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岩佐徹のOFF-MIKE

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「ゼロ・ダーク…」90「故郷よ」80~ビンラディン&チェルノブイリ~   13/02/18

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先週は、それぞれの理由で評価することが難しい映画を2本見ました。


「故郷よ」80


1986年4月25日、ヴァレリー少年は父親と一緒に一本の木を植えた。彼の背丈と
ほぼ同じ高さのリンゴの木だった。川べりでは女たちが洗濯をしていた。
水に浮かんだボートでは仲のいいカップルが語らっていた。プリピャチの日常だ。

翌日、遊園地では午後から断続的に街を襲った激しい雷雨を縫うように結婚式が
行われていた。消防士・ピヨートルとアーニャだ。
歌とダンス、絶え間ない笑いの中で華やかな披露宴は進んでいたが、かかってきた
一本の電話によって新郎が呼び出される。森林火災だと告げられた。

ヴァレリーの父親にも電話があった。技師として働く職場で事故が起きたという。
職場とは、対岸で威容を誇るチェルノブイリ原子力発電所だった…
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バスで強制的に避難させられる住民たちが「2,3日で終わる」、「大したことでは
ないだろう」と考えるあたりは福島で起きたことと似ています。
映画は事故発生直後から10年後までを描いています。
もっと“メッセージ性”の強い作品かと予想していましたが、違いました。
もちろん、平和だった生活が奪われた住民たちの痛みや苦しみは伝わってきますが、
“むきだし”に反原発や原発の恐ろしさを訴える映画ではありません。

原発関連では、一昨年の11月に、放射能の影響を受けた子供たちの悲惨な現状を
描いたドキュメンタリー、「チェルノブイリ・ハート」を、去年は福島の原発事故を
扱った「希望の国」を見ました。
「希望の国」は、注目されている園子温監督の作品ですが、狙いは分かるにしても、
映像化するにあたって、あまりにも“さじ加減”が悪すぎました。「原発は恐ろしい」、
「国家を頼っちゃダメだ」という立ち位置が露骨で、出来上がった作品はどこか
中国の反日映画を連想させました。そういう作品は受けつけません。

「チェルノブイリ…」は衝撃的でした。示されたデータにやや疑問があったものの、
映像が突きつけてくる“事実”だけが持つ力は圧倒的でした。
本作はドラマです。その分、訴える力はこちらの方が強いのではないかと思いつつ
出かけましたが、制作者の意図は中途半端な形で提示されただけ、という印象です。


「ゼロ・ダーク・サーティ」90

9.11から2年後、CIAの女性分析官・マヤがパキスタンの支局に着任した。彼女の
任務は先任の同僚とともにテロ組織アルカイダの指導者、オサマ・ビンラディンの
居場所を突き止め、確保、あるいは殺害することだった…
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鑑賞後の気持ちはいささか“複雑”でした。
アメリカが絶対の正義、ビンラディンは絶対の悪…が“紛うことなき真実”なら、
何も考えることなくこの映画を“楽しむ”ことができただろうし、これが100%
フィクションだったら、ためらうことなく95点をつけるでしょう。
しかし、誰もが知っているテロの首謀者を正面から取り上げ、彼を追跡し殺害する
話ですから、そう簡単ではありません。

真っ黒なスクリーン。
9.11発生時、管制官が飛行機と交わした音声テープ、貿易センター・ビルからの
助けを求める声に対応する911(アメリカの緊急電話)のオペレーターのテープ…
音声だけが醸し出す緊迫感の中で始まるオープニング・シーンから、驚くほどの
リアリティと迫力に圧倒され続ける2時間40分でした。完成度は高いです。

全編を貫いているのはテロに対する徹底した憎しみと、その元凶・ビンラディンを
絶対に許さないという姿勢です。9.11以降のアメリカ人に共通する心情でしょう。
捕らえたテロ組織のメンバーに対する残酷な拷問シーンや、パキスタン領内深くに
断りもなく侵入して作戦行動を実行するシーンを見ると、我々がやっていることに
間違いはないという傲慢なまでの自信が嫌というほど伝わってきます。

ラスト・シーンが示唆するものは深いと思います。
任務を終えて帰国するマヤだけのために輸送機が派遣されます。わずかな荷物を
引いて巨大なスペースに一人乗り込んだ彼女にパイロットが尋ねます。
「どこへ行きたいのか?」と。
映画の中で彼女は答えず、静かに涙を流すだけでした。

マヤを熱演したジェシカ・チャステインもインタビューの中でこう語っていました。
「祝う気にはなれませんでした。私の中の疑問は、“次に何が起きるか?”です」と。

すべてのアメリカ人が祖国の“絶対正義”に確信があるわけではないのでしょう。
誰の頭の中にも、ベトナムの失敗やイラクに大量破壊兵器はなかったという現実が
こびりついているだと思います。

専門家の評論やネット上のレビューでは見かけませんが、「これでいいのか?」と
仰天するのは、マークした建物にひそむ人物がビンラディンだと断定するまでの
CIAの“手順”がかなり大雑把なことです。
実際は、もっと細かな詰めの作業があったのだとすれば、そこを描かなければ、と
思います。その点を除けば、前作「ハート・ロッカー」に続いて、またしても
問題作を世に送り出したキャスリン・ビグロー監督には敬服します。
作品だけを見たら監督が女性とは思わないでしょう。

蛇足ですが、公式HPはマヤの年齢を“20代”と書いていますね。
74年生きてきた中で、容姿や言動を含めて、たとえ外国人でもこんな20代には
出会ったことはありません。ハハハ。

80 故郷よ チェルノブイリ事故のその後を描いた作品 メッセージが中途半端
85 ゼロ・ダーク・シティ 強烈なインパクトがある フィクションなら90点だが
70 ヒンデンブルグ 飛行船のスケール感は出ているが設定や演出がかなりチャチ

去年9月の「最強のふたり」以降、Yahooの映画レビューに
ほぼ同じ内容で投稿しています。
Gooの方はさっぱりでしたが、こちらでは手ごたえを感じます。
よろしかったらhttp://goo.gl/TYDf5 を訪れて“役に立ちましたか?”
ボタンをクリックしてください。レビューにハクがつきます。

ちなみに“こんなレビュー、くだらん”ボタンはありません。ハハハ。

by toruiwa2010 | 2013-02-18 08:32 | 映画が好き | Comments(0)
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