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岩佐徹のOFF-MIKE

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ドイツの義足ジャンパー~決して差別ではなくて…~ 15/03/17

難しいテーマなので放置してあったが、少し頭の中が整理できたので書くことにした。

昨年10月、ドーハで開かれた障害者陸上の世界選手権ですごい記録が出た。
男子走り幅跳びでメルクス・レームが8.40mを跳んだのだ。
アメリカのマイク・パウエルが持つ世界記録(健常者の)、8.95mに比べればはるかに劣るが、
日本記録(健常者の)、8.25mを超えている。それだけではない。北京五輪の優勝記録8.34m、
ロンドン五輪の優勝記録8.31mをも上回っているのだ!
話を聞いたとき、かなり気になったのだが、メディアが大きく取り上げた気配はない。
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レームは2014年のドイツ選手権でも8.24mで優勝している。健常者を抑えて。
しかし、ドイツ陸連は彼をその年の欧州選手権のメンバーには選ばなかった。
難しいのはレームがつけている義足をどう考えるかという点だ。「右ひざ下のカーボン・
ファイバー製の義足が有利に働いたのではないか」と疑問の声が挙がり、議論した結果、
欧州選手権には大会で2位になった選手を送ったのだ。

男子400㍍のオスカー・ピストリウスを初めて見たのは2011年世界陸上だった。両足とも
ひざから下が義足のランナーだ。“ブレード・ランナー”の名で知られていた。

2011/08/29のツイート
世界陸上:義足のランナー、ピストリウスを
初めて見た。黙って応援すればいいのだが微妙だ。
何か違う気がする。
ルール的に“バネ“をどう考えているのだろうか。
乳酸がたまるということもないわけだし。
ほかの競技ではどう扱っているのか、純粋な
気持ちでとても興味がある。

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彼は翌年のロンドン五輪にも出場したが、世陸・五輪ともに400㍍では準決勝で敗退した。
そのせいか、陸上の世界を除くと、世間的には義足の選手がオリンピックに出ることに
ついて語られることは少なかった。しかし、私はレースを見ながら感じた違和感を今でも
持ち続けている。果して、本当にフェアかどうか?もっと言えば、“フェア”とは何か?

言い方一つで“差別”につながりかねないから、人はあまり触れたがらない。
オリンピックのときもアナウンサーはほとんど触れることがなく、解説者も“当たらず
障らず”の話しかしていなかった。
準決勝敗退だったから、同じ種目を走る選手たちからもクレームは出なかったようだが、
決勝進出、あるいはメダル獲得…となっていたら、話は違ったはずだ。

走り幅跳びのレームは義足をつけた右足で踏み切って跳ぶ。
使っている素材に弾力・反発力があるのではないか?それは、健常者の足の筋肉に自然に
備わるバネとくらべてどうのか?
仮に、彼が三段跳びに出場し、右足で踏み切って跳ぶと、そのバネの力を2度 利用する
ことになるが、どうなのか?

比較することが難しいから明確な答えは出ないと思う。
レームには「リオ五輪に出たい」という希望があるようだが、立ちはだかるカベは高い。
去年、国際陸連が、「義足が有利に働いていないことを“選手自身で”証明すること」を
参加条件としたからだ。ピストリウスがロンドン五輪に出場しときには選手自身による
証明義務はなかったそうだ。
1000万円単位の費用がかかると言われている上、「何が証明になるのか基準を教えて」と
国際陸連に問い合わせても回答はないのだという。

ネットを検索しているときに興味深い記事を見つけた。( 朝日デジタル 2016.01.14 )
2014年のドイツ選手権でレームが優勝したあと、ドイツ陸連がデータを比較したそうだ。
要約するとこうなる。

8.24mのレームと8メートル台の健常選手32人の、踏み切る前と後の速度の変化を比べた。
踏み切り前:レームは秒速9.72m 32人の平均は10.43m
踏み切った直後:レームの垂直方向の速度は秒速3.65m。32人は3.36m。
踏み切り直後:レームの水平速度は0.92m減速。32人は1.50m減速。

…レームの踏み切る前(助走の段階)の数値は劣るが、踏み切り後はまさっているわけだ。
もっとも、助走が遅くても距離が出る選手もいるから、何とも言えない。
しかし、義足が進化しているのは事実らしい。

「私の計算では、2068年に男子100メートルで
義足選手が五輪選手を抜きます」


義足アスリートの世界的な研究者、保原浩明氏はそう言っているそうだ。

ピストリウスがオリンピックで走ったとき、違和感はありつつも一種の感動があった。
障害を持つ人がハンデを超えて健常者と競う…挑戦そのものはすばらしいことだから、
世間は称賛の声を挙げる。
しかし、“公平さ”を物差しとすれば、このケースでは、義足がまったくプラスに働かない
という証明はやはり必要だ。
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より速く、より高く、より強く・・・
オリンピック憲章に記されている“モットー”だ。
それはあくまで、人間が 器具の助けを借りずに自らの五体だけを使って挑むものだと思う。

気を使って書いたつもりだが、それでも“差別”と感じる人がいたらそれは見解の相違だ。
私にはこれ以外の書き方はできない。

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by toruiwa2010 | 2016-03-17 08:45 | スポーツ全般 | Comments(4)
Commented by 赤ぽん at 2016-03-17 10:00 x
岩佐さん、こんにちは。

どうしても差別に絡む言い方に気を使わざるをえない記事ですが、私も義足のランナー
についてはなにかモヤっとした引っかかるモノがありました。
ドイツ陸連が派遣しなかった(2位の選手を派遣した)こと、昨年の国際陸連の
よく解らない”参加条件”と”証明”・・・
皆なにか引っかかりは気になっている、いるけれどもこれという明確な線引きが
出来ていないと今後も陸上だけでなく他競技でも同様な問題が起こりうる事象ですね。
ドーピング問題、道具をメインに使う競技の不正行為や基準作り等々、現状の問題と
また別に新たな検討課題かと・・・私も決して差別的意識で書いているわけでは
ありませんが、どうしてもこういう一文が必要に思えるような事だと思います。

当たり前ですがスポーツはルールのある争いですから、まずルール、そして
よく言われる“差別と区別”について、出る選手も出す協会も、そして観る観客にも
周知されるようにならないといけない、けど簡単ではない問題ですね。
(私も当記事の最後の5行に同意です。)
Commented by toruiwa2010 at 2016-03-17 10:39
赤ぽんサン、こんにちは。

こういう問題になると多くのメディアが
触らぬ神に…的な対応をするのがよくないですね。
意見はあるはずなのに。
Commented by ラムネ at 2016-03-17 11:33 x
岩佐さん、こんにちは。
私は義足などの器具を使ったスポーツの発展が楽しみです!器具なしのスポーツとは相撲とバレーボールくらいの違いがあるのでしっかり区別すればいいと思います。
将来は器具が発展してそちらのスポーツの方が人気が出て、器具なしの方が下火になる未来があるかもしれません。それを喜ぶのも憂うのも自由です。
公平という点で言うと、スポーツにおいては黒人に産まれなかった事がすでに不公平ですよね。

まだこのスポーツは発展途上で様々な議論や変革が必要ですが、行く手を封じる事がないよう祈っています。
Commented by toruiwa2010 at 2016-03-17 12:53
ラムネさん、こんにちは。

差別ではなく、"区別"…別物だと
ハッキリさせることで公平性が
保てるのだと思います。
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