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岩佐徹のOFF-MIKE

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女性アナに実況は…?~岩佐徹的アナウンス論85~12/10/20

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「女性にはスポーツ実況はできませんか?」
…答えるのが一番難しい質問です。
「無理でしょうね」が答えですが、「なぜですか?」と必ず聞かれることが分かっていて、
その“答え方”がとても厄介だからです。ハハハ。

6年前に、NHK-BSで思い切った企画が実現しました。まず、そのときに書いた記事です。
日時や時制はそのままにしてありますので、自分で調整してください。ハハハ。

「女性アナの実況」(2006.04.24)

日曜日、2台のテレビの1台で「からくり…」や「ジャンク…」を見ながら、もう一台は
音を消して巨人-阪神をつけていました。
一回の表、阪神が3点を先行したあとだったと思いますが、画面に解説者の梨田と並んで
有働アナが顔を見せました。ハイビジョンで実況をするという話は聞いていました。
「あ、今日だったんだ」と急いで収録ボタンを押しました。

以下は、それを見た私の感想です。

「10年後でもいい、実現できたら嬉しい」という思いで彼女が出した企画が認められたと
いうことだそうです。そのチャレンジ精神、勇気には拍手です。
しかし、結果は厳しいものだったと言わざるを得ません。

事実を書いてみます。

酷だとは思いますが、“しゃべる訓練を受けている野球好き”の女性がマイクをつけて
“四方山話”をしているに過ぎない、という印象を受けました。

まず、NHKの制作陣がどういう意図で彼女を起用したのかがよく分からないのです。
「キャスターとしての経験を生かして彼女らしいアングルで」、「女性らしい視点で」、
「ファンの代表として」…いずれでもなかったように思います。
「たまには目先を変えるのもいいだろう」程度のことで“実験”を聞かされたのでは
付き合わされる視聴者はかないません。 

収録部分に入っていませんでしたが、冒頭で「野球にくわしい皆さん、ごめんなさい」と
言ったそうです。つまり、自らの“ポジション”をかなり低いところに設定したという
ことでしょう。その割りに、試合全体のテーマを「キャッチャー目線」としていたのは、
かなりレベルが高いと思います。

彼女自身から出されたアイディアなのか、制作陣が「普通にやっても意味がないから」と
思って用意したのかは分かりません。
わざわざ梨田を解説に据えたのも企画が先行してのものでしょう。
両チームのキャッチャーへのインタビューもあり、阪神の平田ヘッド・コーチにも話を
聞いて“つくり”はしっかりしていました。
キャッチャーについていろいろ話した後の平田コーチが「そこから先を勉強しないと」と
有働アナにダメを出したあたりは完全に“やらせ”に見えましたが。ハハハ。

この企画が番組の芯になっていたことで多少は救われていたと思いますが、経験豊富な
アナウンサーが実況を担当していたら、もっと話が膨らんだと思います。
スタッフにしてみれば、そのへんも、初めての彼女に多くを期待しても無理だ、という
判断はあったことでしょうが。

“四方山話”と書きました。
したがって、キャッチャー以外の話は“とりとめ”がないのです。
話の中身はもちろん、テンポ、リズムがグラウンド上の動き、スピード感などまったく
合っていませんでした。テレビでスポーツを見るときに、一番イライラするポイントです。
こうなると、女性の解説者に多い“○○選手”の“選手”がうるさく感じられてきます。
ハハハ。
私は、テニスに新しい解説者を迎えると必ず、“…選手”はやめましょう。“呼び捨て”で
問題はありませんからと言います。
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望んでも無理だと分かっていたのですが、実況で描写が追いつかないのは興ざめでした。
まず、画面に映っていない、ランナーのスタートなどが完全に遅れてしまいます。
たとえば、ランナーがスタートを切り、バッターが打って打球が三遊間へ飛んだ場面でも、
インパクトの瞬間ぐらいから「走って…抜けて…」と、ひとコマずつずれていました。
一番困るのは、試合の半ばを過ぎてもここという場面で「あー」しか出てこないことです。

4回裏、巨人の攻撃。2死満塁で阿部の打球はライトの頭上へ飛びました。
「あー…ライナー性で…フェンス直撃…ランナーひとりふたり、返ってきました。二塁打」
…実況というより、“スタンドにいる女性ファンの独り言”のレベルでした。

スポーツ実況を志すアナにとって、野球は基本です。
野球の実況の中にはプレーの描写を初め、情景描写、情報提供、解説者とのやり取りなど
スポーツ・アナに求められるすべての要素がほど良いバランスで詰まっているからです。
女性アナウンサーが最初に取り組む種目としては難しすぎるのではないでしょうか。

フィギュア・スケートなどでスポーツ実況の“感覚”を実感したあとで挑戦していたら、
今回のような失敗はしなかったと思うのです。
その意味では、本人ではなく、周りに責任があると言うべきでしょう。
「10年後でもいい」は、いろいろ経験してから、という考えがあったことを示しています。
安易にOKを出し、実現した結果がこんなことになり、有働アナにかぎらず、すべての
女性アナにとっての次のチャンスが遠ざかったとすれば、罪は大きいと思います。
この放送でプラス面を探すとすれば、梨田氏の話し方が柔らかかったことぐらいです。
ふだんでも、スポーツ関係者はみんな女性アナ・記者に対しては“妙に”優しいですがね。
ハハハ。

女性アナによる実況の試みはこのときときが初めてではありません。
オリンピックの女子マラソン、高校野球、女子駅伝、フィギュア・スケート…挑戦は
何度かありました。
しかし、フィギュアが“微妙”だった以外、厳しい言い方ですが失敗に終わっています。
局内外から少しでもいい手ごたえを感じていればあったはずの“続編”がないことが
その証拠でしょう。

「女性だからダメ」と言っているのではありません。
ただし、かなり難しいのは事実です。独特のリズムが必要です。スピード感を出すのも
大変です。歯切れのよさも求められます。
たしかに、これはあくまで今の男性アナによる実況を前提にした話です。
しかし、“女性ならでは”のスポーツ実況の確立を目指すとなると、なおさら越えるべき
ハードルは高くなりますね。
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同じことを何度も書いていますが、私たちのころは“スポーツ・アナが一人前になるには
10年かかる”と言われてきました。
目の前で起きることを、99%アドリブで描写していくにはそれだけの年月が必要なんです。
今、第一線で活躍する実況アナは、みんな、入社のときからスポーツの世界にどっぷりと
つかって知識を積み重ね、技術を磨いてきた人たちです。
男性と同じタイプの実況を目指すなら、入社のときから同じような道を歩まないと実現は
きわめて難しいでしょう。近道はありません。“ローマは一日にしてならず”。ハハハ。

放送の最後に彼女はカメラに向かってこう言いました。
「取材してみて、野球の面白さが徐々に分かってきました」
決してあげ足を取るつもりはありませんが、今、各局でしゃべっている実況アナの誰も
こんなことは言わないでしょう。「馬鹿なことを…」とあきれたはずです。
病院で“研修医”、お店で“研修生”を見かけるこがもあります。
しかし、彼らはあくまで見習いの立場で仕事に臨んでいます。

同じように、すべてのアナウンサーが“完成品”というわけではありません。
だからと言って「私は発展途上のアナウンサーなんです」と、はっきり言われたのでは、
視聴者の立場はどうなるのでしょう。
梨田が何度も「初めてだから」「緊張してたから」と、かばうように言ったのも逆効果です。
打ち上げの席でなら許されるでしょうが、放送の中で言うべきではありません。

今後について担当プロデューサーは「時間をかけて検討したい」と話しているそうです。

かなり、辛辣に書いていますが、有働アナに恨みがあるわけではなく、
むしろ、周囲の軽率な判断を責めているつもりです。

つづく・・・
by toruiwa2010 | 2012-10-20 09:15 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(9)
Commented by ローンスター at 2012-10-20 11:31 x
だとすると、「女子アナにスポーツ実況は無理」ではなく、「専門的な訓練を積んでいないアナウンサーにスポーツ実況は無理」とする方が適切ではないでしょうか? 私は別にフェミニスなんかじゃないですが、女子アナには、と限定する理由が今日の文面では提示されていないと思います。男性の方が女性より実況技術が高い、あるいはスポーツ理解が深いと決めつけられる根拠はないわけですから。要は、単なる環境の問題です。

佐野眞一の偏見や決めつけを糾弾できなくなりますぞ。
Commented by toruiwa2010 at 2012-10-20 11:38
ローンスターサン、こんにちは。

「専門的な訓練を積んでいないアナウンサーに
スポーツ実況は無理」は言う必要のないことです。
できますか?と聞くおバカさんもいないでしょう。ハハハ。

今日と明日の記事がすべてです。
あなたがそう考えるなら、止めません。

佐野真一に「偏見」や「決めつけ」があると
書いた記憶がありませんね。あれ、ボケたかな?
ハハハ。
Commented by 赤ぽん at 2012-10-20 12:16 x
岩佐さん、こんにちは。

女子マラソンの時の女性アナには、普段我慢強い私も?!さすがに音声を
絞りましたからね!あれは何かの拷問かと心底思ったくらいでw
夕方の安藤アナはじめ女性アナの方で、興奮してくるとキーが一層高くなり
聞き苦しくて仕方がなくなり、やはり緊急・緊迫時には声の低めの落ち着いたアナが
いいかと思いますが、最近は男性でも興奮した場面で“すっとんきょう”な
声の高さの人がいるような・・・、あれっ、これはサッカーだけかな?!w

有働さんの“お相手”、『検討を重ね厳選』し梨田氏にしたのでしょうが、これが
某武田氏だったら大変な、ある意味歴史的な放送が聞けたでしょうか?!
有働武田コンビ・・・怖いもの見たさw
Commented by toruiwa2010 at 2012-10-20 12:28
赤ぽんサン、こんにちは。

ハハハ。確かに、有働・武田コンビは聞いてみたかった。
昔、テレ朝で落合が若いアナを「いたぶった」ことがあります。
若いアナはいま、立派に育ちましたが。落合=獅子の親。ハハハ。
Commented by 赤ぽん at 2012-10-20 12:58 x
落合氏の“いたぶり”、確かにきつくて効きそうですね!コワいコワいw
でもその若いアナ、挫折せずに立派に育って良かったですねw
そういえばNHKはその落合氏と梨田氏をコンビで“予想”に使ってますね。
きつく?!なりそうな落合を「番組的に」やさしくフォローするさわやか梨田さんの
構図が出来上がってますね、コンビ芸w。そしてこういう時便利な梨田さんw

その昔、日テレ巨人阪神戦での森・村山“コンビ解説”ならぬ「OBの応援合戦」解説が
思い出されますw(古過ぎて知らない人多いだろうなぁ)

Commented by S_NISHIKAWA at 2012-10-20 13:20 x
そういえば、MXテレビの「ストロングホークス」(ホークス戦中継)も、昨季は女性の実況でしたが、今季は普通に男性(元日テレ山下さんが多かったかな)の実況に戻りましたね。
Commented by toruiwa2010 at 2012-10-20 14:01
S_NISHIKAWAサン、こんにちは。

聞いてどうでした?
山下アナ、いろいろやってるんだ。
スポーツのフリーアナは単価が安いですから
数をこなさないと行けません。大変ですよ。
完全ヒトゴト。ハハハ。
Commented by S_NISHIKAWA at 2012-10-20 16:51 x
こんばんは。
そうですねー、かのNHKの方と比べれば、野球好きで大学卒業後も野球に関わる仕事がしたいと考えておられたそうなので知識はありましたし、岩佐さんも私もNGな、夕方のニュースの女性とは違い、声も低めに抑えておられましたが、やはり微妙に違うと感じました。
それは経験なのかもしれませんが。ほぼ2シーズンで降りられたようですので、同様のご意見があったのかもしれません。だとしたら、ちょっと残念ですね。
スポーツのフリーアナは単価が安い、ですか。そういえば、みなさん確かによくお耳にします。上野晃、加藤じろう、などなど。
Commented by toruiwa2010 at 2012-10-20 17:08
S_NISHIKAWAさん、こんばんは。

フリーアナ・・・サッカーの八塚アナなどは
よく倒れないものだと「寒心」するほど
働いてました。私には無理です。ハハハ。
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