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岩佐徹のOFF-MIKE

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ダルビッシュのニアミス~再び襲った不運について~14/05/12

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05/10のツイート

ダルビッシュ のパーフェクトゲームは
バックのまずいプレーで終わった。
セカンド後方のフライが「落ちた」。
グラブに当っていないので日本ならヒットと
記録されるだろう。MLBでは、記録を破るには
クリーンヒットが望ましいという考え方があるからね。


たぶん、この記事を更新するころまでにはさまざまなメディアがこのことを
取り上げて伝えているでしょうが、私は自分が知っていることを書きます。

まず、いくつかの“前置き”をしておきます。

1979年はフジテレビのアナウンサーとしてほぼ1年をアメリカで過ごし、
都市から都市を転々としながらMLBを実況し続けました。
7月13日のアナハイム・スタジアム。
地元エンゼルスのエース、ノーラン・ライアンがヤンキースを相手に7回まで
得点もヒットも許さない力投を見せていました。ノーヒッターです。
達成すれば、彼にとっては5回目ですからどうってことなかったでしょうが、
大多数の観客にとっては初めて目にする大記録ですから球場の盛り上がりは
ハンパなものではありませんでした。
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しかし、8回にスペンサーが放った打球はセンターを襲いリック・ミラーが
地上寸前で捕り損ね、はじいてしまいました。
記者席から見ていた私の目にはヒットに見えました。

乾いた声が記者席のスピーカーから流れてきました。“E, eight”
“センターのエラー”です。スコアボードにもE-8と表示されました。
打ったスペンサーはベース上で記者席をにらみ、ヤンキースのダグアウトから
数人の選手やコーチがとびだして、抗議のゼスチャーを見せました。

…知っておきたいのは“MLBには公式記録員はいない”という事実です。
地元紙の記者が代行しているのです。私の知識は30年以上前のものなので
数年前に確認しましたが、このやり方は今も変わっていないそうです。
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この試合で“公式記録員”を担当したのは地元紙の一つ、ヘラルド・
エグザミナーのディック・ミラー記者でしたが、彼は全く動じる気配を
見せませんでした。こう言っていました。
「ルールブックには確かに、疑わしいときは打者に有利にとあるが、
こういう“記録”がかかっている場合は投手有利であるべきだし、
記録を破るにはクリーンヒットが望ましいのだ」と。

9回にレジー・ジャクソンがそのクリーンヒットを打って、ライアンは
7回目の1安打ピッチング(one hitter)に終わりましたが、試合翌日の
ニューヨークの新聞各紙は「あんなことで記録を達成できたとして、
ライアンは喜んだろうか?」という論調でした。

ただし、それを転載したロスの新聞はその横に「なに、ニューヨークで
ロン・ギドリー(ヤンキースのエース)が投げていたら、やっぱりエラーと
記録されるさ」というエンゼルス監督の談話をのせていました。
誰にも言い分はあるものですね。ハハハ。

この騒ぎには一ヶ月ほど前に逆のケースで伏線が張られていました。
6月3日、ピッツバーグのスリーリバー・スタジアムで、パイレーツの
キーソン投手は8回2死までパドレスにヒットを許しませんでしたが、
とうとうエバンスにサードのガーナーを強襲された。

この日のスコアラー、ピッツバーグ・プレスのダン・ドノバン記者は、
迷うことなく“ヒット”と判定しました。試合後のロッカー・ルームで
ドノバン記者をみつけたキーソンは大勢の前で、「オレにとっては一生に
一度のチャンスだった。“エラー”にも見えたじゃないか。地元なのに、
あの判定はなんだ」とかみつきました。
翌日のプレス紙は、社としての見解を記した上で、「以後、本紙の記者は、
公式記録員を引き受けない」と宣言しました。

公式記録員=地元記者…を確認するメールに返信してくれたある球団広報は
「MLBを代表しているので“地元びいき”はない」と書いていましたが、
“ヒット”と判定してもおかしくない、ライトもセカンドも触れないまま
グラウンドに落ちたオルティーズの打球を“エラー”と記録したように、
ときどき、首をかしげる判定はあります。ハハハ。

…と、ここまで書いて、“念のために”レンジャーズの地元、ダラスの
新聞を読んでみました。
この試合の記録員を務めていたスティーブ・ウェラー(Steve Weller)は、
記者ではなく、大学でathletic director(体育の責任者?)だそうです。
アーリントンで20年間、公式記録員を務めています。
この打球を“ライトのエラー”とした根拠についてこう話しています。
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ルール10.12 (a) (1)その外野手が普通の守備をしたら捕れたと
判断したら、記録員はその外野手に失策を記録することができる。

「本拠地で地元に住む記録員がホームチームの投手に関わる判断をし、
彼にノーヒッターのチャンスを与えた…そう見えると思う。しかし、
そうじゃない。あれが1回に起きても私はエラーと記録する。
判定は正しかった」

何度もツイートしたり、ブログに書いていますが、MLBでは…
日本でも同じでしょうが、どちらもキャッチできる、高く上がった
フライは外野手が捕るのが鉄則です。
たとえ、シフトでセカンドが深く守っていたにしても、あの打球は
断固としてライトが捕らなければいけなかったのです。
試合後、リオス自身も認めています。

…そう、ライトはリオスでした。

メディアの多くは、ダルビッシュがパーフェクト&ノーヒッターを
逃がしたのは“2度目”だと伝えています。去年4月のHOU戦で
9回2死までパーフェクトだったのに次いで…。
しかし、私にとっては“3度目”です。
今年の4月、彼自身2度目の登板だったHOU戦でした。

5回までに7三振を奪うなど会心の投球をしていました。投球数も
わずか61球だったし、相性のいい相手だからチャンスは十分だと
思いながら見ていました。
6回の先頭、ドミンゲスに0-2からヒットを打たれパーフェクトも
ノーヒッターも消えてしまいました。

しかし、その2球目に“問題あり”だったのです。
ライトへのファウルフライでした。打球を追ったリオスがフェンスを
怖がって捕り損なっていたのです。パッドが貼ってあるのに!
しかも、ホームグラウンドなのに!! イチローなら言うまでもなく、
普通の外野手なら、しかも、回は浅くても、パーフェクト・ゲームが
進行中だったら、間違いなくキャッチしたでしょう。
Jスポーツのアナによれば、リオスは“うまい外野手”らしいですが、
“いい外野手”ではありませんね。

完全試合は消えましたが、エラーと判定されたことでダルビッシュの
ノーヒット・ノーランは“残り”ました。しかし、オルティーズの
フライがグラウンドに落ちた時点で彼の集中力は一度 切れたのでは
ないでしょうか。

9回2死…“あと一人”というところでオルティーズに狭い二遊間を
破られました。球界で“ビッグ・パピ”と呼ばれ、リスペクトされる
オルティーズがさすがだったということでしょう。
ちなみに、1塁に達した彼は記者席を見上げたそうです。ハハハ。

大歓声の中を降板しました。126球だから仕方がないでしょう。
勝負に“れば・たら”は禁物ですが、あの“エラー”さえなければ、
緊張感が持続し、投球数はもっと少なかったはずのダルビッシュが
大記録を達成した可能性はかなり高かったと思います。
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大記録が生まれるとき、“ツキ”が大事ですが、ダルビッシュには
そのツキがありませんね。
まず、つまらない守備のほころびで完全試合がなくなり、ヒットと
交代でノーヒッターと初の完封が同時になくなりました。

普通に、気の毒でした。
by toruiwa2010 | 2014-05-12 08:32 | メジャー&野球全般 | Comments(4)
Commented by らん at 2014-05-12 12:22 x
田中投手登板試合を放送していたNHK(BS)が8回からダルビッシュ投手の試合に切り替えた辺りから嫌な予感がしていました(笑)


公式記録員の件、全く知らなかったので楽しく読ませていただきました!
(Hometown) official scorer
ということなんですね~
Commented by 北の虹 at 2014-05-12 14:14 x
岩佐さん、お久しぶりです。
ダルビッシュ投手の今回の“あとひとり劇”は、舞台がホーム球場で相手は昨年ワールドチャンピオン、最後のバッターはオルティーズ選手と、最高のシナリオだったのですが、野球の神様は、まだ未熟と判断したのでしょう。制球力や勝負どころなど、彼自身の理想の投球には達していない内容だったとも思います。
以前のリオス選手のファールボール落球にも、岩佐さんと同じ不信を抱いていました。ファイターズ時代にもライトが鬼門で、微妙な守備から逃したゲームもありました。そんな全てを吹き飛ばす、圧巻のピッチングで、きっと近いうちに達成してくれると期待しています。
面白い事に、あの数時間後にファイターズがノーヒットに抑えられるピンチをつくり、打開したのは背番号11を引き継いだ代打の大谷翔平選手でした。日本のプロ野球では、選手の成長を見守るのが楽しみです。二刀流!彼はやってのけますよ。
岩佐さんのブログは、毎日愛読させて頂いています。映画やドラマの評価、桜の名所なども興味が溢れます。MLBに公式記録員がいない情報もビックリ致しました。いつも楽しい記事に感謝して居ります。くれぐれも御身体を大切に、お過ごしくださいますように!
Commented by toruiwa2010 at 2014-05-12 16:08
らんサン、こんにちは。

NHKの切り替えはあのプレーのあとでした。
そして、確か、ビデオは見せましたが、あまり
触れませんでした。NHKしか見ていない人には
何がどうなっていたのかわからなかったでしょうね。
Commented by toruiwa2010 at 2014-05-12 16:13
北の虹サン、こんにちは。

次のチャンがあるかどうか?
いろいろな条件が揃わなければ
達成不可能ですから、なかなか
難しいですね。

日ハム&大谷のことは知りませんでした。
「二刀流」は無理ですよ。ハハハ。
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