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岩佐徹のOFF-MIKE

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「蜩の記」など~心に残った映画~14/12/24

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10/04のツイート

映画「蜩の記」…よかった。
好みもあるだろうが、「柘榴坂の仇討」より
こちらの方がいいと思う。
役所広司の存在が大きい。
惜しまれる点が一つあって、最後まで
納得がいかなかった。

「蜩の記」85


豊後・羽根(うね)藩。
些細なことから城内で喧嘩になり同僚を傷つけてしまった祐筆・檀野庄三郎(岡田准一)に
家老は切腹の代わりとして幽閉中の戸田秋谷(とだ しゅうこく:役所広司)の監視を命じた。
秋谷には幼なじみだった前藩主の側室との不義密通の罪により10年後の切腹とそれまでに
藩の歴史をまとめた家譜(かふ)を完成させることが命じられていた。

山村での庄三郎の“監視”が始まったとき、秋谷が腹を切る日は3年後に迫っていた…
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妻子とともに暮らし、家譜の編纂に取り組む秋谷を訪れて初対面の挨拶をかわすときから
庄三郎は相手に惹かれていきます。彼がその後 何度も口にする“不条理”な仕打ちを
自分の運命だとして悠然と受け止める秋谷の態度が庄三郎だけでなく観客を圧倒します。
時代がずれていますが、“さむらいの心”を描いている点でダブりますから、どうしても
「柘榴坂…」とくらべてしまいます。私の中ではこちらに軍配が上がります。
役所広司と中井貴一…二人とも好きな俳優ですが、今回は役所が中井を上回っていました。

最後の数分間、家族や庄三郎に無言の別れを告げたあと、胸を張って粛々と切腹の場に
歩んで行く秋谷の後ろ姿が多くを語っていました。強く印象に残るシーンでした。
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“納得できなかった点”は出演者の一人のセリフが“現代”のものに聞こえることでした。
カギになる登場人物です。キャスティングにも演出にも“抜かり”があったと思います。
きっと、気になったのは私だけなのでしょうが、彼が話すと、そこだけ時代が違うような
空気になっていて、私には“致命的”に思えました。気がつかないわけはありません。
オーディションなり読み合わせの場なりで分かったはずなのに、なぜ見逃したのか?
これぐらいならいいと思ったか、無視したか…その欠点がなかったらこの映画には90点を
付けられたと思うだけに残念です。

一般の人はどうでもいいことでしょうが、アクセントが気になって仕方がありません。
登場人物たちのセリフの中でも、第三者がこの映画について語るときも、“ひぐらし”の
発音が“グ”にアクセントが来る“中高”になっています。
東京生まれの私は子供のころから“平板”アクセントです。
秋谷がつけている日記が“蜩の記”で、“その日暮らし”の意味だそうですから、おそらく
そのアクセントと関係しているのでしょうが、違和感があります。
ま、それは、この作品の評価とは関係ありませんが。ハハハ。

追記

3点、書き落としました。

映像が美しいです。
寺島しのぶが画面に現れると深みを増しました。
岡田の剣さばき…鮮やかです。


03/03のツイート

震災後の福島に戻った若者を描いた「家路」を見た。
地味な小品だが素晴らしい!「小さいおうち」を抜いて
今年の邦画No1だ。
出演している俳優全員が見事な演技を見せているし、
ディテールを丁寧に作っている。多くの人に見てほしい。

「家路」90


大震災から数か月後、福島の山あいの村。
風が吹いていた。生い茂った草が揺れている。
若い男が納屋からスコップを持ち出すと土を掘り起こし始めた。事情があって10数年前に
村を出て行った次郎だ。長い間、手入れされていない土地は荒れていた。そこは放射能に
汚染されたために居住が禁止されている区域だった。

近くの畑で昔馴染みが土を軽トラックの荷台に積んでいた。遠くを見つめて彼が言った。
「なんもかんもなくなったー」。

次郎の異母兄、宗一は仮設住宅に住んでいた。妻と娘、そして義母(次郎の母)とともに。
すっかりやる気をなくしていた。絶望感が部屋を支配している。
狭い仮設に一日中はいられないと言って妻は弁当屋でパートをしている。
義母にはそう話していたが、実際は違った…
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これまで、震災後を扱ったドラマや映画をたくさん見ましたが、その中では飛びぬけて
いい作品です。私の中では、今年見た日本映画の中でNo1です。
原発の事故や国の対応に対する不満の声も出てきます。しかし、露骨な形ではありません。
抑制を効かせながら、登場人物の言葉の端々ににじませています。
脚本がいいのだと思います。話の運び、せりふの一つ一つが吟味されていて、すべてが
“自然”です。無理やり、とってつけたようなセリフはなく、何気ない日常会話にも、
「ああ、そうだろうな」と共感します。

エンディングに近いところで、母と子が新しく水を張った田んぼに黙々と苗を植えている
ところに二人の警察官が現れます。区域の外に出るよう説得するために訪れたのですが、
しばらく様子を見たあと、声をかけずに帰ります。「自分でもそうするな」と思いました。

作り方がていねいなことに感心します。
見るべきなんだろうけど、どうしようかなあと少し迷いがあったのですが、「見よう」と
決めたのはテレビである人の言葉を聞いたからです。
評論家や有名人ではありません。紹介したのは主演の松山ケンイチですが、話したのは
映画で俳優たちに農作業を指導した人でした。

「口に入る食べ物にだけ愛情をかけるのではダメ。
それを育てるのは土で、それを耕すのはクワで、
それを使っているのは自分。
全てはつながっているのだから、全てに愛情をかけなさい」

…「自分が作るものが人を育てることも自覚しながら…」という言葉もありました。
「監督がOKを出ても自分がダメだと思ったらやり直してもらった」とも話していました。
胸を打つ言葉でした。
その思いが俳優やスタッフに伝わっているような映画です。みんながいい映画にしようと
意気込んでいるのが分かります。特に俳優たちがていねいな演技をしていると思います。

松山ケンイチはこれまで見た中で最高でした。魂がこもった演技を見せています。
憶測にすぎませんが、台本を読んだときからこの役にはまり込んだのではないでしょうか。
この演技は来年の賞レースで認められなければおかしいと思います。

兄・内野聖陽、その妻・安藤サクラ、次郎の同級生・山中崇、兄弟の父・石橋蓮司…
みんなうまい! しかし、松山と並んですごかったのは次郎の母を演じた田中裕子です。
初めて登場するシーンで、希望をなくし、ただ“昨日の続き”として今日を生きている…
そんな、当時の人々の心情を1,2分のシーンで演じています。もし、この映画を見るなら
そのときの彼女の表情を脳に刻み付けておくといいでしょう。エンディング近くの彼女の
アップになった表情とくらべると、映画が訴えたかったものが分かる気がします。

震災後の被災者たちの暮らしがテーマですから“明るい”映画ではありません。
しかし、見終わった感想として最初に頭に浮かんだのは“美しい”という言葉でした。


01/25のツイート

映画「小さいおうち」を見た。いいと思う。
90点つけられると思ったが最後の15分の処理に
納得できず5点を減点した。惜しい!ハハハ。
黒木華、倍賞千恵子ら女優陣と吉岡秀隆が
素晴らしかったが、抜きんでているのは松たか子だ。
40代以上なら良さが分かる映画だと思う。

「小さいおうち」85


遠くの山々には雪が残っている。火葬場の煙突から灰色の煙がまっすぐに上がっていた。
一人暮らしをしていたタキ(倍賞千恵子)が亡くなったのだ。

タキの妹の息子夫婦とその次男・健史(たけし:妻夫木聡)が遺品を整理した。
健史はタキを“おばあちゃん”と呼び、実の祖母のようになついていた。
整理が終わるころ、クッキーの箱が出てきた。ふたに「健史に渡してほしい」と書いた
紙が貼ってあった。中に入っていたのはノートに綴られたタキの“自叙伝”だ。
そこには、山形から上京し、女中として奉公に上がったタキとご主人一家のかかわりが
こまかく記されていた…
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映画は、健史が自叙伝を読み進む形で描かれていきます。
戦前から戦中にかけての東京で暮らす中流階級の生活ぶりがよくわかります。ただし、
物語の肝はその家の若妻(松たか子)が抱え、タキも“共犯者”になる“秘密”にあるのです。

実を言うと山田洋次が苦手です。本人にその意識はないかもしれませんが、テレビなどで
話しているのを聞いたときの「皆さんには分からないだろうけど」的な物言いが好きに
なれないのです。異論があることは承知です。好き嫌いは人によってさまざまですから。
人柄に触れる前に、そもそも「男はつらいよ」を2本ぐらいしか見ていないのですから、
私には山田洋次を語る資格がないと言ってもいいでしょう。ハハハ。

それでも、「たそがれ清兵衛」、「武士の一分」、「おとうと」、「東京家族」などを見ました。

…と、ここまで書いて、これらの作品についてどんな評価をしたのだろうと、古い記事を
チェックしてみてビックリ。2007年の「武士の一分」についてこう書いていました。

よかったでがんす。映画としては・・・。ハハハ。
日本アカデミー作品賞になった「ALWAYS 三丁目の夕日」より
はるかにいいと思いました。やっぱり“食わず嫌い”はダメですね。

(中略)

前作の「たそがれ清兵衛」によく似た物語です。
山田洋次は賞を獲るコツを心得ていますね。
この人といい山藤章二といい、作品は嫌いではないのですが、
“上から目線”の物言いは嫌いだなあ。
・・・どこかにも、「実況は好きだったけど、ブログの中身は
気に入らない」と言われることが多いヤツがいましたね。
そんな男にこんなことを言う資格があるかどうか分かりませんが。
ハハハ。

…“印象”というものは数年では変わらないようです。ハハハ。

横道にそれてしまいました。本題に戻ります。
「たそがれ清兵衛」、「武士の一分」は好きな作品でしたが、「おとうと」は狙いがあまりに
見え見えで高い評価はしませんでした。そういうのは誰の作品であっても認めません。
ハハハ。

1年前の「東京家族」はいい映画でした。私が見た邦画作品の中でトップ10に入ります。
今度の「小さいおうち」もいいと思いました。監督の好き嫌いと作品の評価は別物です。
時代は違いますが、「東京家族」とテーストが似ています。作り方も。
山田洋次の得意な分野と言っていいでしょう。

「90点かなあ」と思いつつ見ていたのですが、最後の15分で5点下がってしまいました。
東京大空襲の描き方がとても中途半端でした。“あえて”でしょうが、リアリティに欠け、
かなり“ちゃち”な作り方でした。あれなら、せりふで処理した方がよほどマシです。
そのあと、現代に戻って、健史と恋人がある人物を訪ねるあたりの演技も稚拙でした。
俳優の力というより“演出”でしょうから、監督の責任だと思います。
ド素人が何を言うかと思われるでしょうが、映画を見る人の99%はド素人です。ハハハ。

吉岡…持ち味が出ています。
黒木…近い将来、大きく開花しそうです。
倍賞…出番は多くありませんが、その中で存在感がありました。

松についてはあまり高く評価していませんでしたが、2012年の「夢売るふたり」を見て、
一変しました。よろしかったら、こちらをどうぞ。
→ 「夢売るふたり」90点~衝撃だった松たか子の本気度~ bit.ly/SmQSxG

“その気”になった女優さんはすごいなあと思いました。
「小さい…」では、好きな男に会いに行く支度をするときの演技が強く印象に残りました。
鏡の前で着物を着るシーンで、後ろ手に帯をきゅっと締めあげるしぐさを見せるのですが、
そのときの、半身に鏡を振り返って確認する“目”に彼女が演じる女性の秘めた喜びと
“覚悟”がしっかりと見えました。このシーンで唸ってしまいました。
すごいなあ、松たか子。ハハハ。
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03/21のツイート

オープンしたばかりのTOHOシネマ・一本スプーン…
じゃなかった、“日本橋”で「神様のカルテ2」を見た。
前作を上回ってすばらしい出来だ!
「永遠の0」「小さいおうち」「家路」…今年は邦画に
90点級が揃ったが、現在は僅かな差でこれがNo1か。

「神様のカルテ 2」90


息を切らした栗原一途(=いちと:櫻井翔)が稜線で妻の榛名(宮崎あおい)に追いついた。
二言、三言、言葉を交わしたとき、突風が吹いた。気が付くと榛名が消えていた。
…夢だった。
激務の合間を縫って、ほんのわずかな睡眠をとろうとベッドに横になってからわずか5分、
看護師からの電話にたたき起こされたのだ。「救急車が10分で到着する」と言う。
24時間、365日 患者を受け入れることを売りにしている長野県松本市の本庄病院では、
栗原が当直の日、救急車で搬送される患者が特に多いというのは定説だった…
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ある日、栗原が会議に遅れて大先輩、貫田(柄本明)の隣の席に滑りこむと、反対側の男を
「新しく来てくれた先生だ」と言って紹介されます。血液内科が専門だそうです。
“進藤”という名前を聞き、貫田越しにその顔をのぞきこんだ栗原が思わず懐かしそうに
声を上げます。「タツヤッ!」。
二人は地元の大学の同期生、部員の少ない将棋部の仲間でしたが、大学病院からの熱心な
誘いを断って地域密着の本庄病院に残った栗原と東京の大病院を選んだ進藤(藤原竜也)は
数年ぶりに再会したのです。

同じ職場で働くことになった二人ですが、仕事への取り組み方は対照的でした。
妻の理解があって当直の連続もいとわない栗原に対して、勤務時間外に連絡が取れない、
患者への病状の説明を渋る、5時になるとさっさと帰ってしまう進藤は看護師たちの評判も
芳しくありません。

栗原の勤務状況からは医療現場の過酷さがうかがえます。進藤と再会したときにかけた
「ようこそ、医療の底辺へ」という言葉は“自虐”以上の意味があります。
一方、同じ医師の妻を東京に残し、娘を連れて故郷に戻ってきた進藤の不可解な行動にも
何か理由がありそうです。

掛け声だけ大きいものの、なかなか進まない医療改革という重いテーマのからませ方に
少し“無理”がありますが、作品全体の雰囲気はとてもいいです。
夏目漱石、芥川龍之介、志賀直哉を愛読し、めったに腹を立てない栗原と、そんな夫を
いい距離感でニコニコと眺め、支える榛名…相変わらずいい感じの関係に心がなごみます。

桜井が出演する映画・ドラマはあまり見ないのですが、3年前の「神様のカルテ」に続いて
この作品もよかったです。俳優を生かすも殺すも役柄次第だなあと思います。
宮崎、藤原、柄本もよかったし、短い出番でしたが、池脇千鶴、吹石一恵、西岡徳馬も
いい味を出しています。

西岡は柄本の同期生で大学教授に扮しています。貫田の病状を聞いて大学病院への転院を
勧めますが、入院中の本庄病院を訪ねて「No」の返事を栗原から聞き、そのまま会わずに
帰ろうとします。その理由を聞かれたときの彼の答えが心にしみます。
「今日は医者の顔をしてきましたから」。

「貫田には医者ではなく、友人として会いたい」という思いが伝わります。
このセリフは素晴らしいと思います。しかし、惚れるべきが原作者なのか脚本家なのかが
分からないという…。ハハハ。
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by toruiwa2010 | 2014-12-24 12:37 | 映画が好き | Comments(2)
Commented by 花みさき at 2014-12-24 14:56 x
岩佐さん、こんにちわ。
桜井くんのファンなので軽い気持ちで映画館に入りました。
宮崎さんのほっこりした雰囲気も良かったです。
「家路」も見るかどうか悩んでいました。
岩佐さんの評論を読んだら迷いも消えました!
映画の楽しさを分かりやすい描写で
表現してくれるブログですね。

Commented by toruiwa2010 at 2014-12-24 15:20
花みさきサン、こんにちは。

「家路」…公式HPを見ると、
上映館がないみたいですね。
多くの人に見てほしいのですが。

新藤兼人賞で金賞を獲ったとか。
当然ですけど。
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