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岩佐徹のOFF-MIKE

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欧米から伝える記者の質 自薦・厳選300?16/03/05

テニスを伝える 松井を追う
~記者の“質”もいろいろ~( 2010.06.03 初出 )
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今日の記事は私の現場経験をベースにしつつ、
推測をまじえて書いている部分もあることを
あらかじめお断りしておきます。


5月29日付朝日新聞朝刊の記事を読んで違和感があり、その日のブログに書き加えました。

錦織、2回戦で完敗」の見出しがつけられた全仏オープン関係の記事には、別枠で
こんな記述があります。
・世界3位と互角に打ち合った。特に得意のフォアハンドで見せ場を作った。
しかし、勝負どころでポイントを奪ったのは、錦織ではなくジョコビッチだった。
・…2回戦では2年前の全豪覇者に力の差を見せつけられて敗れた。
・「自分のプレーをさせてくれなかった。弱点がなかった。悔しい」と完敗を認めた。
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記事には(共同)のクレジットがついています。朝日新聞は自社の記者を現地に送らず、
共同通信の原稿を使っているのです。東京でデスクが記事を読み、錦織の談話の部分に
つられて「完敗」という見出しをつけてしまったのでしょう。
談話も、「」内の言葉を一気にしゃべったわけではないはずです。記者との間にいくつかの
やり取りがあり、彼が口にした言葉をつないだものが「」になっているのです。
記者の主観・印象にすぎない「完敗」をデスクがまともに受け取ってしまったのでしょう。

現在の“不況”を考えたら、新聞はおそらくどこも現地に記者を送っていないと思います。
共同通信の記者も、テニスはもちろん、スポーツ専門ですらなく、パリ支局でスポーツが
ある程度分かる…という記者ではないでしょうか。私が“現役”のころプレス・ルームで
見かける通信社の記者の印象は、申し訳ないのですが、頼りないものでした。
誰も責めるわけにはいきません。“費用対効果”を考えたら、新聞は通信社まかせになり、
通信社も、グランドスラムだからと言って、日本から記者を送る余裕はありませんし、
ヨーロッパにスポーツ専門の記者を常駐させることもできないでしょう。

アンディ・ロディックが負けたときにも「ロディックは予選勝ち上がりの世界114位、
無名のガバシビリに敗れた」という記述があります。上位シードの選手にとって、去年、
59位までランクを上げた選手を早いラウンドで相手にするのは嫌なはずです。少なくとも、
“無名”の一言で片づけるのはどうなんでしょう。せいぜい“格下”どまりでしょう。

具合が悪いことに、通信社の記事は、新聞・テレビ各社が使います。元記事に間違った
判断が含まれていると、ウイルスのようにそのまま“拡散”してしまいます。
WOWOWで解説者の話でも聞かない限り、試合の中身がどうだったか、この選手の
技術はどうなのか、正確なところが分からないのです。

野茂英雄がメジャーに行ったときに始まり、イチロー、松井秀喜といったスター選手が
海を渡ると、日本のメディアは“番記者”を張り付けて取材にあたらせます。
言い方は悪いですが、メインの仕事は日々の試合が終わったあとの談話取りですから、
経験を積んだ腕のある記者を送り出すことはないでしょう。他の仕事はないわけですから、
景気のいい時ならともかく、この不況の時代に効率の悪いことは避けなければなりません。

駆け出しの若い記者、もっと言えばフリーの記者を安いギャラで雇うこともあるでしょう。
どんなときにも会見に応じる松井は、型にはまった質問にも丁寧に対応してくれますから、
そういう対応で十分に目的が果たせるのです。しかし、イチローは違います。

「(新聞記者を)育てるのも僕らの仕事の一部だと思ってるので…」と、
打っても打たなくても会見に応じる松井を暗に批判。


…史上最多の262安打を放った2004年に彼が残したとされる“語録”を読んで仰天した
ことを思い出します。1打席、1打席、身を削り、命をかけている彼には、記者が浴びせる
レベルの低い質問が我慢ならないのでしょう。彼には、新聞社の事情など無関係ですから、
「質問する以上、勉強してからにしろよ」と言いたいのだと思います。
“記者を育てる”のは君の仕事じゃないだろうと思いますが、心情は理解できます。
しかし、彼が得意とする“禅問答”めいた話に対応できるような質問をする記者を現地に
送る余裕は残念ながら日本メディアにはないのです。

去年までは、大きく分けて、西海岸のシアトルでイチローを追いかける記者たちと東部の
ニューヨークで松井をカバーする記者たちがいたはずですが、今年“異変”が起きました。
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米大リーグを取材する日本の報道陣が、
この春、ニューヨークから姿を消した。


1週間ほど前の朝日新聞朝刊にそんな記事が載っていました。
ヤンキースからエンゼルスに“移籍”した松井を追って日本の記者たちがいっせいに
ロスに移動したのです.
試合後のヤンキースの監督会見を待つ記者席もガラガラですね。ハハハ。
支局そのものをロスに移した新聞社もあるそうです。
一人の選手を取材するためにこんな対応をすることはアメリカではあり得ません。
さぞ、奇異の目で見られていることでしょう。

しかし、松井やイチローの一挙一動は“ニュース”だし、その談話は外せません。
今日もまた、松井やイチローが動くたびにそのあとを金魚のフンのごとくついて回る
日本メディア軍団の光景はかの地のライターたちに話題を提供していることでしょう。

なお、WOWOWはソダーリングと呼んでいるようですが、活字の媒体は
セーデリングになっています。共同通信が中心になって統一しているはずです。
どちらが正しいにせよ、視聴者・読者にとっては不幸な話です。

余談ですが、錦織については何度か書いています、と、URLを貼っておいたところ、
100人近い方に読んでいただいたようです。
かなり前に書き、本来ならそのまま埋もれてしまうはずの記事がもう一度読まれるのは、
書いた者にとって、こんなにうれしいことはありません。

柳さんの“連続記録”

WOWOWがグランドスラムを初めて放送したのは1992年の全豪でした。
しかし、柳恵誌郎さんはこのときはまだ解説をしていません。
続く全仏でもローランギャロスでの解説はテレビ東京の坂井利郎さん、平井健一さんに
お願いし、柳さんは東京のスタジオで準決勝と決勝を解説しました。
柳さんが現地から解説をするようになったのはこの年の全米からです。
それ以来、毎回、WOWOWのテニス中継には欠かせない存在です。
一昨年からウインブルドンが増えましたが、新型インフルエンザの影響で去年の全仏は
現地に行きませんでした。柳さんの現地からの連続解説は50回でストップしました。
解説者・アナウンサーの中で、これだけの“記録”を残した人はいません。

ちなみに、柳さんに続くのは1992-2005年、14年間、3大会に連続参加(42回)した
岩佐徹…そう、私です。ハハハ。

今年、WOWOWは柳さんを含む一部のコメンテーターをパリに送っていません。
地上波と同様、ペイ・テレビのWOWOWにも制作費削減の波は来ているのです。
現役を続けていたら、私も「申し訳ないんですが、今回は…」と言い渡されたかも
しれません。奈落の底に引きずり込まれるような寂しさを覚えたことでしょう。ハハハ。

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by toruiwa2010 | 2016-03-05 08:52 | 自薦・厳選300? | Comments(6)
Commented by バタフライ at 2016-03-05 14:56 x
岩佐さん、こんにちは。
噂によるとイチローの取材現場では、イチローお気に入りの
2人の記者以外はイチローに近づくことすら許されないという
暗黙の了解があり、取材はすべてその2人の記者を通じて
行われるのだとか。
こんなことがまかり通ってること自体驚きですが、それにしても
日本の記者達は情けないですね。
松井秀喜のブラ下がり方式がいいとは言いませんが
イチローよりは遥かに健全でしょう。
Commented by toruiwa2010 at 2016-03-05 16:29
バタフライさん、こんにちは。

イクラなんでも、そこまでは…と
思いますが、彼の場合はなんでもありなので
何とも言えません。そこまで行くとプロ失格ですから。

日本人記者に囲まれるときは背中を向けて
受け答えするという話は聞いたことがあります。
ハハハ。


Commented by バタフライ at 2016-03-05 18:12 x
岩佐さん、こんにちは。
私も下記のコラムで知ったのですが、その時たまたまイチローの
機嫌が悪かったということでもないようです(笑)

2014年MLBの○と× 第4回「日本人選手」(前篇)
「取材での書かれざるルール」が示すイチローの孤高
http://www.jsports.co.jp/press/article/N2014121421060001.html
Commented by toruiwa2010 at 2016-03-05 18:56
バタフライさん、情報、有難うございました。
読みました。

この記者がどういうキャリアの人かは知りません。
ハッキリしているのは、彼が試合後のロッカーで
イチローを取材したのは一度だけのようですね。
それで、この記事を書いてはダメだと思います。
ほかの日本人記者に確認もしていないようだし。
私がブログに書くのと違いますから。ハハハ。

“コンプライアンス”の使い方、合ってますかね。
“言葉少なげ”“辟易として”“僕にリマインド”…
経験を積んだ記者の書いた文章とは思えません。

あ、私の文章がどうとか言う話じゃありません。
ハハハ。
Commented by バタフライ at 2016-03-05 21:09 x
岩佐さん、こんにちは。
先日長嶋茂雄氏が清原事件についてコメントを求められ
絶句したとニュースになってましたが、この球界を揺るがす
大事件に関して当然コメントを求められてしかるべき立場の
イチローからは一切そのような話は聞こえてきません。
メディアのイチローに対する気の使いようが伺えます。
まあ豊浦氏コラムの真偽はともかくイチローとメディアの関係は
かなり歪だと言って間違いないんじゃないでしょうか?(笑)
Commented by toruiwa2010 at 2016-03-05 21:17
バタフライさん、こんばんは。

イチローに好意を持たないメディア関係者は
とんでもない数にのぼるでしょう。言わないだけで。
厳しいことを言うのは私ぐらいのものだし。

おっしゃる通り"いびつ"です。
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