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岩佐徹のOFF-MIKE

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実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

サッカー・クリックインタビュー2~スポーツ実況について~12/04/08

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・・・つづき

『第2回 理想のスポーツ放送に近づくために』


WOWOW広報の仲澤氏は岩佐氏の取材・資料収集の徹底ぶりをこう語ってくれた。
「岩佐の資料集めは本当に徹底しています。謙虚に勉強し続ける姿勢で、あくまで
ストイックに、可能な限り多くの情報を集めて番組の中で生かす。
そういう態度は、言うのは簡単ですが、誰もができることではないと思います」
今回は こうした取材を番組の中にどう生かし、思い描く理想の放送に近づけていくか
ということを中心にお話を伺った。

■それがぴたっとはまったときが、アナウンサー冥利に尽きる瞬間

・岩佐さんが理想とするスポーツ実況とは、どういうものなのでしょうか。
また、そのために参考にする番組などはありますか。

私がWOWOWで担当するスポーツはサッカーとテニスとゴルフですが、チーム競技の
サッカーと他の2つの競技はちょっと違うところがあります。私の持論は、テニスや
ゴルフは、選手のバックグラウンド・歴史を紹介してあげることによって、視聴者の
想像がふくらむような放送を心がけるということです。プレーそのものは見ていれば
わかることが大半ですから。     
サッカーは、常にプレーが動いているし、選手の数が多いので、実況自体が大変ですが、
くすっと笑えるような、ちょっといい話みたいなものをできるだけ集めて紹介できれば
と思っています。それがぴたっとはまったときが、アナウンサー冥利に尽きる瞬間でも
あるわけです。
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しかし、番組はいろいろな要素で変化するものなので、なかなか狙いどおりにならない
こともあります。例えば、解説者の方が私の振った話題に乗ってくれるときと、そうで
ないときがあったりします。
解説者はその道のプロフェッショナルですから、技術論や戦術論に入りやすい傾向が
あります。アメリカのテレビのアナウンサーや解説者は、放送中に政治や経済の話を
しながら「プレーは見てちょうだい」というくらいのスタンスでやっているように
思えることがあります。「今日は選挙の投票に行ったか」みたいな話を放送の中で平気で
できるというのが、一面ではうらやましいことです。
私のもう一つの持論はスポーツ放送が一種のエンターテインメントだということです。
そのスポーツの魅力を伝えるきちんとした映像に取材で得たさまざまな情報を提供する。
そのことでスポーツの現場とその周辺に起こっていることについて視聴者のイメージが
ふくらんでいく――。そのような放送が、私がイメージする理想の放送なんです。

■スポーツ実況の3つの要素

・日本では、Jリーグのスタート時にあまりに多くのメディアが急激に押し寄せたので
サッカーの本質的な魅力を伝えるメディアが少なかった、というか目立たなかった。
そのことがサッカーファンのフラストレーションにつながっていたと思います。
時間が経つにつれて見る側の目も肥えてきますし、メディアも徐々に成熟しつつある。
実況という観点から、そのようなことをお感じになることはありますか。

ご質問の趣旨に合うかどうかわかりませんが、私の年齢的なことと、実況スタイルから、
いろいろなメディアから「いまの若いアナウンサーの実況を聞いてどう思うか」という
質問を必ず受けるんです。
私は絶叫調の実況をやったことがないのでなんとも言えないのですが、これは実況者の
タイプによると思います。私の実況でも自分でテープを聞いていると、かなり絶叫して
いると自分では思うんです。「こんなに叫んでいるっ」と驚くくらいに(笑)。

とくにイタリアへ行って現地でしゃべったものは、トーンが高くて恥ずかしくなります。
かなり抑えようと思ってはいるのですが、それは現地に抑えられない何かがあるので
仕方がないとは思っています。なのになぜ他の人たちばかりが絶叫、絶叫と言われて、
岩佐は控えめないい放送だと言われるのか・・・。ほめられて悪い気はしませんが、
それは何なのだろうと常に思っています。
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・いわゆる「声が張っている」のと、絶叫とは違うのではありませんか。

たぶん、私が絶叫しても、内容が「実況」の範囲で収まっているから、あまりうるさく
聞こえないのかも知れません。
例えば「このチームは3連勝中です」といった話をすることを「素の部分」と言います。
スポーツ実況は この「素の部分」と「プレーの実況」と「解説者とのやりとり」という
3つの要素から成り立っています。
若いアナウンサーがつい興奮して絶叫調になるとき、この「素の部分」の内容が自分の
独善や知識のひけらかしになってしまうので、結果的に耳ざわりになってしまうのでは
ないでしょうか。

■8年半のブランクがいま生きている

・他のアナウンサーの実況を聞いたりするのですか。

生意気なようですが、あまり人の実況は聞きません。'63年にこの世界に入りましたが、
当時は、どの家にもテレビがあるという時代ではありませんでした。
'64年の東京オリンピックで本格的にテレビが普及しだして、その後の高度経済成長の
時代になってから、我が家の居間にもテレビが2台、多いときには小さいものも含めて
3台と増えていきました。「プロ野球ニュース」を担当していた関係で、同時に複数の
スポーツ放送があれば、3つのテレビでそれらを見ながら日曜日を過ごしました。
全部音を出してはいられません。そのころから音を消して見るのが習慣になっています。

私が他人の実況をよく聞いたのは私自身が実況の現場を離れている時代でした。
いろいろな事情があって、8年半、アナウンスの仕事から離れていたのです。
離れた瞬間から、いつか現場に戻りたいという未練がずっとありました。
そう思いながらいろいろな人の実況を聞き、常に頭の中でイメージトレーニングしつつ
過ごしました。それがいま 役に立っています。対象から離れてものを見るという姿勢も、
その頃に身についたものです。
現場でバリバリやっていたころは、そういう視点が持てませんでした。
しかし、年齢を重ねたということと、8年半のブランクの間にいろいろな人の放送を
聞いて、頭の中で「そうじゃない、こうだろう」、「自分ならこうしゃべるけど」「こう
質問するなあ」とさまざまな“シミュレーション”をしたのが今 生きていると思います。

■センチメンタリズムに流されない報道を

・サッカーに限らず、世界のトップレベルの現場に居合わせる喜びを感じるのは
どういうときなのでしょう。

私は幸運にも、メジャーリーグのワールドシリーズを4年、現地から中継しました。
テニスはグランドスラムのうち3大会を担当しました。
アイスホッケーの世界選手権やゴルフの全米プロ、ボクシングはタイソン戦の中継も
やりました。これは枚挙にいとまがないですね。
残念ながら、どれもが日本でメジャーなスポーツというわけではありませんでしたが、
そんなことは自分にとってまったく関係がありませんでした。
アイスホッケーの世界選手権など視聴率は低かったし、どれだけの人が見るのかなと
少し気にしたことはありましたが、やっていて楽しくて楽しくて(笑)。
また、放送を始める前のWOWOWが大阪の朝日放送と共同で 夏の高校野球を2年間、
ハイビジョン実験放送としてやったことがあります。毎日1試合ずつ実況しましたが、
これも楽しくてしようがなかったですね。スタンド下の通路で、汗だくになりながら、
高校生たちの話を聞きました。いまジャイアンツの松井の話も当時聞きました。
そういうのは楽しいですよ。
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こうした経験から言うと、日本のスポーツ・ジャーナリズムはセンチメンタリズムに
流される傾向があると感じます。とくにチームにべったり張り付いている担当記者の
記事などは、選手をまるでアイドルのように仕立ててしまうケースも見受けられます。
メジャーリーグの中継をやったとき、とくに'79年の1年間は、アメリカ各地を転々と
移動しながら過ごしました。アメリカのメディアの報道ぶりをつぶさに観察しましたが、
彼らはそのような捉え方を絶対にしませんでした。地元に偏った報道はあっても、自ら
ストーリーを作って取材対象を持ち上げたりはしません。それはすばらしい態度でした。
そう感じただけに、日本のスポーツ報道のちまちましたところが好きになれないのかも
しれません。

つづく・・
by toruiwa2010 | 2012-04-08 07:15 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(9)
Commented by S_NISHIKAWA at 2012-04-08 07:40 x
「日本のスポーツ・ジャーナリズムはセンチメンタリズムに流される傾向がある」
その通りですね。
Commented by toruiwa2010 at 2012-04-08 07:54
S_NISHIKAWAサン、おはようございます。

何でも、感動に結び付けよう、泣かせよう、という姿勢は
健全とはいえないと思っています。
Commented by しょう at 2012-04-08 11:36 x
岩佐さん、こんにちは。
スポーツ実況の傾向のうち、私が一番不快なのは
「センチメンタリズム」です。
そして、今の実況はそれがトレンドになっているようで。
文句のひとつも言いたくなります。
Commented by toruiwa2010 at 2012-04-08 11:46
しょうサン、こんにちは。

スポーツの楽しさは明るさにあると思うのですが、
どうも、それだけでは感動させられないと考えるのでしょうか。
被災地がどうの、誰が死んだの・・・そういうこともあるけど、と
辟易します。

書きませんでしたが、甲子園の宣誓が石巻工業高校に
なったのも、いやーな感じでした。くじの結果だと言い張るでしょうが、
「違う」と思ってます。ハハハ。
Commented by デルボンバー at 2012-04-08 14:43 x
そもそも、日本にスポーツジャーナリズムは皆無といって良いんじゃないですか?少なくともスポーツ新聞の記者のレベルは恐ろしく低いと思います。
Commented by toruiwa2010 at 2012-04-08 15:04
デルボンバーさん、こんにちは。

スポーツ紙の記者にもレベルの高い人はいるのですが、
彼らがデスク(=会社)の指示を受けて記事を書くと
レベルが低くなるのです。彼らも犠牲者…。ハハハ。
Commented by ヤップンヤン at 2012-04-08 15:54 x
最近のアメリカのリアリティ番組をみるとセンチメンタリズム全開です。家族の話などを引っ張り出して、視聴者を無理やりにでも泣かせようとする編集がされてます。娯楽番組だからそれでいいのかもしれませんが、アメリカ人もセンチメンタルは大好きだと思います。
スポーツ番組には影響していないのが幸いです。
Commented by toruiwa2010 at 2012-04-08 16:23
ヤップンヤンさん、こんにちは。

リアリティ番組はバラエティですからね。
アメリカのスポーツ中継は「健全」だと思います。
ハハハ。
Commented by ヤップンヤン at 2012-04-08 17:22 x
私もアメリカのスポーツ中継は健全だと思います。
先日ESPNではハーシュハイザーとフランコーナという解説陣でしたが”普通”でした。フランコーナがあんなに口が立つとは思っていませんでしたが(笑)。
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