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岩佐徹のOFF-MIKE

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アラカルト:全仏&全米~岩佐徹的アナウンス論61~12/07/28

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…つづき

アラカルト:全仏


'78年に大リーグ中継を始めたときから、広い範囲の英語の情報を読みあさった
おかげで、会話はともかく、読む方には或る程度自信がついていました。
しかし、フランス語はどうにもなりません。ハハハ。
ところがプロデューサーたちは、全仏でもこのコーナーをやりたがりました。
それはそうでしょう、試合と試合の間に入れる企画を考える手間が省けますからね。
「でも、俺はフランス語はダメだし、だからと言って、自分が読んで「これだ」と
思ったネタを取り上げて初めて面白さが伝わるのに、人に訳してもらったのでは
うまくいかないよ」と抵抗しても、“敵”はもうそのつもりです。

しかも、「インターネットはちょっと」と、注文だけはしっかりつけてきますから
たまりません。当時、パリで入手できる英語の新聞は、ヘラルド・トリビューン・
インターナショナルぐらいで、あとはイギリスの新聞などですが、テニスの記事…、
特に、アラカルトで取り上げるような記事はあまり期待できないので弱りました。

しかし、「窮すれば何とやら」で、知恵は湧いてくるものです。
ローラン・ギャロスに出店しているスポーツ用品メーカーから、スター選手たちが
モデルになっているポスターを集めたらどうか?
ビーナス・ウイリアムズが出ているTVの CMはなかなかセンスが良いし面白い。
大会のプログラムに、いい話が出てるじゃないか。フランス・テレビで放送した
クエルテンの私生活の映像は絶対受けるぞ、などなど、我ながら驚くほど次々に
アイディアが集まりました。
交渉の難しいものもありましたが、スタッフの頑張りでなんとか乗切れきました。
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「これだと、ネタ元の90%が新聞以外だから、“クリッピングス”はおかしいよ。
フランスだし、“アラカルト(一品料理)”はどうだろう」と提案して、以後、年間を
通してこのタイトルにする事になりました。

全仏の楽しみは、何と言っても会場内での「美女ウォッチング」です。
VIPの世話係、スタンドで案内をするアルバイトの女子高校生、会場内に展開する
グッズショップの店員、ハーゲンダッツの売り子…オシャレなユニフォームで身を
包んでこぼれるような笑顔を振りまいています。スタンドを見渡しても、観客の
中に占める美人の割合はどう考えてもここが一番です。

選手たちも、ウエア、ヘアスタイル、化粧、すべてに気合が入るのか、ローラン・
ギャロスの赤土の上がもっとも美しく見えます。
ちなみに、地球上でそんなにかたよっているはずはないのに、4大大会で会場内の
美女の映像をつないで作る、「美人特集」という企画が成立するのは全仏だけです。

年によって雨にたたられることもありますが、放送席に座るといつもスタンドの
向こうに広がるブローニュの森の緑が、そのひと雨ごとに濃さを増して行きます。
パリの6月はいい季節です。
そして、地下鉄に乗れば、乗降口の上にある路線図の駅名の中に、子供の頃から
映画や、文学、歴史、音楽で触れた事のある名前を沢山見つけることができます。

ボールが着地したあとスピードが落ちるため、ポイントが簡単には決まりません。
どうしても試合時間が長くなりますが、サーブやリターンであっさりポイントが
決まってしまうほかの大会より、テニスの醍醐味が味わえるような気がします。
しかも、赤土(レッド・クレー)の持つ特性のおかげで番狂わせが多く、どの選手が
勝ち上がってくるか見当がつかないところもスリルがあって、私が一番楽しみに
していた大会です。

これでアラカルトがなければもっと楽しめたんですがね。


アラカルト:全米

グランドスラムの締めくくりは、ニューヨークで開かれる全米オープンです。
1980年代初めまでは、近くのラガーディア空港を飛び立つ飛行機がひっきりなしに
スタジアム上空を通過し、その騒音で選手や観客を悩ませました。
しかし、選挙で敗れてオフィスを去ることになったテニス好きの市長が、大会中は
上空を飛ばないようにという取り決めを空港との間で結んでしまい、現在は選手も
観客も騒音を気にせずにテニスを楽しめるようになっています。

ただし、この大会には別の“騒々しさ”があります。観客たちです。ハハハ。
私たちが放送を始めたころでも、センター・コートは2万人を収容していましたが、
その後に建てられたアーサー・アッシュ・スタジアムは更に巨大化しています。
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テニスでは各セットの第3ゲーム以後 2ゲーム毎に選手がチェアに戻ります。
この間、90秒のインタバルがあって観客が出入りしますが、これだけ大きくなると、
90秒では待っていた観客全員がスタンドの中に入って席につくのは不可能です。
選手がプレーを始めようとしてもなかなかスタンドの動きが止まりません。
センター・コートでも、収容能力がせいぜい1万から1万5000人の他のグランド
スラムでは、観客たちは自分の動きや立てる音が試合にどんな影響を与えるかを
意識して、プレーが始まりそうになったら 空いている近くの席に腰を下ろすなど、
きちんとした行動をするものです。

しかし、これだけ巨大化すると、そんな気配りはどこかに行ってしまうようです。
中段から上のスタンドでは、大きな声で話をする、携帯電話を使う、動き回る…
勝手気ままな光景が見られます。いかにもアメリカらしくて私は決して嫌いでは
ありませんでしたが。ハハハ。

スタンド最上段にある放送席からは遠くマンハッタンの摩天楼を望ことができ、
それが西日を受けて輝いているところなどを見ると、自然の美しさに触れた時とは
ひと味ちがう、ユメの中にいるような気分になります。

しかし、2001年大会が終わった2日後、その一角にいつも見えていた世界貿易
センターが数千人の命とともに一瞬のうちにかき消えてしまいました。
悪夢としか言いようがありません。

つづく…

9.11当日の顛末はここにかきました。
http://bit.ly/OnRHZc

by toruiwa2010 | 2012-07-28 10:13 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(0)
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