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岩佐徹のOFF-MIKE

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「終の信託」& 「アルゴ」90点!~最近見た3本のレビュー~12/11/08

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「終の信託」90

海に近い川沿いの道を女が歩いていた。季節は秋から冬に変わろうとしている。
女は低い堤防のコンクリートの上に花束を一つ置くときびすを返した。
彼女が行ったのは検察庁だった。呼び出し状を受け取っていたのだ。

指定された時間より30分以上早く塚原検事(大沢たかお)は「待たせておけばいい」と
事務官に告げた。特にやることがあるわけでもないのに。
女は市内の病院で呼吸器内科の部長を務めていた医師・折井綾乃(草刈民代)だった。
待っている間、彼女は 強い絆で結ばれた患者・江木秦三(役所広司)との関わりを
思い返していた…
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“終末医療”、“尊厳死”、“安楽死”、“延命治療”“脳死”など、セリフの中に出てくる
単語の一つ一つがこの映画のテーマの重さを示しています。
「“最期のとき”をあなたに決めてほしい」と患者に頼まれた医師に何ができるか?
そもそも 医師に患者の死を決める権利があるか?
誰もが正解を持たない“出口のない”議論です。しかし、この映画は、そのことを
繰り返し、観客に問いかけてきます。
ですから、楽しんだ、とか、面白かった、という感想を持つ作品ではありません。
それでも、2時間24分の大作は私の気持ちをわしづかみにして放しませんでした。

テーマが重く、笑いが起きる場面はありませんが、暗い気持にはなりませんでした。
むしろ、綾乃と江木の心の交流を美しい物語だと思いながら見ていました。
気持ちが沈むのは、最後の30分でつきつけられる取調室の実態を見たときです。
見せられたものがどれほど真実に近いのかは確かめようがありません。しかし、
「ありそうなこと」と思えること自体が怖いです。

周防正行と草刈民代の夫婦がコンビを組むのは「Shall We ダンス?」「ダンシング・
チャップリン」に次いで3作目らしいですが、呼吸はぴったり合っています。
大河ドラマ「龍馬伝」、NHKのドラマ「眠れる森の美女」も見ましたが、草刈民代が
今、光っていますね。演技が特にうまいとは思いませんが、かもし出す“空気”は
みごとに役柄を映し出していると思います。やっぱり、うまいのかな?ハハハ。

監督の過去の作品に共通する、ディテールを大事にする映画作りが好きです。
上映開始間もなく 検察庁の受付でのやり取りを見るだけで、この映画に賭ける思い、
丁寧に作ろうという意志が伝わります。
思いを込めて作った作品は必ず見る者の胸に迫ってきますね。

数週間前に歯科医院の待合室で読んだ週刊誌の映画欄で取り上げられていました。
4人の評論家の意見が大きく割れていました。「こいつ、何を言ってるんだ」と
思ったのはおすぎのコメントです。

啓蒙としてのメッセージはとてもよく分かるしその通りだと思うけど、
登場人物がほとんど不愉快でいらいらした…


評価は☆☆でした。“暇なら”という意味らしいです。ちなみに最高は☆五つです。
低い評価をするのは個人の自由ですが、このコメントは作品を見たあとに読んでも
何を言いたいのかが全く分かりません。


「声をかくす人」80

1863年、腹に銃弾を受けて倒れたエイキン大尉は部下とともに助けを待っていた。
やがてやってきた衛生兵がまず上官の彼に手を伸ばしたとき「いや、彼を先に」と
部下を指さした。エイキンはそういう男だった。

2年後、足掛け5年に及んだ南北戦争が終結。
ワシントンで開かれた祝勝パーティにエイキンも英雄の一人として出席していた。
しかし、そこにリンカーン大統領の姿はなかった。いぶかる人々に誰かが言った。
「大統領はパーティより芝居の方がいいらしい」と。

大統領が観劇中のフォード劇場で1発の銃声が響いた・・・
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逮捕された暗殺犯グループの中に女性が一人いました。メアリー・サラットです。
グループの溜まり場になっていた下宿屋の経営者で 一味の一人の母親でした。
エイキンは旧知の上院議員の依頼で彼女の弁護をすることになります。自分も北軍の
将校として南軍を相手に戦場で戦った経験があるだけに、大統領を暗殺した犯人の
一人を弁護することには大きな抵抗がありました。

ロバート・レッドフォード監督は、“結論ありき”のような形で裁判が進むうちに
「公平な裁判を受ける権利」は憲法が保障するものであるという考え方に傾いていく
エイキンの心の内を丁寧に描いています。
メアリーはアメリカ史上初めて死刑になった実在の女性です。
意志の強い彼女を演じたロビン・ライトと、葛藤の中で与えられた役目を果たした
エイキン役のジェームズ・マカボイがともに魅力的です。

アメリカの歴史に詳しければ、一つ一つの行動やセリフの意味がよりよく理解できた
だろうにと、少し残念です。


「アルゴ」90

冒頭、イランの歴史が簡単に語られる。ペルシアと呼ばれた時代から国王の亡命まで。

1979年11月4日、イランの首都・テヘランのアメリカ大使館はおびただしい数の
群衆に囲まれていた。こぶしをつき上げ、荒々しいシュプレヒコールが響く。
「パーレビを引き渡せ!」
病気の治療を理由にパーレビの入国を認めたアメリカに対するイラン国民の怒りは
頂点に達していたのだ。

やがて 一人、二人と門を乗り越えて敷地内への侵入が始まり、門がこじ開けられると
あっという間に、無数の群衆がなだれ込んでいく。館内では重要な書類の焼却など、
“退避”のための作業が始まった。

大使館員や海兵隊員ら52人が人質となる一方、6人の館員が裏口から脱出した…
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映画は カナダ大使の私邸に逃げ込んだ6人の救出劇を描いています。
限られた時間の中でさまざまな救出計画が検討されますが、「これだ」というものが
ありません。そんな中でCIAのエージェント、トニー・メンデスの提案は関係者の
度肝を抜くものでした。「嘘だろう、うまくいくわけがない」と思う奇想天外のプラン。
しかし、すべてが事実に基づいているのだそうです。

この年の私は メジャーを追ってほぼ1シーズンをアメリカで過ごし、ピッツバーグ・
パイレーツとボルチモア・オリオールズのワールド・シリーズまでを伝えましたが、
この“事件”が起きたのは帰国から2週間後でした。
翌年、開幕シリーズの中継のためシンシナティに到着すると、アメリカのテレビは
事件の経過を伝えるニュース画面に必ず「発生から○日目」のCGを入れていました。
多くの家庭が人質の無事を祈って黄色いリボンを飾り続けていました。
スポーツ・イベントの前に国歌や「God Bless America」などの準国歌を歌うとき、
しばしば「人質たちに捧げる」とアナウンスされていたものです。

大使館で人質になった人々が解放されたのは444日後のことです。この間、新聞・
テレビの報道合戦も激しかったと聞いていますが、この6人が脱出していることや
救出に関する報道は一切ありませんでした。
それどころか、1997年にクリントン大統領が解除するまで、18年間国家機密として
封印されていたのです!

救出に成功したことは歴史的な事実ですから、“スリル”の点では物足りないものが
あります。「結局、助かるんだよね」…。ハハハ。
この作品の魅力は 史実のすごさ、ストーリーの面白さに加えて俳優にあります。
主演のベン・アフレックが全体を引っ張りますが、アメリカ国内でサポートする
二人の映画人に扮したアラン・アーキンとジョン・グッドマンが秀逸です。
by toruiwa2010 | 2012-11-08 08:43 | 映画が好き | Comments(0)
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