ブログトップ | ログイン

岩佐徹のOFF-MIKE

toruiwa.exblog.jp

実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

いいねえ「人生の特等席」90点~C・イーストウッドにしびれる~12/11/28

d0164636_8254432.jpg
「人生の特等席」90

体は正直だ。
トイレに行っても自分が思うようには用を足せない。
野球を見るとき、視野の中央がぼけている。ガスは少しイライラしていた。
アトランタ・ブレーブスのスカウトとしての契約もあと3か月しか残っていない。
“タカの目を持つ”と言われた腕利きスカウトだったが、若い仕事仲間たちからは
「コンピューターが扱えない時代遅れの老人」とさげすまれている。

若いときに妻を亡くしたガスは再婚せず、当時6歳だった娘・ミッキーを一人で
“育て”上げた。有能な弁護士になった彼女は大きな法律事務所で共同経営者の
椅子を目の前にしていた。
選手を追って国中を転々とするのが仕事の父と娘の関係はギクシャクしていた。
共通の話題と言えば野球しかなくて、普段はどちらかと言えば疎遠だった。

ガスの体調を心配する友人の勧めでミッキーが彼の仕事場、スタンドに現れた…
d0164636_826547.jpg
物語の80~90%はほぼ“思った通り”に進みます。普通なら「なんだかなあ」と
なるところですが、この映画は少し違います。「そうだよね。そう来なくちゃ」と
納得してしまいます。エンドロールが流れ始めたときに心地よさがあります。
わけのわからない近未来ものや妙に深刻ぶった作品、邦画に多い、若い俳優たちを
“ドタバタ”させたり、背伸びが必要な演技をさせたりした映画はうんざりです。
娘と接する時間が少なかったことを悔やむ父親と「見捨てられていた」との恨みが
トラウマになっている娘の葛藤がベースにあるものの、決して重すぎることはなく、
ゆったりした気分で見ていられるこういう作品は貴重です。

父と娘の葛藤が重くならないのは映画の作り方が 昭和の時代劇を見ているような
“勧善懲悪”スタイルになっているからでしょう。
90年代からイーストウッドと仕事をしているというロバート・ロレンツが監督を
つとめているせいか この映画にはイーストウッドの“匂い”がしみ込んでいます。
自分のことのようにガスの身を案じる友人の描き方や最後にミッキーが大手柄を
立てるエピソードなども、そういう目で見るとピッタリはまります。
そして、全体を支えているのは、画面に現れるたびに強烈な“オーラ”を発する
クリント・イーストウッドの存在です。

1950年代のテレビ・ドラマ「ローハイド」を見ていました。
イタリアで“カウボーイ”を演じたマカロニ・ウエスタンもたくさん見ました。
イーストウッドは私たちの世代にとってはとんでもないスーパースターです。
今も現役で活躍しているなんて“奇跡”です。

映画出演は「グラン・トリノ」以来4年ぶりです。刻まれた深いしわの1本1本に
何とも言えない味があり、かすれた低い声にも魅力があります。ファンにとっては
「何をやっても許す」心境です。リスペクトが許すのだと思います。ハハハ。

若くしてスクリーン・デビューし、そのままスター街道を突っ走る俳優もいますが、
映画人としての彼の成功はやや屈折したものです。
それでも、20年前の「許されざる者」から「マディソン郡の橋」、「ミスティック・
リバー」、「ミリオンダラー・ベイビー」、「父親たちの星条旗」、「硫黄島からの手紙」、
「グラン・トリノ」、「インビクタス」…監督、俳優として立派な実績を残しました。
どちらもエネルギーが必要な仕事です。82歳ですが、来年も「スター誕生」の
リメーク版を手がけるなど意欲は衰えていません。どうか体を大事にしてどんどん
新作を送り出してほしいものです。

このレビューを見て映画を見たくなったかどうかは分かりませんが、映画を見て、
イーストウッドに興味を持つことはあり得るでしょう。「オール読物」12月号に
友人・生島淳が書いているより詳しい記事が載っています。

ところで、外国映画を見るとき、残念ながら字幕に頼ることになります。
そこで、文字数に制限があって難しいことは理解したうえで注文があります。

始まって間もなく、英語のセリフをBGMのように聞きながら字幕を読んでいると、
テレビで野球を見ていたガスの言葉として「(いい投手だ)角を突いている」という
文字が出てきました。
「えっ、“ツノ”を突いているって何のこと?」と一瞬思いました。しかし、直後に
ガスが言った“corner”が耳に飛び込んで来ました。

こいつはコーナーぎりぎりをついて投げるいいピッチャーだなあ…
彼が言いたかったのはそういうことです。角は“カド”のつもりだったのでしょう。
しかし、“カドを突く”では、野球を知っていても意味が通じません。
“スミを突く”ならまだ分かります。まさか、“スミ”のつもりで角を…?いやいや、
それは“強弁”というものでしょう。ハハハ。
ほかの映画なら“許し”ます。しかし、野球が舞台になっている映画でこの字幕は
あり得ません。
d0164636_8264029.jpg
もう一度、「何とかならないのかなあ?」と思ったのも上映開始後 間もないころの
ミッキーが共同経営者になるための面接シーンでした。
6人いる共同経営者は男ばかりだが大丈夫だろうか、と懸念を示す上司に向かって、
ミッキーが「私はここで7年間一生懸命働いてきた」とアピールします。このとき
彼女は“一生懸命”のところで、つい、“a・・”を含む品のない言葉を使いました。
もしかすると意識的だったかもしれません。どちらにしても、娘の前でも平気で
スラングを口にする父やスカウト仲間の中で育った彼女の生い立ちと強気な性格を
示すセリフだったと思います。そのニュアンスが字幕からは読み取れませんでした。

そして、いつものことですが、邦題はもう少し何とかならないか、と思います。
原題は「Trouble with the Curve」…「カーブが打てない」です。
「人生の…」はかっこいいようで内容にそぐわない気がします。

ついでですからもう一つ。
これは注文ではなく、単純にMLBファン向けのマニアックな話です。ハハハ。

日本と違って、各球団のオフィスを電話で結んで行われるドラフト会議のシーンが
ありますが、最初にあいさつするのは本物のコミッショナー、バド・セリグです。
日本の映画に加藤コミッショナーが“友情”出演しても気づく人は少ないでしょうが、
アメリカ人ならセリグの顔を大勢の人が認識するはずです。

登場人物の一人が選手時代に「酷使されて肩を壊した」と話します。
けがの中身は“回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)の損傷”です。
今でこそ、投手の大きなけがと言えば、肘のじん帯損傷ですが、私がメジャーを
追いかけ始めた70年代の終わりのころはほとんどがこのケガでした。
英語ではrotator cuffと言います。何十回となくこの文字を目にしたものです。
肩甲骨の前と後ろにあって、前に痛みが出てきたら深刻だと言われていました。
映画を見るのには関係ない話でした。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-11-28 08:32 | 映画が好き | Comments(2)
Commented by マオパパ at 2012-11-28 09:47 x
岩佐さん、おはようございます。この映画のレビュー待ってました。やはり良い映画だったようですね。見たくなりました。「ローテイターカフ」懐かしいです。昔、スポーティングニュースなどでよく見ました。肩の故障としかわかりませんでしたが。
Commented by toruiwa2010 at 2012-11-28 10:06
マオパパさん、こんにちは。

いい映画です。見て損はしません。
今日はこれから「任侠ヘルパー」を
見に行きます。守備範囲じゃないですが。
ハハハ。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。