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岩佐徹のOFF-MIKE

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閑話休題:失敗話2~岩佐徹的アナウンス論 26~12/03/25

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・・・つづき

もうひとつは、1970年代初めの出来事です。
その日は昼のニュース(12:45~)が最初の仕事だったので、11時過ぎに出社しました。
すると、テレビの前に人が集まっていました。「ハイジャックだ」と言うのです。
デスクが「岩佐君、ヒルカン(=昼刊)が顔出しになるかもしれないよ」と言うので、いつも
ロッカーに置いてあるネクタイと上着で準備をして、早めに報道部に下りていきました。
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いつでもそうですが、事件・事故のときの報道部は全員のテンションがあがっているので
賑やかです。もちろん、喜んでいるわけではありませんが、気分が高揚するようです。
そのため、腰を落ち着けたのは、デスク(原稿のとりまとめなどをするディレクター)から
少し離れたところでした。夕方のニュースで先輩キャスターが座るイスです。

ハイジャック事件は情報が少なく、動きも鈍いので、記者は放送時間ぎりぎりまで待って
原稿を書く傾向があります。原稿はなかなか手元に来ないのです。
「これは初見(=ショケン、下読みなしで原稿を読むこと)になる」と覚悟して、発生からの
流れを知るためにゲラ(通信社から来ている原稿)に眼を通していました。

本番までまだ時間があるはずなのに、ふと原稿のすぐ横に目を移すと、机に埋め込まれた
モニターに私が映っています。「これは何?」と思い、目を上げると 夕方のニュース用に
いつも置いてある2台のカメラのうち、ひとつにタリーがついてこちらに向いています。
「まだ30分近くあるのに、テストにしてもずいぶん早いなあ」と思いながら、念のために
顔を右に向けました。3、4メートル先のキャビネットの上にテレビが並んでいます。
各局が放送している映像が出ているのですが、なんと、そこにも私が映っているでは
ありませんか!

これはつまり、理由は分かりませんが、放送に入っていることを意味しています。
「冗談じゃないぞ。第一、カメラマンも位置についてないじゃないか」と思いましたが、
そんなことを言っている場合ではありません。あわてたら、その様子はそのまま全国に
流れてしまいます。ハハハ。
本来、12時から45分までは有楽町ビデオホールから月の家円鏡と松島トモ子が司会する
公開番組があって、昼のニュースは12時45分からなのですが、事情はどうあれ、番組を
カットして特別番組に入ってしまったことは確かでした。

そこで私は、まず手元のスイッチでマイクをオフにして、少し離れた位置にいるデスクに
「本番に入ったようですから原稿を下さい。第一報でかまいませんから」と、声をかけて
再びマイクをオンにしました。
カメラに向かって「この時間は全日空機ハイジャック関係のニュースをお伝えしますが、
しばらくお待ちください」とコメントしました。変なコメントですが、手元に読むべき
原稿がないのですから仕方がありません。
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事態を把握したデスクから次第に原稿が来はじめ、同じ原稿を繰り返し読んだりしながら、
少しずつ形になって行きました。間もなく、「羽田に逸見(政孝)がスタンバイできたから
呼びかけてくれ」という指示があり、早速 呼びかけました。

ところが、このとき、彼は現場に着いたばかりで、リポートすべき材料をほとんど持って
いなかったのです。ほんの30秒ほどしゃべると、「以上です」とこちらに返してきました。
リポートの間に新しい原稿に眼を通そうと思っていた私は短くつないで、また彼を呼ぶ。
「馬鹿野郎、もう少し長めにしゃべらんかい!」と思いながら。
呼ばれても困るとばかり、彼もまたすぐに返してくる。そんなことを2、3度繰り返した
記憶があります。ハハハ。

このときは、そのあとの定時のニュース、1時からの特番と続けて担当したのですが、
この場合のように自分にミスがないときは腹が据わります。不思議に 焦りはありません。
「俺は何も悪くない。矢でも鉄砲でも持って来い」という心境です。ハハハ。
特に、落ち着いてまずマイクをオフにしたところは我ながらよくやったと思ったのですが、
あとで聞くと、隣のゲスト用のマイクは生きたままだったので、私がデスクに呼びかけた
声はお茶の間にしっかり届いていたそうです。ハハハ。

そして、混乱を招いた原因は、特番編成の打ち合わせに行った報道部員が「12時20分に
公開番組の司会者が呼びかけて、特番に切り替える」と決まったことをデスクに伝えて
いなかったという実に初歩的なミスだったのです。
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これが、私のアナウンサー人生の中で起きた「2大事件」ですが、思い出がよみがえる
たびに思うことがふたつあります。
まず、記録されたものがアーカイブにもきっとないだろうと思えることと、NG大賞的な
番組やyoutubeがないころでよかったなあということです。
特に東京オリンピックのときの“パントマイム”は今だったら、ネットに乗って世界中で
笑いものになっていたことでしょう。
もうひとつは、不体裁ではあってもスポンサーに謝らなくてはいけないミスではなくて、
懐かしさがこみ上げてくるタイプのものでよかったということです。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-03-25 08:31 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(6)
Commented by 老・ましゃこ at 2012-03-25 15:51 x
≪ 私がデスクに呼びかけた
声はお茶の間にしっかり届いていたそうです ≫

きっと現場は混乱状態だったと思いますが、そんな中
きちんとした言葉遣いで指示を仰がれた岩佐さん…
お茶の間の視聴者は、その報道の現場を垣間見て、
報道に対する信頼感を増したと思います。
上手く言えませんが…。
Commented by toruiwa2010 at 2012-03-25 17:00
老・ましゃこサン、こんばんは。

今だったら、「嫌フジ」に袋叩きに
されたtだろうと思うとぞっとします。ハハハ。
Commented by 赤ぽん at 2012-03-25 18:04 x
岩佐さん、こんばんは。

誰にでもミスはあるものでしょうが、テレビという媒体は視聴者と直結しているので
見ていたみんなに「あいつミスしやがった(笑い、あるいは怒り)」と記憶されてしまう
ことが怖いですよね。しかも今はネットで繰り返し繰り返しで…

現場の逸見さんも「まだ呼びかけてくんの早えーヨ!」と思いながらのやりとり
だったのでしょうかね(笑)引きつった?!表情を見てみたかったです。
Commented by toruiwa2010 at 2012-03-25 19:15
赤ぽんサン、口はばったいですが、
5年後輩の逸見は“かわいがって”ました。

数日後に会ったとき、がっつり「しめて」やりました。ハハハ。
Commented by スノゥリリィ at 2012-03-26 02:21 x
岩佐さんこんばんは。
確かに急な出来事があると現場は大変そうですね。
どんな落ち着いた人でも原稿が来なくてアタフタって所をテレビでたまに見かけますが
今だったら本当に、リアルタイムで色々言われたんでしょうね(ノ△T)
Commented by toruiwa2010 at 2012-03-26 06:58
スノゥリリィさん、おはようございます。

現場は大変・・・

確かにそうですが、自分のミスでない限り、
醍醐味も味わえるのです。一般の人には
理解できないでしょうけど。ハハハ。
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