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岩佐徹のOFF-MIKE

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こういう実況を排す その2~岩佐徹的アナウンス論105~12/23

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・・・つづき  

ダメな実況 for example


このように、事前に準備したコメントを予定稿と言います。
アナウンサーなら誰だって出だしの言葉をどうするかは考えます。私も例外では
ありません。ただし、私の場合はほんの5秒、10秒分です。たいていの試合は
「サッカー(orテニス、ゴルフ、ボクシング)ファンのみなさん、こんにちは」で
始めていました。ユーロの決勝やチャンピオンズ・リーグの準決勝、グランド・
スラム決勝…マグニチュードの高い試合でも変わりませんでした。

用意した言葉が人の胸を打つと考えるのは錯覚だと思うからです。
Kアナの「・・・栄光への架け橋」が典型的な例です。
未明の日本列島があの瞬間に興奮と感動に包まれたことやKアナのコメントに
胸を打たれた人たちがいたことを否定はしません。
しかし、冨田の素晴らしい演技、数十年ぶりの団体金メダル…あの言葉がなくても
見ている人が感動する要素は十分だったのではありませんか?

直後のブログにこう書きました。

最後の冨田の演技が始まっているときの
「冨田が冨田であることを証明すれば、
日本は勝ちます」と、フィニッシュに
入るところでの「伸身の新月面が描く
放物線は、栄光への架け橋」には大きな
疑問があります。
「ああ、黙った方がいいのになあ」と
思いました。
私だったら、演技の前に「普通の演技が
できれば金メダルは確実です」、フィニッシュに
入る直前に「さあフィニッシュです」の一言だけ、
着地のあとは歓声が一段落するまで黙ったでしょう。
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テレビの前で見ているからの話で、その場にいたら、
あるいは同じことをしていたかもしれませんが。
そして、どちらがいいかは人によって違います。
そこはもう「好み」ですからね。
ただ、「アナウンサーはしゃべることが仕事」ですが、
WOWOWに来てからの私は「黙ることも大事だ」と
考えてやってきましたからこんな感想を持ったのでしょう。

さらに別の記事では“続き”として、こう書いています。

彼の実況にも、私のコラムにも賛否両論でしたね。ハハハ。
NHK内での評価を知りたいものと思って見ていましたが、
大相撲9月場所の千秋楽で、正面の実況を任されていた
ところを見ると、きっと、評価されていたのでしょう。
 
しかし、結びの一番、朝青龍・魁皇戦で立会いの一言を
聞いた時には思わず笑ってしまいました。 

12勝をあげ、すでに優勝を決めていた魁皇ですが、
次の場所で横綱を狙うためには、もう一番勝っておきたい
ところでした。
Kアナはそれを踏まえて、これも事前に用意したに
違いない一言を、立会いの一瞬に合わせて放ちました。
「13勝での優勝は、綱取りへの架け橋だ」!!
…見事な確信犯。ハハハ。

同時に、これで彼は、実況を担当するたびに
何か気のきいたことを言わなければいけないという
ラビリンス(迷宮)に踏みこんでしまいました。
あーあ大変だ。
Yアナは立派な後継者を持ったことになりますけどね。



フジテレビで実況していたときはあまり深く考えずに実況をしていました。
しかし、WOWOWに移ってからは「スポーツの感動はプレーそのものの中にある。
その感動は視聴者と“共有するもの”であって放送席が横取りしてはいけない」…
そう考えて放送に臨むことを心がけました。
グランド・スラムの決勝、ユーロの決勝などで勝敗が決した瞬間にも、ノド元まで
来ているフレーズを飲み込みこんで(ハハハ)「○○優勝!」、「○○が勝ちました」
にとどめ、あとは音声さんに歓声のボリュームを上げてもらうようにしていました。
ときには、解説者を手で制して…。ハハハ。

“黙る勇気”、“しゃべりすぎに注意”、“言葉を用意しない”…それが、私の実況の
コンセプトだったのです。ですから、よくしゃべる、しかも言葉で飾ることが多い
Kアナの実況が好きじゃないのは自然のことかもしれません。

たしかに「栄光への架け橋」「綱取りへの架け橋」は「…キスをしました」とともに、
ファンの喝采を浴びたようです。バンクーバー・オリンピックの女子フィギュア、
キム・ヨナのSPが終わったときの「撃ち返しました」はとっさに出た言葉として
私も「うまいっ」と思いました。しかし、ほかは“わざとらしさ”が鼻について
仕方がありません。

気をつけなければいけないのは、この手のアナウンスは“麻薬”に似たところが
あることです。視聴者にほめられ、新聞にも派手に取り上げられると「次はもっと
“受ける”ことを」と考えるようになります。
“ラビリンス”だし、“アリ地獄”だし、“麻薬”です。

つづく・・・

(敬称略)

おまけ:フィギュアスケートの実況


ちなみに、昨日のフィギュアスケートで女子を担当したフジテレビの後輩Sアナも
一部で評判がいいのかどうか知りませんが、どうでもいいフレーズを実況の中に
ちりばめていました。自分がひねり出す言葉に酔っているようで不愉快でした。

12/22のツイート

尻がこそばゆくなるフレーズのオンパレード。
後輩だけど、笑う。
こんなのを名実況とか言うのは間違いの元。
NHK/Kアナとともに、用意した言葉の空しさが
よく分かる。
「反面教師」として流すならいいけどね。


・“Sアナの名実況”として過去の放送から抜き出して紹介していたとき。
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西岡アナ「間違いありません。歴史に刻み込まれる
名演技でした」。
ためらうところだがよくぞ言い切った。
テレビで見ても最高だと思ったほどだから現場で見たら
もっと凄かったろう。隣の本田のうなずき具合も助けたに
違いない。はっきりと塩原を上回ったね。


・高橋大輔の演技が終わった瞬間の実況を聞いた直後。

数年前に、西岡アナと話す機会があったときに、余計なことだとは思いつつ、
「Sの真似をしていたら、絶対に抜くことはできないよ」とアドバイスしたことが
ありました。
男子と女子の違いもあるでしょう。コンビを組む解説者との相性もあるでしょう。
“フジのスケート”というくくりの中で聞けば、似た部分はあるかもしれませんが、
“西岡流”を作りつつあるように思います。
スタイルが違いますから、抜いたかどうかを言っても意味がありません。
しかし、どちらの言葉が聞く者の胸に迫るかは明らかだと思います。
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by toruiwa2010 | 2012-12-23 09:37 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(15)
Commented by なおぞう at 2012-12-23 10:31 x
僕も常々スポーツ中継を見ていて、黙ることのできる実況アナウンサーはいいなぁと思っております。
会場、スタジアムの雰囲気を知りたいときは実況が邪魔になることが多いからです。
岩佐さんの”黙る勇気がコンセプト”というコメントを見て溜飲が下がる思いです。

Kアナの“栄光の架け橋”は感情的でちょっと鼻につくな、いいところなんだから冷静に実況してほしいな、と思ってみておりましたが、その後NHKのテーマソングのタイトルだと気がついて心底がっかりしました。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-23 10:41
なおぞうサン、こんにちは。

いいところだから黙るアナがいるかと思えば、
いいところだからしゃべろうというアナもいて・・・。

それが人間なんですけどね。ハハハ。
Commented by hhh-shock at 2012-12-23 11:37 x
岩佐さん、いつも楽しく拝見してます。とくにアナウンス論には興味たっぷりです。
ひとつ質問があります。
フィギュアでは、ジャンプを「決めました」とは言わず、「決めてみせました」と言いますよね。私には「決めました」「決まりました」のほうがしっくりいくのですが・・・。「決めて」「魅せる」というイメージなのでしょうか?教えてください。よろしくお願いします。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-23 11:48
hhh-shockさん、こんにちは。

「決めてみせました」・・・?
普通は言いませんけどね。
何か特定の状況下なら分かりますが。

私自身はおっしゃる通り、「決めました」と
言います。
違和感があったとすれば、不自然だったのでしょうね。

私はあまり聞いた記憶がないので、この程度しか
答えられません。ごめんなさい。
Commented by 赤ぽん at 2012-12-23 13:02 x
岩佐さん、こんにちは。

その昔、札幌冬季五輪で日本に唯一の金メダルをもたらした笠谷の
金メダルジャンプ(70m級2本目)での実況アナは、たったこれだけ…
「さあ笠谷。。。飛んだ決まった!、見事なジャンプ」日本中が金メダルを期待した
場面でこれだけでした。いくらでもしゃべれそうな時間がある競技ですが、
時代やアナのパーソナリティなのか、言葉がシンプルで幼い頃に聴いたのに
今でも心に残っています。今ビデオで聞き返しても十分なコメントだと思います。
「~架け橋だ!」に感動した人も多かったと思いますが、画像を見続けていれば
前後の流れから伝わってくる映像だけで十分感動できたでしょう。
料理でも「足すこと、加えることは簡単でも、引くことが難しい」と。こってりソースの
洋食もありますが、シンプルな出汁の味わいの和食の極意・・・好き嫌いと言ってしまうと
終わってしまいますが、アナウンスもなにか料理と似ているような気が。
Commented by しょう at 2012-12-23 13:16 x
岩佐さん、こんにちは!

Sアナの実況は、麻薬媚薬に侵された依存症患者のようですね。例えが下品ですみません。
恍惚感で自身は気持ち良いのかもしれませんが、周囲は迷惑この上ない。
治療が必要です。

スポーツの場面よりも実況の言葉の方が心に残るのは本末転倒だと思うのです。
「栄光への架け橋」の時の演技者名を覚えている人はどのくらいでしょうか。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-23 14:04
赤ぽんサン、こんにちは。

「とんだ、決まった」も「立て立て、立ってくれえ」も
はなはだ怪しいと思ってます。実況を経験すると、
あのコメントがとっさに出るとは考えにくいものです。
短かったのはよかったと思いますが。ハハハ。

Commented by toruiwa2010 at 2012-12-23 14:06
しょうサン、こんにちは。

確かに治療が必要ですね。
先輩として処方箋は出しているのですが、
手元には届かないようです。あるいは、飲むことを
拒んでいるのか?ハハハ。
Commented at 2012-12-23 14:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Vevey at 2012-12-23 14:51 x
アナウンサーの方は余計な事でも喋っていれば、仕事してる感?があるかもしれないですね。沈黙を守りたくても、もっと盛り上げろとかの指示が出たら、若い人では難しい?

以前オリンピックの女子マラソンの実況をテレ朝の宮嶋アナが担当していて、何だかキャーキャーうるさいな〜と思いながら聞いていたのですが、後日談として、新聞に出ていた事が面白かったです。中継の担当局がNHKだったのですが、レース後半でテレ朝だったら「さあここから盛り上げましょう!」と言われる所で、「ちょっと抑えましょう」と言われビックリしたそうです。

しかしKアナほど大御所になったら、担当Dも何も言えないんでしょうね?
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-23 15:12
Uさん、こんにちは。

キムの演技の実況についてはあす書く予定です。
「ここ」がすごく良かったというファンもいるようです。
おもしろいものですね。

しかし、なぜ、この書き込みをカギ付きにするのでしょう?
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-23 15:15
Veveyさん、こんにちは。

宮嶋・宮原コンビはダメでしたね。
情緒に流れた放送で、女性実況が
うまくいかない典型でした。
Commented by hhh-shock at 2012-12-23 16:57 x
「決めて、みせました」への、ご回答ありがとうございました。
フジテレビの塩原アナは、「決めてみせました~」と言ってますので、次回、機会がありましたら実況でご確認ください!
Commented by 体操ファン at 2016-03-15 10:50 x
富田じゃなくて、冨田
誰ですか、富田って
Commented by toruiwa2010 at 2016-03-15 10:59
体操ファンくん、こんにちは。

ああ、冨田…だって言いたいんだね。
あとで直しとくよ。ごめんね。
この記事の論点はそういうことじゃ
ないんだけど。
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