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岩佐徹のOFF-MIKE

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「ネブラスカ」&「家路」90点~洋画と邦画:2014年No1~03/06

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02/28のツイート

アカデミー作品賞候補「ネブラスカ」を見た。
疎遠のようでも血の濃さは否定できない夫婦、親子、
兄弟の情を描いて見事だ。素晴らしい。
オスカーを獲らせたいけど、こういう作品では
難しいのだろうなあ。

「ネブラスカ」90


灰色の雲が低くたれ込めるモンタナ州ビリングス。
町はずれのフリーウェイを一人の老人がとぼとぼと頼りない足取りで歩いていた。
通りかかったパトカーから警官が降りて老人を呼び止めた。
「何をしているのか」と尋ねる警官に「ネブラスカまで歩いていくのだ」と言う。
警察からの電話で引き取りにきた息子のデービスには「懸賞で当たった100万ドルを
受け取りに行く」と話した。免許停止中のため運転できず、妻には拒否されたらしい。
ぼけているわけではない。懸賞が本物だと信じているのだった。「どうしても行く」と
言ってきかない父親にデービスは母親の反対を押し切って車で連れていくことに同意した。
“懸賞の当選”が雑誌を購読させるためのペテンだと分かっていたが…
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素晴らしいロード・ムービーでした。「大統領の執事の涙」を抜いて洋画No1です。
全編がモノクロ・フィルムで撮影されていますが、それが絶妙な効果を生んでいます。
むしろ、カラーだったら、こんなに見る者の心にしみてこなかったと思います。
アメリカ映画では、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスといった大都会の生活ぶりを
見ることができますが、この作品では、舞台となっているアメリカの中央部に位置する
田舎町の暮らしを見ることができます。その“まったり”感も新鮮だったし、都会から
取り残された感じをモノクロの画面が見事に描き出しています。

鑑賞直前に、スマホで地図を見てモンタナ州とネブラスカ州の位置関係を確認しました。
町山某が言う事前の学習。ハハハ。
予告編開始の時間が迫る中、小さな画面でざっと見ただけなので「ああ、南東に向けて
走るんだ。それはどの距離ではないなあ」と思いました。しかし…

物語が進むにつれ、南に向かった車はすぐにワイオミング州に入り(ビリングスは州境に
あるようです)、さらに東に向きを変えてサウスダコタ州に入っていきます。
そこから南下してようやくネブラスカ州です。しかも、帰宅してから調べると、目的地、
リンカーンは州の最も南西に位置しているのでした!おそらく総走行距離は2000キロ!
アメリカは広いや。ハハハ。

オープニングから数十分だけを見ると、老人一家の絆は強いように見えません。
夫婦はただ一緒に暮らしているだけ、音響機器店でセールスマンをしているデービスと
ローカル局でキャスターをしている兄・ロスはすでに家を出ており、二人とも、父親を
ホームに入れるのがベストだと考えています。
旅の間にいろいろなことが起き、エピソードの数だけ家族は結束を強めていきます。
特に、最初から最後まで旅を共にしたデービスが父親に見せる愛が胸を打ちます。

77歳だという主演のブルース・ダーンのすばらしさは言葉にできません。オスカーには
手が届きませんでしたが、同世代の名優に拍手!ハハハ。


03/03のツイート

震災後の福島に戻った若者を描いた「家路」を見た。
地味な小品だが素晴らしい!「小さいおうち」を抜いて
今年の邦画No1だ。
出演している俳優全員が見事な演技を見せているし、
ディテールを丁寧に作っている。多くの人に見てほしい。


「家路」90

大震災から数か月後、福島の山あいの村。
風が吹いていた。生い茂った草が揺れている。
若い男が納屋からスコップを持ち出すと土を掘り起こし始めた。事情があって10数年前に
村を出て行った次郎だ。長い間、手入れされていない土地は荒れていた。そこは放射能に
汚染されたために居住が禁止されている区域だった。

近くの畑で昔馴染みが土を軽トラックの荷台に積んでいた。遠くを見つめて彼が言った。
「なんもかんもなくなったー」。

次郎の異母兄、宗一は仮設住宅に住んでいた。妻と娘、そして義母(次郎の母)とともに。
すっかりやる気をなくしていた。絶望感が部屋を支配している。
狭い仮設に一日中はいられないと言って妻は弁当屋でパートをしている。
義母にはそう話していたが、実際は違った…
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これまで、震災後を扱ったドラマや映画をたくさん見ましたが、その中では飛びぬけて
いい作品です。私の中では、今年見た日本映画の中でNo1です。
原発の事故や国の対応に対する不満の声も出てきます。しかし、露骨な形ではありません。
抑制を効かせながら、登場人物の言葉の端々ににじませています。
脚本がいいのだと思います。話の運び、せりふの一つ一つが吟味されていて、すべてが
“自然”です。無理やり、とってつけたようなセリフはなく、何気ない日常会話にも、
「ああ、そうだろうな」と共感します。

エンディングに近いところで、母と子が新しく水を張った田んぼに黙々と苗を植えている
ところに二人の警察官が現れます。区域の外に出るよう説得するために訪れたのですが、
しばらく様子を見たあと、声をかけずに帰ります。「自分でもそうするな」と思いました。

作り方がていねいなことに感心します。
見るべきなんだろうけど、どうしようかなあと少し迷いがあったのですが、「見よう」と
決めたのはテレビである人の言葉を聞いたからです。
評論家や有名人ではありません。紹介したのは松山ケンイチですが、話したのは映画で
俳優たちに農作業を指導した人でした。

「口に入る食べ物にだけ愛情をかけるのではダメ。
それを育てるのは土で、それを耕すのはクワで、
それを使っているのは自分。
全てはつながっているのだから、全てに愛情をかけなさい」


…たしか、自分が作るものが人を育てることも自覚しながら、という言葉もありました。
「監督がOKを出ても自分がダメだと思ったらやり直してもらった」とも話していました。
胸を打つ言葉でした。
その思いが俳優やスタッフに伝わっているような映画です。みんながいい映画にしようと
意気込んでいるのが分かります。特に俳優たちがていねいな演技をしていると思います。

松山ケンイチはこれまで見た中で最高でした。魂がこもった演技を見せています。
憶測にすぎませんが、台本を読んだときからこの役にはまり込んだのではないでしょうか。
この演技は来年の賞レースで認められなければおかしいと思います。

兄・内野聖陽、その妻・安藤サクラ、次郎の同級生・山中崇、兄弟の父・石橋蓮司…
みんなうまい! しかし、松山と並んですごかったのは次郎の母を演じた田中裕子です。
初めて登場するシーンで、希望をなくし、ただ“昨日の続き”として今日を生きている…
そんな、当時の人々の心情を1,2分のシーンで演じています。もし、この映画を見るなら
そのときの彼女の表情を脳に刻み付けておくといいでしょう。エンディング近くの彼女の
アップになった表情とくらべると、映画が訴えたかったものが分かる気がします。

あくまで震災後の被災者たちの暮らしがテーマですから“明るい”映画ではありません。
しかし、見終わった感想として最初に頭に浮かんだのは“美しい”という言葉でした。


90 ネブラスカ 家族の愛を描いた傑作だ モノクロの画面に最後まで惹きつけられた
90 家路 小品だが訴えるものがある 傑作と呼びたい 一人でも多くの人に見てほしい
by toruiwa2010 | 2014-03-06 08:22 | 映画が好き | Comments(2)
Commented by マオパパ at 2014-03-06 11:10 x
岩佐さん、こんにちは。先日「大統領・・」を観て来ました。岩佐さんのコメント通り、良い映画でした。「ネブラスカ」、「家路」も良い映画のようですね。機会があれば、見に行きたいと思います。ここ数年、あまり映画鑑賞できす、岩佐さんのコメントを読んで観た気になっていましたが、やはり劇場で鑑賞するのはいいものですね。これからも、映画評論お願いいたします。もちろん、野球(スポーツ)もよろしくです。
Commented by toruiwa2010 at 2014-03-06 12:16
マオパパさん、こんにちは。

「ネブラスカ」・・・いいです。あっさり「大統領…」を上回りました。
今年は、No1の入れ替わりが激しいです。うれしいことですが。
ハハハ。
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