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岩佐徹のOFF-MIKE

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ぜい肉をそぎ落とす~岩佐徹的アナウンス論 15~12/02/19

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・・・つづき

「プロ野球ニュース」と聞いてこのブログを読む人の多くが思い浮かべるのは、たぶん、
1976年から始まった番組だろうと思います。しかし、1963年に入社した私が面接で
「どんな番組をやりたいのか?」と聞かれて答えたのは「プロ野球ニュース」でした。
スケールは小さかったものの、同じタイトル、ほぼ同じ内容の番組が、61年から5年間
放送されていたのです。人気番組でした。
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古い番組には司会者はいませんでしたが、76年にスタートした番組は元プロ野球選手の
佐々木信也さんが司会を担当しました。私たち局アナの役割は見てきた試合を解説者と
2人で伝えることでした。
メインの試合に割り当てられる時間はおよそ7分です。試合のビデオ(初めはフィルム)が
4分半ほど、司会者からの紹介などもあるため、ビデオが終わってスタジオで使えるのは
2分程度でした。瞬く間に過ぎて行く時間です。

初めのころは何も考えずにやっていました。
しかし、途中から「これは少し考えなければ…」と思うようになりました。何を?
もちろん、時間の使い方を です。
視聴者はほかの局のスポーツニュースにはなかった“解説”を聞きたいのです。
極端に言うなら、アナウンサーの言葉はどうでもいいのです。
ビデオの部分も解説者の話を織り交ぜながら進めます。それを含めて解説者にどれだけ
“時間を渡すか”が大事でした。
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よほどのことがない限り、局に戻ってからOAまでにプレビューする時間がありました。
そのときに解説者が何を言いたいのかをつかむようにしました。
彼が言いたいことを最大限生かすために考えたのは「言葉の省略」です。

アナウンサーに限りません、テレビやラジオでしゃべろう
という人たちにとって一番大事なのは「今、伝えたいことを
相手に伝わる言葉、話し方でしゃべる」ことです。


この「アナウンス論」の第1回に、基本中の基本として そう書きました。
プロのアナとしてはもう少し踏み込んだ考え方が必要でしょう。高目から失礼。ハハハ。
…で、この番組で私が考えたのが「言葉の省略」だったのです。
アナウンサーはしゃべってナンボ と考えがちですが、伝えたいことを伝えようとするとき、
言葉数が多くてはプロとして落第でしょう。できるだけ少ない言葉で伝えるのがプロです。
話すときに「どれだけ言葉を省略できるか」を考えるようになりましたし、同業の後輩に
アドバイスを求められたときも必ず同じことを話します。

解説者が話したいことを頭において質問を考えました。
少ない単語で相手が「ああ、岩佐はあのことを話せと言ってるんだな」と理解できるように。
たとえば…

リードされた巨人が7回表2死からフォアボールのランナーを1塁において5番阿部が
ヒットを放ち1・3塁としました。ここでの攻防が試合のポイントになったとします。
「巨人が2アウトながら1・3塁と同点のチャンスを迎えて打席には高橋宜伸が入りました。
ここがポイントになりましたね、豊田さん?」…そう聞きたい場面です。
しかし、それだと解説者が話せる時間はかなり短くなります。

視聴者がすでに知っている情報を省いて「2アウト1・3塁で高橋でしたね」で終われば
その分、解説者に残される時間は増えるのです。「プロ野球ニュース」では、その数秒が
大事だったと思います。
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生中継のときは時間にゆとりがありますが、それでも、ゲームがどんどん展開している
大事な場面でだらだらとしゃべっていると局面に追いつけなくなることがあります。
ワールド・カップ出場がかかった“運命の一戦”が1-1のまま後半30分を過ぎたとき、
日本がゴールほぼ正面でFKを得たとしましょうか。
「ゴール正面、絶好の位置でFKを得ました日本。左足なら○○、右足ならXXでしょうし、
△△もいますねえ、早野さん?」とチンタラ聞いてる場合じゃないんです。ハハハ。
今の私なら「さて、誰が蹴りますか?」で済ませるでしょう。

いいたとえだったかどうか分かりませんが、まあ、そういうことです。

言葉を整理・省略する作業は厄介ですが、楽しいものでした。そこで培ったことは 後年、
WOWOWに移ってからのサッカーやテニスの実況で役に立ったと思っています。
今はもう現役ではないので思うように、好きなだけ単語を使って話してもいいのですが、
妻以外の人と話すときやメールを書くとき、できるだけ言葉数を少なくしようとしている
ことに気づきます。その割にブログでは冗舌ですが。ハハハ。

日本にはたった17文字で自然や人の気持ちを表わす俳句という世界に誇る文化があり、
“言葉の省略”は私たちのDNAに組み込まれているのですからやればできるはずです。
ぜい肉(余計な言葉)をそぎ落とせば17文字でも言いたいことは言えるのです。
新聞や雑誌の見出しも少ない文字数で多くのことを伝えようとしています。

常に言葉を減らそうと言っているのではありません。
車のハンドルには“遊び”があります。実況や会話でも“ゆとり”は必要でしょう。
要は、局面に応じてバランスを取ろうということです。
言葉を省略する技術・感覚を身につけておくのはアナウンサーだけでなく、人前で話す
機会が多い人にとっては大事なことではないでしょうか。

昨日のツイッターで数人の“一般”のかたから「参考になる」「役に立つ」という嬉しい
コメントがありました。今日は次の話に移行する予定でしたが、急きょ書きました。

つづく・・・
by toruiwa2010 | 2012-02-19 09:47 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(17)
Commented by ひろ☆はっぴ at 2012-02-19 10:00 x
つまるところは、人間関係につながるんでしょうか。言葉を省略しても言わんとするところが通じるようになれば、解説者とのやりとりがスムーズになり、視聴者にも伝わりやすいと。放送だけでなく、あらゆる場面にも通じる話ですね。

先日は思いがけず御礼の言葉まで頂き恐縮です。なのに相変わらずの長文駄文。言葉も身体もダイエットしませんと…
Commented by あんく at 2012-02-19 10:44 x
続きをありがとうございます。
「言葉の省略」これがなかなか難しいんですよね。
相手の反応が鈍いと「本当に分かってるのかな?」と心配になり、
一から十まで説明してしまう。
で、話しているうちに自分が何を言いたかったのか分からなくなる(笑)

ツイッター始めてからは、だいぶ文章が短くなりました。
今まではダラダラと書いていたメールも用件のみ。
そうしたら「ミタさんか?」と言われましたけど(笑)

と、またダラダラと・・・(苦笑)
たまにはコメント欄へと思いまして、初めて投稿いたしました。
来週も楽しみにお待ちしております♪
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-19 12:01
あんくサン、こんにちは。
こちらでは初めましてですね。

確かに言葉の省略は言うのは簡単ですが、
結構大変です。来週書く予定ですが、私もツイッターを
はじめてから、文章を短くするのがうまくなったと思ってます。
Commented by ヤップンヤン at 2012-02-19 14:41 x
日本には以心伝心という言葉もありますよね。外国ではほとんど通じません。仮に相手を信頼して何も言わかったため、あとで大変なことになるという経験は何度も経験しました(苦笑)。以心伝心・・・すごいことです。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-19 15:00
ヤップンヤンさん、こんにちは。

たしかに、以心伝心は外国では通じないでしょうね。
日本人同士でも信頼関係がないと難しいです。
しかし、互いに考えていることが分かりあうようになって
言葉のキャッチボールがスムーズにできた時の快感は
たまりません。
Commented by 赤ぽん at 2012-02-19 15:05 x
岩佐さん、こんにちは。

昨日の‘明るさ・ユーモア・テンポ‘、そして今日の‘言葉の省略‘
どちらも「なるほど」や「そうだなぁ」と思いながら読ませていただきました。
ツイッターはその短さゆえ、そして文字を受け取る側の人物像が
不明確ゆえの予期せぬ反応がよく起こってしまうようですが(ブログも
そうですね)やはり簡潔に整理された言葉を意識して使うようにする事は
大変難しいですが、大切な事だと思います。こうして文字にしていても
はたしてこれで伝わるのだろうか?とか、こんな言葉しか思いつかない
(汗)とか
いわゆる抑揚や明暗・表情、動作まで介在する日常会話とは違う
無機質な文字の羅列から相手に読み取ってもらうようにする努力は大変ですね。
確か簡潔・丁寧に・・・同様なことを作家の星新一氏も書かれていました。
話がずれましたが、解説の方とのやりとりとひと言で言ってしまうには
あまりに深い要素で構成されているアナウンスという仕事、相手の方から
いかに簡潔な言葉で『相手を』引き出すか。それがテンポにも繋がっていく・・・アナも色々ならば解説者も様々・・・
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-19 15:34
赤ぽんサン、こんにちは。

解説者もさまざま・・・
本当にその通りです。苦労します。
相手も同じでしょうがね。ハハハ。
Commented by ヤップンヤン at 2012-02-19 16:48 x
その会館は日本の建築などもそうですよね、無駄を省きシンプルに。外国はシャンデリアなど豪華絢爛(笑)。文化の違いといえばそれまでですが、以心伝心は日本人だけが持つ”高等スキル”の1つだと思います。
Commented by hiroyuki229 at 2012-02-19 18:26 x
言葉の省略(ゆとり) 今回のお話は、先般より続くTwitterの140字制限に繋がっているような気がするのは私だけでしょうか?w
伝えることとは、言葉を増やすのではなく、少ない情報から相手に(又は不特定多数に)自らの”球種”を感じとってもらうか 
私の語彙では上手く表現できませんが、そんなことを思いながら読ませていただきました
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-19 19:03
hiroyuki229さん、こんばんは。

はい、次回はツイッターの話も出てきます。
言葉を削る、という点では共通するところがあります。
Commented by デルボンバー at 2012-02-19 19:55 x
特に自分で既に(勝手に)結論を出しておいてから解説者に振るアナにはほんとに辟易します。NHKのN地アナなんてほんとに最たる例です。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-19 20:13
デルボンバーさん、こんばんは。

N地はエースなんですがね。
たしかに、最近のNHKアナは解説の領域まで
平気で踏み込んでいきます。「方針」が変わったのかなあ。
Commented by kanada at 2012-02-20 02:07 x
「どれだけ言葉を省略できるか」の一言は常に自分も心がけていることです。まさに我が意を得たりです。私も同じことを伝えるのにも年々簡潔になっていると思います。岩佐さんのような方がこういったことを書いているのを見るとなんだかとても自信になります。明日からもがんばろと思いました(笑)
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-20 06:49
kanadaサン、おはようございます。

ぜひ、今日も頑張ってください。ハハハ。
Commented by えそらいろ at 2012-02-20 08:28 x
おはようございます。

伝えたいことを伝えようとするとき、言葉数が多くては落第…
政治家も少しはこういうことに気を遣って欲しいなと思います。
しゃべってなんぼ、言いたいことは伝わらないほうがいいと
思っているのかという気がする時があります。
Commented by toruiwa2010 at 2012-02-20 08:38
えそらいろサン、おはようございます。

政治家の中で短い言葉をうまく使ったのは、田中角栄と
小泉純一郎だったような気がします。
閣僚が饒舌なのは、委員会などで時間を稼ぐクセが
ついているのではないかと。ハハハ。
Commented by inamine at 2012-02-22 09:32 x
岩佐さま
おはようございます。
大いに共感いたしました。コメントのためのコメントをいかに減らすかは
私もいつも気にしているのですが、アナにゆとりがないとなかなかうまくいかないような気がします。
逆に”しゃべり続けないと不安”になってしまうアナも見受けられるくらいです。やはり挿入VTRがある時はアナの腕前の差がでるように感じます。
そういう自分が書くナレーション原稿もいつも字数オーバーで
収録のたびに字数を削ることになっているので
人のことはとやかく言えませんが・・・・。
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