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岩佐徹のOFF-MIKE

toruiwa.exblog.jp

実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

ユーロ2004・ダイアリー 4 自薦・厳選300? 16/06/18

DAY 11 ( 2004.06.26 初出 )

今日から、ふたたび3連休です。予定通りならば、フランス対ポルトガルかスペイン
(まだ、言ってます)で、気分的には余裕も持てて、ノンビリしているはずだったのですが、
ギリシャが割り込んできたために、朝から資料集めに追われました。テニスがなければ、
当然ギリシャの情報も初めから整理していたところですが、何とか、時間を節約したいと
思ってサボったのが間違いでした。

実をいうと、96年のときにも同じミスをしています。
イタリア、ドイツ、ロシアと同じ組に入っていたチェコの準備をおざなりにしたのです。
決勝も実況する予定でしたから、グループ・リーグでは担当がなくても、準決勝、決勝に
出てきそうなチームはカバーしておかなければいけません。しかし、この顔ぶれを見て、
「チェコはないな」と判断しました。しかも、第1戦でドイツに2-0と完敗したのを見て、
ますます安心してしまいました。しかし、その後 イタリアを下し、第3戦ではロシアに
再三リードされながら粘りに粘って、最後はスミチェル(今大会は“シュミツェル”/何故、
わざわざ読みにくく変えるのか?ハハハ)が同点ゴールを決めてベスト8に進出したのです。
あれで懲りたはずなんですが、またやってしまいました。
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お昼ごはんを有志で一緒に食べることになりました。そこに“珍客”がまじっていました。
スカパーで人気の西岡アナウンサーです。初対面になる我々の通訳兼コーディネーター、
マイケさんには“Our rival station’s announcer”だと紹介しておきました。ハハハ。
北沢さんとは前から知り合いだと聞きましたし、チャンピオンズ・リーグの放送のときに
手伝ってもらったことがあって、担当だった内濱Dは面識があります。柄沢アナは青学の
先輩ですから「知っている」と前から言っていました。
私はだいぶ前、すれ違ったときに挨拶しただけです。彼は食事をしながら、リスボンに
来る前にバルセロナでカンプノウを見てきたと楽しそうに話していました。サッカーが
大好きな好青年でした。
いっそのこと、引っこ抜いてしまえばいいのに、どうなのWOWOW?

そういえば、レストランに向かっているときに、雨粒が2、3滴、顔に当たりました。
リスボンにも雨は降ることが判明しました。ハハハ。

夜は、同時進行の二試合のうち、主にイタリアーブルガリアをテレビ観戦です。
とにかくこの試合に勝って、デンマークースウェーデンの結果次第というイタリア。
今夜はそのイタリアを応援です。すでにスペインが消えました。グループDではドイツか
オランダが敗退することになっています。この上、イタリアまで敗れ去ることになれば、
WOWOW的には大打撃でしょう。それに、イタリアは私にとってサッカーの原点ですから、
今このときに応援してもバチは当たらないでしょう。ハハハ。
勝つことが最低条件です。仮に勝っても、デンマークースウェーデンが2-2の引き分けだと
ベスト8には進めません。

結果は皆さんご存知のとおりです。ロスタイムに勝ち越しゴールを決めて自分のベンチに
駆け寄ったカッサーノの大喜びの顔が「デンマークースウエーデンが2-2だ」と告げられて
苦痛にゆがんでいくドラマチックな幕切れでしたね。

「イタリアのサッカーはつまらん」とおっしゃる方がどれだけいても、私は好きです。
「どこが面白いんだ?」と聞かれたら「理屈じゃないだろう」と答えることにしています。
嫌いだという人とそれ以上話をしても無駄ですから。ハハハ。

DAY 12

ここ数日、朝からお天気がはっきりしないことが多いです。気温も低めです。
「早野さんがポルトに入った」と聞いて、大部分のスタッフは「なるほど」と納得します。
それほど、早野さんは“雨男”なんです。だから、昨日テレビで見た北の会場の試合は
どしゃ降りだったんだ!
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滞在中にこの国の民謡“ファド”を聞きに行くのが楽しみだったのですが、残念ながら
そのチャンスはギリシャのおかげでなくなりました。ハハハ。
昼間、街に出て、伝説の歌手、アマリア・ロドリゲスのCDを買い、それを聞きながら
資料整理をしました。

今日はドイツーチェコです。実況の担当は柄沢アナです。私は客席からの観戦でした。
席に向かう途中、前をNHKの山本アナが歩いていました。スタンドに入ったところで、
顔が合ったので軽く会釈したのですが、はかばかしい反応はありませんでした。
この世界では私のほうがずっと先輩だし、国立競技場の記者席などで遠くから、目礼を
されたりしたことがあったので知っていると思っていましたが、違うようです。まあ、
WOWOWは小さなメディアですから、国営放送から見れば、「そんな人知りませんよ」と
言われてもしょうがないですね。“業界”では少しは知られていると思いこんでいましたが、
ウヌボレもいいとこだったみたいです。ハハハ。

それにしても、一人きりでしたし、勉強でしょうか。
最近は、あまり実況をやっていないようですが、あの若さでもったいない話だと思います。
「若手を育てる」にしても、自分がしゃべりながら引っ張るやり方もあるんですが。
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席に着くと、真正面のスタンドの上から、強烈な西日が照りつけていました。少し遅れて、
田中アナと内濱Pが到着。

予想以上に、レギュラーを休ませたチェコ、勝たなければ決勝T進出が危ないドイツ。
ドイツ優勢の声が支配的でした。

これだけの大会を、スタンドから一般客にまじって見るのははじめての経験です。
選手がピッチ・インスペクションに姿を見せたときから、両国サポーターの応援合戦は
ヒートアップしていきます。チェコの国歌のときは、数で圧倒するドイツ側からかなりの
ブーイングが聞こえました。しかし、その中を流れる重厚なメロディーには心惹かれます。
この曲を聞くたびに、遠く1964年の東京オリンピック、いろいろな意味で逆境と戦って
金メダルに輝いた女子体操の名花、チャスラフスカの姿を思い出します。
ドイツの国歌はハイドンの「皇帝」第2楽章。国歌として作られた曲ではありませんが、
終盤に向かって気持ちが盛り上がっていく曲調になっていて、すばらしいと思います。
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試合が始まりました。ここで、困ったことが起こりました。隣で、田中アナの「実況」が
始まったのです。彼のクセです。おそらく、サッカーの映像を見ると自然に口が動いて
しまうのでしょう。そのうち、実況の合間にドイツの選手、一人一人に“注文”をつける
ようになりました。「そこじゃないだろう」「バラック、中へ入れよ」「もっとサイドから」…
彼なら十分、フェラーに代わってドイツの指揮をとることができると確信しました。ハハハ。

彼に比べれば、サッカーの知識ははるかに低い私にも、それなりの楽しみ方があります。
しかし…お分かりですよね?彼の実況と注文が耳に入ると、試合に集中できないのです!
彼を責めているのではありません。むしろ、「ああ、田中らしいな」と感心します。
「少しでもいい実況をしたい」と一生懸命です。しかし。しかし、前半45分で限界でした。
「後半は、メディア・センターで見るよ」と避難させてもらいました。ハハハ。

ドイツもグループ・リーグで敗退です。またひとつ強豪国がポルトガルを後にしました。

DAY 13

大変な日を迎えました。決勝Tの初日、いきなり地元ポルトガルとイングランドの対決です。
緒戦でギリシャに負けたときは、かなり落ち込んでいた市民たちも、第2戦でロシアを
下したあたりから元気を取り戻し、いまや、「優勝するしかないだろう」という勢いです。

今日もスタンドからの観戦になりました。スタジアムは昨日のアルバラーデからルスに
移りましたが、やはり席はバックスタンドで、西日を受けていました。周りを見渡すと、
セルジオ越後氏がいます。目ざといファンに見つかってサインや写真をねだられていました。
両国サポーターのテンションは試合開始のはるかに前から上がっています。どう見ても、
イングランド勢が地元サポーターを圧倒しています。数でも、体格でも。

一緒に観戦するのは、吉雄Pとポルトから早野さんに同行してきた土田Pで、田中アナは
いませんから安心です。ハハハ。

しかし、やはり困ったことが起きました。試合が始まると、前の席の客がことあるごとに
立ちあがるのです。スタンド観戦に慣れてる方には当たり前なのでしょうが、私たちには
めったにないことですから、立ち上がるタイミングが難しいのです。早すぎれば、後ろの
人に迷惑だし、遅れると肝心の場面を見落としてしまいます。中腰で、いつでも立てる
態勢をとっておかないといけません。結構 疲れますが、慣れると楽しいものですね。
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イングランドが相手のミスを生かしたオウエンの今大会初ゴールで先制しました。
すぐ前の席で、明らかに地元ファンと分かる方がポルトガルの動きのたびに大声を上げて
喜んだり、身をよじって悔しがったりしています。

後半30分、思いもかけない光景を目にしました。
ポルトガルが左からのCKを得て、フィーゴがショート・コーナーでボールをロナウドに
渡したときです。主審が笛を吹いてメンバー・チェンジのジェスチャーをしていました。
遠く、正面スタンド下に目をやると、第4審判の持つボードが見えました。そこには、
新しく入る選手として背番号23(ポスティガ)が、そして、ベンチに下がる選手として「7」が
あったのです!

こんな場面でフィーゴが代えられる! 信じがたい思いでした。
明らかに動揺しているフィーゴ。胸中はよくわかります。ゴールデン・ジェネレーションと
呼ばれ、長くポルトガルのサッカーを支えてきた彼やルイ・コスタにしてみれば、地元で
開催されるこの大会にかける思いは特別のものがあったに違いありません。もちろん、
スコラーリ監督には監督としての考えがあったことも理解できますが。
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私はずっとフィーゴを目で追いました。普通、“OUT”になる選手はセンター・ラインの
ところで入る選手と入れ替わる形をとりますが、フィーゴはCKの位置から、そのまま
ピッチの外を歩いていました。自分の考えを態度ではっきり表わしたのです。
背中に「なぜだ?」と書いてあるように見えました。選手入退場口までの長い道のりを
どんな思いで歩いたのでしょうか?

イングランド・ベンチの前を通ったときも、少し前方に視線を落として歩き続けました。
ピッチから控え室への入り口に差し掛かるあたりにはチーム・スタッフかトレーナーが
迎えに出るものですが、このときは誰も来ませんでした。「そっとしておいてやろう」という
気持ちだろうと思いました。とうとう、彼は、自分が蹴るつもりだったはずのCKには
目を向けることなくピッチを去ったのです。

分からないものです。それから8分後、フィーゴに代わってピッチに入ったポスティガが
シモンからのクロスにぴたりとあわせて同点ゴールを決めたのです。沸き返るスタンド。
残り、わずか7分、守りに守っていたイングランドでしたが、とうとう追いつかれました。

押せ押せムードの中、2度目の延長に入った5分、今大会 元気のなかったルイ・コスタが
切れのいいドリブルから鮮やかなシュートを決め、ポルトガルはこの試合初めてのリード。
しかし、喜びは5分しか続きませんでした。ベッカムの右コーナー・キックをテリーが
ヘッドで落とし、ランパードがけりこんで、イングランドが土壇場で追いついたのです。

前半の終盤から後半にかけて、盛り上がりに欠ける部分はあったものの、ドラマに満ちた
すばらしい試合は、PK戦のすえ、ポルトガルが勝って、ベスト4に一番乗りです。
思えば、88年大会で優勝したオランダも緒戦を落としています。これは、ひょっとすると
ひょっとするかもしれませんね。

スタッフと合流するためにスタンドを歩いていると、私だと気づいた日本の青年が二人、
戻ってきて「岩佐さんですよね? 放送がんばってください」と握手を求めてきました。
今、私は少し“臆病”になっています。「君たち、リーガオタ?僕のこと嫌いでしょう?」と
反射的に聞いてしまいました。ハハハ。
困惑した面持ちで「いいえ、そんなことはありません」と口ごもる彼らに「申し訳ない。
かなり嫌われてるもんだから」と言って差し出されたままの手を握りました。
若い人の中にも、こうして励ましてくれる方がいると分かってとても嬉しかったです。

今日の実況はまたしても柄沢アナ!まったく。ついてるよなあ。
明日の早朝帰国する北沢さんも今回担当の4試合すべていい試合でした。うらやましい!

DAY 14

いよいよ、私にとっては最終日です。カードはフランスーギリシャ。開幕前には予想も
しなかった顔合わせになりました。お相手は早野さんです。お昼は、ホテルの向かいの
丘にある日本レストランに行きました。
席に案内されたあと、柄沢アナの「ここは杉山(茂樹)さん、ご推薦なんですよ」という話を
聞いた直後、奥から出てきた日本人が「やあ、これは、これは」と声をかけてきました。
見ると、当の杉山さんです! 何度、食事の場所で出会ったか知れません。最近では、
驚きもしなくなりました。ハハハ。
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早野さんと組んでの最後の実況なので、期待はとても大きかったのですが、残念なことに、
試合は面白みに欠けるものでした。決勝トーナメントに入ってからイングランドに続いて
フランスまで姿を消してしまいました。終盤に入ったところで、隣の吉雄Pが「何とか
テンションを上げて欲しい」というジェスチャーを送ってきました。
「テンションを上げるって…この試合をどう盛り上げるの?」っていう感じでした。
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東京のスタジオから言ってきたようですが、現場でこの試合を見ている私にしてみれば、
これはむしろ盛り上げてはいけない試合です。早野さんも同意見でした。
安手の民放みたいに、明らかにつまらない試合をさも面白いかのように伝えたり、もう
勝負の行方はわかっているのに、「まだ分かりません」的なコメントを言ったりすることは
私にはできません。こんな指示を受けたのは、30年ぶりぐらいでしょうか。ハハハ。

今のテレビ業界にまだ、そういう制作者が残っていたとは驚きです。
かつては、スポンサー向けに、「ウソでもいいから、つまらなくてもつまらないと言うな。
視聴者をつなぎとめるために盛り上げろ」という考え方はありました。でも、今はそんな
時代ではないでしょう。

あとで聞いたところでは、「このまま終われば大波乱。フランスまで負けてしまうのか?」
というニュアンスでしゃべって欲しいとのことだったそうです。しかし、そんなことは、
私が言うまでもなく、世界中のテレビの前の人が感じていたことではありませんか。
何故、わざとらしい演出をしようとするのか理解に苦しみます。
おかげで、疲れが倍増しました。過去の亡霊に出会ったみたいで、放送中も、放送後も
激しく落ち込みました。***

スイスークロアチアの0-0に始まって、徐々にいい試合を担当できるようになっていたのに、
最後の最後に、こんな試合にぶち当たるとは! どうしてくれるんだ、フランス。ハハハ。

これで、私のユーロ2004は終わりました。

WOWOWに来てからは、トーナメントの途中で現地を離れることはありませんでしたから
何か変な気分です。しかし、これも、時の流れでしょう。
WOWOWのサッカーが來シーズン以降どうなるのか、まだ聞いていません。私の契約は
9月いっぱいまでです。私自身の今後は帰国後、たまっているテニスとサッカーのDVDを
見てゆっくり考えたいと思っています。

6週間の旅でした。最後がいい形にならなかったせいで、帰りのフライトは イタリアや
イングランド、フランスと同じように、長く、重苦しいものになりそうです。

では。

***当時はそう考えていました。
このあたり、のちに「岩佐は天皇だ」と陰で言われるようになった理由かもしれません。
ちなみに、この試合が私の最後のサッカー実況になりました。無念です。ハハハ。


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by toruiwa2010 | 2016-06-18 08:23 | 自薦・厳選300? | Comments(0)
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