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岩佐徹のOFF-MIKE

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サッカー実況が本格化~岩佐徹的アナウンス論62~12/07/29

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楽しくて難しいサッカー

サッカーに関しては、ミラン・ダービーの現地実況だけは担当が続きましたが、
セリエAに本格的に取り組むようになったのは、93-94シーズンからでした。
最初に担当したのはピアチェンツァvsレッチェで解説は加茂周さん、これだけでも
かなりの負担なのに(ハハハ)、ビデオにコメントをつけるMAも初めてのことで、
かなり緊張したことを思い出します。テニスは、プレーするのは二人だけですし、
コート全体が写ってますから選手を間違えたり、見失ったりすることはありません。
しかし、サッカーは選手が22人、画面はボールを持っている選手とその周辺しか
写さないことが多く、しかも画面の外から飛び込んできた選手が、重要な役割を
果たすことがあるので想像以上に難しいものがあります。
はじめの2年ぐらい私はこんなやりかたで対応していました。

2002 ワールド・カップ決勝を題材にしてみると・・・

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キック・オフから5分間、ボールにタッチした選手を全部書き出してあります。
“解読”するとこんな感じです。
「ブラジルのキック・オフ、ボールは深く下げてエジミウソンへ。
そこからの長いボールはロケ・ジュニオール追いつけずゴールラインを割る。
カーンのアップあり」
「ドイツのゴール・キック、フリンクスのヘッドはジウベルト・シウバが拾って
ロナウジーニョヘ。リバウドからもう一度ロナウジーニョヘ。ドリブルでタテに
抜けようとするところにリンケがタックル、ボールはタッチ・ラインへ」(中略)

「3分20秒、ドイツ、右からのスローイン、入れるのはフリンクス。
ボールはハマン、ラメロー、リンケ、フリンクスからシュナイダーと渡って
シュナイダー、ヒールで落とすが、フリンクスに通らず、リバウドがカット。
クレーベルソンへのパスはボーデがカットしてカーンへ。
ロング・ボールはクローゼと競ったロケ・ジュニオールがヘッド。
フリンクスが拾うが、このボールをルシオがカットしてロベルト・カルロスから
ロナウジーニョ、カフーと渡る。
パスを受けたロナウドがドリブルしたあとリバウドヘ、ヒールでロナウドヘ
ワン・トゥー、リンケがタックルで奪ったボールをノイビルへ。
ロケ・ジュニオールのタックルはファウル、イエロー・カードが出る。」

*選手のアップを記録しているのは、その部分で、その選手の
情報をまとめて入れようと考えるからです。

この試合はワールド・カップ決勝ですから、ほとんどすべての選手のポジション、
特徴などが頭に入っていて、それほど苦労しませんでしたが、セリエAの実況を
はじめたころは選手の名前さえ簡単には出てこない状態でしたからこんな作業が
必要だったのです。私だけだったと思います。
試合時間にして10分間の動きをノートするのに1時間かかりました。
日曜日の試合のテープを受け取るのが、水曜日の夕方で、木曜日の夕方にはMA
(収録)ですからプレビュー(テープをみること)できる時間は、丸一日とでした。

ただ見るだけなら十分な時間ですが、私の場合は、試合全体を見るのにおよそ
9時間かかるわけで、徹夜して一気にやってしまうこともあれば、翌日の昼間と
分ける時もありました。
大変といえば大変ですが、仕事ですからいやがらずにやりました。
テープの逆回しを繰り返し、なかなか分からなかった選手が“解明”できたときの
快感はこたえられないものでした。ハハハ。

選手を識別するとき頼りになるのは背番号です。しかし、常に背番号をカメラに
向けてくれているわけではありません。誰だか判別できないこともあります。
そんなときは、ジョグで前に送ったり、戻ったりしながら、しつこく追いかけます。
選手が背中を見せるまで。ハハハ。
それでも分からないときは消去法に頼ります。
「ここにいる可能性があるのはA、B、Cの3人だ。Bではない、Cでもない、
だからAだ」というやり方です。
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実況のときにずっと、選手名を言い続ける必要はありません。それに、どうしても
解明できなかった選手の部分は解説者に話を振ってやり過ごすなど、テクニックで
どうにでもなりますが、空白や“?”があると我慢できない性格が邪魔します。
試合を消化するにつれて、チームのフォーメーションや選手の姿、形にもなれて
少しずつプレビューにかかる時間は減っていきました。それでも、両チームとも
よく知っている場合を除くと5、6時間はかかったと記憶しています。
ユベントス、ミラン、インテル、フィオレンティーナ、ラツィオ、ローマ、パルマ
…こういったチーム同士の試合が担当になるとハッピーな気持ちになりました。
ハハハ。

そういう場合でもゴール・シーンやきわどいプレーのところはきれいに決めたいと
思うタイプですから、やはりノートを取って、本番ではそのシーンの3,40秒前から
解説者がしゃべり出さないように牽制しつつ、待ち構えたものです。ハハハ。

'94年、三浦知良が日本人として初めてイタリアに渡りました。
開幕戦でヘディングのときにバレージとぶつかって鼻骨を骨折するアクシデントは
ありましたが、あとに続く若手に道をひらいた功績は大きいと思います。
しかし、ようやくMAにも慣れて、面倒なノートも作らなくて済むようになったと
思ったばかりのこのシーズンから生中継が始まったのです。
アナウンサーの更なる受難?は続くのでした。ハハハ。

あらかじめ、テープを見た上でコメントをつけるMAでさえ、お話したとおりの
難しさがあるのに、それを、衛星で送られて来る映像を見ながら、生で実況する、
この「オフ・チューブ方式」はアナウンサーにとってこの上なく厄介な仕事です。
しかし、カズががんばっていて、視聴者からのプレッシャーもあったでしょう、
有無を言わさずのスタートになりました。
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MAの場合は、先発メンバー、交代選手、ゴールの時間まで分かっています。
しかし、生のオフ・チューブはアナウンサーにとってかなりの負担があり、初めは
とても不安でした。
…「案ずるより産むが易し」でした。WOWOWのサッカー実況を担当していた
柄沢、八塚両アナを含めてMAで“ノーハウ”の蓄積があったのがものを言って、
1年目から大きな問題はなく、視聴者からも高い評価をいただきました。

遠く「ダイヤモンドサッカー」の時代にもMAは行われていましたし、私自身、
かなり昔にFAカップで経験しています。しかし、どちらも事前にテープを見る
時間が十分あって、しかもかなり短く編集されたものでした。
その点、手前味噌ですが、WOWOWが始めたセリエAのMAやオフ・チューブは
サッカーの放送形態に新しさを持ち込んだという意味で画期的だったと思います。
上から物を言うようで恐縮ですが、現役のアナウンサーが苦もなくやれているのは
“踏み台”があってのことだと肝に銘じてほしいです。ハハハ。

つづく…
by toruiwa2010 | 2012-07-29 07:30 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(0)
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