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岩佐徹のOFF-MIKE

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“ダメ”だと思う実況例6~岩佐徹的アナウンス論 10~12/02/04

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・・・つづき

どうしてもできない“応援放送”


テニスに限らず、応援放送をしたことはないつもりです。
しかし、“テレビ屋のエゴ”として、視聴率の取れる選手・チームには勝ち進んでほしいと
思いながら実況していたことは認めます。ハハハ。

メジャーを追っていた1980年前後、ヤンキースとドジャースがそれぞれのリーグで優勝を
争っていたら、議論の余地なく、この両チームを応援しました。そのほうがいい視聴率を
期待できるからです。
トーナメントで特定の選手・チームを応援している人たちは、強敵が負けてくれたほうが
嬉しいでしょうが、私たち…少なくとも私には 違う“発想”があるのです。個人の好みは
がまんしてでも、スポンサーも喜ぶいいカードになって、多くの人に聞いてほしいという
アナウンサーとしての欲も顔を出すのです。

“純粋な”スポーツ・ファンにとっては身も蓋もない話ですが、テレビ局とスポーツの間の
“関係”はみんな、そんなものだと思ったほうがいいでしょう。
たとえば ワールド・カップでは、各テレビ局はグループ・リーグの成り行きを祈るような
気持ちで見守るはずです。クジで放映が決まっている決勝トーナメントの対戦カードが
ファンの間で人気の高い国同士になることを願うからです。
もっと言えば、グループ・リーグの第3戦の権利を持っている局は、それが消化試合に
ならないようにと、固唾をのむ気持ちでしょう。ハハハ。

かつて、中田英寿がイタリアに渡った1998年、WOWOWは毎週のようにペルージャ戦を
優先的に生中継しました。ミラン、インテル、ユベントスがからんだその節の好カードを
後まわし(録画放送)にして。
順序が逆だろうと頭に来ましたが、“中田効果”で加入者がどっと増え、ペルージャ戦は
好視聴率でしたから、正解だったのでしょう。
しかし、周りが盛り上がれば盛り上がるほど、私の気持ちは冷めて行きました。
アマノジャク。ハハハ。

幸い、ペルージャ戦を担当することはそれほど多くありませんでした。
やればペルージャ=中田寄りの放送が求められるし、それは若手のほうが得意ですから、
私としては担当できなくても問題はありませんでした。
しかし、そのために好カードが脇に追いやられるのは我慢ならず、シーズンもたけなわの
第20節、3位フィオレンティーナvs1位ミランというカードが録画放送に回されたとき、
私の頭の中で何かが“プッチン”と音を立てて切れました。ハハハ。
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ミラン戦を担当した私は番組の冒頭でカメラに向かってこう言いました。
「サッカーが“ほんとーに”お好きな皆さん、お待たせしました」と。
せめてもの憂さ晴らしでしたが、「ガキだ」と言われるわけです。ハハハ。

60歳代から上の同業者なら、プロデューサーやディレクターから「つまらない試合でも
つまらないと言うな、大勢が決したと思ってもそれは言うな」と注文をつけられた経験が
あるはずです。視聴者が“逃げる”と思っているわけです。見ていれば分かることなのに、
それを送り手が確認してはいけないというのが彼らの論理です。高い金を出してくれる
スポンサーに申し訳ないから、という理由もあったでしょう。
“盛り上げろ”は彼らが“ひとつ覚え”で口にしていた言葉ですが、かなり苦痛でした。
ずいぶん視聴者をバカにした発想じゃありませんか。

ユーロ2004のときの私はいろいろないきさつがあってQFまでで帰国しました。
カードはフランスvsギリシャ、開幕前は予想もしなかった顔合わせになりました。
私にとって最後のサッカー実況になったこの試合のお相手は早野さんです。
どんな競技でも一番面白いと言われるQFだし、快進撃が続くギリシャと強豪・フランスの
対決だし、相手が早野さん…「これはついてるなあ」、と思いました。事実を伝えながら
早野さんと少しくだけた話もできそうだとわくわくしながら放送に臨みました。
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…期待は大きかったのですが、残念なことに凡戦でした。
終盤を迎えたところで、隣の席のプロデューサーが「なんとかテンションを上げて欲しい」
というジェスチャーを送ってきました。
「テンションを上げるって…この試合をどう盛り上げるの?」っていう感じでした。

東京のスタジオから言ってきたようですが、現場でこの試合を目撃している早野さんや
私にしてみれば、これはむしろ“盛り上げてはいけない”試合でした。
もちろん、二人とも「凡戦ですねえ」とは言いません。“淡々と”伝えただけです。ハハハ。
…こんな指示を受けたのは、何十年ぶりでしょうか。いまどき、まだのそういうタイプの
制作者がテレビ業界に残っていたことにビックリしました。

あとで聞いたところでは「このまま終われば大波乱。フランスまで負けてしまうのか?」
というニュアンスでしゃべって欲しいとのことだったそうです。しかし、そんなことは、
私が言うまでもなく、世界中のテレビの前で人々が感じていたことではありませんか。
何故、わざとらしい演出をしようとするのか理解に苦しみます。
“過去の亡霊”に出会ったみたいで、放送中も、放送後も激しく落ち込みました。ハハハ。

つづく・・・
by toruiwa2010 | 2012-02-04 08:26 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(2)
Commented by ひろ☆はっぴ at 2012-02-04 10:04 x
どうせやるなら「前畑頑張れ×∞」ぐらいやった方が気持ちがいいですね。どうも中途半端な気がします。本来の意味の実況をしつつ(局によっては作文読みを交えつつ)その一方で視聴率のためのエンタテイメントの部分も、と支離滅裂になっているようですね。

その点で残念なのは、実況もそつなくこなし、お笑いの要素もしっかりふまえてゲストをいじる余裕もある伊藤利尋アナが実況の現場から離れてワイドショーの新番組に行ってしまうことです。F-1の実況は続けて欲しかったのですが…もう地上波撤退だから諦めますか。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-04 10:17
ひろ☆はっぴサン、こんにちは。

残念ながらスポーツ中継は「XXXの実況だから」
と言ってみてくれることは少ないです。
一方でワイドショーは司会の力・人気に頼る以上、
仕方がないでしょうね。
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