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岩佐徹のOFF-MIKE

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「アラカルト」始まる~岩佐徹的アナウンス論60~12/07/22

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・・・つづき

アラカルト始まる


テニスのグランドスラムは大会そのものが2週間、前後を合わせると 出張期間は
3週間になります。全豪が行われるメルボルンは真夏ですから、“寒がり”の私には
寒さのピークに差し掛かるこの時期の東京を抜け出せる点で一番嬉しい出張です。
気温の低い日もありますが、大体30度前後、簡単に40度近くまで上がりますから
油断は禁物です。時差が少ないのと距離的に近いせいか、日本からの観光客も多く、
1週目には「帰ってから見ますよ」、2週目には「1週目は日本で見てました」と、
声をかけられることがしばしばでした。

定宿のヒルトンからはテニスセンターが目と鼻の先でしたから、シャトルバスを
待つまでもなく、ほとんど毎日徒歩で会場に入りました。
チェックインのときに頼んでおくと、毎朝早くドアの前に朝刊が配られます。
2000年の全米から、私のコーナー「アラカルト」が始まっていることもあって、
メルボルンで発行されている3紙をすべて頼みます。別の項で書きましたが、私は
「スポーツ中継でもテレビはエンターテインメントだからちょっとしたユーモアは
絶対不可欠」と考え、そのために年間を通してかなりの量の情報を集めました。
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しかし、せっかくいい情報を手に入れても私がその選手の試合を担当しなければ
無駄になってしまいます。しかも、次の大会では、もうタイミングが遅かったり、
“私だけが知っている”話ばかりではありませんから、雑誌に載ったり、よその
局でしゃべられてしまう可能性もあります。

番組制作を請け負ってくれていた制作会社のディレクターと雑談しているときに、
「これだけ時間も労力も使って集めたのに、無駄になるのは口惜しいんだよね」と
こぼしたことから話が発展して「いっそコーナーを作ろう」となったのです。
タイトルは、「クリッピングス(切り抜き)フロム USオープン」とし、原則的には
当日の新聞から三つほど面白い話を拾って紹介することになりました。
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全豪の場合は6時半ごろに起きて新聞を取り込み、クリッピングスの材料を求めて、
すみからすみまで読むことで一日がスタートしました。
外国の新聞は100ページ以上あるのがざらですから、まずその中から関連記事が
出ていそうなところだけを残し、あとはごみ箱へ投げ込んで、食事に出かけます。

10年以上同じホテルに滞在すると、自然にスタッフの中にも顔なじみができます。
朝食をとるコーヒーショップにいる、インドネシアからの移民で、気立てのいい
リリーおばちゃんはあれこれと世話を焼いてくれます。
私の顔を見ると、「おはようございます」の挨拶もそこそこに、大き目のポットに
紅茶を入れて持ってきてくれます。そして、ここだけの話、初めの数年、コールド・
ミールとホット・ミール(熱を加えたメニュー)の違いがよく分からなかった私に、
丁寧に説明してくれた上、「あなたが食べるホット・ミールはゆで卵だけだから」と
伝票はコールド・ミールのまま、そっとゆで卵を持ってきてくれました。ハハハ。
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食事が終わったあとも、紅茶が無くなるまで新聞を読んでいると、毎朝のように
「Good morning!」の声がかかります。現地にコメンタリーを派遣しない国のため
4大大会すべてで世界に向けて英語放送を送り出している英国人アナウンサーの
Gerry Williamsさんです。
7,8年前から挨拶をするようになり、最近は自分の席につく前に、必ず、前日の
ベスト・マッチや、当日の好カードについて話して行くようになりました。
経歴は不明でしたが、キャリアが長いのは間違いなく、知らないことをたくさん
教えてもらいました。
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ある朝、いきなりうしろから「おい、聞いたか?」と声がかかりました。
何かと思えば「昨日の朝、ビーム(当時のフランステニス連盟会長)がバスローブに
スリッパでここに現れたらしいぞ」と言うのです。
プールかジムのあとだったにしても、いつもきちんとしたスーツ姿しか見ていない
私には全く想像もできない話でした。「マネージャーが『私どもにはドレスコード
(着るものについてのルール)がございますので、次からはご配慮を』と話したら、
真っ赤になって出て行ったってさ」と高笑いするジェリー…、ええ、イギリス人と
フランス人はあまり仲がよくないようですが、笑い過ぎでした。ハハハ。

さて、食事の時間だけでは新聞は読みきれませんから部屋に戻ってさらに読みます。
9時までには三つのネタを決めて日本語に訳し、それぞれ1分ぐらいのコメントを
作らなければいけませんから時間との競争で、胃が痛む思いでした。
おかげさまで、視聴者の反応はよかったのですが、困ったのは、こういうものは
どうしてもエスカレートする傾向があることでした。
「もっと面白い話、もっと意外な話」を求めて、読むのも 新聞だけでなく雑誌や
インターネットへとどんどん広がっていきました。

つづく…
by toruiwa2010 | 2012-07-22 09:03 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(2)
Commented by もくでら at 2012-07-23 21:15 x
「アラカルト」大好きでした。
でも、大変な仕事だったんですね。
知りませんでした。
Commented by toruiwa2010 at 2012-07-23 22:08
もくでらサン、こんばんは。

大変でしたが楽しみました。
みなさんからのいい反応も励みになりました。
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