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岩佐徹のOFF-MIKE

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“ダメ”だと思う実況例8~岩佐徹的アナウンス論 12~12/02/11

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・・・つづき

情報の押しつけ


実況を聞いていて鬱陶しい気持ちになることがあります。「これだけ勉強してきました」と
言わんばかりの情報の提供、「皆さんより私の方がこの競技についてよく知っています」と
自分が視聴者より高いところにいるようなしゃべりかた…聞く者は不愉快になります。

はじめの方で“さりげなく“と書きました。しかし、実際はそれほど簡単ではありません。
人間誰でも 知っている事、一生懸命調べて手に入れた情報はしゃべりたいものです。
ほかの機会にでも使えるならともかく、その時 その試合にしかしゃべれない話だったら、
どうしたって使いたくなります。私も、何度その誘惑に負けたか分かりません。ハハハ。
「無理に使うのは止めよう」と、我慢できるようになったのは年を重ねてからのことです。

スポーツ・アナは タイプによって“データ派”と“非データ派”に分類できるようです。
前者は 放送にあたってデータや情報を重視し、それに頼るタイプ、全く無視するわけでは
ないけれど、無ければ無いで対応できてしまうのが後者です。私はデータ派でした。
放送に関しては臆病でしたから、「こういう記録が出るのではないか」、「解説者にこんな
ことを聞かれるかも知れない」、「試合の流れによって このことも話したい」と 次から次に、
実際に必要となる可能性は低い情報、データまでも自分に要求してしまうのです。

揃えば、安心して放送席に座れますし、一つでも欠けていると、不安で落ち着きません。
結果として、一言も触れられないまま闇(?)に消えた話は山ほどあります。
時間も労力ももったいないから準備するのをやめるかと言えば、それはありえないのです。
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フジテレビの後輩に、典型的な「非データ派」がいました。
彼は「実況は消える芸術」と称して 自分が実況したビデオテープはめったに見ないという
“見上げた”根性の男でした。ハハハ。
'79年に ほぼ一シーズン 大リーグを追いかけてアメリカに滞在した私がオールスター・
ゲームをはさんで一ヶ月 帰国した間を埋めてくれたのが彼です。

大リーグの実況にのめり込んでいた私はあらゆる情報源から手に入れた大量の資料を
持ち込んで放送に臨んでいました。一方、彼は少し“距離をおいて”この仕事に対応して
いました。スーツケースの中にはほとんど資料らしいものはなく コーディネーター兼務で
アメリカに駐在していたプロデューサーから数時間レクチャーを受けただけで準備完了、
悠然と球場に向かって行くのでした。ハハハ。

彼は競馬も担当していましたが、若いディレクターの間から、「あの人は競馬エイトだけで
実況をやっちゃうからなあ」と、賞賛とも不満とも取れる話を聞いたことがあります。
生中継の時は、まさかそんな事はないのでしょうが、ダイジェスト番組用にレースだけを
追うときの話です。普通のアナウンサーだったら そんなときでも馬名や勝負服を記入した
(“塗り絵”と言います)資料ぐらいは用意するのに、彼はそれさえ不要だったようです。

同業者の目にはどうしても“手抜き”に見えてしまいますが、彼には特技がありました。
視聴者にはそう思わせないという…。ハハハ。
当然“かげの努力”はあったでしょう。解説者とのやり取りなどで、“勉強不足”などとは
言わせないだけの放送をやる才能があったからこそ可能だったことで、誰にでもできる
わけではありません。
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’70年代の名馬・ハイセイコーがあるレースで直線を向いてもまだ不利な状況だったとき、
彼が「さあ、あと200しかないよー」と叫んだことがあります。数日後の新聞のラテ欄にも
取り上げられていましたが、テレビの前の人たちの気持ちとぴったり重なった一言でした。
…やるときはやる男だったのです。ハハハ。

“調べた事はしゃべりたくなるもの”…それが、一番厄介なところです。
私の経験では10個 用意した情報のうち、二つ、三つ、“無理なく”放送に盛り込めたら
うまく行ったほうだと思うべきです。
無理なく…とは、実況の流れを損なわず“自然に”情報を提供することを指します。
多くの視聴者の間で日本テレビの“資料読み”は評判が悪いですが、おそらく それは
実況の流れを中断する形で話されるからだと思います。
関係者から「紙に書いたネタをしゃべるたびに一つずつペンで消すのを見た」という話を
聞いたことがあります。すべてのアナがそうだとは思いませんが、“初めに情報ありき”は
視聴者が望む放送ではないでしょう。

現役最後のころの私は 準備には相変わらず時間をかけ できる限りの情報を用意しても、
それを1枚の紙に集約して書き込んだあとは、放送の1,2時間前に一度 読み返すだけで
放送中はあまり見ないようにしていました。情報を集めているときや最終的な書き込みを
するときに、ボールペンを握った手がかなり記憶しています。ですから、実況しながら
自然に思い出すことだけを話す方が“押し付け”にならないのです。

思い出さなかった情報はたいしたものではないと考えればいいのだと思っていました。
放送が終わったあと、資料をチェックすると大事な話が落ちていたりすることがあっても
「うるさいなあ」と思われるよりはマシだと考えるようにしていました。

つづく・・・

おとといの朝、フェースブックを閉鎖しました。
開店休業状態だったし、使い方がよく分からないところもあり、
手ごたえもなくて・・・。
予告から閉鎖まで時間が短く、伝わらなかった「お友達」には
謝ります。ごめんなさい。

by toruiwa2010 | 2012-02-11 09:13 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(12)
Commented by dondontei123 at 2012-02-11 10:44 x
こんちには。大変失礼しました。あのハイセイコーのNHK杯の名セリフは岩佐様だったのですか?!感動です。東京優駿の実況も岩佐様が担当されたんですか?当時の競馬についてもよろしかったらいつの日かブログで読めたら幸いです。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-11 11:13
dondontei123さん、こんにちは。

紛らわしくてすみません。叫んだのは「消える芸術」の男です。
修正しときました。私は、競馬は落第しました。いずれ。
Commented by Vevey at 2012-02-11 11:43 x
岩佐さんこんにちは。

その方はM山さんですか?何の下準備もしないで〜という所で、名前が浮かびました。間違ってたら教えて下さい。
「消える芸術」言い得て妙ですね。消えて欲しいと思うことが多いのかも知れませんが。タモリさんも自分の番組は一切見ないそうですね。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-11 11:55
Veveyさん、こんにちは。

ビンゴです。すぐ連想できるところがすごいなあ。ハハハ。
自分の番組を見ないタレント、実況を振り返らないアナは
ほかにもたくさんいそうです。
Commented by Vevey at 2012-02-11 13:43 x
今の忙しさを考えると、伊藤アナも自分の番組は絶対に見ていないと思いますが、彼のすごい所は生放送中に自分の修正点をチェックできているのでは無いかと、それを確実に次に活かしていると思える所ですね。勿論本人に聞いた訳じゃないけど、そこまで信じられる程、伊藤アナを買ってます!
Commented by デルボンバー at 2012-02-11 15:22 x
私もM山さんは好きでしたよ!自分の場合は野球実況しか聴いたことはないですが…フジの場合、なぜかお気に入りのアナウンサーの方はわりと早目に現場から卒業しちゃうんですよね…岩佐さんも急にいなくなっちゃったし。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-11 15:31
デルボンバーさん、こんにちは。

M山ファンは多いです。杉本アナとは
対極にあるタイプで、私も好きです。ハハハ。
Commented by はっちゃん寝る at 2012-02-11 20:50 x
Mアナと言えば84年有馬記念での、「しかし、カツラギエースは一介の逃げ馬ではありません。こっからまた伸びてゆきます」の実況が大好きでした。直線での「シービー来る!シービー来る!・・・シービー3番手まで!」の少し悲しげなフレーズもいいです。
ただし、競馬実況に関してはここ10年ほどグリーンチャンネル(実況ラジオ日経)を見ることが多くなったせいか、地上波の「修飾過剰気味」の実況があまり好きではなくなりつつあります。今だと、毎年中山大障害を担当しているNHKの三浦アナが結構うまいのではないかと思いますが。
Commented by ヤップンヤン at 2012-02-11 22:51 x
競馬担当のアナは、競技の性格からF1も実況することが多いと聞いたことがあるのですが、本当ですか? 
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-11 23:07
ヤップンヤンさん、こんばんは。

…の傾向はあるようですね。
求められる知識は相当に違いますけどね。
Commented by S_NISHIKAWA at 2012-02-11 23:54 x
岩佐さん
特に、競馬の写真以降の文章はおっしゃる通りですね。
天才でない限り、準備は必要ですよね。実況でなくとも、一般社会においても、同じかと。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-12 04:07
S_NISHIKAWAサン、おはようございます。

すべてのアナは準備をするはずですが、その量は
臆病さに比例すると思います。ハハハ。
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