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岩佐徹のOFF-MIKE

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たかが野球じゃないか 自薦・厳選300? 16/09/04

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It’s just a( 2008.06.20 初出 )


1978年から始まったフジテレビの「大リーグ中継」にはどっぷりと漬かりました。

特に、2年目の79年には、オール・スターをはさんで1ヶ月 日本に戻っただけで、

キャンプから合計すると、200日をアメリカで過ごしました。

どこかに本拠地を置くのではなく、旅から旅へと根無し草のような1年を送りました。

そのときはつらい思いをしましたが、後で振り返ると、誰もができるわけではない貴重な

経験をさせてもらったと思っています。


日本で週2回放送するために、現地では2週間に5本のペースでVTR収録をしたのですが、

その実態はこんな具合でした。

映像はその試合を中継するネットワークやローカル局が制作するものをそのまま借用し、

解説・実況の収録は、彼らやその下請けのプロダクションに世話になりました。

私たちは、解説者、アナウンサー、ディレクターの3人に、ニューヨーク・オフィスから

スポーツ担当がときどき参加して制作にあたりました。


まず、チームがどれだけ日本のファンに知られているかを考慮に入れて、収録カードを

決定します。球場に入るためのIDカードや、放送席、マイクなどの機材、オーディオ・

ミキサーといった放送に必要なものの手配は、契約している組織がやってくれるので、

私たちは球場に行って地元テレビのプロデューサーに会い、こちらの注文を伝えます。


収録するテープそのものについての技術的な注文もありますし、「テープは何時何分から

回してほしい。こちらのアナウンスがスタートするのは、国歌が終わったあとになる。

アメリカではノイズ(歓声や打球音など)を低く抑えるようだが、高くしてほしい」など、

音声に関するものに加えて、映像についての注文もあります。


NHKは、日本人選手を写すために独自のカメラを客席に入れていますが、当時の私たちは、

映像はアメリカ側がつくるものをほとんどそのまま使いました。

限られた条件の中でふたつの注文を出します。ひとつは、2回の裏が終わったところで

私たちの放送席を写すこと、もうひとつは、イニングが終わるたびに、必ずスコアボードを

写すことです。別に、難しくも面倒でもない話です。相手も、例外なく、“OK. Noproblem.

(いいよ、問題ない)”と言ってくれました。

しかし、実際は、すっかり忘れられたり、指定とは違う回に実行されたりと、残念ながら

no problem”で終わることは少なかったのです。ハハハ。

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ほかにも、細かな“約束違反”は数え切れないほどありました。

彼らにとっては余計な仕事なわけだから、絶対に約束を守るぞという気持ちにはなれない

のだろうと、途中からは「やってくれたらもうけもの」と、あきらめの境地でした。


ひどい時にはこんなこともありました。

伝統の、ヤンキース対レッドソックス戦。1回表、レッドソックスの主砲ジム・ライスが

大きな先制2ラン・ホーマー、その裏、今度はヤンキースが、4番レジー・ジャクソンの

タイムリーで1点を返す素晴らしいゲームになりました。

ところが、私たちが送ったテープを日本の担当者が試写してみたら、肝心の1回裏まで、

英語の実況しか入っていなかったと言うのです。そこが肝心だというのに!!

「なにが“No Problem”だ!」…彼らの言葉を借りて愚痴った回数は数え切れません。

ハハハ。

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しかし、ときには逆のケースもあります。


その日は土曜日でした。私たちはボストンのフェンウエイ・パークから、NBCの協力で

レッドソックス対ホワイトソックス戦を放送しました…いや、放送する予定でした。

球場入りして、いつも放送席が用意されている場所に行ってみると、どこにもそれらしい

ものがないのです。どこでどういう間違があったのか、とにかく現場のプロデューサーは

連絡を受けていないと言うのですから話になりません。


地元レッドソックスが首位のオリオールズを激しく追い上げ、主砲のヤストレムスキーは

史上15人目の3,000本安打にあと16本と迫っていて、球場はこれ以上ないというほど、

盛り上がっていました。

試合はライスの場外を含む4ホーマーやリン、レモンの超ファインプレーが出て、まさに

「日本向き」の展開です。解説の中上英雄さんと「惜しいなあ、もったいないなあ」と、

愚痴を言いながら試合を見ている一方、スタッフは大急ぎでホテルに戻って、予定して

いなかった翌日の試合をなんとか放送できないかと、ニューヨークにかけあっていました。


幸い、交渉の窓口になっていた大リーグ側の男が精力的に頑張ってくれて「今日の明日、

しかも土曜・日曜だからスタッフが集まるかどうか100%の自信はないが、何とかしようと

地元局が言っている」との朗報を伝えて来ました。

翌日、球場に着くと、準備はほとんど整っていました。しかも、ミキサー(音声担当)は、

芝浦工大で学んだという韓国出身のベイさんで、日本語も充分に通じます。

そのころはほとんど現場に出ていなかったベイさんを、わざわざスタッフの一員に加えて

くれたその気配りには感謝のほかはなく、試合そのものは低調でしたが、1シーズンを

通じて、一番、気持ちのいい仕事でした。


いまは、衛星回線が1年中確保されている中で、しかも、メールや携帯など、連絡手段も

完璧な環境の中ですから、私たちのような“スリル”を味わうこともないでしょう。

そんなスタッフたちが、逆に可哀想だと思うほどです。ハハハ。


こんな話を書いていると思い出されるのは、トラブルが起きたときに見せる周囲の反応が

日本とアメリカではかなり違ったことです。

回線がつながっていない、機械の故障で修理が間に合わないかもしれない…トラブルが

発生するたびに、私たちは、待っている視聴者、かかっている経費など、あらゆることを

頭に浮かべて、「エライことになった」とあせるのですが、彼らは違います。

トラブルの責任がが自分たちにないかぎり、“あわてふためく”ことはありません。

口にする言葉も大体いつも同じです。


It’s just a ballgame”…「たかが野球じゃないか」です。

そりゃ、確かにそうだけどォ、ですね。ハハハ。


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by toruiwa2010 | 2016-09-04 07:49 | 自薦・厳選300? | Comments(2)
Commented by ラジオ少年1978 at 2016-09-07 14:28 x
こんにちは、
岩佐さんとヨッさんが写ってる(驚)。
岩佐さんに吉田義男という人物は、
どのように映りましたか。
(こちらでは、在阪スポーツ紙が
つけたイメージで「ドケチなムッシュ」ですけど・・・)
Commented by toruiwa2010 at 2016-09-07 14:52
ラジオ少年1978サン、こんにちは。

吉田さんとは何度もMLBの実況をやりました。
あちらがどう思っているか知りませんが、
戦友みたいなものです。
ドケチなムッシュー…いいんじゃないですか?
アメリカ出張の途中で、プロデューサーと
経費の精算をしているところに通りかかった
ことがありますが、かなり細かく要求してました。
別に文句はないけど。ハハハ。
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