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岩佐徹のOFF-MIKE

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よかった「あなたへ」95点~高倉健にしびれた・お勧め~09/10

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朝日が差し込む富山刑務所の広いグラウンドで受刑者たちが運動していた。
近くの官舎の一室で倉島(高倉健)がワイシャツにアイロンをかけている。
妻(田中裕子)を亡くして休暇中だったが、今日も仕事に行くつもりなのだ。

窓辺につるした風鈴が風に揺られて涼しげな音を立てている。
「秋になったら仕舞わなきゃね。季節はずれの風鈴ほど悲しい音はないもの」と
妻が言っていたのを思い出し、倉島の手が風鈴に伸びた。

この日、所内に訪問者があった。亡き妻から2通の手紙を預かっていると言う。
ただし、1通はその場で渡せるが、もう1通は遠く長崎の郵便局留めになっていた。
「奥さんの遺言だから、ここでは渡せない。今日、投函するから、長崎まで取りに
行ってください」と告げられる。

その場で渡された封筒には一枚の紙が入っていた。妻の手で描かれたと思われる
灯台と木の枝にとまった一羽のスズメの絵に優しい字で短い文章が添えられていた。

あなたへ

   私の遺骨は
     故郷の海へ
       撒いて下さい


妻を弔う“鎮魂”の旅が始まった…
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局留めの手紙を受け取るため、倉島はキャンピング・カーで長崎に向かいます。
その車には妻の思い出が詰まっています。病気が重く、実際に乗せてあげることは
出来なかったのですが、木工の技術を持つ倉島自身が改造を進める車については
病床を見舞うたびに話していました。

「行きたいところがいっぱいあるわ」とつぶやく妻に倉島が言います。
「どこでも行くからさあ。早く治ってくれよ。頼むからさあ」…
始まってすぐでしたが、そのシーンで早くも眼鏡が曇りました。前途多難。ハハハ。

倉島は行く先々でいろいろな人に出会います。
出会い方に工夫があって、ロードムービーとしての味わいもなかなかです。
なぜ、妻は“最後の言葉”を直接言わずに、こんなやり方を選んだのだろうか?

「俺は女房にとって何だったのか?」、倉島は旅の間、考え続けます。
公式HPの“物語”の冒頭には、「妻の故郷への旅。多くの人々との出会い。
そこには妻の本当の願いがありました。」と書かれています。帰宅してから読んで、
ああ、そうなんだ、と思いました。“映画は理屈じゃない”派ですから。ハハハ。

作者の“思い”はそこにあるのかもしれませんが、私たち観客はあまり考えずに、
倉島と旅先で出会う人々の交流を楽しめばいいのだと思います。

刑務所の総務課長・長塚京三とその妻・原田美枝子、旅で出会う自称元国語教師・
ビートたけし、出張駅弁売り・草彅剛とその同僚・佐藤浩市、目的地に着いてから
世話になる余貴美子・綾瀬はるか母娘、綾瀬の婚約者・三浦貴大、散骨のために
船を出してくれる三浦の祖父・大滝秀治…みんないいです。キャラクターも俳優も。
誰ひとり、このドラマが大事にしたい“空気”の中に収まっています。

中でも、たけしがいいと思いました。
これまで、たくさんのドラマや映画で見ましたが、いいと思ったことはありません。
いつも、わざとらしいのです。それも、「演技ってものは、こういう風にさりげなく
やるもんなのさ」と言っているように見せていますが、それがわざとらしいのです。
ややこしい。ハハハ。

2度、出番がありますが、特に最初の5分ほどのシーンが素晴らしかったです。
「たけし、やればできるんじゃねえか、この野郎。やくざの役で、やたら強がった
セリフばかり言ってんじゃねえよ、バカヤロー!」と言ってやりたい。ハハハ。
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高倉健…1977年3月にフジテレビのスタジオで一度だけ会いました。
このとき、46歳…まさに脂が乗っているときでした。長身、颯爽、その上 寡黙…
まったく偉ぶるところのない八つ年上の大スターは“まぶしい”男でした。
やくざ映画は嫌いだったので、それまで彼の出演作はほとんど見ていませんでした。
「八甲田山」、「幸福の黄色いハンカチ」、「野性の証明」など、ストライクゾーンに
入ってきたのはそのあとの作品群でした。

いわゆる“演技派”ではありません。高倉健その人が画面の中にいる感じです。
それこそが“演技”と言われたら、むちゃくちゃうまいわけですが。ハハハ。
演技の“うまい・へた”はこの際どうでもいいじゃないですか。わざとらしくなく、
そこにいるだけで絵になる俳優、雰囲気を出せる役者はそんなにはいません。
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NHK[プロフェッショナル]の中で本人も演技についてこう話していました。
「本人の生き方かな。生き方が出るんでしょうね。テクニックではないですね」
一言で言えば、見る者の気持ちをわしづかみにするのはこの人のたたずまいです。
ただ立っているだけ、海を眺める背中…彼の人生そのものが彼の姿・形を借りて
そこにあるように見えるのでしょう。日本映画にとってはきわめて貴重な存在です。
歩き方などに81歳という年齢を感じないわけにはいきません。体をいたわって、
1本でも多くの映画を見せてほしいものです。

しみじみとした、後味のいい映画に出会いました。
これまで、今年の岩佐的邦画No1は「わが母の記」でしたが、甲乙つけがたく…。
年末に最終ランキングを決めるとき、大いに迷いそうです。
数日後に、収録してあった「鉄道員(ぽっぽや)」を見ました。これもよかった。
時間ができたら、昔の作品を見直してみようと思いました。
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…1200キロの旅のあと長崎で受け取った封筒にも一枚の紙が入っていました。
灯台と飛び立つスズメが描かれ、そこに添えられた5文字が美しかったこと…

by toruiwa2010 | 2012-09-10 08:37 | 映画が好き | Comments(4)
Commented by 老・ましゃこ at 2012-09-10 09:43 x
“健さん”とご一緒されている岩佐さんも素敵ですネ(^^)
偶然…お二人とも手を後ろに組んで(^^)同じポーズで。
「鉄道員(ぽっぽや)」を劇場で観て出てきた時、
泣きはらした瞼で明るいところにいるのが、少し恥ずかしかったですが、
涙を沢山流したことがこの映画を見ていろんなことを思った証だと思い、開き直ったのでした。
「あなたへ」も見たらきっとそうなるような気がします。
Commented by toruiwa2010 at 2012-09-10 11:21
老・ましゃこサン、こんにちは。

そう言えば、2人とも後ろ手ポーズですね。
貫録がまるで違います。
純子さんの最終回(第1期)のゲストでした。
Commented by loverafa63 at 2012-09-11 13:40 x
岩佐さん、こんにちわ。
「あなたへ」観るか迷っていたのですが、
この記事を読んで、観ることに決めました。

昨日、WOWOWでサンプラス対サフィンの
名勝負を観ました。初めて聞く岩佐さんの実況、
声質やトーン、流れが心地よかったデス。
Commented by toruiwa2010 at 2012-09-11 16:50
loverafa63さん、こんにちは。

レスはつけたはずなのに、変な奴が
からんできたので、送信ボタンを押し忘れたようです。
ごめんなさい。

「あなたへ」・・・40歳以上なら絶対です。
どんな基準やねん。ハハハ。

私の実況を初めて・・・
そういう時代になりましたね。
だんだん、名勝負で登場することも少なくなるでしょう。
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