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岩佐徹のOFF-MIKE

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サッカー・クリックインタビュー3~スポーツ実況について~12/04/14

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・・・つづき

『第3回 プレーの中にあるスポーツの感動を伝える』

■心に残る3つのシーン


・岩佐さんにとって印象に残るサッカー放送とはどんなものでしょうか。

スポーツの実況中継はまずプレーを見せることが第一義であると思っています。
ただテレビの場合、プレー以外に人の心をつかむシーンとがあるような気がします。
そういう意味でサッカー放送で印象に残っているシーンは3つあります。
どれも現場にいたのではなく、自宅でテレビを見ていたものです。
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まず'94年ワールドカップ・アメリカ大会、マラドーナがゴールを決めた後、カメラに
向かってものすごい表情で突進してくるシーン(グループリーグの対ギリシャ戦)。
これはプレーではないのですが、人の心に訴えるものがありました。
次は、ヨハン・クライフがバルセロナの監督で、息子のジョルディ・クライフも同じ
バルセロナでプレーをしていたときの試合です。相手がどこだったか思い出せませんが、
カンプノウでのビッグマッチでした。ジョルディがゴールして、父親のもとに走り寄る。
そこでは監督と選手ではなく、親父と息子になっていました。きれいな映像なんです。
あれは忘れられないですね。     
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もうひとつは、'99年UEFAチャンピオンズ・リーグのファイナルで、途中でベンチに
下がったマテウス(バイエルン)がマンチェスターUに逆転された後に見せた茫然とした
表情です。そういうシーンが、いまのご質問をうかがって頭に浮かんできます。
こういう映像は、日本のテレビも狙っているのでしょうが、なかなかつくり出せないで
いるような気がします。外国のメディアはその仕事を担当するカメラマンまで含めて、
その競技にかなり精通している人たちがチームを組んでやりますので、日本のテレビは
なかなかその域までいけないのではないかと思います。

■「絵を汚さない」放送を心がけて

・プレーそのものを大切にした放送をファンは望んでいると思います。先発メンバーや
審判団の紹介、気象条件などは試合前にやるのがサッカー放送の基本だと思います。
キックオフ後にメンバーのテロップが画面の上に重なるようなことはファンとしては
やめてほしいことです。WOWOWではそうしたことを方針としているのでしょうか。
NHKのBSを除いて、WOWOW以外の放送局はコマーシャルが入るなど、いろいろな
制約がありますから、試合開始後にメンバーや気温を紹介することになるんでしょう。
それはメディアの特性というか、事情にもよると思います。

WOWOWの場合は幸いなことにけっこうフレキシブルに放送枠が組めます。たとえば
2時キックオフなら1時55分から放送を始めてしまいます。それが民放だと2時から
始めて、レフェリーや大会の主催者と話してキックオフを2、3分ずらしてもらう…
ということでやっているわけです。それでもCMやオープニングなど、やるべきことが
いろいろあって、メンバー紹介などがキックオフの後になってしまうのでしょう。

WOWOWの制作スタッフの間では、「絵を汚すな」とよく言います。これは基本です。
対極にあるのが バラエティなどで用いられる、しゃべった言葉を文字にして出すような
やり方です。あれは逆転の発想で、絵を思い切り汚しています。その点、WOWOWの
場合はサッカーをはじめ、すべてのスポーツで絵を汚すなというのが合言葉のように
なっているのです。
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アメリカの野球放送などは、映像がすごくきれいです。しかし、最近は、日本の放送の
影響もあるのでしょうが、けっこういろいろなデータが画面上に出るようになりました。
'78年に初めてメジャーリーグ中継のためにアメリカに行った当時、テレビの画面には
何も出てこないんです。センターからバッテリーと打者を写した映像ばかりなので
ボールカウントなども常に自分の頭に入れておかないといけないという状況でした。
打率などはその日始まるときの打率が、試合中に何回も出てきていました。
いまは日本にならって毎回の打席ごとに更新されるのが当たり前ですよね。

・それは日本にならっているのですか。

たぶん日本にならっていると思います。ピッチャーの投球のスピード表示なども日本の
場合は全部出ますが、アメリカは今でも全部は出ません。メジャーリーグでは何キロの
スピードが出たなどと、いちいち驚かないせいでしょうか(笑)。
スピードガンが使われだした頃は、チームの関係者が手持ちのガンを使って計測して、
サインで放送席に送っていました。そういう約束事になっていました。
速いボールのとき 計測した人が指を4本立てれば94マイルという合図になる、そんな
感じです。
それを見ている私たちスタッフは換算表を使って「今のは150キロだったようです」と
いうふうに実況していました。

■柄沢アナにジェラシーを感じています

・4月に行われたオランダ対ベルギーのフレンドリーマッチの実況を担当されましたね。
非常にいい試合で、両チームとも気合いが入っていました。
あんなにいい試合になるとは思いもしませんでした。私たちはよく「試合に当たる」と
言いますが、いい試合を担当できる確率は低いんです。
アナウンサーというのはおもしろいもので、同業者がいい試合にぶつかるのを素直には
喜べないんです。だから私は去年(98~99年)のUEFAチャンピオンズ・リーグの決勝を
担当した柄沢アナウンサーに、ものすごいジェラシーがあるわけです(笑)。
あの試合を担当できたら、しばらく仕事がなくてもいいくらいに思います。
私自身、一昨年のイタリアン・ダービーのユベントス対インテル戦を担当しました。
非常にいい試合で、しかも現地での実況でした。
私自身もそういう試合に「当たって」います。ほかの種目でもいい試合に当たっている
のですから贅沢を言ってはいけないのですが、アナウンサーというのは、実に欲張りで、
少しでもいい仕事、注目を浴びる仕事をやりたいものなのです。

■プレーの中にこそスポーツの感動がある

・そういう大きい試合など、どのようなことに注意して実際の放送に入るのでしょうか。
いろいろ考えますけれども、私はあまり言葉を用意することが好きではないんです。
今のアナウンサーはかなり言葉を用意していますし、私も若いときにやらなかったとは
言いませんが、基本的にははじめからフレーズを作っておいて場面に当てはめるという
やり方(予定稿)は好きではありません。そのとき 自然に自分の頭に浮かんだフレーズを
使うようにしています。

WOWOWがUEFAチャンピオンズ・リーグを放映した1年目は、まったくサッカーを
担当していませんでした。そこでプロデューサーが代わって私に声がかかったのですが、
そのプロデューサーが「非常に思い出に残っている放送がある」と言うんです。
名前を出すと差しさわりがあるのですが、とにかく日本の大きな試合で、その放送の
最初の一言に非常に感動したと彼は言いました。しかし、私はそのフレーズを聞いても
あまり感動しませんでした。私はアナウンサーですから、それは用意してきた言葉だと
わかるからです。
「それは僕のやり方とは違う。そういうことを僕に求めるのだったら違うよ。
僕はスポーツの感動というのは、プレーそのものの中にあるという考え方だから」と
釘をさした上で、そのプロデューサーと付き合い始めたんです。
プレーを言葉で飾るというのは、あまり好きではありません。できるだけぴったり来る
言葉で描写したいとは思いますが、飾ることはしたくない。この年になったから言うの
だろうと思いますけれど・・・。
若いときにはそれでもやはり放送開始の1分ぐらいの部分は、結構いろいろ考えました。
それは誰でも通る道だろうと思います。

・岩佐さんでも本番前は緊張するのですか。
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チャンピオンズ・リーグを日本のスタジオで実況する時、番組の冒頭に「顔出し」が
あるのですが、その部分は妙にあがるんです。ものを持たずに立ってしゃべるのが、
あんなに難しいものなのかとこの年になって初めて感じています。
私がチャンピオンズ・リーグの実況陣に入って3試合目の時が初めて朝の生放送でした。
リハーサルでめちゃくちゃあがりました。しどろもどろになって「あんな岩佐を初めて
見た」とスタッフを喜ばせるくらいあがりました。
本番はそんなこともなかったんですけれど。最近もリハーサルのときは、かなり固く
なっていると感じます。でも本番に入ってしまったら、緊張はしますが、あがることは
ありません。カメラとかマイクが相手ならば、まずあがらないですね。むしろその場に
たくさん人がいて、立って何か伝えるためにしゃべるとなると、そのほうがあがります。
私は結婚式のスピーチが大嫌いです(笑)。不思議なものですね。

つづく・・・
by toruiwa2010 | 2012-04-14 08:54 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(3)
Commented by 赤ぽん at 2012-04-14 09:44 x
岩佐さん、こんにちは。
アナウンス論に密接に関係してくるカメラアングル、視聴者はテレビ画面からの
情報しかなく、アナウンスや解説とともにその場面がどうなっているのか
常にカメラワークでの情報がその試合の印象になって心に残ります。
マテウスの悔しさを押し込むような気持ちを抑えた場面、見ていた私にもストレートに
伝わりました。メダルをそっと首からはずす場面は感動的ですらありました。自然な名役者!
試合会場で直接見ていた試合で「当たり」だったのは83年日本シリーズ第6戦@西武巨人や
日韓W杯日本対ベルギー戦とロシア戦、そして最終予選など色々ありますが
その場の臨場感とは違ったテレビからの試合の印象、それはまさにアナウンスの力と解説
カメラワークがマッチしてはじめて視聴者とのシンクロを生み出すものだと思います。
無駄な画面汚しと試合中の無駄な選手のアップ画像が余計なことだと思うのは
私や妻だけでは無いようで(私の周りの話ですがw)
その競技を良く知るスタッフが日本でも活躍してもらいたいのですが…
海外の画像を見るにつけその思いが強くなることが多々あります。
Commented by toruiwa2010 at 2012-04-14 10:08
赤ぽんサン、こんにちは。

コメントへのレスにはならないでしょうが、今朝ビデオで見た
黒田登板の試合で面白いシーンがありました。
火曜日のブログに書くつもりです。お待ちください。ハハハ。
Commented by 赤ぽん at 2012-04-14 10:40 x
そういえば黒田の「ピンストライプ」、まだ観ていませんでした。
岩佐さんのシーズン前の予想どおり?!好投したようですねw
ブログ、楽しみに待っています。
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