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岩佐徹のOFF-MIKE

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スポーツ・アナ 受難の時代~岩佐徹的アナウンス論98~12/01

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日本でテレビ放送が始まってから半世紀以上たちます。
スポーツ中継は初めからテレビの“花形”でした。高価な受像機の普及のために、
テレビ・家電業界は街角にテレビを設置しました。
“カリスマ”的だった力道山のプロレスなどを見せることで、テレビの面白さを
広めようとしたわけです。まだモノクロだったし、画面も小さなテレビでしたが、
この“街頭テレビ”には、いつも黒山のような人だかりができていたものです。
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私は、それ以前、古橋広之進が大活躍した水泳や白井義男のボクシング・タイトル・
マッチなど、ラジオの時代からスポーツ中継に耳を傾けていました。
中学生のころ、我が家にテレビが来ると、ますます拍車がかかり、遠くの出来事を
まるで目の前で起きているかのように伝えるアナウンサーの声にスポーツ好きの
少年はイメージをふくらませたものです。
スポーツ・アナへの憧れはそのころ無意識のうちに芽生えていたのでしょう。

1963年、アナウンサーになってから70年代終盤までは“いい時代”でした。
事前の打ち合わせはしますが、いざ、放送が始まれば、95%は自分が思うとおりに
しゃべれたからです。極端に言えば、放送の中身を自分が決められたのです。
しかし、やがて、プロデューサーやディレクターが力を持ち始めると、“あれや・
これや”と注文をつくようになりました。“やりにくい世の中”になったのです。
ハハハ。

“センター方式”が登場したのは、それ以前、1970年代初めのゴルフ中継でした。
それまでの中継では、各ホールに担当アナを置いて、実況を任せるのが普通でした。
私の記憶によれば フジテレビが初めてセンター方式を採用したのは、1973年に
横浜CCで開かれた「ペプシ・ウイルソン・トーナメント」を中継したときです。
18番ホールのグリーン横に簡単なセットを作り、そこに解説者と一緒に座った私が
全ホールの実況を担当したのです。

まだ、マイクとイヤホーンが一体になったヘッドセットはないころでした。
私は、ふだんADがディレクターとの連絡に使っているインターカムをつけた上で、
マイクとイヤホーンを2段重ねでつけるという不自由な態勢で放送に臨みました。
ハハハ。

ディレクターからの「次は17番、青木のティー・ショットに行きます」という
連絡があって画面が切り替わり、「さて、17番のティー、青木がこれからティー・
ショットに入ります」と実況をつけていくのです。
それぞれの担当アナが実況するよりスムーズに放送が進み、全体の“一体感”が
出ますから、このころのゴルフ中継はどの局もこの方式を取り入れ始めていました。

やがて、センター方式はアナウンサーの“敵”になります。
一体型のヘッドセット・マイクが開発されると、中継車のディレクターと放送席の
アナウンサーの連絡が容易になりました。
制作者側が力を持ち始めた時期と重なったのが不運だったかもしれません。ハハハ。
“連絡”は“アドバイス”になり、それが“指示”に変わるのに そんなに時間は
かからなかったと思います。運が良かったのは そのころまでに、フジテレビでは
アナウンサーをやめていたことでしょう。
この“耐えられない”状況を経験しないですみました。ハハハ。


“指示”が適切なら、問題はありません。
しかし、テレビ草創期のころから、スポーツを担当するディレクターの中には
「たとえ、試合がつまらなくても盛り上げろ」などと、ワケの分からないことを
言う“やから”がいましたからねえ。ハハハ。
サッカーのユーロ2004・準決勝、ギリシャvsフランスを担当したとき、ハーフ・
タイムに、「もう少し盛り上げてくれと東京で言ってます」とADから告げられた
ことがあります。解説は早野宏史さんでした。あれほどお口の達者な早野さんが
サジを投げるような試合でした。
「そんな、化石のようなディレクターがまだいたのか」とあきれたものです。
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ブログへのコメントにつられて、あるサイトをのぞいてみました。
某大学で開かれたフォーラムでテレ朝のKアナが語ったことが採録されています。
常に自分がやりたい実況ができていたわけではないことを訴え、「裏番組がCMに
入ったから、ここで盛り上げろ」とプロデューサーから指示されたこともある、と
話していました!!
“前世紀の遺物”みたいな奴がここにも生き残っていたようです。

「小川宏ショー」を初め、朝や昼のワイド・ショー番組がしのぎを削っていたころ、
副調整室には各局のライバル番組を映し出すモニター・テレビが並んでいました。
他局のCMとタイミングを合わせたり、逆にずらしたり、という“細かいワザ”を
使ってコンマ1%を争っていたのです。“生命線”ですから当然ですが、テレビの
視聴率競争は常軌を逸している部分がありました。
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フジテレビは1977年からバレーボールのワールド・カップを放送していますが、
視聴率がよかったのは、初めの数回だけで、その後は“右肩下がり”でした。
「任せるから視聴率を上げろ」と言われて1999年大会の責任者になった男は、
“できる”奴でした。私も何回か組んだことがあります。アイディアも豊富で
従来のディレクターたちにくらべ、はるかに独創的な考えを持っていました。
しかし、このとき彼が立てた“作戦”はあまりにも過激な改革を伴っていため、
社内外の各方面から強い非難を浴びることになりました。

一番大きな変化はアナウンサーの起用法でした。
フジテレビのエース、三宅をメインにしたのはいいとして、ネット局から、神田(tss)、
鈴木(SUT)を呼び、この3人にゴールデンで放送する日本の試合を任せたのです。
それまでバレーボール中継を地道に頑張ってきた 3人より先輩のフジテレビの
ベテランたちは“その他”の試合に回されました。三宅もそれまでバレー実況は
ほとんどやっていませんでした。

親しかった関係で、当のプロデューサーがその構想を示して「どうですかね?」と
意見を求めてきましたが、「どうですかって、もう決めているんだろう?」としか
言えませんでした。形はいかにも意見を求めているようですが、異論を唱えたって
聞く耳を持っていないことは目に見えていました。ハハハ。

系列の二人が選ばれたのは、フジのベテランの実況がおとなしめだったのにくらべ、
彼らが“意味もなく”絶叫するタイプだったからです。
大会が始まると騒々しい放送の連続で聞いちゃいられませんでした。ハハハ。
しかし…。しかし、いい視聴率を稼いだのです。

“勝てば官軍”、担当者にはまったく反省の色がありませんでした。彼にしてみれば、
「任す」と言われた以上、やりたいようにやるしかなかったのです。
プロデューサーとして結果を出したのですから、彼を責めることはできません。

しかし、彼の成功の陰で泣いた男たちも大勢いました。アナを辞めた者もいます。
激しい視聴率争いを繰り広げているのですから、いちいち、センチメンタルに
物事をとらえていたらキリがありません。
ただ、お粗末な製作者たちの愚かな“戦略”が私たちからスポーツを楽しむ権利を
奪っているのは事実です。
しゃべり方が決められたり、ぜひ見たいと思う世界的なイベントの演出が視聴者の
求めるものとは大きくかけ離れたりするのは問題でしょう。

テレビ欄に“実況:○○”を見かけることはなくなりました。あるのは、“暑苦しい”、
“ウザイ”司会者や“どうでもいい”ゲスト・タレントの名前だけです。
放送作家たちが頭の中からひねり出した“言葉遊び”にすぎない、“意味不明”な
ニックネームを連呼させられる“受難の時代の”後輩たちが気の毒でなりません。
いずれ、“原点”に帰るときがくると信じたいのですが、どうですかね?
by toruiwa2010 | 2012-12-01 08:33 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(10)
Commented at 2012-12-01 08:46
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ルナパークゴー at 2012-12-01 08:49 x
岩佐さん、おはようございます。拝読いたしました。
バレーボールのジャニーズ起用もちょうどそのあたりのことですかね。地上波のスポーツ中継、今の私には趣味が合いません。一方で視聴率=広告料を集める必要性も分かります。このあたりで「原点」に帰る、といってもそれだけの人材が果たしているのか。そんなわけで自ら現場に駆け付ける今日この頃です。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-01 09:53
鍵付きのお姫様、こんにちは。

私も同じようにのんべんだらりと生きてます。
ハハハ。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-01 09:55
ルナパークゴーさん、こんにちは。

現場に駆け付けられる人はそれがベストでしょうね。

今の、デコレーションは製作者の勘違いで
始まっているのですから、なくしても視聴者は
文句を言わないだろうと思っています。
Commented by 赤ぽん at 2012-12-01 12:10 x
丁度SPORTSNAVIの記事で、フジテレビゼネラルプロデューサー川口哲生氏の
「バレーボールとメディア戦略」を読んだばかりでした。
低迷するバレーボールを盛り上げようと、フジがジャニーズ事務所とのコラボを企画
当時のバレー協会会長松平氏が「全面的に指示するぞ」と賛同したという
話でした。
「賛否両論あるのは承知だが・・・」「同性の目」「スターの必要性」等々で
成功?した実績?!が今に続いている・・・それ故失った人もいるのですが所詮
少数派なのでしょうか?はい、私のことですがw

福井アナ達の起用、特に絶叫型アナでの“視聴率的に成功”してしまえば
もうその勢い、流れは止まりませんよね。
さらに意味不明の言葉遊びの犠牲者?!になるアナも可哀相ではあります。
ギリシャ対フランス戦、覚えています。これをどう盛り上げるの?
そこでもし岩佐さんがKアナのごとく声を枯らして裏返って絶叫したら・・・
想像したくもありませんね・・・はい、失礼致しました。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-01 12:26
赤ぽんサン、こんにちは。

あの記事は少し読みましたが、途中でやめました。
川口はペーペーだったから、そんなにわかっていた
わけでもないし。

絶叫する前に頭からヘッドセットを静かに外していたでしょう。
ハハハ。
Commented by しょう at 2012-12-01 14:34 x
岩佐さん、こんにちは。

テレビでのスポーツ中継。
お願いだからゲームをそのまま伝えて欲しいといつも思います。
試合内容がお粗末ならば、そう実況すればいいのに。
現地では盛り上がっていないけど、テレビのこちら側は
盛り上がっているって何かおかしいですよねー。
飾り立てることで本来の姿が隠れてしまうと思います。

私も「バレーボールとメディア戦略」を読みました。
バレーボールをエンターテインメントとしてしまった犯人は
こいつか…と思いながらw
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-01 15:06
しょう サン、こんにちは。

今、テレビの作り手たちは、深い深い迷路に入り込んでいると
考えなければいけません。

講演した男は入社したてだったはずです。
Commented by じゅん at 2012-12-08 18:34 x
岩佐さん、はじめまして!

本当に最近の地上波のスポーツ中継を見ていると
本編に入る前の芸能人とかの取るに足らない
応援や無駄なVTRが多すぎますよね・・・
だから同じ中継をNHKやスカパーでやってると
そっちを見てしまうんです(笑)

これからもちょくちょくコメントさせていただきますんで
よろしくお願いしますm(__)m
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-08 18:58
じゅんサン、こんばんは。

それぞれに、それなりの理由があることを
勉強しましょうね。ハハハ。
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