ブログトップ | ログイン

岩佐徹のOFF-MIKE

toruiwa.exblog.jp

実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

「舟を編む」を勧める~分かりにくいわ「リンカーン」~13/05/22

d0164636_982877.jpg
「舟を編む」90

近く定年を迎える荒木を周囲はなんとか引き留めようとしていたが、彼の気持ちは
動かなかった。体調の悪い妻のそばにいてやろうと決めていたのだ。
荒木は辞書の編集者だった。説得に失敗した監修の松本は「どうしてもやめるなら、
君の代わりがつとまる編集者を見つけてくれ」と哀願していた。

社内で後継者を“物色”している荒木に一人の男が紹介された。
営業でうだつが上がらず、同僚から変人扱いされている馬締(まじめ)光也だ。
荒木が馬締に問いかける。「“右”を説明してみなさい」と。一瞬迷ったが、馬締は
「西を向いたとき、北にあたる方向が…右」と答えた。
ほどなく、段ボールひと箱を抱えた馬締が玄武書房の本社ビルから移ってきた。
引っ越し先は隣に建つ古ぼけたビルの中の辞書編集部だった。1995年のことだった。

荒木が抜けた編集部は10数年後の出版を目標にして、24万語の見出し語を載せる
新しい辞書「大渡海」の編纂に取り掛かった…
d0164636_985662.jpg
馬締が住んでいるのは“古色蒼然”という言葉がぴったりの木造のアパートです。
玄関のドアを開けると2階への幅広い階段があり、その横では“現役”の柱時計が
時を告げています。台所には懐かしいタイル張りの流しが見えます。
部屋の窓際で持ち帰った仕事をしていると、外で猫の鳴き声が聞こえます。馬締が
窓を開けると、大家のタケさんが飼っている猫、トラがのっそりと入ってきて机の
上で丸くなります。

家賃の催促などめったにしないタケさんは、ときどき、馬締の部屋に煮物を持って
きてくれたりします。“つかず離れず”のいい関係が築かれているのが分かります。
ある夜、トラの鳴き声につられて屋根の上に出て行った馬締は物干し台でトラを
抱いた若い女性に気づいてびっくりします。タケさんの孫娘、香具矢(かぐや)です。
タケさんが年を取ったので同居することになったのです。
それが、馬締と香具矢の出会いでした。

なんでしょう、この心地よい“しみじみ感”。
すべての登場人物の気持ちが温かいし、人の好さにわざとらしさがありません。
初めは「うん?」と思った女性社員さえも数十分後には「何だ、いい奴じゃん」と
見直すことになります。

中でも、オダギリジョーが演じた辞書編集部の先輩、西岡の存在が際立っています。
部内きっての“若者言葉通”です。調子がよくて、少々“チャライ”ところがあり、
無責任のように見えます。名前通り“超”がつく真面目男、馬締とは正反対ですが、
2人は妙にウマが合い、西岡はほかの部に異動したあとも何かと面倒を見ています。
どこの会社にもいそうなこの男の描き方も見事でした。
全体に、一人一人のキャラクター付けが巧みですね。スパンの長い物語ですから、
出会いがあったり、別れがあったりしますが、流れがスムーズで分かりやすいです。

時間がどんどん進むせいで、馬締と香具矢の恋は出会い以後を丁寧に描いている
わけではないのに、「この二人ならこう展開するだろう」と容易に想像できるし、
映像がそれを補ってくれます。脚本がうまいのだと思います。
私は松田と宮崎が作り出す独特の空気を楽しみました。

ピースの又吉が一瞬だけ出ています。見逃さないように。ハハハ。

この日見た予告編は「ウルヴァリン」「オブリビオン」「GIジョー」「風立ちぬ」の
4本でした。たまたまでしょうが、そろいもそろって、近未来&SFチックだったり
アニメだったりで、私の嫌いなジャンルのものばかりでした。
わけのわからない映画が多い中で、とても良質な一本でした。砂漠でオアシスを
見つけたような気分です。半月板の手術のせいで1ヶ月ぶりに映画を見ましたが、
いきなり、最高の映画に出会えて、こんなにうれしいことはありません。


「リンカーン」80

物語は特に複雑なものではありません。
第16代アメリカ大統領、エイブラハム・リンカーンが、奴隷制度を完全に廃止し、
人々に“自由”をもたらすための法案、米国憲法修正第十三条の成立を目指して
苦労する話です。

…そう書けば、きっと「こいつ何も分かってねえ」と言われるのがオチでしょうね。
それは十分わかるんです。きっと、実際はもっと“深い”のでしょうが、それを
きちんと理解するには少々の勉強では追いつきそうにありません。その気はないし。
ハハハ。

国を二分する南北戦争が長期化し、時間との競争の中で、与党・共和党は可決に
必要な票数を集めるために反対派を切り崩す工作を行います。
上映開始早々、まるで朝のラッシュアワーのような戦場シーンに「いくらなんでも、
こんなに込み合ってはいなかったんじゃないの」とびっくりしました。刀と槍で
戦った戦国時代の合戦ならともかく、銃を使った戦闘ですからね。
首をかしげているうちに、開始から30分ぐらいの間に3,4回“落ち”ました。
退屈だからではなく、セリフの量がとてつもなく多い上に、登場人物の一人一人を
頭の中で整理できないうちに気が付いたら“舟を漕いで”いたのです。リンカーン、
並びにスピルバーグには申し訳ないことをしました。ハハハ。
d0164636_995241.jpg
その後も、ずっと、誰がどっちの党で、法案に対する態度はどうなのかがしっかり
頭に入りませんでした。オリジナルにはなかったと思われる字幕が何回か出たのも
アメリカ人なら簡単に理解できることが日本人には分かりにくいと、配給会社が
判断したからではないでしょうか。
体クネクネの“盗撮禁止”の呼びかけが終わって、いよいよ、本編に入るのかなと
思ったとき、画面にスピルバーグが登場して語り始めました。日本人観客のために、
当時の“背景”を説明しました。初めての経験です。

もちろん、アメリカじゃ、そんなことをするわけはありません。日本版限定です。
日本で公開するにはそうしないと理解が難しいと考えたのでしょう。
制作者や配給会社の様々な努力にもかかわらず、分かりにくさは致命的でした。
伝わったのは、偉大な大統領だったリンカーンが目標達成のために忍耐力のある
行動を見せたこと、家庭人としては妻子との間にできた隙間に悩んでいたこと…
などでしょうか。非凡な政治家と案外“普通”の私人とのギャップは意外でした。

上映開始間もないころ、戦場近くで兵士たちと話す場面にも驚きました。
その辺の“村長さん”のような“軽さ”でした。本当にあんなだったのでしょうか?

これで今年のアカデミー作品賞の候補になった映画は「ハッシュパピー」を除いて
全部、見ましたが、この映画には「ジャンゴ」と「ライフ・オブ・パイ」を僅かに
上回る程度の評価しかできません。
普通、映画は国境を越えて理解されるものでしょうが、この作品は違いました。
本編前に監督が時代背景を語らなければいけないようでは…、ねえ。ハハハ。

90 舟を編む 主役の二人を初め登場人物のキャラがいい まだならお勧めの一本
80 リンカーン 日本人には分かりにくい…そこに尽きる ルイスの演技は見事
by toruiwa2010 | 2013-05-22 09:10 | 映画が好き | Comments(2)
Commented by BBB at 2013-05-22 16:54 x
岩佐さんこんにちわ。
「舟を編む」の感想、同感です。映画全体の空気感が最高でした。
こういう作品を見ると「明日からしゃんとして生きよう」という気になります。
オダギリジョーのいい加減なんだけど心は熱いキャラも良かったです。
今後もDVDやWOWOW?での放送で繰り返し見ると思います。
Commented by toruiwa2010 at 2013-05-22 17:31
BBBさん、こんにちは。

同意を得られてよかったです。
多くの人に見てほしいですね。

私は「二度見」はしませんが。ハハハ。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。