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岩佐徹のOFF-MIKE

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「駅 STATION」、名作なり~“高倉健の世界”に酔う~ 17/10/20

年の瀬、粉雪の舞う増毛駅のホームに北海道警の刑事、

英次(高倉健)が降り立った。帰省する船に乗るためだった。

改札の外に赤いヤッケを着た女が人待ち顔で立っていた。

列車から降りたすべての客が行ってしまったあとも未練げに

ホームの方を見ている。桐子(倍賞千恵子)だ。


あいにくのシケで船が欠航になったその夜、町に出た英次が

通りがかりの居酒屋ののれんをくぐった。カウンターに

腰を下ろし、所在無げに客待ちをしていたのは桐子だった。

30日までやってるなんて珍しいんじゃないの。ほかの店は

ほとんど閉めてるよ」と静かに言って英次が席についた。

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静かな会話が続き、雰囲気がほどけ始めたころ 2本目の燗を

準備する桐子に英司が話しかける。

「昼間さあ 駅にいたでしょう?」

「どうして知ってるの?」

「見てた。いっぺん見れば忘れないよ」


そういえば、改札を出て港に向かう英次も振り返っていた。

若くはないが、目立つ女だった。


「お芋の煮っころがし、サービスしちゃおう!」。

左手の指を鳴らして桐子ははしゃいだ声で言った。


1230日のテレビは歌謡曲を放送していた。

会話が途切れたとき、八代亜紀の「恋唄」の前奏が始まった。

「この歌 好きなの、わたし」と桐子は妙に明るい声で言うと、

テレビのボリュームをあげ、歌手に合わせて口ずさむ。


♪肴はあぶったイカでいい…


去年の9月にドキュメンタリー映画「健さん」を見たあと

無性に高倉健の古い映画を見たくなりました。レビューの

最後に「近く、TSUTAYAに行って何本か手に入れようと

決めました」と書きました。

実際は手間を省いてアマゾンでまとめ買い。ハハハ。

「ブラックレイン」、「居酒屋兆治」を見てなかなかいいと

思いましたが、昔の映画だし、感想を書くほどじゃないと

“スルー”しました。この映画、「駅 STATION」はそういうわけに

いきません。黙っていられない…そんな感じです。ハハハ。

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公開された1981年当時、劇場で見た記憶がないのですが、

完全にノックアウトされました。翌年の日本アカデミー賞の

作品賞を獲ったのも当然という気がします。

冬の北海道を舞台に倉本聰の脚本が冴え渡っています。

倉本、若い頃はいいものを書いていたんだなあと感心します。

いや、ほんとに。ハハハ。


マンガを実写化したものや“非現実”の世界を描いた作品が

氾濫する今の映画界ではお目にかかれない“極上”の一本です。

なかでも、冒頭に書き出したシーンは見事でした。

最果ての港町で出会った男と女が交わすさりげない会話、

注文する客、応じる女将。二人の間に流れる空気が濃密で

短い時間の間に互いに惹かれていくのが理解できます。


高倉と倍賞の演技に唸らされました。きっと、この場面は

監督が二人に任せたのではないでしょうか。

手袋を外し、「シバレっちゃね」と英次が声をかけてから

3分を超える長回しのカットが胸に沁みました。


高倉健の映画にはおなじみの大滝秀治、小林稔侍のほか、

池部良、根津甚八、北林谷栄、名古屋章…と懐かしい

名優たちにも会えました。

このころの映画は大人の鑑賞に耐えましたね。

40歳を過ぎた人なら、男女を問わず気に入るはずです。


ちなみに この映画は1982年アカデミー賞で作品賞のほか、

脚本賞(倉本聰)、主演男優賞(高倉)、音楽賞(宇崎竜童)など

5冠に輝きました。

高倉は、渥美清、緒形拳、長島敏行、水谷豊を抑えました。


ほかに、監督・降旗康男と主演の倍賞、助演のいしだあゆみ、

烏丸せつこ、宇崎、撮影の木村大作は優秀賞を得ています。 


…高倉健に尽きる映画です。独特の“世界”を持った役者でした。

背中だけでその男を演じることができた役者でした。


by toruiwa2010 | 2017-10-20 07:57 | Comments(0)
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