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岩佐徹のOFF-MIKE

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愚行録:85点?or 90点?~風変わりで面白かった~17/02/23

愚行録 85


バスがとまる。車内はほぼ満員だ。

腕時計を見る会社員風の男、誰かと会話をしながら笑う女、

手すりにつかまり、大きなあくびをする男。

後ろから3列目の窓側の席に田中武志(妻夫木聡)が座っていた

焦点の定まらない目で前方を見ている。何か考えているようで

何も考えていないという目だった。


突然 通路に立っていた初老の男から声が飛んだ。自分の隣りの

老女に席を譲れと言う。「なにをぼおっと座ってるんだ」と。

少し考えてから立ち上がった田中はそのまま通路を出口の方に

歩いて行った。足を引きずっている。障がい者だったのか!?


次の停留所で降り、相変わらず足を引きずって歩く田中の様子を

バスに残った初老の男が見ている。きまり悪そうな顔だ。

数歩歩いた田中はバスが発車したことを見届けると、いきなり、

普通の歩き方に変わった。顔の表情に変化はない…

田中の職業は週刊誌の記者です。この日は逮捕・留置されている

妹・光子(満島ひかり)と面会するため、警察に行くところでした。

容疑は幼児虐待・育児放棄です。複雑な家庭で育った兄と妹の

間には強いきずながあります。


物語を構成するもう一つの大きな柱は1年前に起きた事件です。

エリート・サラリーマンの夫、美人の妻、可愛い二人の子どもの

幸せな一家4人が惨殺されました。捜査は行き詰っています。

田中はこの事件を取材したいとデスクに申し入れていました。

「過去の話じゃないか」と関心を示さないデスクを説き伏せて

許可をもらい、改めて関係者への聞き込みを始めます。


取材を進める中で複雑な相関図が浮かび上がっていきます。

そのプロセスが丁寧に描かれていて、登場人物たちの関係性が

混乱することはありません。監督・脚本の腕は確かです。

ときに、「そのカットは必要ないんじゃない?」、「今のセリフ、

どういう意味があるんだろう?」と思える場面もありますが、

決してムダではありません。彼女あるいは彼のキャラクターを

想像させる材料になります。


人間の“本性”を抉り出す面白い映画でした。テーマはズシーンと

腹にこたえる重さがありますが、破たんのない優れた映画…だと

思います。感想点として85にしようか90にしようか迷いました。

微妙ですが、中間で90点寄り…というところでしょうか。


妻夫木と満島の演技は賞の候補に挙がってくると思います。

特に満島にはいつも感心します。

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石川慶監督の長編デビュー作ですが、ポーランドで映画製作を

学んだと聞いて、10代のころに見たアンジェイ・ワイダ監督の

「地下水道」や「灰とダイヤモンド」を思い出しました。

どちらも内容は暗いものでしたが、ハリウッド製の娯楽大作を

見慣れた目にはすごく新鮮に映りました。


2本ともモノクロでしたが、スクリーンに映る「愚行録」の

トーンが遠い記憶と重なります。


by toruiwa2010 | 2017-02-23 08:36 | 映画が好き | Comments(0)
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