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岩佐徹のOFF-MIKE

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読むこと:アナの基本~岩佐徹的アナウンス論79~12/09/30

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イカルガノサトニツラナルナダラカナヤタキュウリョウ
「いかるがの里に連なる、なだらかな矢田丘陵」…


流れてくるのは、だいぶ若いころのものですが、間違いなく私の声でした。
フジテレビ入社以来、ラ行、ダ行、ナ行が苦手、特に、それがつながった言葉は、
出来るだけ避けていました。いざとなると、「意味は変わらないので、こうしても
いいですか?」と、自分が読みやすい言葉に置き換えてもらってニュースを読んだ
こともあります。ハハハ。
冒頭の文章などは、「カンベンしてくれよ」という心境で読んだに違いないのですが、
驚いたことにひとつひとつの音がきちんと出ているではありませんか!

だいぶ前ですが、何かを検索しているときに“ナレーション 岩佐徹”という文字を
見つけました。さらに検索を続けてたどり着いたのは「古都奈良に十三佛を訪ねて
大和路・悠々散歩」と題する4本セットのDVDボックスです。
すぐに頭に浮かんだのは「?」です。
ナレーションを頼まれた記憶はかすかにあるのですが、出来上がった作品は手元に
ありません。そうなると気持ちが落ち着かないので、ネットを通じて購入しました。
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WOWOWに出向して数年たったころ、つまり、私は50歳を過ぎていたはずです。
8年半ほど、マイクの前を離れていたあとにしては口もよく動き、滑舌もそれほど
悪くありません。「これなら、商品になっていても恥ずかしくはないかなあ」という
“自己評価”です。ハハハ。

“ナレーション”という仕事は、もともとはアナウンサーがやっていたものですが、
いつのころからか、俳優やタレントたちによって“荒らされ”始めました。ハハハ。
NHKが「シルク・ロード」のナレーターに石坂浩二を起用したときは、読み方も
アナウンサーに近く、雰囲気もよかったのでそれほど違和感がなかったのですが、
しだいに、声そのものにはインパクトや魅力があっても、“読み”のテクニックは
持っていない人たちが始めるようになると、猛烈に腹が立ってきました。

アナウンサーは、文章の内容を汲んで、それが聞いている人に伝わるように読む
訓練を受けています。ですから、テクニックでは負けるとは思いません。
しかし、声に特徴がある有名な俳優たちが読むと、声の魅力が前面に出て、読みが
うまいかどうかはもはや関係なくなってしまうところがあります。
そうなると、どちらかというと、個性を消すように教育されているアナウンサーは
太刀打ちできなくなるのです。 「うまいとは思わないけどなあ」と口惜しがっても
どうにもなりません。犬の遠吠え。ハハハ。

それでも、美声とは言えないものの、耳障りな声ではないことや癖のない読み方を
していたせいか、40年を超えるアナウンサー人生の中でたくさんのナレーションを
やらせてもらいました。
商品化されていて、手元にあるものを列記すると以下の通りです。

DVD
HISTORY of FOTBALL(THE BEAUTIFUL GAME) 6本セット
UEFA EURO 2004 PORTUGAL 3本セット
HISTORY of WIMBLEDON 2本セット
ウインブルドン・オフィシャルフィルム2004
ウインブルドン・オフィシャルフィルム2005

Video
高橋勝成や江連忠によるゴルフのレッスンものを多数やっています。
’94マスターズ、’95マスターズではジャック・二クラウスの声を吹き替えたことも
あります。実技は100を切るかどうかでも声だけはニクラウス・クラス。ハハハ。

商品になっていないものの中にも、記憶に残っているものがたくさんあります。
1988年に昭和天皇が亡くなったとき、全番組を中止して追悼番組を放送しましたが、
その日に流されたVTRの中に自分では一番気に入っている“作品”がありました。
残念な世界大戦から戦後の驚異の復興まで、激動の時代を生きた昭和天皇の生涯を
たどる壮大な物語です。

天皇が亡くなることを崩御(ほうぎょ)と言います。
陛下が70歳前後になられたころから、新聞・テレビなど各メディアは、いつか
やってくる崩御の日を“Xデー”と呼んで、その際に載せる記事や放送する番組の
制作に着手していました。
特にテレビの場合、まだ確定していませんでしたが、崩御されてから数十時間は、
ほかの番組を全部中止して特別編成(CM抜き)になることは分かっていましたから、
その時間を埋めるためのVTR制作の作業は早くから始める必要があったのです。

そして、フジテレビがまず手をつけたのがこの“一代記”でした。
今となっては正確な年代は思い出せませんが、私にナレーションの依頼が来たのは、
たぶん1970年代の初めだったと思います。入社から10年前後、仕事も気持ちも
最高に“乗って”いたころです。指名を受けたことがプライドをくすぐりました。
本来なら“報道系”のアナウンサーがやる仕事だからです。横取り。ハハハ。
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実際の作業は遅々として進みませんでした。
膨大な量の素材を集めて30分ずつに編集し、ナレーション台本を作るのは想像を
絶する時間と労力を必要としたはずですから、しかたがありません。
2年に1本ぐらいのペースでしたから、結局、私がナレーションをつとめたのは
最初の4本(2時間分)だけでした。それだけでも収録には6,7年の歳月がかかったと
記憶しています。メジャー中継のための海外出張が増えたり、報道局への異動が
あったりしたために、残りは2人の後輩が担当しました。

下読みにたっぷりと時間をかけ、ディレクターの指示できわめてゆっくりとした
ペースで、心をこめて読んだ日々が思い出されます。

あるひとつの人生を語るとき、それを一国の歴史になぞらえることが出来る
人生に揺籃の時代あれば、国に草創期の苦闘の歴史あり
人生に青年客気の時代あれば、国に狂瀾怒涛の歴史あり
人生に成熟の時代あれば、国には爛熟した文化の時代がある

我々がいま、昭和という時代の終焉にあたって大行陛下ご一代の足跡をたどるとき、
まさしくそれが一国の歴史でありひとつの人生と呼ぶにはあまりに歴史的な人生で
あったことを痛感せずにはいられない。


昭和天皇の崩御は1989年1月でした。
最初の収録から15年以上の時間が経過していたことになります。
88年9月からWOWOWに出向していた私はこの日の放送を自宅で見ました。
亡くなったばかりの昭和天皇の幼少時からの映像を見ながら、聞こえてくる自分の
ナレーションに、特別な感慨がありました。

“その日”の空気を頭に入れて充分に読み込み、読み終えたときには、自分なりに
大きな満足感があったのですが、録音の日から40年近くの時間がたった今 聞くと、
「声が幼い」「深みがない」という印象は免れません。
当時の私は35歳を過ぎたぐらいです。こういうものを納得がいくように読むには
もっと年輪が必要だったのだと思います。

スポーツ実況やニュース・キャスター、リポーター、バラエティ番組の司会などに
くらべると、ナレーションははるかに地味な仕事です。
しかし、考える以上に奥が深くてアナウンサーとしてはやりがいのある分野です。
そして、忘れてならないのは読むことは、分野を問わず アナウンサーにとっては
基本中の基本だということです。
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狭いブース、目の前の重厚なマイク、原稿を置く机に貼られているすべり止めの
グリーンのフェルト…自分が最も楽な姿勢で腰をおろし、ヘッドセット・マイクを
つけてその重さを感じつつ、カフの調子を確かめて、ディレクターのキューを待つ。
体の中心から静かな興奮がわいてくるのを感じる瞬間です。自分で十分納得できる
読みが出来たときの“達成感”はやったものでないと分からないでしょう。

どういう効果を狙っているのか分かりませんが、最近は売れっ子の俳優・女優を
起用しているケースが目につきます。テクニックも何もないその読みを聞きながら、
「結局、ディレクターが、打ち合わせを含めて2,3回会えるからじゃないの?」と
ひそかに毒を吐いています。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-09-30 10:29 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(4)
Commented by Vevey at 2012-09-30 13:40 x
岩佐さん、こんにちは。
私も意味のない「俳優のナレーション」に反対です!勿論いい味出しているケースもありますよ。
でも、NHKのNスペ「MEGAQUAKE」で俳優の仲村トオルがナレーションをしたのは大失敗だったと思います。仲村トオルは大好きな俳優さんなので、余計に残念。
声がくぐもって何を言っているのか聞き取りづらいという、致命的なナレーションでした。正直言って彼の滑舌がこんなに悪いとは思いませんでした。しかもシリーズ!(泣)

ナレーションにある程度の年齢や人生経験は関係あるかも知れませんね。局アナも若い人はどうなんでしょうか。顔出しの多い人はナレーションの勉強する時間はないのでは?
私は元テレ朝の中里雅子さんの落ち着いた声のナレーションが好きです。

Commented by toruiwa2010 at 2012-09-30 14:24
Veveyさん、こんにちは。

「アナウンス論」に書き込みがあるなんて思いませんでした。
「MEGAQUAKE」・・・見ませんでしたが、私も仲村トオルは
好きな俳優ですから、聞いただけでも残念です。
きっと、ディレクターが女性で彼のファンだったんです。
もちろん、冗談ですが、十分にある話だと思ってます。

時間的にも今の局アナには無理でしょう。
中里さんの名前はよく見かけますが、聞いたことがありません。
Commented by tom☆ at 2012-09-30 22:59 x
ナレーション【誰】と書いてなくても、岩佐さんの声は分かってしまいますよ、絶対に☆☆
★個性消せて無い★と文句を言いたいのでは有りません、好きだから分かってしまうんです!なにせ聞き慣れているもので♪

★俳優の顔がすぐ浮かんでしまうようなナレーションは難しいですね・・興醒めな事が多いです。。

ゴルフは未経験なので始める時はぜひ【ジャック・ニクラウス=岩佐さん】のビデオを手に入れましょう~(=^_^=)
☆良い事聞きました~☆


Commented by toruiwa2010 at 2012-10-01 01:19
tom☆さん、おはようございます。

有難うございます。
特別なケースはあるでしょうが、
一般論としては、アナウンサーの声は
あまり覚えてもらえないものです。

ニクラウスのビデオ・・・
たぶん、もう存在しないでしょう。ハハハ。
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