ブログトップ | ログイン

岩佐徹のOFF-MIKE

toruiwa.exblog.jp

実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

野坂昭如Gone~愛読した作家だった~15/12/11

野坂昭如が85歳で亡くなった。
エロ事師たち、アメリカひじき、火垂るの墓、
マリリン・モンロー・ノー・リターンまでは
破竹の勢いだったか、以後、脇道に それた
印象がある。親近感を覚える作家だった。

d0164636_919666.jpg









1966年、五木寛之が、「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞を、翌年には「蒼ざめた
馬を見よ」で直木賞を得た。野坂昭如も1963年に発表した「エロ事師たち」で脚光を浴び、
67年に「火垂るの墓」・「アメリカひじき」で直木賞を獲得した。
2人はほぼ同期の作家と言っていいと思う。直木賞受賞作家のリストを見ると、そのころ
立原正秋と生島治郎の名前がある。私の好きな作家たちが束になって出て来た時代だった。

小説中央公論に載った「エロ事師たち」と小説現代に載った「さらばモスクワ愚連隊」を
“リアルタイム”で読んだ。結核を患い療養所に入っていた高校生のころから中間小説が
好きだったのだ。2人のデビュー作を読んだとき、“新しい風”が吹いている…と感じた。
文体や話の進め方がそれまでの作家たちと違っていた。
「火垂るの墓」には大泣きした。小説に泣かされたのは初めてだった。内容もよかったが、
普段の野坂の言動とのギャップにやられた。
d0164636_920370.jpg










露悪趣味的なところがある独特なムードを持った作家だった。
テレビ出演も多く、そのたびに物議をかもす発言をしていた。あえてそうしていた。
本人が思っている(に違いない)ほどカッコよくないのがおかしかった。たぶん、それも
計算されていたのだろう。挑発的に品のないことを口にするのだが、憎めなかった。

若いときにいい作家に出会えたと思っている。

…そんなことを考えていたら、今朝の朝日に五木が寄稿していた。

(前略)新人として登場した頃から、偽善、偽悪の両面を
役割分担しつつ、微妙な距離感を保って50年あまりが
過ぎている。(中略)
私生活ではお互いに意識的に離れながらも、時代に対しては
共闘者として対してきたつもりでいる。(中略)
大きな支えが失われたようで、淋しい。無頼派を演じつつも、
傷つきやすい芸術家だったと思う。
野坂昭如、ノーリターン。合掌。

“共闘者”…同じ時期に世に出た二人の間に強い連帯感があったことが分かる。
d0164636_9215768.jpg







野坂には個人的な忘れがたい苦い思い出もある。

1966年3月4日、BOACのボーイング707型機が富士山の上空で乱気流に巻き込まれて
空中分解し、二合目に墜落した。前日に羽田でも事故があり、連日の飛行機事故だった。
入社3年目の私も現場からの中継を担当した。その中でこんなリポートをした。

機首部分の周辺で数人の遺体が収容されました。
傷みが激しく、性別も分からないそうです。


…数日後に発売の週刊中公に「“いたみ”って、リンゴじゃないんだから」と書かれて
愕然とした。“損傷”という言葉は頭に浮かばなかった。いまなら“損傷”を選ぶだろうが、
当時だったら、くらべても、結局は“傷み”を採用したと思う。言われる通りだ。
名指しはされなかったものの、自分が発した言葉が活字になっているのを見せられたとき、
言葉の選択はつくづく難しいものだと落ち込んだ。

無署名だったが、書いたのは小説では食えない若い作家・野坂昭如だと聞いた。

野坂の家は、昔 住んでいた杉並区下高井戸の我が家に近かった。
そんな意味でも親しみを感じる作家だった。冥福を祈る。

人気ブログランキングへ

⇑ 面白かったらクリックしてください。

by toruiwa2010 | 2015-12-11 09:24 | 読書・歌・趣味 | Comments(2)
Commented by 赤ぽん at 2015-12-12 09:56 x
岩佐さん、こんにちは。

野坂さんや小沢昭一さん、戦時中から戦後に対する語りや小説、芸能の話をよく聞いたり読んだり
しました。とても懐かしいお二人が、ともに亡くなられてしまった・・・
言い尽くされた言葉ですが「昭和が遠くなる」気がします。

傷みと損傷・・・時代によって言葉使いは変わっていると思いますが、アナが瞬間に
浮かんだ言葉を発するのと、作家が原稿用紙の前で言葉を”絞り出す”のとは
根本的に違うと思いますが、アナウンサーの実況の際の言葉の選び方は一瞬!
現代サッカーの狭いスペースでの判断力に似て?!本当に難しいものですね。
Commented by toruiwa2010 at 2015-12-12 16:07
赤ぽんサン、こんにちは。

みんな、「昭和の匂い」を
プンプンさせていました。
それが、同じ時代を生きた者には
たまらないのです。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。