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岩佐徹のOFF-MIKE

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遅れ出す“伝達”~岩佐徹的アナウンス論77~09/23

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ハンド・アイ・コーディネーション

この言葉を知ったのはフジテレビで「大リーグ中継」に関わっていた頃ですから、
もう30年以上前のことになります。
野球に限らず、スポーツの世界で引退に追い込まれた多くのベテランたちがこの
HEC =“ハンド・アイ・コーディネーション”、つまり、手と目の連係がうまく
行かなくなったことを理由に挙げていたのです。

選手たちは、①目でボールを認識する ②脳がそれを受けて対応を体に指令する
③それに反応して体が動く…
ざっと、こんな感じでプレーするわけですが、年令とともに①から②、あるいは
②から③への伝達、反応が少しずつ遅れるようになります。アスリートとしての
“老化”が進むと、もう若い頃のようなプレーができなくなるのです。
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たとえ100分の1秒単位の遅れでも、おそらくほとんどすべてのプロ・スポーツで
それは“致命的”でしょう。
ピッチャーの手からボールが離れた瞬間、「カーブだ」と判断できても、体の動きが
遅れたり、正しいインパクトの位置にバットを出せなかったりすれば、ヒットは
打てません。サッカーでも「シュート・コースがある」と、頭では分かっていても、
打つタイミングが少しでも遅れれば、相手が対応してしまいます。 
よく分かる話でした。
しかし、「タング(舌)・アイ・コーディネーション」と形を変えたこの“症状”が、
やがて自分を襲うことになるとは、そのときは想像もしませんでした。ハハハ。

60歳を過ぎたころから、特にサッカー中継などで、目が認識したプレーや選手の
名前を言葉にするまでに時間がかかるようになったことは否定できません。
名前を言ったときには、もう次ぎの選手にボールが渡っていたり、それをカバー
しようと急ぎすぎて間違えたりすることが増え、視聴者の皆さんからお叱りを
受けることが多くなりました。

海外から衛星で送られて来る映像に生で実況をつける「オフ・チューブ方式」の
サッカー中継に取り組んだのは多分WOWOWが初めてだったでしょう。
94-95シーズンのセリエAからでした。
その頃は、ボールを持った選手の名前を的確にお伝えするのは私の得技でした。
「難しいのを見分けてこそプロだろう!」ぐらいの自負もあった(ハハハ)だけに、
目の衰えを自分で認めなければならなかったのはかなりのショックでした。

“スランプ”というのは長い実況生活の中でもサッカーだけで、他の担当種目では
記憶がありません。初めて経験したのは2000年5月でした。

*この件についてはつい先日書いたばかりの記事とダブります。
「突然、襲った“スランプ”~岩佐徹的アナウンス論72~」http://bit.ly/Tw5Bwp

バルセロナの得点者を2度にわたって間違え、「また、やるのではないか」という
恐怖から放送に臨むとき“ネガティブ”な気持ちになったのです。スランプでした。
どれぐらい続いたか覚えていませんが、このときはかなり焦りました。
HECの衰えとは直接関係なかったかもしれませんが、“焦った”以外に年齢による
なんらかの衰えが忍び寄っているのではないかと思ったからです。62歳でした。

初めに書いた通り、この現象は“晩年”を迎えたアスリートが必ず経験します。
松井秀喜もそうだろうし、イチローにも忍び寄っているのでしょう。
気づくかどうか、認めるかどうかは別として。ハハハ。
そして、気づかない、あるいは、認めたくない性質の事柄でもあります。
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…昨日、この記事を書き終えていましたが、今朝、MLBの結果をチェックすると、
イチローは今日も5打数3安打して5試合連続のマルチヒット!
5試合トータルでは20打数14安打で打率はちょうど7割!!
“5-3でも打率が下がるほどのモンスターぶり…”と、どこかのお調子者の記者が
”提灯記事”を書くかもしれません。ハハハ。
この結果を見せられると、イチローに関してはHECの衰えは一時的なものだった
と言われてもうなずくしかありません。
イヤ、今の調子よさこそが一時的なもの…と考えることもできますが。ハハハ。

私は“素直”ですから、衰えを認めました。…ざるを得なかったし。ハハハ。
タング・アイ・コーディネーションの“劣化”は確実に進んでいました。
頭ではどう表現すべきか分かっているのに、言葉にするのに時間がかかるように
なった事実をつきつけられるのはつらいことでした。悲しいかな、現実はとても
厳しいのです。ハハハ。
当時、同年輩のアナウンサーの実況を聞いて、描写の遅れがしばしばあると分かり、
同情するより、私一人ではないんだ、と少しほっとしたものです。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-09-23 08:15 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(0)
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