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岩佐徹のOFF-MIKE

toruiwa.exblog.jp

実況、ドラマなど放送全般、映画、スポーツ全般、 旅、食、友 etc

カテゴリ:映画が好き( 259 )

運命は踊る 90


フェルドマンの家のブザーが鳴らされた。ドアが開き

女が顔を見せた。訪問者が何かを言う前に、すべてを

察した女は気を失った。倒れかかる彼女を訪問者たちが

素早く抱きとめた。彼らは軍服を着ていた。兵士だ。

そっと床に横たえると手際よく鎮静剤の注射をして、

寝室に運んで行った。こういう場面には慣れているのだ。


立ちすくみ、その光景を見つめるミハエルのところに

兵士の一人がやってきて「息子さんが亡くなりました」

と告げた。冷たい口調ではなかった。


我が子の戦死を受け止められないミハエルはショックで

話ができなかった。兄が駆けつけてきた。

施設に入っている母には直接伝えに行った。

”兵士であるヨナタンの死”は正しく理解したが、

目の前のミハエルを上の息子と認識していた。


同じ3人の兵士がフェルドマン家をふたたび訪れたのは

最初の訪問から数時間後だった。新しいメッセージは

「大変な間違いだった。息子さんは生きている。

死んだのは同姓同名の別人だった」…

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妻のダフナや兄はそれを素直に喜びますが、ミハエルは

納得しません。得体のしれない怒りが爆発し、すぐに

息子を帰宅させろと要求します。

画面が変わり、国境警備についている息子・ヨナタンが

映し出されます。緊迫した様子はすこしもありません。

荒野の中の一本道をのんびり歩いてきたラクダのために

遮断機を上げてやったりします。


周囲の国々と常に緊張状態に置かれているイスラエルは

兵役に就くこと、家族を戦場に送ることに慣れていると

勝手に考えていました。しかし、一般市民のレベルでは

必ずしも そうではないことが分かります。


オープニング・シーンからおよそ10分間、ミハエルは

一言も発しません。強い衝撃、深い悲しみに支配された

ひとりの男をリオール・アシュケナージ―という俳優が

演じきっています。見事です。三国連太郎を連想します。

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退屈と思う人もいるでしょう。私は背筋が伸びるような

気持ちで見ました。

「運命は踊る」…なぜこの邦題になったのか不明だし、

大いに不満です。

原題はFOX TROT。ダンスの基本的なステップです。

日吉に通い始めたころ、東横線都立大学駅近くにあつた

ダンス教室で最初に教えられたのがこのステップでした。


どっちの足からだったか覚えていませんが、一歩ずつ

前に前に、横に横に、うしろにうしろに、横に横にと

足を運ぶうちに、元の位置に戻る…そんなステップです。

原題が言いたいのはそういうことだと思います。


参考(RottenTomatoes)

原題:FOXTROT

Tomatometer96

観客スコア:80


教誨師 75


死刑が確定した受刑者は拘置所で独房に収容される。

原則として髪型、服装は自由だし、作業もしない。

しかし、親族以外で面会が許されるのは死刑囚の精神の

安定に役立つと認められた者だけだ。


教誨師・佐伯保(大杉漣)もそんな一人だ。

彼は聖書を手に拘置所の一室で死刑囚たちと向き合う。

面会を希望しておきながら何も話さない男、関西弁で

賑やかに、とめどなくしゃべる女、無学なホームレス、

気のいいヤクザの組長、わが子が気になる気の弱い父親、

身勝手な理由で16人を殺した若者…

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大杉漣の遺作です。プロデュースも兼ねていたそうです。

彼が扮する佐伯の役割は会話を通して彼らが犯した罪を

深く反省し、心を乱さずに死を受け入れられるようにと

導くことです。ほとんど動きがなく、ワンショットも多い

映画ですが、その中でその演技力には説得力を感じます。


暗い映画ですが、平日の昼間にもかかわらず、有楽町・

スバル座は九分通りの入りでした。各サイトの評価が

ぴあ以外、軒並み高いのに驚きます。“大杉漣の遺作”が

高評価につながっているのかもしれませんが、いろいろ

不満があって私は“75点”としました。


大杉以外の演技が気に入りません。会話劇になっている

この作品ではセリフが作りものになったら台無しです。

ずっと、7月期ドラマ「dele(ディーリー)」で山田孝之と

菅田将暉が見せた自然体の演技を思い出していました。


“密室”の雰囲気を出したかったのでしょうが、音が響く

録音も不満です。会話の重みが伝わりませんでした。


予告編の最後に“なぜ、生きるのか”というフレーズが

浮かんでいました。それが本作のテーマなのでしょう。

しかし、作品の中で提示される6人の死刑囚との会話や

佐伯自身の過去からはそのテーマを感じませんでした。

大杉が本当に言いたかったのは何だったのでしょうか?


取材に基づく脚本だと聞きますが、突然、死刑制度への

疑問を投げつける若い死刑囚をはじめ、登場人物たちに

リアリティがありません。ウソっぽいのです。


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ラストで 振り向いて凝然と立ち尽くす大杉の表情が

強く印象に残りました。


by toruiwa2010 | 2018-10-12 07:16 | 映画が好き | Comments(0)

散り椿 85


降りしきる雪の中を男が一人、ゆっくりと歩いている。

ただならぬ気配に 手にしていたものを雪の上に置き、

男はすっと身体を沈め、腰の刀に手をかけた。

いきなり無言で横から切り掛かってきた一人をいとも

簡単に倒した男の真正面から 別の二人の男が抜刀して

突っかかってきた。目にもとまらぬ鮮やかな剣さばきで

二人を片付けると、その男、瓜生新兵衛(岡田准一)

何事もなかったかのような顔で雪の上に置いたものを

拾い上げた。豆腐とネギが見えた。今夜は湯豆腐…

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新兵衛は18年前に藩の不正を訴えたものの認められず、

妻の篠(しの:麻生久美子)とともに故郷を離れましたが、

いまだに、危険分子とみなされているのです。

この事件から間もなく、新兵衛は藩に戻ります。

死んだ篠との約束を果たすためです。

一つは故郷の散り椿を彼女にかわって眺めること。

もう一つは、幼なじみの榊原采女(うねめ:西島秀俊)

助けることです。


監督もつとめた木村大作のカメラが写し取った映像が

実に見事です。ほれぼれします。

そして、いつものことですが、岡田の殺陣にしびれます。

同じ葉室麟原作の「蜩ノ記」でも素晴らしい剣さばきを

見せていましたが、西島と対峙する場面は息をのみます。

もう少し長くてもよかったなあ。

専門家が見たらどう言うかは分かりませんが、体と刀の

動きが美しいです。

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とても気になることがありました。何人かの登場人物の

セリフ回しに違和感がありました。感情がこもらない、

棒読みに近い言い方が多いのです。本来、演技力がある

はずの池松壮亮もそうでした。意図的にそうさせている

としか思えません。あるいは木村監督、興味があるのは

映像だけでセリフはどうでもいい? まさかね。ハハハ。


雑感

富司純子さん、凛としたたたずまいだった。

チェロを使った音楽、特に主旋律が美しかった。


コーヒーが冷めないうちに 80


都市伝説があった。


とある町のとあるコーヒーショップに

その席に座ると彼(彼女)が望む過去の

時間に戻ることができるという。

ただし、店員が注いだ一杯のコーヒーが

冷めるまでの時間に限られる。しかも、

過去の出来事を変えることはできない。


条件に同意していざそのコーヒーショップ、“フニクリ

フニクラの席に座ろうと思っても簡単ではありません。

いつも中年の女性が座って本を読んでいるからです。

チャンスは彼女が化粧室に消えるときだけです…

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いくつかのエピソードがちりばめられ、そのどれもが

なかなか味わい深いものになっています。残念ながら

すべての物語が その席に座れば過去に戻れるという

“虚構”の上に成立しています。そもそも映画そのものが

非日常だし、一種の虚構じゃないかと言われそうですが、

ええ、だから、このカテゴリは苦手なんです。ハハハ。


雑感

有村架純、波留、吉田羊、松重豊…みんなよかった。

吉田羊は普段も喫煙するのだろうか?煙草を持つ手が

さまになっていた。最近の映画・ドラマで女優さんが

タバコを吸うシーンで初めて納得した。


食べる女 80


餅田敦子、通称トン子(小泉今日子)は作家だが、自宅は

ささやかな古書店を兼ねている。彼女のお茶の間には

しばしば食べることが大好きな女子が集まる。

顔ぶれは 幼なじみで食べもの屋を営む美冬(鈴木京香)

出版社に勤め トン子を担当するする圭子(沢尻エリカ)

。番組制作会社でアシスタント・プロデューサーを務める

多実子(前田敦子)と言ったところだ…

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ほかにも、シャーロット・ケイト・フォックス、壇蜜、

広瀬アリス、山田優などなど、あらゆる年齢層の美女が

とっかえひっかえ出て来ます。ユースケ・サンタマリア、

池内博之、勝地涼、小池徹平…男はつけたし。ハハハ。


そして、主役はあくまで、“食”です。食べることです。

出てくる料理が全部うまそうでした。

食と言えば”性”…ということなのか、ベッド・シーンが

何度か出て来ますが、どれも中途半端。

というか、”女子会”を除くと、食事に至るまでの流れが

無理やりすぎます。

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よって、世間ではそれなりに評価されているようですが、

私の感想を正直に書くなら“75点”です。

広瀬アリスがいいなと思いました。妹が“大人”の女性を

演じるようになるにはあと数年はかかるでしょうから、

彼女は今のうちに活躍の場を広げておきたいですね。

ハハハ。


予告編を見て、期待できそうだなと思っている

「マスカレード・ホテル」(木村拓哉・長澤まさみ)

「七つの会議」(野村萬斎・香川照之)…はともに

来年の封切りだと言う。そういう季節なんだね。

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by toruiwa2010 | 2018-10-05 06:38 | 映画が好き | Comments(0)

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 85


物語の舞台の大半はウインブルドンだ。

センターコートだったりロッカールームだったりするが、

テニス・ファンには馴染みの場所だ。


映画では1980年の 今も語り継がれる男子決勝までの

あれやこれやが語られる。

主人公はビヨン・ボルグとジヨン、・マッケンローだ。

Emperor(皇帝)”、“legend(伝説の男)”と呼ばれ、常に

沈着冷静なボルグと“super brat(とんでもない悪ガキ)”、

コート内外での言動が物議をかもすマッケンロー…

この二人の決勝での対決は 絵に描いたように対照的な

個性もあって開幕前から期待されたものだった…

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このとき、世界の頂点に立つボルグはウインブルドンで

4連勝していました。マッケンローは世界ランク2位、

前年の全米オープンの覇者でしたが、まだ20歳の若者。

“冷たい”という一面はあったものの、“貴公子”として、

女性だけでなく男性ファンからも圧倒的な支持を受ける

ボルグと周囲のあらゆるものを敵に回すことを楽しんで

いるようなマッケンローの対戦だけに、誰もがボルグの

応援に回るような空気の中で試合の日を迎えます。

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セットとして作られた当時のウインブルドンのセンター

コートがよくできているし、ボルグとマッケンローを

演じる俳優もよく特徴を“盗んで”います。

それだけではありません。準決勝から会場に駆けつけた

マッケンローの父親がかぶる帽子までそっくりです。

ハハハ。


そして、セカンドサーブでネットに出たマッケンローが

浮いてきたボルグのリターンをとらえてバックハンド・

ボレーで最初のポイントをとります。

続いて、ファーストサーブを入れたマッケンローが

そのままネットに出ていきますが、ボルグのリターンは

その足元に沈みます。1515

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…このあたり、“史実”の通りに再現されています。

ああ、それなのに。

ファンなら知らぬものがない、ボルグとマッケンローの

ウエアが“真正”じゃないのです!

フィラとタッキーニは彼らのトレードマークでした。

全体はいいとして、左胸や袖にあるはずのロゴがない!

理由は不明ですが、画竜点睛を欠いてます…ハハハ。


ラストシーンがいいです。どんな世界でもトップにある

者同士だから分かり合えるものがあると思っていますが、

それが映像になっています。映画のための創作ではなく、

二人の間に実際にあったことでしょう。アスリートは

こうありたいと思わせるシーンでした。

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この試合は1995年にWOWOWで放送しました。

「伝説は甦る」というシリーズの中で、マッケンローvs

コナーズ戦と2試合を取り上げ、4時間近い試合を私が

1人で実況しました。

資料をかき集め、副音声に入っていた英語実況を何度も

聞いてネタ作りをしました。スタンドに見えた“XXX for

Prime Minister(XXXを首相に)”というプラカードが

気になって、XXXはもしかして実況アナウンサーかも

しれないと思い、BBC東京支社に電話をしたりしました。

ビンゴでした。これでも、その辺のカンは鋭いのです。

ハハハ。


短いナレーションのあと、試合の映像に切り替わります。

ちょうど、公式練習が終わろうとする場面でした。


向こう側、ディフェンディング・チャンピオンの

ビヨン・ボルグが最後のサーブを打ち込んで

試合前の公式練習を終えました。

1980年ウインブルドンの男子シングルス決勝、

間もなく試合開始です。


蛇足

作品の中でボルグに付き添っていた女性はマリアナ・

シミオネスク…ルーマニア出身の元テニス選手で大会後

挙式したボルグの最初の妻です。美人として評判でした。

スタンドの写真の前列左端が彼女だ。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:Borg vs McEnroe

Tomatometer83

観客スコア:75


泣き虫しょったんの奇跡 85


瀬川昌司、“しょったん”(松田龍平)は小学校5年まで

自分で何かを決めたことがなかった。5年の新学期に

1年限定で担任になった鹿島川佳子先生(松たか子)

どちらかと言えば引っ込み思案のしょったんに優しく

接してくれた。将棋に熱中する彼に「それはいいこと。

成功につながるわよ」とあと押ししてくれた…

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その頃からプロ棋士になりたいと考えていた瀬川少年は

近くの将棋クラブに通い、そこの常連さんに勧められて

奨励会に入ります。プロになるにはそこで三段に上がり、

26歳までに一定の成績を残さなければいけません。


そこから先はネタバレになるので書きませんが、将棋は

ごく初歩的なことしか知らない私でも楽しめました。

あえて言えば、あと10分短かったら文句なしだったと

思います。“冗長”と言うのではないのですが、私の

bladder的にはなんとか予告編込み2時間10分に収めて

ほしいのです。最後の5分、10分は“拷問”ですから。

ハハハ。


松田がいいですね。

「探偵はBARにいる」シリーズ、「まほろば駅前…」、

「舟を編む」、「ジヌよさらば」など、比較的地味な

作品が多いですが、出れば、必ず"つめ跡"を残します。

いい役者だと思います。



出番は短いですが、松たか子に感心したことがあります。

それは“歯”です。余計なホワイトニングをしていません。

黒柳徹子、草刈民代…“女優”じゃないけれどローラも

あんなに白くしてどうする気なんでしょう? 時代劇に

出て来たら違和感が半端ないですか?

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松は自分の美意識に従っていると思いますが、見事です。

この人の女優としての“覚悟”にはいつも感服します。

当ブログには彼女のファンが多いようです。

6年前、2012年の映画「夢売るふたり」でも思い切った

演技をしていましたが、私が書いたレビューを読んで、

いまだにそのページから訪問してくれる人がいます。

いや、もちろん、有難いと思ってますけど。ハハハ。


by toruiwa2010 | 2018-09-14 07:05 | 映画が好き | Comments(0)

判決、ふたつの希望 90


中東レバノンの首都、ベイルートの住宅街の一角。

トニーは出産間近の妻とアパートの二階に住んでいる。

アパートの前の通りを挟んで補修工事が行われていた。

些細なことでトニーと作業員の間にもめ事が起きた。


話し合いの中で現場監督、ヤーセルが思わず口にした

言葉にトニーが切れた。工事を監督する事務所を訪れ、

ヤーセルに謝罪させるよう要求した…

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トニーは民族派の政党を熱烈に支持するベレバノン人、

ヤーセルはパレスチナからの難民です。

もめ事の“根”はそこにありました。身重の妻を気遣う

トニーは騒音をまき散らす作業に苛立ち、“意図的”に

ベランダからの排水が作業員にかかるようにしました。


正直に書くと、中東のことは私の理解力を越えています。

民族の対立に加えて宗教の違いが日常生活の中で摩擦を

生む構図は簡単には理解できません。当事者にとっても、

DNAにまで沁み込んでいる大問題ですから、“出口”は

見えないのだと思います。


しかし、この映画はそんな”中東”を知らない私たちにも

訴えるものを持っています。


原題はINSULT…“侮辱”です。

初めはヤーセルが放った一言でした。しかし、所長の

説得に折れたヤーセルがトニーの工場に行ったとき、

言い争いの中で、今度はトニーが パレスチナの人々に

言ってはいけない言葉を投げつけてしまいます。


シャロンに抹殺されていれば…

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シャロンは、パレスチナに対してきわめて強硬だった

イスラエルの軍人・政治家として知られる人物です。

この言い方がパレスチナ人にとってどんな意味を持ち、

どれほど侮辱的なのかについては簡単に“分かる”とは

言えません。言えば“思い上がり”のそしりを免れません。

しかし、それでも私はこの映画に感銘を受けました。


決して許してはならない“侮辱”という重いテーマだし、

言葉はまったく分からないし、俳優にもなじみがなく、

普通は敬遠したくなる作品ですが、すべてを分かろうと

しないで見ることを勧めます。これは優れた映画です。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:The Insult

Tomatometer88

観客スコア:89


SUNNY80


スマホのアラームが鳴っている。

ゆっくりと起き上がった奈美(篠原涼子)がけだるそうに

階段を降りてダイニングキッチンにやってきた。

キュウリをきざみ、たまごを溶き、納豆をかきまぜる。

朝食とお弁当の用意を並行して手際よく進めていく。


「めざましテレビ」をちらちら見ながら商社員の夫と

反抗期の高校生の娘と三人で朝食のテーブルを囲む。

テレビは引退を控えた安室奈美恵の特集をやっている。


娘が弁当を持って慌ただしく学校に向かい、「来週から

海外出張になるから」と言い残して夫が出かけたあと、

奈美は入院中の母を見舞に行った。

その帰り、通りかかった病室の名札を見て足が止まった。

“伊藤芹香”、懐かしい名前だった…

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芹香(板谷由夏)は 淡路島から転校して戸惑っていた

奈美を仲間に迎え入れてくれたクラスメートでした。

ほぼ20年ぶりに再会した二人ですが、奈美は芹香が

がんに侵され、余命がひと月だと知ります。


そして、芹香は高校生時代に仲のいい6人で作っていた

グループ、“SUNNY”のメンバーにもう一度会いたいと

言い出します。


物語は日本中にルーズソックスの少女があふれていた

1990年代後半と現在を行ったり来たりしながら、奈美が

メンバーを探す様子を描きます。


奈美の高校生時代を広瀬すずが演じています。

うーん、よかったのはそれだけかな?ハハハ。

当時、流行した言葉、ファッションや音楽が登場すると

懐かしいですが、度を超えて賑やかなシーンが多くて

辟易します。


驚いたのは、封切から3日目とはいえ、平日の午後にも

かかわらず、館内がほぼ満席だったことです。もちろん、

若い人が大多数でしたが、なぜ?と思いました。

ドラマでも篠原では数字が取れなくなっているようです。

観客を動員する要素が見つかりません。


最後に、グループ名の“SUNNY”がかなり唐突です。

どこかに誰かが書いてると思いますが、芹香が最後に

会いたいと言った、S(しん)U梅、N奈美、N奈々、

Y裕子…の頭文字ってことでOK


寝ても覚めても 75


終盤にかけての登場人物たちの心変わり&心変わり…

描き方が不足しすぎていて何が起きてそうなったのかが

観客に伝わりません。巷の評価が案外高いのに驚きます。

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by toruiwa2010 | 2018-09-07 08:21 | 映画が好き | Comments(2)

検察側の罪人 85


20人ほどの若者がスクリーンを食い入るように見つめる。

男女を問わず、彼らの左胸にはバッジが光っている。

短い映写が終わった。過激な取り調べで暴走した検事の

ニュース映像だった。


スクリーンが天井に引き上げられ、檀上が明るくなる。

両サイドのカーテンもあけられて室内が明るくなった。

階段教室に並んで映像を見ていた若者たちはこの日で

3ヶ月の研修が終わる修習生だった。


教官役の最上(もがみ:木村拓哉)がホワイトボードを

引っ張って現れ、研修を締めくくるスピーチを始めた。

強調したのは「自分の正義にとらわれるな」だった。

“あこがれ”の眼で野上を見つめる若者がいた。

沖野(二宮和也)だった…

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物語が動き出すのは 4年後、沖野が東京地検の最上の

下に配属され一緒に働き始めるところからです。

初めて出勤した日、沖野は自分を補佐してくれる事務官、

(吉高由理子)と顔を合わせます。


はじめ、最上の下で働けることがうれしくて仕方がない

沖野は最上の指示通りに取り調べを進めていきますが、

次第に疑問がわいてきます。横で見ている橘も最上の

強引さに違和感を覚えるようになります。


物語の核に各人の“正義”があり、進行に従ってそれが

ぶつかり合うようになっていきます。

予告編はとてもよくできていたと思います。

このキムタクはいいかもしれない…と思わされました。

あのテーストで物語を紡げばいい作品になったのにと、

惜しまれます。


何がいけないか、と言えば、最上の“強引さ”です。

検察という組織の中で見過ごされるわけがないと思える

異常さです。映画の序盤から最上-沖野が担当する事件で

彼が見せる“豪腕”ぶりは学生のころの出来事に原因が

あるのですが、無理がありすぎて、現実味を欠きます。


平岳大扮する木村の親友の代議士にからむエピソードも

常軌を逸しています。腕の立つ現役の検事が捜査対象に

情報を流す、対策を伝授する、かばう…その嘘っぽさは

“強引さ”とともに全体を台無しにしたように思います。


木村にはSMAPのメンバーではなくなった覚悟・決意が

うかがえるような気がしますが、肩をゆする歩き方とか、

口元をゆがめることで芝居をしようとするところとか、

相変わらず、その演技を認める気にはなりません。


一方、二宮の演技には素直に圧倒されました。

特に、悪質な被疑者の取り調べ中 “意図的”にブチ切れる

場面は圧巻です。演技のことはもう一つ分かりませんが、

大声で怒鳴る、大泣きするなど激しい感情をまき散らす

演技は役者としてはやりやすいのだと思っています。

…にしても、このときの二宮の迫力は圧巻でした。

今年、これまでに公開された映画で決めろと言われたら

”私の主演男優賞”は二宮和也で決定です。

この人は、もはや単なるアイドルじゃないわ。ハハハ。


いちゃもん


先週金曜日の朝日夕刊にこの映画の評が出ていました。

前文に「日本の司法制度の闇に切り込み…」とあります。

…私には、それがどの部分を指すのか分かりません。

なぜ、そんな書き方をするのか?


第二次大戦で日本軍が行った作戦の話が挿入されますが、

“日本の戦争責任についても盛り込んだ”と書いています。

それも“最上と関連付けて描写したのだ”と。

私には伝わっていません。…ということは監督の失敗?


こんな、制作者と評論家だけが分かり合っている…的な

書き方には断固反対です。渋谷で初日(金曜日)の昼間の

回でしたが、ほぼ満席、その大半がジャニーズ好きの

若者たちでした。彼らがこの評を読んだら“???”と

なることは間違いないでしょう。


オーケストラ・クラス 85


バイオリニストのダウドがパリ郊外の学校にやってきた。

子供たちにバイオリンを教えるためだ。教室に行くと、

そこにはやんちゃ盛りの子供たちがいた。彼らは音楽を

まったく知らない。バイオリンなど触ったことがない…

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そんな子供たちにバイオリンを教えるのは フランスで

実際に行われている情操教育のプログラムです。まさか、

映画のようにうまくいっているとは思いませんが(w)

文化・芸術に力を入れる国らしい取り組みですね。


フランスの学園もの映画はいつも興味を持って見ます。

アラブ系やアフリカ系など、さまざまな背景を持った

子供たちと正面から取り組む教師たちの熱意や苦労が

うまく描かれています。


マンマ・ミーア 80


母・ドナ(メリル・ストリープ)が死んで1年、ソフィは

ホテルを再開することにしました。準備がすべて整って

明日はいよいよオープニング・パーティ…というとき、

ストームが島を襲います。

ソフィを主人公とする“現在”と、若き日のドナの物語が

交互に描かれていて、外国人の女性の顔を覚えるのが

苦手な私には少々きついところがありました。ハハハ。

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いずれにしても、いかにもハリウッドらしい映画です。

極論すれば、ストーリーもあるようなないような…。

ミュージカルとして楽しむ気で見れば、それなりに

楽しめると思います。

ABBAの名曲を初め懐かしい歌がたくさん流れますが、

メリル・ストリープが登場して最初に唄う曲が抜群です。


ちなみに、この作品の“腐ったトマト”の評価は…


参考(Rotten Tomatoes)

原題:MAMMA MIA Here We Go Again

Tomatometer80

観客スコア:74


…ですが、10年前の前作はそれぞれ5566%でした。

なにがどうなって、そういう評価なのか、よく分からん。

ハハハ。


by toruiwa2010 | 2018-08-31 07:30 | 映画が好き | Comments(0)

タリ―と私の秘密の時間 85


階段を一段一段、ゆっくりと女が降りてくる。マーロだ。

臨月と思われる大きなおなかをしている。

ソファの上で幼い男の子が跳ねていた。やわらかそうな

ブラシを取り出すと子供を座らせて、ゆっくりと腕から

撫で始めた。シャツをはだけさせて背中を撫で終えると、

ブラッシングは足の裏にまで及んだ。ジョナはときどき

情緒が不安定になることがあって、セラピストの勧めで

外部からの刺激に対する反応を少しでも和らげるために

これを朝夕の日課にしていた。

息子を見つめるマーロの目には愛情があふれている…

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マーロには娘もいます。夫には愛されています。しかし、

妊娠している身で二人の子供の世話に追われ、精神的に

やや追い詰められています。裕福な暮らしをする兄が、

3人目が生まれたら、ナイト・ナニー(夜間のベビー・

シッター)を雇うといい、その費用は出産祝いとして私が

払うからと言ってくれますが、マーロは断ります。


しかし、実際に出産後、連日の夜泣きや数時間おきの

授乳に疲れ果て、ナニーを頼むことにしました。

やってきた“タリ―”と名乗る若い女は少しなれなれしい

ところはあるものの、やることはすべて完璧でした。


終盤でマーロが運転を誤るところからエンディングに

かけて大きな“ポイント”があります。マーロの旧姓です。

少々 分かりにくいかもしれませんが、自分で考えないと

意味がありません。私も見ているときは「えっ、それは

どういうことかな?」と思ったものの、“意味”について

見当がついたのは家に帰ってからでした。ハハハ。


小品ですが、とてもいい出来です。

予告編を見たときから、シャーリーズ・セロンの容姿に

ビックリしました。臨月の妊婦に扮するため、体重を

大幅に増やしていたのです。それだけで持ち上げるのは

疑問ですが、“圧倒的な美しさ”をかなぐり捨てた結果、

マーロに母親としてのリアリティを与えたのですから

やはり“あっぱれ”と言いたいです。ま、大好きなので。

ハハハ。

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アメリカの報道によれば3ヶ月半かけて、20キロ以上

増やし、元に戻すのに1年半かかったそうです。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:Tully

Tomatometer86

観客スコア:75


追想 75


ロンドンの西南に長く伸びる海岸線、チェシル・ビーチ

玉砂利でできた砂州を若い男女がゆっくり歩いてくる。

エドワードとフローレンスだ。この日に挙式した二人は

ハネムーンの地にこの世界遺産を選んだのだった。


学生時代、互いに“ひとめぼれ”で付き合ってきた2人が

深く愛し合っているのは誰から見ても明らかだったが、

どこか“ぎこちなさ”が目につくのだった。恋愛について、

セックスについて二人ともウブだったのだ。


その日、予想された“悲劇”が起きた…

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ネタバレしてしまいますから、ここから先は書きません。

イギリスの国営放送 BBCの制作した映画ですが、なぜ、

こんなものを撮ったのかよく分かりません。「おいおい、

なんだこれは」とビックリしながら見ました。帰りに

外食の予定がなかったら退席した可能性大です。


最後の15~20分は、ありがちだけど「いいなあ」と

思いました。それだけに、悲劇の中身をもっとほかの

性格のものにできなかったのかなあ、と惜しまれます。

作者はこれがいいと思ったんでしょうがね。ハハハ。


ハリウッドでは絶対に作らないだろうし、アメリカ人は

受け入れないだろうなと思っていましたが、辛口サイト、

“腐ったトマト”の点数↓が意外にいいので驚きました。

これだと、「オーシャンズ 8」より高い評価になります。

好みだからあれこれ言う気はないけれど。


原作者のイワン・マキューアンは取材で訪れたチェシル・

ビーチのpebble(小石)をいくつか持ち帰り、執筆の間、

机の上に飾っていたそうです。この話をラジオですると

自然保護主義者から抗議の声が上がり、地元自治体には

返さなければ2000(30万円)の罰金だと脅されて、

すぐに戻したそうです。ハハハ。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:OnChesil Beach

Tomatometer68

観客スコア:73


by toruiwa2010 | 2018-08-24 08:21 | 映画が好き | Comments(0)


ミッション:インポッシブル/フォールアウト 85


ベルファストのアジトでイーサン(トム・クルーズ)

夢を見ていた。ジュリアとの結婚を司る神父の言葉が

途中から妙な方向にずれていく。

悪い夢から覚めたところへIMFからの指令が届いた。

盗まれた3個のプルトニウムを回収すせよ。


金とブツの交換は目前まではうまくいったが、そこで

不測の事態が起き、仲間の生命を優先したイーサンは

ミッションに失敗する。


この結果、次のミッションはさらに難しいものになった。

3個のプルトニウムを用いて組織が目論む 世界3ヶ所・

同時核爆発を阻止せよ。

イーサンの働きに不満を持っていたCIAはその作戦に

監視役のエージェントを張り付けた…

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シリーズ第6作になるようですね。

全部見ているような気もするし、何作目かが抜けている

可能性もあります。つまり、このシリーズに“ドップリ”

はまっているわけでもないのです。ハハハ。


その程度の“入れ込みぐあい”の人は多いと思います。

私をふくめて、そういう人には、人と人、組織と組織の

関係を字幕だけで正確に理解し、把握することはとても

難しいのだと覚悟しないと厳しいと思います。


がまんして見続けるしかありません。

極め付きのファンには申し訳ないですが、“活劇”なので

すべてを分かろうとしないで、アクションの面白さを

楽しむつもりで見ることを勧めます。私は、それで十分

楽しめました。

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ちなみに、スタントの大部分をトム・クルーズ自身が

演じたとされていますが、私は信じません。決して!

彼はスーパーマンじゃないんだから。ハハハ。


翌日、NHK-BSで「M:I-2」を見ました。2000年に

公開されたシリーズ第2弾です。18年前のクルーズは

やっぱり若いです。ハハハ。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:Mission: Impossible -Fallout

Tomatometer97

観客スコア:90


オーシャンズ8 85


ギーィっとドアが開き、デビー・オーシャン(サンドラ・

ブロック)が部屋に入ってきた。彼女が腰を下ろすと、

係官が、犯罪者と接触してはならないなど、仮釈放の

条件を話し始める。


化粧っ気のないデビーは神妙だった。

ここを出たら、仕事について、友だちを作り、払うべき

ものは払って…と、地味に暮らすことを誓った。ときに

感極まって言葉を詰まらせていた。


出所のときのでビーは、そんなに殊勝ではなかつた。

顔見知りの婦人警官に「上手くやった」と自慢げに話し、

5年も練習したんだもの」とうそぶいてさっそうと

出て行った…

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デビーはジョージ・クルーニーが演じた大泥棒、ダニー・

オーシャンの実妹です。ムショで過ごした5年の時間を

無駄にはしません。練りに練ったビッグなたくらみを

実行に移すため相棒・ルー(ケイト・ブランシェット)

仲間集めにとりかかります。


“たくらみ”とは、世界最大級のファッションイベント、

メット・ガラでハリウッド女優(アン・ハサウェイ)

身につける超高価なネックレスを盗むことでした。

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…“本家”のオーシャンズにくらべると全体にスケールが

小さく、びっくりするような“仕掛け”もありませんが、

おしゃれ感はあって、私はそれなりに楽しめました。

50歳を過ぎたブラロックが今でも”ゴージャス”です。


実に細かいことですが。予告編を見るたびに、デビーが

“…pay my bills”のところの字幕が「地味に暮らすわ」と

なっているのが引っ掛かっていました。

そうか、請求書が来たら払うことがアメリカでは地味に

クラスことの代名詞なんだ、と思っていました。


本編はこの記事のようになっていて違和感なしでした。

ずらしてたんですね。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:Oceans8

Tomatometer67

観客スコア:47


by toruiwa2010 | 2018-08-17 07:23 | 映画が好き | Comments(0)

ブログを休んでいる間に、日米 二人のベテラン俳優の

情報に触れた。日本では名優・津川雅彦が亡くなり、

アメリカではロバート・レッドフォードが引退した。

どちらも 若いころは二枚目として活躍し、年とともに

演技派として鳴らした。


作家としての石原慎太郎、俳優としての裕次郎兄弟が

好きだったから、「狂った果実」に登場した津川のことは

よく記憶している。子役時代があるから“デビュー”とは

言えないが、多くの人に鮮烈な二枚目ぶりを印象づけた。

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演技派への“転向”は早かった。演技の幅が広かったから

実にさまざまな役をこなした。ただし、幅が広すぎて

津川と言えばこれ…という作品がすぐには出てこない。

それほど“多彩”だったんだ。そして、うまかった。

特に“目”の演技に独特のものがあったと思う。


少年ぽさを残したまま大人になったような、愛すべき

人物だったと思うが、惜しまれるのは、晩年、政治的な

発言が増えたことだ。役者やアスリートは黙ってろ、と

言うつもりはないが、あまりの“右寄り”発言が多過ぎて

しばしば戸惑わされた。


超高齢化の時代、78歳は若い。定年のない芸の世界で、

もっともっと楽しませてほしかった。

妻・朝丘雪路が逝ってわずか数ヶ月…冥福を祈る。

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レッドフォードはいかにもハリウッドの二枚目…という

イケメンの俳優だった。

私には池部良(知らないだろうなあ)とダブって見える。

ベテランになるにつれて渋みが加わっていったところが

そっくりだ。


こしらも現役が長かった割に、印象に残る作品が少ない。

代表作「明日に向って撃て」以外には「大統領の陰謀」

「ナチュラル」「大いなる陰謀」しか頭に浮かばない。


レッドフォードの名前を聞いて真っ先に思い出すのは

こんなエピソードだ。

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「明日に向って…」で共演したポール・ニューマンとは

それ以来の親友だったようだが、ニューマンがいつも

車やレースについて熱く語ることに辟易していたらしい。

そこである日、中古車店に電話してスポーツカーを買い、

それをぼこぼこにしてニューマンの家に送り付けた!


アメリカ人は話で笑わすだけでなく、アクションを伴う

“プラクティカル・ジョーク”が好きだが、これもそうだ。

ふつうは、ニューマンが「あいつめ!」と苦笑いして

終わるのだが、この一件には“続き”があった。


頭をひねったニューマン…この車を産廃業者のところに

持ち込んで巨大なマシンでアートのように立方体に固め、

夜中にレッドフォード邸の前庭にドンと置いた!!


今日の記事は、この話が書きたかったんだ。ハハハ。


81歳のレッドフォードの引退は、いいんじゃないのと

思えるが、私より若い津川が78歳で亡くなったのは

なんかこたえるなあ。


by toruiwa2010 | 2018-08-15 07:20 | 映画が好き | Comments(0)

カメラを止めるな 75


人里離れた廃工場でホラー映画の撮影が行われていた。

ゾンビと化した男が恋人に襲いかかろうとしている。

両手でしっかりとつかんだ斧を構えてじりっじりっと

後ずさりする女の顔は恐怖で引きつっていた。

「はい、カット!」の声がかかった。

俳優たちが演技を止めたところで「何テーク目だ?」と

監督が尋ねると助監督が「42テーク目です」と答える…

 

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今や、“社会現象”と化しているインディズ映画です。

運よく、渋谷ユーロスペースでチケットが取れました。

平日の13時半の回でしたが、スクリーンがある3階で

エレベーターを降りると、狭いロビーは前の回の終了を

待っている人で混雑していました。この劇場で、こんな

光景を見たことは一度もありません。


二つの列ができていました。

オンラインチケットを発券する列と当日券を買う列です。

二つ目の列に対応するスタッフが「1時半の回はすでに

満席です。立ち見券も終わりました」と言っているのが

聞こえます。入場するときにはスタッフの後ろの壁の

一欄表には“売止”の紙がべたべた貼られていました。

立ち見を含め、売る券がありません…という意味です。

ま、それぐらい“話題沸騰”の映画だってことです。

その人気のほぼすべてが口コミによるものだというのも

すごいじゃないですか。

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俳優陣の中に知った顔はありませんでした。予備知識は

持たない方がいいというコメントをどこかで見たので

なにか“仕掛け”があることは予想していました。

しかし、まさか 冒頭の“37分”がその“仕掛け”だとは

想像をはるかに超えていました。


これから見る人の“邪魔”をしないように映画の感想を

書くのは難しいです。どうしても“仕掛け”に触れるし、

その後の展開も書くことになるからです。“一言だけ”

書くなら、そんなに面白いかなあ…です。

ある種の“熱気”は伝わりますが、演出・演技が未熟だし、

映画としての完成度が高いとは思いません。少なくとも

“今年のベスト”には程遠いです。


後方の立ち見と階段にも座り込んだ客(料金は同じ)

40~50人はいたでしょうか。終わって出口に向かうとき、

興奮した声で感想を話し合う彼らをながめながら、爺は

それほどでもないよ、と“ひとりごち”ました。つまり、

年代によって、受け止め方に落差があるってことです。

50代以上の人はその覚悟を持ってお出かけください。


サンプル数が少ないようですが、

“腐ったトマト”はこんな数字です。

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悲しみに、こんにちは 85


バルセロナで暮らしていたフリダの母親が死んだ。

6歳の少女は母親の弟夫婦に引き取られ、山間の農場に

やってきた。環境がすっかり変わってしまったことに

戸惑うフリダは、子供らしくわがままに振る舞ったり、

4歳になるいとこ(弟夫婦の娘)に意地悪をしたりする…

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フリダが過ごしたひと夏の物語は女性監督が幼いころ、

実際に経験したことだそうです。特別にドラマチックな

出来事が起きるわけではありません、この小品が見る

者の心に刺さるのは二人の少女を演じる子役の自然な

演技が強く“訴える”からでしょう。状況だけを告げて

自由にやらせたり、セリフを口伝えにしたり、監督は

苦労したとうですが、何よりも少女たちのみずみずしい

“感性”がこの演技をさせるのだと思います。


そして、映画は“いきなり”終わりを迎えます。しかも

私の頭に“?”を残して。いえ、こうなるのだろうな…

という“方向”はなんとなく分かりますが、具体的に何が

原因でそうなるのかが分かりにくいのです。

そもそも、母親がなぜ亡くなったのか、なぜ、フリダが

病院で血液検査を受けなければいけないのか…うっかり

見落としたのかもしれませんが、はっきりしないのです。

少なくとも、言えばはっきり分かる病名は一度も字幕に

表示されなかったと思います。“にぶい”と言われるかも

しれませんが、「そういうことか」とヒザを叩いたのは

帰宅してからでした。


ここまでの私の記事で、分かる人は分かるでしょうが、

分からない人には、特に若い人には分からないでしょう。

そのもどかしさがなければ、90点でもいい気がします。


フランソワーズ・サガンの有名な小説をデボラ・カー、

デイヴィッド・ニーヴンらで映画化した「悲しみよ

こんにちは」と紛らわしいタイトルですが、もともとの

題名は“Estiu 1993”…1993年 夏です。簡にして潔。

邦題は、かえって観客を混乱させます。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:SUMMER1993

Tomatometer100

観客スコア:81


コード・ブルー 85


翔北大学付属病院の救命救急センターに出動を要請する

連絡が入った。成田空港で航空機が緊急着陸して多数の

負傷者が出ているという。駆けつけた白石(新垣結衣)

冴島(比嘉愛未)らが忙しく対応しているとき、機内から

一人の男が若い女性をかかえて降りてきた。トロントに

行っていた藍沢(山下智久)だった。たまたま、別の便で

帰国して事故を知り、機内でけが人を診ていたのだ…

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2008年から2017年まで10年にわたってフジテレビが

放送したドラマシリーズの初めての劇場版です。

ドラマも大好きでしたが、映画はシリーズの“集大成”に

なるのではないかと思っていました。集大成は、つまり、

すべてを一つにした最高のもの、でもあり、俳優たちの

年齢と役柄を考えると、これが最後になるかもしれない

という意味も込めています。


見ている間、ひしひしと感じたのは、この作品に寄せる

出演者たちの愛情とチームワークです。ドラマや映画が

成功するためには欠かせない要素だと思っています。

救命医の仕事も“共同作業”ですから、チームワークが

生まれやすいのかもしれませんが、山下&新垣を中心に、

戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介…似たような年齢の

俳優たちがいいハーモニーを見せています。みんなが

仲良くやればいい作品になるわけではないでしょうが、

このドラマや映画が見る者を引き込むのはそこですね。


海ほたるでの事故発生からの40分ほどはとてもよく

できているのですが、そこまでが欲張り過ぎましたね。

あれもこれもと詰め込んだために、“しんどい”です。

特にかたせ梨乃のからみは浮いているように感じました。


勝手にこれで終わりだと決めていたので、終盤で藍沢が

白石に“何か”言うんじゃないかと期待していましたが、

何もありませんでした。ハハハ。

逆に、…と言うことは“次”があるということかも。

俳優たちの年齢が上がることで、物語の幅が広がるかも

しれないし、「救命病棟24時」のようなシリーズに

なるのが理想ですが、さあ、どうでしょうね。


初日(金曜日)の午後の回でしたが、95%の入りでした。


ヒトラーを欺いた黄色い星 90


第二次世界大戦中の19439月、ゲッペルス宣伝相は

「ベルリンからユダヤ人を一掃した」と宣言しました。

しかし、およそ7000人がナチスの目を逃れて潜伏し、

1500人が戦争終了まで生き抜いたと言います。

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戦前の生まれですから、日本人が経験した戦争について

少しは知っています。しかし、私が知っていることなど

全体の1%にもならないような過酷かつ悲惨な現実が

あったでしょう。


この映画はヨーロッパではまったく違う形の“不条理”が

あったことをことを教えてくれます。虚を突かれました。

あの時代のユダヤ人が味わった恐怖は想像を超えます。

思わず正座して見たくなるような映画でした。

深夜、「秘密国家警察だ!」と叫びながら、アパートの

部屋のドアを力任せにたたく音にすくみ上ります。


最後方の席に小泉純一郎元総理の姿がありました。


by toruiwa2010 | 2018-08-03 08:10 | 映画が好き | Comments(2)

グッバイ、ゴダール 75


主な登場人物は二人の男女。

男はジャン=リュック・ゴダールで女はその妻、アンヌ。

ゴダールは1960年、「勝手にしやがれ」で映画シーンに

鮮烈な風を吹き込み、ヌーヴェル・バーグの旗手として

映画界の寵児になった男だ。

女優のアンヌは1967年にゴダールの映画「中国女」に

主演として起用され、間もなくゴダールと結婚する。

この映画の原作の著者だ。


17歳の年齢差がある“監督と女優の結婚生活”は 初めは

順調だったが、1968年にパリが“政治の季節”を迎えると

微妙にぎくしゃくし始める…

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妻は何度も”寝落ち”していました。私も綱渡りでした。

前半も“禅問答”めいた会話が多くてうんざりしますが、

フランスに大学生が中心になった“五月革命”が起きて、

激しい議論が始まると、“観念的な”言葉が飛び交って

何を言いたいのか理解不能になります。フランス語を

日本語に置き換えた字幕を見ていますから ストレスは

倍増するのです。ハハハ。

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隣りで眠る妻を見て「出たいのだろうな」と思いつつ、

最後まで見たのはアンヌ役のステイシー・マーティンに

魅力があったからです。

違うだろう…と言われそうですが、ソフィ・マルソーを

初めて見たときの“感動”に近いものがありました。

ま、その感覚は人それぞれでしょうが。ハハハ。


ゴダールの「勝手にしやがれ」は衝撃的でした。

主演のジャン=ポール・ベルモンドが放つ強烈な個性が

大きかったと思いますが、それまでの映画作りの基本を

無視した作品が まだ若かった私を興奮させました。

ただし、その後のゴダールの映画を見続けたかと言えば

そんなことはなく、「軽蔑」(1963)と「彼女について私が

知っている二、三の事柄」(1967)2本ぐらいです。

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かなり“めんどくさい”男として描かれているゴダールを

ルイ・ガレルが好演しているように思います。


アンヌは去年70歳で亡くなっていますが、ゴダールは

87歳の今も健在で、今年のカンヌ映画祭では彼の新作が

上映され、ポスターには彼の作品「気狂いピエロ」の

1場面が使われました。で、「グッバイ・ゴダール」も

映画祭で上映されると聞いて「実にバカげた発想だ」と

おカンムリのようです。まるでわがままな子供のように

描かれている自分を見たらそう言いたくなるのも分かる

気がします。ハハハ。

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R15+”=15歳以上なら見られる…どうでもいいような

ものですが、結構、はっきりと裸の“前面”が見えます。

松坂桃李の「娼年」を見たときにもビックリしましたが、

映倫の規定は昔に比べ、だいぶ“ぬるく”なったのかな?


参考(Rotten Tomatoes)

原題:LE REDOUTABLE

Tomatometer54

観客スコア:54


クレアのカメラ 85


片づける仕事があってまだオフィスに残っていたマニに

社長が声をかけた。「ちょっとつきあってくれない?」。

会社の近くのカフェに誘い出され、そこで 思いがけず、

クビを告げられた。「あなたが純粋であることは認めるが、

正直とは思わない。そういう人とは仕事ができない」と。

なぜマニが正直じやないと思うのかについて、社長は

何も言わなかった。


カンヌにある映画配給会社で大過なく5年勤めた末の

突然の宣告に戸惑ったが、承諾せざるを得なかった。

気持ちを整理するため、カンヌにとどまっているときに、

ビーチでフランス人の女性から声をかけられた…

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それがクレアでした。教師だと言い、カメラを持って、

行きずりの人や景色を撮っています。「私が写真を撮ると

その人は別人になるのだ」と不思議なことを言います。

映画のチラシにもそのことが強調して書かれていますが、

作品を見る上で気にすることはありません。日本では

「魂を抜かれる」などと言って写真を撮られることを

忌み嫌った時代がありますが、そんな“非科学的”な話は

私は受けつけないし、無視しないと、かえって鑑賞の

”邪魔”になります…と警告しておきます。ハハハ。


社長がはっきりしない理由でマニを解雇を告げる冒頭の

シーンは韓国語のセリフが棒読みに聞こえてしまいます。

「なんだこれは。まるで、大学の映画部が作ったような

映画だなあ」と落胆しましたが、ガマンして見続けると、

妙に引き込まれます。

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理由の一つはマニを演じるキム・ミニかもしれません。

36歳だそうですが、とてもそうは見えません。日本の

女優を見慣れた目には“新鮮”です。ニュアンスがうまく

伝わらない言葉ですが、そうなんです。ハハハ。


参考(Rotten Tomatoes)

原題:CLAIRE'S CAMERA

Tomatometer90

観客スコア:67


セラヴィ! 85


郊外の古いお城を借り切って開かれる盛大な結婚式を

舞台に、プロデューサーの奮戦ぶりと裏側で展開される

すったもんだを描いたフランスのコメディ映画です。

爆笑するシーンはほとんどありませんが、全編を通して

そこはかとなく笑えます。

「最強のふたり」の監督の作品と知って納得です。

暑さを忘れられます。

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参考(Rotten Tomatoes)

原題:C’EST LA VIE

Tomatometer76

観客スコア:63


by toruiwa2010 | 2018-07-27 06:50 | 映画が好き | Comments(0)