりは、完全にひとつのエンターテイメント番組になっちゃってますものね。勿論スポーツ中継は娯楽番組なんですけれど…。
Commented by toruiwa2010 at 2012-01-29 19:11
デルボンバーさん、こんばんは。

私の持論は放送といえども、スポーツ中継は
エンタテインメント、ですが、今の放送は意味が違います。
Commented by nanana at 2012-01-29 22:40 x
話は変わりますが全豪男子決勝見ていて実況の久保田アナは言い間違えも多いし、英語の用語を説明せずにそのまま使うこともあり聞いていてあまりいい印象がありません。岩佐さんは本当に素敵な実況で良かったです。今いるアナウンサーなら鍋島アナが一番かなあ。岩佐さんが好きなタイプではないかも知れませんが、真面目にテニスを勉強していてテニスを好きな雰囲気が伝わってくるのが好印象です。
Commented by toruiwa2010 at 2012-01-29 22:48
nananaさん、こんばんは。
すごい試合になってますね。
おっしゃることはよーく分かります。
Commented by S_NISHIKAWA at 2012-03-04 18:18 x
“予定稿”を用意した実況はつまらない、と岩佐さんに賛同してきましたが、思いがけない話を聞きました。
私がメディアの世界に入るきっかけになったアナウンサーの「師匠」のような方のお1人が、この“予定稿”で、エリート人生を終わられていたと聞き、驚きました。相撲の実況では有名な方でしたが、今はご出身の地でアナウンサーを続けられています。
まさか、予定稿でか!と理由をお聞きし、驚きました。
つまらぬ下世話な話で失礼しました。
Commented by toruiwa2010 at 2012-03-04 18:40
S_NISHIKAWAさん、こんばんは。

予定稿でエリート人生を終えた・・・
最後がそうだったのか、相撲実況では常に
予定稿を使い、それで成功したという意味かが
分かりません。
たぶん、今の予定稿とは違うものだったと思いますが。
それで、納得されているなら、それでいいのでしょうね。
Commented by S_NISHIKAWA at 2012-03-04 19:01 x
岩佐さん、言葉足らず失礼しました。
彼が予定稿で失敗したのは、相撲ではありません。とあるスポーツ大会開会式のラジオ実況だったそうです。
詳しく書くと誰だかわかってしまいそうですからボヤかしますが。
開会式にいなかった選手がいるかのような実況をしたことが原因であったと聞きました。
そんなのなくても「できる」アナウンサーでしたが・・・
Commented by toruiwa2010 at 2012-03-04 19:09
S_NISHIKAWAさん、分かりました。
誰のことかも分かりました。
しかし、最初の投稿では、失敗したとは
思いませんでした。ハハハ。
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