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岩佐徹のOFF-MIKE

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最後の実況 終わる~もう一つの“9月11日”~15/09/11

忌まわしい同時多発テロから4年後の2005年9月11日、ニューヨークのフラッシング・
メドウズにあるナショナル・テニス・センターは全米オープンの最終日を迎えていた。
私は夕方4時に始まる予定の男子決勝、アガシ対フェデラーを担当することになっていた。

いつも通り6時過ぎには起きていたから放送席に入るまでたっぷりと時間があった。
フェデラーとアガシなら、いくらでも話すことはあるし、当日の新聞から最新の情報を
いくつかメモに加えれば、放送に臨む準備はほぼ終わる。カードが最高だったら、余計な
ことはしゃべらないほうがいいのだ。

ホテルにいてもやることはないので午前中に会場に入ったと記憶している。
プレスルームに寄って資料を集めてスタッフ・キャストの控室に行き。それを読む。
二人の対戦に関係するデータ以外に目新しい情報はない。準備はととのい、いよいよ
やることがなくなった。

「ちょっと出かけてくるよ」とスタッフに声をかけて会場を抜け出した。
コーディネーターの車で向ったのは崩壊したワールド・トレード・センターがあった場所、
“グラウンド・ゼロ”だ。テロのあと、一度も訪れていなかった。
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実は、帰国後にWOWOWと契約についての最終的な話し合いをする予定だったのだが、
諸事情を考えあわせて、更新しないと決めていた。グラウンド・ゼロを訪れるとしたら
これが最後の機会だと思った。

テロから4年、現場はすっかり整備されていた。
数千人の命が一瞬のうちに消えた現場に立ち、あの日起きたことを思い出した。

火曜日だった。
日曜日に閉幕し、自由行動の月曜日をはさんで、この日 日本へ帰る予定だった。
朝、チェックアウトの列に並んでいるときに“何が起きたか”を知らされた。
ただし、初めは「小型機がツイン・タワーにぶつかった」…と。

設置されようとする検問所をすり抜けて空港に着き、同僚を待っている間に“全貌”が
明らかになって行った。旅客機が貿易センター・ビルに突っ込んだ。テロだった!
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至るところで聞こえたけたたましいサイレン、声を潜めて話し込むホテルや空港の職員、
ベージュ色の煙に包まれた超高層ビル、ショックが隠せない人々の顔…
ごった返していたホテルのロビー、割り当てられた一室を妊娠2ヶ月のタイムキーパーを
含む3人で共有し、ほとんで眠れなかった最初の夜、飛行機が飛ぶかどうかわからぬまま
ホテルと空港をむなしく往復した数日間を思い出した。断片的だったが一つ一つの記憶は
鮮明だった。
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会場に戻り、決勝の実況にモードをセットする。
実況人生の最後の試合になる…という思いはなかった。
そんなことより、フェデラーとアガシが素晴らしい試合をした。4セットでフェデラーが
勝ったが、第3セットのタイブレークをとっていればアガシが勝つ可能性もあった。
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「…両者が握手をして、アガシは舞台を勝者に譲りました。
このあたりのマナーがねえ」「ほんとですねえ」(柳恵誌郎さん)
「スタンドに残っていたお客さんから大きな大きな拍手が
送られています。これがテニスを去るというゼスチャーでは
ないことを祈りたいと思います。
お話、柳恵誌郎さんでお送りしてまいりました。
ありがとうございました」

いつもと変わらぬシメのコメントを口にするとき何か特別の感慨があるかと思ったのだが、
そんなこともなく、“淡々と”WOWOWでの最後の実況が終わった。
ただ、恒例の打ち上げは乾杯だけで切り上げて 早々とマンハッタンに戻り、行きつけの
日本食料理店で一人祝杯をあげたあたり、結構、センチメンタルになっていたのかも。

今朝、新聞を取りにでたら
西の空に秋の雲が・・・

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by toruiwa2010 | 2015-09-11 08:39 | 放送全般 | Comments(2)
Commented by ナオイ at 2015-09-11 22:48 x
もう10年前になりますかー。素晴らしい夢のような決勝のカードでした。実はこの全米、ファーストウィーク観に行ってて岩佐さんのファンだったので岩佐さんに会えないか会場を探し回ってたのを思い出します。アガシは80年代後半から活躍し息が長く本当に素晴らしい選手でした。そして今年も10年経っても2年連続で準決勝進出しているフェデラー。二人の偉大すぎる選手のピークが少し重なった歴史的な決勝だったとは少し言い過ぎでしょうか。笑
Commented by toruiwa2010 at 2015-09-12 07:01
ナオイさん、おはようございます。

キャリアの後半で“悪ガキ”のイメージを
払拭したアガシ、早い時期から“優等生”ぽかった
フェデラーの決勝は印象に残る試合になりました。
今もトップクラスの力を維持しているフェデラーには
驚くばかりです。
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