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岩佐徹のOFF-MIKE

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こういう実況を排す その3~岩佐徹的アナウンス論106~12/24

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・・・つづき

そのバンクーバーの女子フィギュアは期待通りの高いレベルの争いになりました。
テニスで言えば、ジョン・マッケンローとジミー・コナーズ、クリス・エバートと
マルチナ・ナブラチロワ、バスケットだったらマイケル・ジョーダンとマジック・
ジョンソン、ホッケーのウエイン・グレツキーとマリオ・レミュー…言い出せば
キリがありませんが、スポーツの世界には、ときにとんでもない“ライバルリー”
(ライバル関係)が生まれることがあります。
「二人、同じ時期に出てこなくても」と言いたくなることも。ハハハ。

キム・ヨナと浅田真央。
19歳の若さで素晴らしいライバルリーを築き、ファンを楽しませ、総決算となる
オリンピックでの対決への期待を持たせ、これ以上ない舞台でその期待にこたえて
くれたことに感謝しました。
順位が逆だったら…そんなことを言うもんじゃありません。一部にしても、もっと
ひどいことを言うやつがいるから国民性を疑われるんです。ハハハ。
あのとき、キム・ヨナはすべてがひとつにまとまって最高の演技をしました。
同じアジア人だし、国境を越えて素直に称えるべきです。

しかし、この時点で女子フィギュア史上最高得点を獲得したキム・ヨナの演技を
私は十分には楽しめませんでした。厳しく苦言を呈しておきます。

滑り出してから1分過ぎのスローパートでKアナはこんなことを話しました。

「今、19歳のキム・ヨナはカナダに来たときは15歳。
才能がありながら、非常にシャイで、スケートがあまり
面白くなさそうな(*1)少女だったそうです。
それが、カナダに来てこの4年間で、自尊心があって、
明るく前向きにスケートを楽しめる女性に成長した○○(*2)
その成長の・・・(*3)キム・ヨナの成長の記録を描いたのが
この4分間のフリーのプログラムです。


そのあたりでしゃべろうとあらかじめ用意していたメモを読んだのです。
元同業者として、アドリブで出てくるコメントでないことはハッキリ分かります。
ただし、完全な文章にしてしまうと、いかにも“読む”感じになってしまうので
箇条書きにしてあった可能性はあります。私もよくやりました。
それにしては、「面白くなさそうな」(*1)は日本語としておかしいですね。
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*2は聞き取れません。
「…成長しました」とするのが自然ですが、そうは聞こえません。
「…成長した・の・で・す」と言ったのでしょうか?
どちらにしても、ムニャムニャ…となったのは、文末をどうしようかと考えながら
文字を音に換えているうちにまとまらなくなったのではないかと推察します。
箇条書きにしておいて、同じミスをした経験があります。

このコメント全体が用意されたものだと考える決定的な理由は*3にあります。
リンクと文面を半々に見ていた目が一度メモから離れてリンクを見たあと、本当は
“キム・ヨナ”のところに戻らなければいけないのに、その先の“成長”という
文字に行ってしまったのです。
対応を一瞬迷った(・・・の部分:1-2秒)あと、結局、初めから言い直すことに
したのでしょう。そう考えれば、全体のつじつまが合います。

そんな、実況アナの“裏側”は、まあ、どうでもいいことです。ハハハ。
演技中にこの“どうでもいい”情報を32秒も聞かされた視聴者はたまりません。
オリンピック・チャンピオンになる可能性が濃厚なキム・ヨナの演技にあわせて
後世まで語り継がれるコメントを残そうと考えたのかもしれません。
しかし、そのおかげで多くの視聴者はせっかくの名演技を楽しむことができず、
“置いてきぼり”を食いました。
私は怒りを覚えました。“至福のとき”を奪われたのですから当然です。
スポーツ観戦を通じて得られる感動を放送席が“横取り”した典型的な例です。

安藤美姫のときにもスローパートになるのを待ちかねたように話し出しています。
「大好きだったお父さんとひきかえに出会ったのがフィギュアでした」に始まって
22秒のコメントを“読み上げ”ました。「“ひきかえ”ってなんだよ」と思いました。
“父親は亡くなったけどスケートに出会えた”ことを伝えたかったのでしょうが、
こういうときに“ひきかえ”はありえません。前もって用意したコメントなのに、
あまりにも無神経な言葉の選択です。

最終組6人のうち、滑走前に曲の紹介が終わっていたのは2人だけでした。
フラットのときは話が長引いて、「パガニーニの主題による狂詩曲」が演技開始後に
こぼれて、静かな曲調で始まる音楽にかぶってしまいました。
フィギュアを担当する多くのアナウンサーが同じ事をしますが、実況アナとしては
“落第”です。この種目では音楽も大きな要素だから曲名を紹介するのでしょう。
それなのに、演技開始と重なったり、開始後に紹介を始めたりするのは許せません。
ボルトが出場する陸上100メートル決勝でスターターがピストルを構えたとき、
ウインブルドン決勝のマッチ・ポイントでトスが上がろうかというときにしゃべる
バカがどこにいるか、という話です。ハハハ。

評論家・玉木正之が雑誌に寄せた“「栄光への架け橋だ!」は、五輪中継史上最高の
アナウンスといえるかもしれない。”と題する記事の中でこう書いています。

おそらく金メダル獲得の可能性が出はじめた頃から、
アナウンサーは日本男子団体体操の復活にふさわしい
言葉を考えはじめたのではなかったか。
この想像が正しいかどうかはさておき、この言葉は、
そう思えるくらいに完成された形容であり、美しい
表現といえよう。


誰にでも意見を言う自由はあるのだから構いませんが、一定の評価がある人物が
こんなことを書くから困るんだよなあ。ハハハ。
Kアナが発したフレーズが気に入っているようだが、原稿を書いた時点ではそれが
このオリンピックでNHKが主題曲にしていたゆずの歌から借用したものだとは
知らなかったようです。
“ああ言えばこう言う”という商売の人だからそれならそれで「歌詞とひっかけた
ところが素晴らしい」と言い張るかもしれませんが。ハハハ。

とにかく賞賛の嵐…、そのたびにアテネで味わった快感を思い出すのでしょう。
Kアナはこのとき、“アリ地獄”に落ちたと見ます。
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こういう放送がなぜダメか?
“実況者がその場にいる”感じが薄れてしまうからです。
放送席に座る前に作れるコメントは聞いていても中身が薄っぺらです。
第一、もし、冨田が落下したり、着地で大きく前につんのめったりしたらどうする
つもりだったのだろう、と思うとぞっとします。

以前の彼は圧倒的な人気だったようですが、当ブログへの書き込みやツイートでは
少しずつ“批判的な”意見も聞かれるようになりました。
意外に思いつつ、スポーツ実況は限りなく“原点”に近いところに戻ってほしいと
願っている私には嬉しい現象です。


バンクーバーのKアナはシューズの紐が切れた織田選手へのインタビューでも
叩かれていました。その件も書く予定でしたが、すでに相当長くなっていますので
割愛します。

できるだけ整理して論理的に書いたつもりですが、ファンが読むには“きつかった”
かもしれません。重箱の隅をつついている、と感じた方も多いでしょう。
大多数のファンは細かなことを気にせず、彼が実況中に言う“優しい”コメントに
胸を揺さぶられて好きになったのでしょうから。
しかし、実況に求められる重要なポイントがあるから重箱の隅をつついたのだと
理解してください。

万が一にも、彼がこんなブログを読むことはないでしょうが、ぜひ、スポーツ・
アナのあるべき姿に戻ってほしいのです。
その場にいる者だけが感じることを、用意した、あるいは、飾った言葉ではなく、
そのとき頭に浮かんだ言葉ですかっと素直に話してほしいと切に願います。
すでに指導的な立場にもなっているのでしょうから、責任は大きいのです。
このスタイルを“よし”として、真似する若手がますます増えたりしたら(すでに
増えつつありますが)一般の視聴者にとっては“最悪”です。

1月から始めたアナウンス論…自分の仕事でしたから現役を退いた今も実況には
関心があります。今日で、アナウンサーや放送・実況についての話は一応終わり、
来年は“言葉”にまつわる話をまとめていきたいと考えています。

ご愛読ありがとうございました。

(敬称略)
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by toruiwa2010 | 2012-12-24 08:21 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(10)
Commented at 2012-12-24 09:16 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-24 09:22
カギ付きコメントのはるさん、おはようございます。

冨田…そうでしたか、まったく知らず。失礼しました。
修正しておきます。

Kアナについての気持ち、よく分かります。
もうそろそろ引退でしょう。あと少しの我慢です。ハハハ。
Commented by S_NISHIKAWA at 2012-12-24 09:54 x
岩佐さんのアナウンス論、1年間楽しく拝読。
ありがとうございました。異議は全くありません。
Kアナより少し年長の来年定年を迎える某アナが言っていたことをいつも思い出しながら読ませていただきました。
「テレビの実況ってのはさぁ、無駄にしゃべらないことが大事なんだよ」と。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-24 10:02
S_NISHIKAWAさん、こんにちは。

意義は全くありません…はふつうありえませんが、
年末だし、そのまま受け取っておきます。ハハハ。
Commented by satomi at 2012-12-24 10:38 x
岩佐さん、こんにちは

3日間、熟読致しました。
Kアナの『栄光の架け橋』は、冨田があれだけの演技をし、着地もピタリと決めたからこそ『名実況』と言われるのでしょう。
あくまでも冨田のお陰。

個人的には、「いいからちょっと静かに見せてよ!」と、ちょっとストレスのたまる実況が多くなったように感じています。特にフィギュア。
音を消すと音楽も消えてしまうから消せないし本当にストレスがたまります。
昨日のSアナとか...

話す事が仕事だから特にスローパートで静かな曲調の時は話さなきゃと考えてコメントを用意しているんだろうなぁと寛大に受け止めるようにしてますが、実況の方は話していないと不安になるものなんでしょうかね?

今日のエキシビションがSアナでないことをひたすら願いますが...
Commented by 鍵つきのprin・・・です。 at 2012-12-24 10:49 x
toruiwa2010 様、おはようございます。
先日、朝日新聞のラ・テ欄読みました。I氏の件は私なりに〇×両方感じていましたが・・・・・ットットット・・・今回はこれではありません(笑)
今でもはっきりと覚えています。ヨナちゃんと真央ちゃん。
キム・ヨナは本当に素晴らしい演技でした。
以下、私の意見です。
あの時点で、実力的にはキム・ヨナと浅田真央は同じだったと思います。何が違ったか?私は~演出~だったと思います。
当時の浅田真央の良さが全く出ていない!あの演出は10年後にでも考えればよい。
今の浅田真央にしかできない演技・雰囲気を全く考えていないような気が、真央ちゃんが滑り出した時から私はしていました。
これは違うぞ・・・・・と。キム・ヨナの一位は正直に素晴らしいと思いますし拍手も送りました。
しかし、真央ちゃんのことは、フィギュアスケートのフアンとして悔しかったです。
でも最近の真央ちゃんは頑張っています。心からエールを送っています。キム・ヨナも私は大好きです。
Commented by 老・ましゃこ at 2012-12-24 12:03 x
<<<ボルトが出場する陸上100メートル決勝でスターターがピストルを構えたとき、
ウインブルドン決勝のマッチ・ポイントでトスが上がろうかというときにしゃべる
バカがどこにいるか、という話です。>>>


「…かけはしだぁ~~~っ!」をリアルで聴き、リアルで激怒した者として言いたいです。
この部分だけでも!Kアナに読んでもらいたい!
これでわからなかったら?本当の「ba〇a」??なんちゃって…失礼しました~ペコリm(__)m
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-24 14:16
satomi さん、こんにちは。

若いうちは、言葉を発していないと、
話すことがないのかと思われないか・・・
その怖さがあるものです。

しかし、一定のキャリアを積んだらそれはないはずです。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-24 14:20
鍵つきのprin・・・です。サン、こんにちは。

私も直接対決になれば、まず、浅田、次にキムです。
自分の目でみて、よかったと思う方が私にとっての勝者です。
バンクーバーでは、残念ですが、キムが上でした。
八百長も買収も関係ありません。
それがスポーツの見方です。
Commented by toruiwa2010 at 2012-12-24 14:21
老・ましゃこ サン、こんにちは。

自分の勲章だと思っているでしょうから
Kアナが読んでも反省することはないでしょう。ハハハ。
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