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岩佐徹のOFF-MIKE

toruiwa.exblog.jp

実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

カテゴリ:岩佐徹的アナウンス論( 124 )

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…“局アナ謝る”がらみで、もうひとつ。

Yahooブログではエントリーを更新すると「こんな記事もあります」と同じような
テーマを扱った記事が紹介されます。数年前 当ブログをヤフーで運営していたころ、
私が更新するとこんな記事が“関連”として出てきたことがあります。

先日のTBSの情報バラエティ『サンデージャポン』内で飛び出した、
同局青木裕子アナの失言が波紋を広げている。
番組では、開始直後から司会の爆笑問題・田中裕二の離婚問題について
特集が組まれていたが、この特集に被さる形で中川昭一元財務相の遺体が
自室で発見されたというニュースの速報テロップが流れた。
この際、爆笑問題の2人や出演者のテリー伊藤らがこのニュースに気を
取られているのを見咎めた青木アナが「速報は注目しないでください」と
言い放ったのだ。
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…当時、青木アナはこの件でかなり叩かれていたと記憶しています。気の毒です。
たぶん、これは青木アナの“失言”ではなかったと思われるからです。
この番組は関東では生放送ですから、速報テロップに反応してもまったく問題は
ないのですが、別の時間帯にディレーで放送するネット局があるはずです。
生放送を収録するとき、速報テロップや時間表示など“時差”が発生するものは
外すのです。混乱を避けるためです。

遅れて放送するときは画面に出ていないテロップについて出演者が話をすると、
視聴者が混乱してしまいます。

たとえば、地震が起きると“今、関東地方に地震がありました”と速報テロップが
出ますが、それをそのまま5時間後に放送したら…と考えれば分かることです。
出演者たちが「いや、大きい地震なんだ」「東北は大丈夫なのかなあ」と話したら、
ますます収拾がつかなくなります。話が出なくても、出演者が画面をのぞきこめば
「何かが変だ」と視聴者が気にします。
それを避けるために出演者を制した彼女を責めるのは“酷”というものです。
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スタジオでも外からの中継でも、放送の現場では、いろいろな“約束事”があって、
予定になかったことが起きた場合の対応はなかなか大変です。
たぶん、サブ(副調整室)にいるディレクターからフロアのスタッフに「テロップは
無視するように出演者に知らせろ」との指示が出たと思いますが、文字にするのに
時間がかかってとても間に合いません。

ディレクターが青木アナに直接「話を戻せ」と指示した可能性の方が高いでしょう。
進行係としての彼女の耳には、イヤホンが入っているはずですから。
いずれにしても、テレビの常識で考えたら何らかの形で指示は出ていたのでしょう。

「注目しないでください」は、テロップの中身を考えるとまずかったと思いますが、
彼女にしてみれば“精一杯”だったのでしょう。
「(その時の話題)田中さんの話に戻りましょう」と言えばよかったですかね。
もっと正解を求めれば、「いま、速報テロップが出ていますが、このことはあとで
触れます」だったかもしれません。
ネット局の事情までは知らないにしても、爆笑問題の2人とテリー伊藤、デーブ・
スペクターなど、テレビに慣れている出演者たちは青木アナの言った意味がすぐに
理解できたと思います。「ああ、今はこの問題に触れないほうがいいんだな」と。

そして、多くの視聴者が困惑したことでしょう。
上記の記事を読んで2chをのぞいてみると、彼女は非難の嵐を浴びていました。
「冷たい」とか「アナ失格」は“的外れ”です。書き込む連中は放送の仕組みや
制約についての知識はないのですから仕方ないのですが、言いたい放題に
言われる局アナの身にもなってほしいものです。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-11-18 08:39 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(2)
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フジテレビに入社したのは昭和38年(1963年)でした。
研修を終えて実戦に入っても、“若造”にはやれることも少なく、自分の席で新聞を
読んだり、先輩の仕事を見学したりして過ごしていました。
「おっと、チョイマチだぞ」と先輩が声を上げるのとデスク(主任)の前に置かれた
“ガラ電”がけたたましく鳴り出すのがほぼ同時でした。

ガラ電は手回し式の黒電話のことで、アナウンスルームと主調整室を結んでいます。
ダイヤルする必要はなく、ハンドルを回せば相手の電話が鳴る緊急用回線です。
相手が受話器を取り上げるとハンドルが重くなりました。懐かしいなあ。
チョイマチとは「ちょっと待って」の略です。
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ストップ・ウォッチを手に大急ぎで部屋を出ていく先輩を見送った目でテレビを
見ると、画面には“しばらく、そのままでお待ちください”の文字が出ています。
何かしら不具合が生じて、映像か音声が中断していることを告げているのです。
今はほとんど見なくなりましたが、かつては、しばしば発生していました。

先輩がいないときには、新人でも飛んでいって“お詫びアナウンス”をしなければ
いけませんから、入社から半年ぐらいは、このガラ電が鳴るのが“恐怖”でした。ハハハ。

今はどうなっているか分かりませんが、私が現役だったころ、グランド・スラムの
どの会場でも、放送席のすみには大きなカードケースに入った“詫びアナ”用の
原稿が置かれていました。放送中に起こるかもしれないさまざまな不具合(事故)に
対応するコメントが何十種類も用意されていました。
フジテレビや日本テレビなど、普通の地上局でも、視聴者からはありとあらゆる
種類の電話がかかってきます。「アナウンサーがこう言ったが、おかしいではないか」、
「キャスターの発言がけしからん」、「字幕の字が違う」というクレームに始まって、
「さっきのドラマで女優が着ていたTシャツはどこで買えるか」、「あのドラマの
○回目に登場したカフェは東京のどこにあるのか」…
「お前が調べろよ」と言ってやりたくなるものまで。ハハハ。

有料放送のWOWOWは、放送開始前から神経を使っていました。
「金を払っているから、言いたいことを言わせてもらうぜ」という加入者からの
電話の数は地上波との比ではありません。
ちょっとでも映像が乱れたり音声が途切れたりすると、何はさておき、お詫びの
テロップを出し、アナウンスでもお詫びをするのです。「とにかく(とりあえず)、
謝っておこう」。ハハハ。
実際はどうなのか分かりませんが、謝罪の言葉の有無で、たぶん、クレーマーの
気持ちに差が出るのだと思います。放送局にとっては、一種の“保険”といって
いいでしょう。

現役時代はもちろん、一視聴者の立場になった今でも、私は、ほんのちょっとした
ことでいちいちテロップは出す必要はない、まして、画面にテロップを出したら、
アナウンスは要らないと思っていますが、視聴率や加入者数をアップさせることを
目指している編成や営業の関係者はどうしても神経質にならざるを得ません。

かなり前ですが、このブログに「WOWOWは謝るのにスカパーは謝らない」旨の
書き込みがありました。
事故のたびに謝っているとキリがないから謝らないのか、クレームが来た段階で
カスタマー・センターの担当者が謝ればいいと考えているのか、いちいち謝る方が
おかしいと開き直っているのか。
正解は分かりませんが、書き込みどおりだとすると、ずいぶん大胆な戦力だなあと
思ったものです。ハハハ。


私流の考え方ですが、放送には数種類の「保険」があります。
「左サイドから○○がするするっと上がっていきます」など、画面に映っていない
プレーやベンチの動きを描写しておくこともそのひとつでしょうし、「いま、少し、
痛みをこらえるような表情を見せました」、「右足を気にしています」とわずかな
ことでも“情報”として伝えておくことも一種の“保険”です。
(“保険”という考え方~岩佐徹的アナウンス論 23~ http://t.co/dEvtt6HA )

もうひとつが今回のテーマでもある“お詫び”です。
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1974年12月11日…35年たった今も忘れられない出来事がありました。

その1ヶ月前、家族を乗せた車が大分県・別府湾に“転落”し、運転していた男は
自力で脱出したものの、妻子3人が死亡しました。
妻子にかなり高額の保険がかけられていたことが判明し、助かった男に疑いの目が
向けられました。
この日は、潔白だと主張するその男、荒木虎美を「3時のあなた」のスタジオに
招いていました。

番組のすべてを 彼の言い分を聞き、疑問に答えてもらうことにあてる予定でした。
司会は寺島(富司)純子さんで私がアシスタント、ほかに推理作家の戸川昌子さんと
大谷羊太郎さんがいて、疑問をぶつけることになっていました。

荒木が言いたいことを言えたのははじめの10分ぐらいで、あとは主に戸川さんが
繰り出す鋭い質問に答えなければいけない立場に変わりました。初めはとぼけたり、
シラを切ったりしていました。しかし、やがて答えに詰まるようになると苛立ちを
見せ始め、最後には「私の言い分を聞くと言うから出てきたんじゃないか。こんな
質問に答えていられるか」と、席を立ってしまいました。

スタジオの出口で追いついた寺島さんと私で何とか席に戻るように説得しましたが、
聞こうとしません。彼の主張は、「約束が違う」でした。
押し問答が続くうちにスタッフの一人が近づいてきて「Mさんが、謝っておけと
言ってます」と耳元でささやきました。番組全体を仕切るプロデユーサーです。

よくあることですが、あとで番組が犯人扱いしたとクレームをつけられないように、
それこそ“保険”の意味で謝罪しておけということなんです。
「やれやれ、ずるいんだからなあ」と思いましたが、出演者で誰がその役をするかと
言えば、局アナの私しかいません。
しぶしぶ「大変、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と頭を下げました。

荒木はこの日の夕方、フジテレビの敷地内で待ち構えていた警察に逮捕されました。
細かないきさつは覚えていませんが、ディレクターから事前に連絡を受けていた
警察が手はずを整えていたのです。
荒木は裁判でも、持ち前の粘りを発揮しましたが、刑務所内で病死しました。

番組の中で謝るのは、万一あとで問題になったとき「謝罪したじゃないですか」と
言えるようにしておく…そう、“保険”をかけておくという考え方に基づいていると
思って間違いありません。
ついでですが、謝らされるのは例外なく“局アナ”です。その番組の看板である
タレントや元局アナは“知らん顔”です。

…報道ステーションで古舘キャスターが謝っているのを見たような気がします。
ただし、それは、字幕の間違いのような単純ミスで彼の名前に傷がつくものでは
なかったようです。彼自身の判断で謝ったのでしょう。
局や番組が謝罪を決めたときは局アナにその役目を押し付けるのが普通です。

視聴料が生命線のNHKは事故や間違いにどこよりも神経質です。
だから、画面に映ったセレブの名前などをむやみに言わないのです。…と思います。
名前の知られた男性アナが痴漢容疑で逮捕された件では局内がひっくり返るような
騒ぎになっているに違いありません。ハハハ。

なお、現役のころの私は60歳ぐらいから、口では「申し訳ありませんでした」と
言っても、決して頭を下げませんでした。髪が薄くなってきたからです。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-11-17 07:56 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(2)
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“才人・久米宏”と思い込んでいましたが、Nステに精気を抜かれてしまったのか、
復活したあとのテレビ番組は長続きしないものばかりでした。
特に、三つ目の「クメピポ」はあっという間に終了しました。
Nステ降板後、彼が“メイン”としてかかわった番組を見てみると…

「A」2005.4.17~6.26 (NTV系)
「久米宏のテレビってヤツは!?」2008.10.22~2009.3.11 (TBS系)
「クメピポ」2009.4.15~7.29 (TBS系)


「A」がワン・クール(3ヶ月)、ほぼ同一と考えてもいいと思われるあとの2番組は
合わせても1年間、もたなかったことになります。

「A」は2回ぐらい見て 本気で“復活”を目論んでいるのだろうかと疑いました。
強いストレスがたまるに違いないNステを20年近くやり遂げたあと、じっくりと
充電してテレビに戻ってきたとき、どんな才能を見せてくれるのかと 大きな期待を
持っていたのですが、見事に裏切られました。
情報系の番組なのに数週間前の収録というスケジュールにまず納得できなかったし、
彼自身の発言が少ない作り方にも違和感がありました。

番組内で「自分が目立たないようにしたい」と語っていましたが、ご冗談でしょう。
視聴者は 黙って人の話をニコニコ聞いている彼を見たかったわけじゃありません。
ハハハ。
久米ならではの“当意即妙”さに欠け、番組のリズムはどこにもありませんでした。
早々に打ち切られてしまったのも仕方がありません。

2番目の「久米宏のテレビってヤツは!?」が始まったとき、こう書いています。

久米宏の新番組が始まった 視聴率は出ないと思うぞ
最初のテーマが“三浦元社長は自殺か他殺か”ではね
出演者が多すぎてまとまりを欠き、さすがの久米も
“仕切り”に苦労していた
久米がいれば八木亜希子は不要だろうに

あるサイトによれば1回目視聴率は5.5%  1日前に
スタートした劇団ひとりの「学べる!!ニュースショー!
スタート2時間スペシャル」は11.9%

どうする?


…視聴率は上がらないまま。5ヶ月弱で終了となりました。
大体、久米宏ほど“達者な”聞き手がいるのに、なぜ八木亜希子がいるわけ?と
思いました。キャスティングが理屈に合っていません。
久米、事務所、制作者…誰の意向か分かりませんが、首を傾げたくなる愚策です。
番組名が「クメピポ」に変わっても、作り方はほぼ同じでした。
むしろ、八木に加えて、千原ジュニアとベッキーまで司会グループに入れるなど、
“迷走”する始末です。
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「クメピポ」・最終回のゲストはビートたけしでした。
筑紫哲也の「NEWS 23」の1回目のゲストもたけしだったそうです。
どうも、文化人意識の強いタレントには“たけし崇拝者”が多いようです。
たけしを評価することが自分の“文化度”を表すとでも思っているようで笑えます。
そしてまた、視聴率も10%をたたき出してしまうからなあ。
「相手のワナにはまるのは口惜しい」と思いつつ、私も見てしまったし。ハハハ。

話がそれました。「クメピポ」終了です。
このとき考えたのは「果たして、久米宏は“終わって”しまったのか?」です。
最終回の前、7回分の平均視聴率が5.9%ですから、しょうがないでしょう。
数々の修羅場を踏んだ、彼ほどの“腕”が、そう簡単に落ちるとは思えません。
回転が速い優秀な頭脳の持ち主のはずなのに「A」で復活したとき以後も 基本的に
Nステ時代と変わらないアプローチをしているのが間違いだったと思うのです。
ニコニコ笑っていたり、“脇役”を従えたりしているのは“形”にすぎません。
独特の角度からの“聞き役”、“引き出し役”に徹して1対1でゲストと向き合えば、
彼に勝るタレントはいないと思うのです。
そうなると、出演することをためらう人が増えるでしょうが。ジレンマ。ハハハ。

思い出すのは“天才”横山やすしと組んだ80年代前半の「TVスクランブル」です。
久米がTBSをやめたあと、Nステーションが始まる半年前まで放送されたもので、
彼を知り尽くしたオフィス・トゥー・ワン制作の人気番組でした。
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いくつかの話題がカセットにまとめられていて、中から適当に選んだ(少なくとも
見た目では・・・)ものを見せたあと、やすしが好き勝手なことをしゃべっていました。
その、どこに向かうか分からない自由奔放なやすしを久米が鮮やかな手綱裁きで
導いていくという趣向の番組でした。
生放送で、過激な発言も多いやすしが出ているわけですから、スリルを感じながら
見た方もきっと多かったと思います。久米が出演した中で 彼のよさ、才能が最高に
生かされた番組といっても過言ではないでしょう。

テレビ史に大きな足跡を残した彼がこんな形で消えるはずはないと思いましたが、
いまだに、かつての輝きは戻っていません。久米宏ほどの男でも“時代の波”に
飲み込まれることがあるんだ、“絶対”はあり得ないんだと改めて思います。
by toruiwa2010 | 2012-11-11 08:17 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(4)
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かつて、大阪・朝日放送に植草貞夫という有名なスポーツ・アナがいました。
“甲子園と同義語”と言ってもいいぐらい、高校野球の実況で鳴らした人です。
関西では、知らない人がいないほど絶対的な人気を誇るアナでした。

ファンの方には申し訳ないのですが、私はこの人の実況が生理的に苦手でした。
実を言うと、“苦手”というほど、なにかの実況を聞き続けたことがありません。
たびたび書いている通り、キャスターやアナウンサーの好き・嫌いは最終的には
“好み”に左右されるものですから、どうか気を悪くしないで下さい。ハハハ。

東京出身のようですが、“口跡”(ものの言い方:筆跡のようなもの)がべたつくのが
どうしても受け付けなかったのです。
CSで活躍中の 一部サッカー・ファンにとても人気があるKアナについても同じ
感想を持っています。
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阪神戦などで、大阪発のスポーツ中継を見ることがありますが、関西では受ける、
派手で、目立ちたがる実況スタイルを受け付けない関東の人間は多いでしょう。
風土の違いが大きいですかね。若いころ、大阪・千里山に5年間住んだ経験があり、
大阪弁への抵抗はまったくない私でさえ“関西風”に味付けされたスポーツ実況は
好きになれないのですから。

私が知る限り、東京のテレビ業界で名前が挙がる関西のスポーツ・アナと言えば、
競馬中継の“杉本先輩”を除くと、関西テレビの馬場鉄志アナぐらいでした。
馬場アナは スタイルが“関東風”でオーソドックスな実況をします。
私が短い期間でしたがF1のプロデューサーをしていたとき、フジの実況アナに
不満があったディレクターに「彼を引っ張ってきてくれ」と言われ、フジテレビ・
アナウンス部の強い抵抗を覚悟の上で大阪まで行って口説きました。

大阪の局のアナであっても、もともとは東京の出身…という人は多いようですが、
関西で仕事をする限りは、どうしても、そこで受け入れられやすいしゃべり方に
なってしまうのは仕方がないことだと思います。
でも、そのしゃべり方に関東の人間はなじめない。“不幸”な話ですね。ハハハ。
日本テレビで活躍した辛坊次郎キャスターのような例はありますが、スポーツに
限らず、関西で人気を得たあと 東京で一定の地位を築いたアナウンサーを探すのは
難しいです。理由はスポーツの場合とほとんど同じでしょう。
桑原征平や梅田淳(元関西テレビ)、羽川英樹(元読売テレビ)も、東京では思うような
成功を収めることはできませんでした。
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赤江玉緒も、朝のワイドショーについては“微妙”だなあと思って見ていました。
相手が羽鳥慎一に変わってからはほとんど見ていないのでなんとも言えませんが、
鳥越俊太郎がいるときは進行役をつとめているだけでしたから。
ただし、「キラキラ」のあとを引き継いだTBSラジオ「たまむすび」はいいですね。
前任者の小島慶子ほど刺激的なことは言いませんが、それが持ち味でしょうから
無理をすることはありません。今の“空気”を保っていけば、そのうちリスナーの
支持を得られるようになると思います。“裏”の「大竹まことゴールデンラジオ」が
いろいろな意味で少し行きすぎるようになっているので、追いつくチャンスは十分
あるのではないでしょうか。

不思議なことに、“芸人”は問題なく受け入れられています。
かつて 薬師寺管長の高田好胤さん、政治学者の高坂正堯さん、作家・今東光さん…
テレビによく顔を出しては柔らかな関西弁で分かりやすく話す人たちがいました。
若いころ、彼らの話に「なんと巧みな喋り方をするんだろう」と聞き惚れました。
そのあと、仁鶴、三枝、ミヤコ蝶々、西川きよし、さんま、紳助、鶴瓶…
関東に進出して大きな成功を収めたタレントは数え切れません。テレビの世界では、
今や、関西勢が関東勢を圧倒しています。
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なぜ、アナウンサーはうまくいかないのか?
ずいぶん前ですが、「ミヤネ屋」で島田紳助に話を聞いた読売テレビの女性アナが
逆に突っ込まれていました。「キー局に落ちて読売テレビにきたんやろ?」
…本人のリアクションは明らかに“図星”でした。ハハハ。

“素材”として光る人材は男も女も東京のキー局が根こそぎ採用してしまうのです。
どこにも入れなかった学生は、次に、関西、その次に東海地区を目指します。
そこでもダメ、しかし、どうしてもアナウンサーになりたいと思う学生は、さらに
九州、北海道と、ターゲットを広げて受験するのがいまの状況です。
「旅費だけでも大変です」とこぼしながら。ハハハ。

つまり、多少の“めがね違い”はあっても、まず“素材”の段階で東京とその他の
地域で差がついてしまうことは否定できません。
“競争”や“注目度”といった環境にも大きな差がありますから、入社したあとの
成長度も違ってくるのでしょう。

くわしく調べたわけではないので間違っているかもしれませんが、馬場アナなど
ごく少数を除くと、関西で成功したアナの多くは地元の大学を出た人。あるいは
東京の大学を出た関西出身者ではないかと思います。東京で生まれ育った人間が
関西で受け入れられるのは相当にむつかしいことだと思います。体にしみこんだ
メンタリティが大きく違うからです。いい意味でも悪い意味でも。

…ここまで読んだだけで、相当気分を悪くした方がいるはずです。地域差別だと。
いや、差別ではなく、“差”がつくと言っているのです。ハハハ。

そんな目でテレビを見ていた私が、あるとき、目を留めたのが宮根誠司です。

初めて日本テレビにネットされている大阪発の情報番組「ミヤネ屋」を見たときは、
「わー、またかよ」と思いました。これまでと同じ“べたつき”を感じたからです。
しかし、なんとなく見続けているうち、「なかなか面白いなあ」と思うようになって
いきました。くせになる…と言えばいいのでしょうか。
“イケメン”ではありません。けっこう“くどい”顔ですが、人懐っこいところが
いいのでしょうね。

特に話術が優れているとも思いませんが、関西風のしゃべり・味付けでありながら、
それほどでしゃばらず、適当にシャイなのも受けるのだと思います。なによりも、
“大阪発”でがんばっているところがいいと思ったのです。
ただし、関東で本格的に認識されるためには、どこかの時点で“軸足”を東京に
移さないといけないのではないかと見ていたら、2年半前に本格的な東京進出を
果たしました。
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知名度も上がり、仕事も少しずつ増えているようですが、これを“成功”と呼ぶか
どうかは人によって判断が違ってくるでしょうね。
本人がどう思っていたかは分かりませんが、周囲は“かなりいける”と踏んでの
進出だったに違いありません。その思惑は少々はずれたのではないでしょうか?
首をかしげるのは、満を持して進出したはずの東京でのスタートにあたってなぜ
「Mrサンデー」のような番組を選んだのかという点です。

「ミヤネ屋」の流れを生かしたかったのかもしれませんが、宮根らしさをどこにも
感じません。“ネタ次第”が宿命の番組ですが、視聴率は10%を上下しています。
これなら、伊藤アナが仕切っていた前番組と少しも変わりません。

伊藤を外して宮根を持ってきたけど、“失敗”だった。
伊藤は“朝の顔”でずっとやっていける人材なのに、中途半端な昼番組に移して
そのあとに三宅を起用した。こちらは、まだ“結果”が出ていないが、伊藤アナは
いやでも番組不振の“責任”を背負うことになる…

フジの編成の責任は大きいと思います。
by toruiwa2010 | 2012-11-10 08:58 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(6)
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3年前に書いた記事が目に止まってしまいました。
「昨日の続きにちょうどいいかな」と思うので、削除・修正・加筆作業をした上で
更新することにしました。


あるとき、フジテレビ「スーパータイム」の安藤優子が夏休みを取っていたために、
メインを長野翼アナがつとめていました。そこまではいいでしょう。
一見落ち着いているようで、アドリブになると“幼さ”が丸見えになってしまう
ところは“まだまだ”だと思いますが、入社7年目、サブ・キャスターですから
見た目にはそれほど大きな違和感はありません。
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しかし、長野に代わって、サブ・キャスターのいすに座ったのが当時入社2年目の
椿原慶子アナだったのを見てびっくりしました。その週の後半は、須田哲夫アナも
入社5年目の田淵裕章アナに替わっていました。
木村太郎が、歩き始めたばかりの初孫を見守るおじいちゃんのように見えました。
ハハハ。

「若くてはダメだ」、などと言うつもりは毛頭ありません。
ただ、民放テレビに“まっとうな”ニュース番組を求めても無理だとは承知しつつ、
「いつから、こんなに“軽く”なったんだ?」という“苛立ち”は抑えられません。
いくら、経験豊かな木村・須田両キャスターが補佐するとは言っても、「スーパー
ニュース」そのものの“信頼感”が薄れてしまうのではないでしょうか。
はい、「クリントン元大統領 訪朝」より「押尾学 麻薬で逮捕」を重要ニュースと
位置づける「スーパーニュース」だから、もともと、信頼感なんて、そんなには
ないのだけど。ハハハ。
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丁度そのころ放送中だったTBS「The News」の小林麻耶キャスターについても、
“幼さ”が目についてしまいました。
「可愛い子を座らせておけば数字につながるのではないか」と考えてスタートし、
その視聴率が低迷すると新キャスターを投入して“てこ入れ”を図りました。
これがまた、目つきの鋭い“イケメン”デスクと来ました。ハハハ。
報道部幹部たちの どこまでも“浅はかな”考え方には笑ってしまいます。
彼らの“プロ意識”はどこにいってしまったのか?
私なら、長くフィールド・レポーターをつとめている岩井健浩アナをスタジオに
置くけどなあ、と嘆いたものです。

NTVでニュース番組に出ていた丸岡いずみアナにも同じことが言えます。
読みはかなり下手です。一番の特徴は文章の終わり、「…ました」に出ていました。
“だらしない”、“しまらない”のです。
研修の過程で、先輩アナたちから相当しごかれたに違いありません。
本人も悩んだことがあるはずですが、おそらく、「その読み方が可愛い」という
ファンが大勢いたのでしょう。そして、ここでもまた“継続は力なり”…。ハハハ。

日テレ報道部の現場はどう考えていたのか?
「これでよし」としているわけではないでしょう。日テレに限らず、どの局でも、
現場の記者たちの間には、間違いなく“忸怩たる”思いがあったはずです。
なければおかしいです。
…もっともね。今も、陣内貴美子が夕方のニュースの女性メインを務めています。
日テレ・アナウンス部に女性の報道志望はいなくなったのかしら?ハハハ。
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しかし、「小林なら視聴率が取れるはず」、「丸岡は可愛いから、いいんじゃないの」、
「滝クリに“斜め座り”させとけばいいよ」と、上層部の誰かが考えたら、現場は
従わないわけにはいかないのです。そして、失敗すれば、“浅はかな”考えで番組の
スタートを決めた幹部は自分の失敗を棚に上げて、視聴率アップを部下に命じる…
そんな“図式”が目に浮かびます。
本人たちには、一切、責任がないのに。かわいそう。ハハハ。

アメリカ“かぶれ”の私には、やはり、ウォルター・クロンカイトを初めとする、
あちらのキャスターたちのほうが肌に合います。若い女性でもしっかりしています。
いきなり、4大ネットワークのキャスターになるのではなく、地方の小さな局から
キャリアを積み上げてきているからでしょう。
どんなに厳しいとは言っても、入社試験で学生同士の競争に勝っただけの日本の
“キャスター”とはベースになるものが違うのです。

女性アナを“お飾り”や“おまけ”と考えているとしか思えない起用はいい加減で
修正しないと…。
何を言ってもムダと分かっていても、テレビのことになると、ついつい。ハハハ。


はげどー!!

話は変わりますが、“放送カテゴリー”つながりで強引に。ハハハ。

その頃の週刊文春に「スポーツキャスター、解説者 こいつが出るとTVを
消したくなる」という特集記事があり、そのランキングが出ていました。
“2000人大アンケート”となっていますが、どこでどんな風に聞いたのか分からず、
どこまで信用できるか分かりませんが、居ましたね、居ましたよ。“断然1位”を
筆頭に、“騒々しい”、“ウザイ”、“暑苦しい”面々が。ハハハ。
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人の好みがさまざまであることがよーく分かりました。
それほど、とも思わない人の名前が上位にある一方、「もし、解説が彼(彼女)なら、
チャンネルを変える、音声を絞る」人の名前がなかったりしました。
たとえば、武田、本西、伊東…“陰気”で“ネガティブ”な話が多くて、せっかく
楽しみだった好カードも“サイレント”のメジャー中継を見ることになります。
名前が挙がらなかったのは、“知名度”の問題でしょうか。
明るいのも度が過ぎればダメだし、スポーツ放送なのに暗くては話になりません。
難しいものですね。
by toruiwa2010 | 2012-11-04 08:56 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(10)
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1950年代に大活躍し、映画「グッドナイト&グッドラック」で描かれたエドワード・
モローはもちろん、そのあとに登場し アメリカの世論形成に大きな影響を与えたと
言われるウォルター・クロンカイトも“晩年”しか知りません。
しかし、この人たちが“キャスター”の草分けであることは間違いないでしょう。
ラジオは“声”だけですからそれほどではなかったと思いますが、テレビ時代の
到来で、ニュースを伝え、コメントするキャスターの“顔”が見えるようになると、
その影響力は飛躍的に増大して行ったのは当然のことだったでしょう
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日本では、1960年代にTBS「ニュースコープ」が共同通信記者だった田英夫を
起用したのが始まりだとされているようです。
その後現在に至るまでにたくさんのニュース・キャスターが私たちの前に現れては
消えて行きました。
キャスターの好きか嫌いは完全に個人の好みにかかってきます。
以下はあくまで私の趣味によるものですから、気に入らない点もあるでしょうが、
あしからず…というか、知ったことではありません。ハハハ。

前にも書きましたが、プロになってからの番組として、強く印象に残っているのは
NHKの「ニュースセンター9時」(NC9)でした。記者出身の磯村尚徳キャスターは
英語、フランス語が堪能で、少し太めの体型を巧みにカバーするファッションが
満点の人でした。NHKの番組ですから視聴者を誘導するようなコメントは決して
口にしませんが、ちょっとしたフレーズが粋でおしゃれ…毎晩9時はほかの番組を
さしおいて、NC9にチャンネルを合わせたものです。
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あとに続いた木村太郎(現・スーパーニュース)、類似番組で外信部門を担当した
平野次郎両キャスターもそれぞれ優秀な人たちでした。二人も記者出身ですが、
しゃべりがとても魅力的、かつ達者で視聴者を惹きつけました。こういう部門では
NHKもいい仕事をします。“辛口”の私がこんなにほめるのは珍しいことです。
ハハハ。

木村太郎キャスターは、その後フジテレビに移りました。ほぼ同世代で 初めは少し
傲慢な感じがあって、印象は“嫌なやつ”でしたが、数年後、“引き立て役”に回り、
安藤優子の横でコメンテーターをつとめている彼は丸くなって、いい感じです。
特に、安藤が得意げにコメントしたあとを受けて、そのことにはまったく触れず、
別の話を始める場面は夕方の楽しみです。ハハハ。

若いころ見ていたNHK夜7時のニュースには、今福祝、大塚利兵衛、西沢祥平と
ベテラン・アナウンサーが登場していました。見る側は好き・嫌いを言えません。
当時も今も、その時間にニュースと言えばNHKしかなかったのですから。
読みの間違いが少ないことと、一人が長く続けましたから、時間の経過とともに
視聴者は次第に慣れ親しんで行きました。NHK的な“継続は力なり“です。
現在、ニュースの看板アナになっている武田アナは声のトーンがいいのと、ミスが
少ない点で見る側のストレスはありませんね。ただし、「うまいか?」と聞かれれば、
「さあ」としか答えようがありません。
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その点、やはり記者出身の大越健介が「ニュースウォッチ9」できちんと仕事を
果たしていることに感心します。あくまでNHKの枠の中ですが、自分の意見を
織り交ぜながら伝える手腕は、見た目が与える信頼感とともに評価できます。
つまり、武田アナと大越キャスターではやっていることがまるで違うのです。

女性アナがもてはやされた時代には、桜井洋子、森田美由紀、黒田あゆみといった
アナウンサーがニュースを仕切りました。脇から見ていて、「男性アナはさぞかし
悔しい思いをしているだろうな」と同情しましたが。ハハハ。
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この女性アナたちの中では黒田アナが一番いいと思っていました。内容がきちんと、
素直に伝わる読みをしていて、それが最も大事なことだと思うからです。
一般的に最も評判が良かったのは森田アナでしょう。
しかし、私は、読みもうまいと思いませんし、苦しそうな“ブレス”(息つぎ)が
とても苦手でした。聞いていて疲れてしまうのです。ハハハ。
彼女にとっては大先輩の加賀美アナの影響を受けたのでしょう。彼女たちのことを
覚えている人はもう少ないでしょうが、若い女性アナウンサーたちには くれぐれも、
「あれがいいのだ」と真似をしてほしくありません。

民放出身なのに、キャスターのことになると民放に関してはあまり知りません。
俵孝太郎、桜井よしこ、筑紫哲也、久米宏、安藤優子、三雲孝江、古館伊知郎、
小宮悦子、笛吹雅子、村尾信尚、膳場貴子、堀尾正明・・・そんなところでしょうか。
個性が強い人もいますから、好き・嫌いがはっきり分かれるのではないかと思います。

私自身がアナウンサーでしたから、久米宏にはずいぶん注目しました。
しかし、最近も書いたとおり、きわどいタイミングで瞬間的には答えにくい質問を
ぶつけておいて、相手が詰まったところでCMに入るなど、テレビを知り尽くして
いるからこそのやり方が、見ていて“あざとい”、“ずるい”と思えて、最後まで
好きにはなれませんでした。
古舘キャスターで「報道ステーション」が始まったときも注目しました。
資質うんぬん以前に生理的に受け付けない部分があって評価できません。ハハハ。

一時、夕方のテレビをザッピングすると、女性キャスターのオンパレードでした。
“キャスター”暦で言えば、小宮-三雲-安藤-笛吹の順でしょうか。

小宮:一番、キャスターらしくないキャスター なぜ使い続けるか不思議
三雲:さばき方はうまいと思うが、全体としては可もなく不可もなし
安藤:以前にくらべ、だいぶよくなったが、時々けたたましくなることに辟易
笛吹:見る機会は少ないが、予想以上に安定していてびっくり

当時の私の評価はざっと、こんな感じでした。

比較的新しい人、たとえば、村尾や膳場はほとんど見たことがないので割愛します。
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数年前に堀尾正明がTBS夕方のニュースのメイン・キャスターになりました。

ダメだと思うがなあ。能力の問題ではなく、“空気”が
合うか合わないかということ。
堀尾かあ、どうなんだろうなあ…という感じだ。
みのもんたや古舘伊知郎がやれているのだから、
とは思う。それがテレビの怖いところでもあるのだが。


当時、そう書いています。ごめん。ハハハ。

この人には注目していた時期があります。
フジテレビのプロデューサーに「岩佐、今、NHKから引き抜くとしたら誰?」と
聞かれたときすぐ頭に浮かんだのは彼の名前だったのです。
1998年ワールド・カップに向けた番組のひとつを担当して、専門ではないのに、
よく勉強し、話の回し方もうまかったのが印象に残っていました。

しかし、この時点での彼に魅力があるかといえば、首を傾げてしまったのです。
人の顔つきをとやかく言えないのは承知の上ですが、“断髪式のあと、床屋さんに
行ったばかりのお相撲さん“みたいな風貌を見るとどうしても“ニュース”という
雰囲気にはならないのではないか、と思いました。

人懐っこい話し方ですが、目は笑っていない…そんな気がしませんか?

…はいはい、異論はあるでしょうが、私が好きなことを書いているだけなので、
読み流してください。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-11-03 09:05 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(10)
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WOWOWに移ってからの私の実況の基本は“さりげなく”でした。
飾らず、作らず、絶叫せず、邪魔をせず…です。
ですから、第一声も放送の終わり方も出来るだけ“自然体で”を心がけていました。
ただし、一時期だけ、放送終了のコメントにこだわったことがあります。


現役を引退したあと、2006年全米オープン・テニスの男子決勝を最後まで見て 個人的に
「うわっ、懐かしい!」と思ったことがあります。
実況アナが司会席のダバディーさんにマイクを渡す前のコメントはこうでした。

今大会のWOWOWの放送は、解説 柳恵誌郎さん、遠藤愛さん、丸山薫さん、
土橋登志久さん。実況アナウンサー 久保田光彦、鍋島昭茂、河路直樹、
そして私 島村俊治でお伝えしてまいりました。
また、プロデューサー、ディレクター、テクニカル・ディレクター、エンジニア、
エディター、タイムキーパー、コーディネーター、通訳…それぞれのスタッフ一同が
チームワークで皆様に映像と音声をお伝えしてまいりました。

男子決勝の解説 柳恵誌郎さん 数々の思い出に残る大会だったと思います。
実況担当 島村俊治 渾身の力でお伝えしたつもりです。
それでは・・・


「懐かしい」と思ったのは90年代半ばごろに 私も同じようなクロージング・アナウンスを
したことがあるからです。
ヒントは、アメリカのスポーツ放送でした。
あちらのスポーツ中継は試合が終わると“そそくさ”とまとめの話をしてできるだけ早く
放送を終えようとします。視聴者が席を立たないうちにCMに行こうというのでしょうか。
試合終了が迫ってくるとアナウンサーがまずスポンサーの名前、次に プロデューサー、
ディレクターたちの名前を伝えていました。「格好いい!」とずっと思っていたのです。
ハハハ。

1992年の全豪からWOWOWでテニスの放送を始めてみると、最終日の終わり方が
実にゆるやかで、「適当に終わってくれればいいです」と言われることがほとんどでした。
「岩佐さん、最後は“アバウト”です。よきところで適当に終わってください」
…時間に関係なく、私のタイミングで放送を終えて構わないという意味です。
どっちにしても余った時間はビデオを流すのですから神経質になる必要がないのです。
そのときから、「“あれ”をやる絶好のチャンスだ」と思っていました。
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1995年全米の私のクロージングはこんな具合でした。

(カップを掲げるサンプラスの映像をバックに各種目の優勝者を紹介したあと)
日本時間では8月29日 火曜日から14日間にわたってお送りしてまいりました
95USオープンは男女とも夢の対決が決勝戦で実現しまして大いに盛り上がりました。
ご満足いただけたでしょうか?
解説は柳恵誌郎さんでした。どうもありがとうございました。そして坂本真一さん。
実況は私、岩佐徹(註)、技術は広田篤、制作陣は プロデューサー・仲沢雅彦、それに
生井恵一以下TBSビジョン、ほかに TBS、TBSインターナショナルの協力・・・
さらに、ENGはニッパスというスタッフ・キャストでお送りしてまいりました。

次のWOWOWのグランド・スラム大会の放送は来年1月15日開幕のオーストラリアン・
オープンです。
アガシ、サンプラス、グラフ、セレス…男女2強時代が続くんでしょうか、それとも
新しい挑戦者が出てくるんでしょうか。まったく興味は尽きません。
それでは、今度はオーストラリア・メルボルンのフリンダース・パークからお目に
かかります。それまで皆様 ごきげんよう、さようなら。

註:57歳でしたが、 一人で14日間がんばりました。


民放ではこんなことはやりません。NHKでも考えられません。たぶん日本のテレビでは
初めてだっただろうと思います。懐かしいと思ったわけがお分かりでしょう。ハハハ。
たしか4-5回はやったと思うのですが、編成の担当者から“ストップ”がかかって泣く泣く
やめました。身内のことなのにおかしいという異論が出たのだと記憶します。

数年後、私の思い出を聞いた一人のプロデューサーが「面白いですね、やりましょうよ」と
言っていたのですが、機会を得ないまま交代してしまいました。

個人的にはこのアナウンスは“あり”だと思います。14日間 苦労をともにした仲間には
何かで報いたいという思いがあるものです。もう一つ、有料放送のWOWOWの視聴者と
送り手の関係は地上波に比べて“親密”であっていいと考えるからです。頭の固い連中の
理解を得るのは難しいですが。ハハハ。
不思議なことにこのアナウンスをしているときに気持が高ぶって終わりが近づくにつれて
“うるっ”とすることがありました。視聴者がどう思ったかは分かりませんが、こちらは
勝手に盛り上がっていたのです。うーん、もう一度やってみたいなあ。
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この数年、午後1時に昼寝をするとき、「大竹まことのゴールデンラジオ」を聴きます。
その前は「キラキラ」でしたが、すでに書いたような理由でしばらく“執行猶予”ののち、
“処刑”しました。ハハハ。
ただし、月曜日だけはこれも私なりの理由でTBS「たまむすび」を聴くことにしています。
ある日、1時少し前に横になりラジオをつけると、ちょうど大沢悠里が締めのアナウンスを
しているところでした。
毎日やっているようですが、放送に関わったスタッフやキャストの名前を告げていました。
リスナーと送り手を結びつけます。悪いことではありません。続けてほしいです。
by toruiwa2010 | 2012-10-28 09:10 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(4)
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岩佐さんの解説を聞いていて不満なのはコート・チェンジや
エンド・チェンジはいいとして、ラリー中もしゃべり続けて
いるということです。
GAORAでマスターズ大会を副音声で聞けばわかるのですが、
向こうの解説は原則的にラリー中の喋りはタブーです。


現役時代でしたから、ずいぶん前の話ですが、ブログの投稿欄でこのコメントを
見つけたときは“ショック”でした。ハハハ。
プレーを邪魔しないよう実況をと心がけていたつもりだからです。
WOWOW時代の私のテニスやサッカーをごらんいただいた方はトータルとして
違う感想を持っていらっしゃると信じています。
きっと、投稿者が見ているときに余計なところでしゃべったんでしょうね。
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そう、絶対になかったとは言いきれません。
スポーツ中継は99%がアドリブです。解説者もいますから、サーブのモーションに
入るところで黙る、と決めていても、いつもそのとおりになるとは限りません。
これは、コメントした人が言う“向こうの解説”でもおなじです。
テニスのマスターズ・シリーズやウインブルドンを現地実況で聞いてみると、100%、
理想を守るのは 洋の東西を問わず不可能であることが分かります。

その時点までにも自分なりのアナウンス論を書いていました。
そのつど、友人から「“黙る”ことについても書けばいいのに」と言われました。

書き込みをされた方が、どれぐらい私の実況を聞いて下さったのかは分かりません。
あまり多くはなかったと思いたいです。“たまたま”ですみますからね。ハハハ。
90年代後半から、私は大きな試合の前にはディレクターや音声担当のエンジニアと
「ファイン・ショットが決まったとき、大事なゴールがネットを揺らしたときには
黙るので ノイズ(歓声、拍手など)を出来るだけ上げてほしい」と話していました。

やがてそんな打ち合わせは不要になり、私が黙るとノイズがよく聞こえるように
“音声さん”が配慮してくれるようになりました。あうんの呼吸です。
グランド・スラム決勝で勝負が決まったときや、ユーロ2000決勝のフランスvs
イタリアでトレゼゲが“さよならゴール”を決めたとき、リバプールの試合前に
サポーターが“You’ll Never Walk Alone”を歌うときなどがその例です。
アナウンサーのおしゃべりより 現場の空気、余韻を楽しみたい人たちがいることを
知っているからです。

自慢で書いているわけではありません。
多くの方の賛同を得ましたが、中には「しゃべって盛り上げてほしい」という声も
あって、必ずしも皆さんに歓迎されたものではないのです。
自分としては、ひとつのスタイルとして確立したつもりですが。

しゃべるのが仕事ですから アナウンサーにとって“黙る”ことは勇気が要ります。
拍手・歓声に乗せて、声のトーンを上げてしゃべれば“きまる”と思えるだけに、
その誘惑を克服するのはそんなに簡単なことではありません。ハハハ。
特に若いうちは難しいことです。しゃべれないのだと思われることが怖いからです。
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78年-81年、メジャー・リーグ中継でアメリカに行くたびに現地の実況を聞いて、
「これだ!」と思ったものの、フジテレビではなかなか実践はできませんでした。
「ハイライトや総集編のときに編集しにくい」というディレクターもいるからです。
リアル・タイムを大事にするか、総集編を大事にするか、となれば答えははっきり
していますが、アナウンサーの立場は案外弱いんです。ハハハ。

年齢を重ね、経験を積んで初めて“黙れる”のですから厄介です。
しかも、せっかく自分は黙っても解説者が横しゃべったりすると意味がありません。
唇に指を持っていったり、手を伸ばして押さえ込んだり、結構大変でした。ハハハ。
黙ったことでドラマチックな効果を生んだときは、うまくしゃべれたときよりも
はるかに大きな喜びを得るから不思議です。

アテネ・オリンピックで“栄光への架け橋だー”が受けたからか、以後、事前に
言葉を用意することが“はやり”になり、古いタイプの私は辟易しています。
しかし、そういうアナウンスがお好きな方がいるのも事実ですから、“黙る”ことは、
ますます難しいのです。
まるで、テニスにたとえて言えば、ベースライナーばかりになってサーブ・アンド・
ボレーヤーを懐かしく思うのと同じように、“うまく黙れる”アナウンサーの出現を
待ちわびる今日この頃です。ハハハ。
by toruiwa2010 | 2012-10-27 08:00 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(4)
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・・・つづき

長い年月をかけて、初めはラジオ、次にテレビでスポーツ実況の形は作られてきました。
視聴者はその“形態”に慣れ親しんでいます。いまの“絶叫スタイル”に辟易する人、
資料読みや事前に用意したコメント、妙に詩的な形容語句などがうざいと感じる人は
多いかもしれませんが、全体の“スタイル”は確立していると言っていいでしょう。

そして、実況席に座るアナウンサーには多くのことが求められます。

歯切れ良さ、テンポ、リズム、さわやかさ、明るさ、見たことを言葉にするスピード、
ちょっとしたユーモア…。ここに挙げたものは、素材としての要素です。
実際に実況するときには、これに加えて、競技についての知識、情報、ルールの理解、
監督・選手から取材する力、データを分析する力、解説者との関係をスムースに保つ…
などのテクニックも必要になります。
ちなみに、私は、“さりげなさ”にこだわりました。言葉で飾る“わざとらしさ”を避け、
“絶叫”とは無縁のスタイルです。

もちろん、すべてを備えたアナウンサーなど、どこを探したっていないと思います。
これらの要素をより多く持っている人だけが視聴者から“いい実況”、“うまいアナ”だと
認められるのでしょう。
そして、成功しているスポーツ・アナの多くは子供のころから、自分でプレーをしたり、
大いなる興味を持ってテレビの中継を見たりと、スポーツに親しんできたはずです。
なんでもないことのようですが、その点は、大きいと思います。
政治や経済、芸能のことはアナウンサーになってから勉強しても身につくでしょうが、
スポーツはそうでもないような気がするのです。
DNA…はオーバーですが、育った環境がかなり影響するように思います。
そこに、男性と女性では大きな差が生まれるのではないでしょうか。

「女性だからダメ」と言っているのではありません。ただし、かなり難しいのは事実です。
プレーを目で見てそれを言葉に換えていく作業ですから、“能力”ということになりますが、
それが欠けていると言えば、「差別だ」、「不当に見下している」と言われるでしょうから
言いません。ハハハ。
しかし、経験から言うと“性”による差はあるだろうと思います。
「子供のころからスポーツは大好きでした」と話す女性は多いですが、よく聞いてみると、
ルールは知らない、その競技のポイントが何かについては全く知識がない、悪く言えば、
“ミーハー的”に好きだったにすぎない、ということが数え切れないほどあります。
もちろん、男はみんな分かっているなどというつもりもありませんが。ハハハ。
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テレビの先輩・アメリカでさえ初めて女性が放送席に座ったのは今年の夏だそうです。
ラジオやローカルのレベルではあったようですから“メジャー初”だろうと思います。
アトランタとシドニー、2度のオリンピックでソフトボールの金メダルに輝き、日本でも
プレーしていたミッシェル・マリー・スミスが“その人”です。
彼女のHPをのぞくと、その日の記事にはMaking History という見出しが付いています。
“歴史的”な出来事だったわけですね。こまかいことは分かりませんが、視聴者の反応は
賛否両論だったようです。

play-by-play(実況)は別にいて、彼女はかつての大投手、ジョン・スモルツとともに
analyst(解説)としての参加だったようですから、日本流の“実況”とは違ったのでしょう。
どちらにしても、彼女の場合はある程度“形”になっていたと想像されます。
偏見ではありません。ワールド・クラスのアスリートだし、ソフトボールの解説などで
放送席での経験も豊か、育った環境や環境が日本とは違うからです。

日本の女性アナには絶対できない、と言っているのではありません。
“有働実況”については、私が聞いた範囲内で「これならいいじゃない?」と感じた人が
いなかったし、今後も相当に難しいんじゃないですか、と言っているのです。
どうしても、女性によるスポーツ実況を実現したいと思うなら、ふさわしい資質を備えた
素材を採用して入社時から“英才教育”をするしかないでしょう。


2年ほど前ですが、ツイッターで女性スポーツ・アナについて盛り上がったことがあります。
その中で、競走馬がらみの仕事をしている若者が私宛にこんなことをつぶやきました。

ホッカイドウ競馬で10年以上レース実況されている○○さんという
名物アナウンサーがいることはご存じですか? 
馬産地北海道の厳しいファンの要求に応える本物の実力者です。


かなり前にラジオで井口さんという女性アナが競馬実況をしていたのは知っていましたが、
○○さんは全くの初耳でした。
興味がわきました。レースものならやれる可能性があると思ったからです。
フジテレビ入社2年目に少し勉強しました。ほかのスポーツにくらべ、突発的なことが
起こりにくいため、馬名をしっかり把握すれば、実況はそれほど難しくはありません。
もちろん、“本質”に迫るのは大変ですが。

聞いてみたいものです…とリプライすると、ホッカイドウ競馬のHPを教えてくれました。
さっそく聞いてみました。うーん、でした。(http://bit.ly/ckGoyL)
予想通り、レースそのものは追えています。もともと、アナウンサーだったわけではなく、
アルバイトで場内放送をしていたそうですから、馬名の把握はお手の物だったはずです。
スタート直後はスロー、4コーナーから直線にかけては畳みかけていくなど、全体の調子も
“競馬実況っぽく”なっています。
しかし、第一印象は「やはり、ローカル色はまぬかれないなあ」でした。
半世紀近く、男性アナたちによる競馬実況を聞いてきた耳には、「踊る大捜査線」のあとに
小津安二郎の「東京物語」を見るような違和感もありました。

北海道で高く評価されているのは、理解できます。視聴者は実況を始めたころから彼女を
知っていて、親近感があり、“愛着”が生まれているのでしょう。
以下、彼とのやり取りですが、こういうときの私は思った通りを書くことにしています。
ちなみに、お世辞やおべんちゃらが言えないタイプです。特に、生まれたての赤ちゃんを
ほめるのは、大の苦手です。ハハハ。

聴かせてもらいました。レースそのものは追えていますが、全国的にはとても
無理でしょう。嫌味ではなく、北海道の競馬ファンはやさしいですね。
聞きなれて愛情を感じているのでしょう。

別段気にはしていないのですが、「全国的に通用する実況」とはどんなものと
お考えですか? 

140文字ではとても…。

「自分が言ってることに対して明快な説明ができない奴は無能。」という話が
ありますが、まさにそれなんだろうな。 (註:私宛ではありませんでした)

140文字…ということでわかっていただけたものと思いましたが、
違うようですね。 http://bit.ly/bkcPV5 に目を通してみてください
(註:0641「女性アナの実況」)

読んでみました。
キーワードは「独特のリズム、スピード感、歯切れのよさ」という事で、
140字も必要ないのでは?(笑)
大手マスコミ純粋培養では女性実況が誕生せず、コミュFMレベルの
草競馬で形になった。

前半:それでは意味が伝わらないではないですか?
後半:おっしゃってる意味が分かりません。…
よって、申し訳ないですが、以下、スルー&ブロック。

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次第に感情的になっているのが分かったので、この時点で、打ち切りにしました。
分かろうとしない人にはいくら言っても分かってもらえませんから。ハハハ。

彼は、仲間とのツイートの中でさらに言い募っていました。

自分を理論派だと自負するのであれば、「140文字じゃ説明できない」なんて
強がるよりも、「それは私の〇〇講座を半年受けたら分かりますよ」くらい
ブチ上げた方が格好が付く。
もしくは一杯やりながらいつかご説明しますよ的な余裕を見せないと。
焦ってツイートブロックじゃあ馬脚見せただけ。

氏は技術論的な物を持っていると自分ではお思いなのでしょうが、
あのキャリアで理論がまとまってない。それだけの人材。
だから後輩達に追い抜かれ孤独な老後になる。
@***: 岩佐さんはアナの技術ではなく自分が名前などの外観で
評価されているのだとお思いなのじゃないでしょうか?

…理論派だと自負したことがあったっけ、と途方にくれました。
また、老後の心配までしてもらえるのはまことに有難いことでした。ハハハ。

子供の喧嘩のような、この“論争”のおかげで、220人以上の方に4年も前の記事、
「女性アナの実況」を読んでいただけました。これも有難いことです。
それだけ、このテーマには多くの人が興味を持ったということでしょう。
いろいろな立場の人が発言すればいいと思います。
そして、「我こそは」という元気のいい女性がどんどんチャレンジしてほしいものです。
by toruiwa2010 | 2012-10-21 09:47 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(4)
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「女性にはスポーツ実況はできませんか?」
…答えるのが一番難しい質問です。
「無理でしょうね」が答えですが、「なぜですか?」と必ず聞かれることが分かっていて、
その“答え方”がとても厄介だからです。ハハハ。

6年前に、NHK-BSで思い切った企画が実現しました。まず、そのときに書いた記事です。
日時や時制はそのままにしてありますので、自分で調整してください。ハハハ。

「女性アナの実況」(2006.04.24)

日曜日、2台のテレビの1台で「からくり…」や「ジャンク…」を見ながら、もう一台は
音を消して巨人-阪神をつけていました。
一回の表、阪神が3点を先行したあとだったと思いますが、画面に解説者の梨田と並んで
有働アナが顔を見せました。ハイビジョンで実況をするという話は聞いていました。
「あ、今日だったんだ」と急いで収録ボタンを押しました。

以下は、それを見た私の感想です。

「10年後でもいい、実現できたら嬉しい」という思いで彼女が出した企画が認められたと
いうことだそうです。そのチャレンジ精神、勇気には拍手です。
しかし、結果は厳しいものだったと言わざるを得ません。

事実を書いてみます。

酷だとは思いますが、“しゃべる訓練を受けている野球好き”の女性がマイクをつけて
“四方山話”をしているに過ぎない、という印象を受けました。

まず、NHKの制作陣がどういう意図で彼女を起用したのかがよく分からないのです。
「キャスターとしての経験を生かして彼女らしいアングルで」、「女性らしい視点で」、
「ファンの代表として」…いずれでもなかったように思います。
「たまには目先を変えるのもいいだろう」程度のことで“実験”を聞かされたのでは
付き合わされる視聴者はかないません。 

収録部分に入っていませんでしたが、冒頭で「野球にくわしい皆さん、ごめんなさい」と
言ったそうです。つまり、自らの“ポジション”をかなり低いところに設定したという
ことでしょう。その割りに、試合全体のテーマを「キャッチャー目線」としていたのは、
かなりレベルが高いと思います。

彼女自身から出されたアイディアなのか、制作陣が「普通にやっても意味がないから」と
思って用意したのかは分かりません。
わざわざ梨田を解説に据えたのも企画が先行してのものでしょう。
両チームのキャッチャーへのインタビューもあり、阪神の平田ヘッド・コーチにも話を
聞いて“つくり”はしっかりしていました。
キャッチャーについていろいろ話した後の平田コーチが「そこから先を勉強しないと」と
有働アナにダメを出したあたりは完全に“やらせ”に見えましたが。ハハハ。

この企画が番組の芯になっていたことで多少は救われていたと思いますが、経験豊富な
アナウンサーが実況を担当していたら、もっと話が膨らんだと思います。
スタッフにしてみれば、そのへんも、初めての彼女に多くを期待しても無理だ、という
判断はあったことでしょうが。

“四方山話”と書きました。
したがって、キャッチャー以外の話は“とりとめ”がないのです。
話の中身はもちろん、テンポ、リズムがグラウンド上の動き、スピード感などまったく
合っていませんでした。テレビでスポーツを見るときに、一番イライラするポイントです。
こうなると、女性の解説者に多い“○○選手”の“選手”がうるさく感じられてきます。
ハハハ。
私は、テニスに新しい解説者を迎えると必ず、“…選手”はやめましょう。“呼び捨て”で
問題はありませんからと言います。
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望んでも無理だと分かっていたのですが、実況で描写が追いつかないのは興ざめでした。
まず、画面に映っていない、ランナーのスタートなどが完全に遅れてしまいます。
たとえば、ランナーがスタートを切り、バッターが打って打球が三遊間へ飛んだ場面でも、
インパクトの瞬間ぐらいから「走って…抜けて…」と、ひとコマずつずれていました。
一番困るのは、試合の半ばを過ぎてもここという場面で「あー」しか出てこないことです。

4回裏、巨人の攻撃。2死満塁で阿部の打球はライトの頭上へ飛びました。
「あー…ライナー性で…フェンス直撃…ランナーひとりふたり、返ってきました。二塁打」
…実況というより、“スタンドにいる女性ファンの独り言”のレベルでした。

スポーツ実況を志すアナにとって、野球は基本です。
野球の実況の中にはプレーの描写を初め、情景描写、情報提供、解説者とのやり取りなど
スポーツ・アナに求められるすべての要素がほど良いバランスで詰まっているからです。
女性アナウンサーが最初に取り組む種目としては難しすぎるのではないでしょうか。

フィギュア・スケートなどでスポーツ実況の“感覚”を実感したあとで挑戦していたら、
今回のような失敗はしなかったと思うのです。
その意味では、本人ではなく、周りに責任があると言うべきでしょう。
「10年後でもいい」は、いろいろ経験してから、という考えがあったことを示しています。
安易にOKを出し、実現した結果がこんなことになり、有働アナにかぎらず、すべての
女性アナにとっての次のチャンスが遠ざかったとすれば、罪は大きいと思います。
この放送でプラス面を探すとすれば、梨田氏の話し方が柔らかかったことぐらいです。
ふだんでも、スポーツ関係者はみんな女性アナ・記者に対しては“妙に”優しいですがね。
ハハハ。

女性アナによる実況の試みはこのときときが初めてではありません。
オリンピックの女子マラソン、高校野球、女子駅伝、フィギュア・スケート…挑戦は
何度かありました。
しかし、フィギュアが“微妙”だった以外、厳しい言い方ですが失敗に終わっています。
局内外から少しでもいい手ごたえを感じていればあったはずの“続編”がないことが
その証拠でしょう。

「女性だからダメ」と言っているのではありません。
ただし、かなり難しいのは事実です。独特のリズムが必要です。スピード感を出すのも
大変です。歯切れのよさも求められます。
たしかに、これはあくまで今の男性アナによる実況を前提にした話です。
しかし、“女性ならでは”のスポーツ実況の確立を目指すとなると、なおさら越えるべき
ハードルは高くなりますね。
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同じことを何度も書いていますが、私たちのころは“スポーツ・アナが一人前になるには
10年かかる”と言われてきました。
目の前で起きることを、99%アドリブで描写していくにはそれだけの年月が必要なんです。
今、第一線で活躍する実況アナは、みんな、入社のときからスポーツの世界にどっぷりと
つかって知識を積み重ね、技術を磨いてきた人たちです。
男性と同じタイプの実況を目指すなら、入社のときから同じような道を歩まないと実現は
きわめて難しいでしょう。近道はありません。“ローマは一日にしてならず”。ハハハ。

放送の最後に彼女はカメラに向かってこう言いました。
「取材してみて、野球の面白さが徐々に分かってきました」
決してあげ足を取るつもりはありませんが、今、各局でしゃべっている実況アナの誰も
こんなことは言わないでしょう。「馬鹿なことを…」とあきれたはずです。
病院で“研修医”、お店で“研修生”を見かけるこがもあります。
しかし、彼らはあくまで見習いの立場で仕事に臨んでいます。

同じように、すべてのアナウンサーが“完成品”というわけではありません。
だからと言って「私は発展途上のアナウンサーなんです」と、はっきり言われたのでは、
視聴者の立場はどうなるのでしょう。
梨田が何度も「初めてだから」「緊張してたから」と、かばうように言ったのも逆効果です。
打ち上げの席でなら許されるでしょうが、放送の中で言うべきではありません。

今後について担当プロデューサーは「時間をかけて検討したい」と話しているそうです。

かなり、辛辣に書いていますが、有働アナに恨みがあるわけではなく、
むしろ、周囲の軽率な判断を責めているつもりです。

つづく・・・
by toruiwa2010 | 2012-10-20 09:15 | 岩佐徹的アナウンス論 | Comments(9)